ピジョン(Pigeon)公式のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/28
「うちのInstagram、投稿はしているのに伸びない」と感じていませんか
ベビー用品や医療・健康関連の商材を扱う企業のSNS担当者から、こんな相談をよく受けます。「商品写真を淡々と投稿しているだけで、フォロワーが増えない」「何を発信すれば“らしさ”が伝わるのか分からない」「薬機法や景表法が気になって、当たり障りのない投稿しかできない」——。特に赤ちゃん・育児・医療分野は、表現できる範囲に制約が多く、他業種の成功事例をそのまま真似しにくいという難しさがあります。
そんなとき参考になるのが、同じ制約の中で長年アカウントを運用し続けている実在企業の事例です。今回はベビー用品・育児用品の大手メーカーであるピジョン株式会社の公式Instagram運用を、公開情報をもとに分析します。フォロワー数やエンゲージメント率といった確証のない数字は扱わず、「どんな投稿の型を使っているか」「アカウント運用の設計そのもの」「世界観の作り方」「エンゲージメントの仕掛け」に絞って、他業種・他企業でも応用できる形に落とし込みます。

ピジョン公式Instagramの基本構造を押さえる
まず注目すべきは、ピジョンが単一のアカウントですべてを発信していない点です。ピジョン株式会社の公式サイトには「ソーシャルメディア公式アカウント一覧」というページが用意されており、目的別に複数のアカウントが整理・公開されています。Instagramだけでも、確認できる範囲で以下のような棲み分けがされています。
- @pigeon_official.jp(ピジョン【公式】):妊娠・出産準備、ベビー用品、哺乳びん、離乳食など、ブランド全体を扱うメインアカウント
- @pigeon_happytravel(ピジョンベビーカー【公式】):ベビーカーというお出かけ・移動シーンに特化したサブアカウント
- @pigeon_celebrate.babies(ピジョン【子育てのヒント】):商品訴求よりも育児の悩みに寄り添う情報発信に特化したアカウント
さらに採用向け・医療従事者向け・公式オンラインショップ向けなど、ターゲットごとにアカウントを分けていることも公式ページから確認できます。これは「1つのアカウントに全ユーザーを詰め込まない」という設計思想の表れであり、投稿内容がぶれにくくなる仕組みでもあります。
また、育児情報サイト「ピジョンインフォ」には、公式Instagramへのフォローを促す専用ページ(pigeon.info/sns/ig/)が設置されており、オウンドメディア(自社サイト)とSNSを回遊させる導線が明確に設計されています。加えて「Instagram利用規約」という独立したポリシーページを公開している点からも、コメント対応やUGC活用のルールがあらかじめ整備されている、成熟した運用体制がうかがえます。
なぜ支持されているのか?3つの構造的な理由
公開情報から読み取れる範囲で、ピジョンの運用が機能している理由を3つに整理します。
1. ユーザーの「ライフステージ」で情報を切り分けている
妊娠中の人、新生児期の人、外出が増えてくる時期の人では、知りたい情報がまったく異なります。メインアカウントで基礎的な妊娠・育児情報を、サブアカウントでベビーカーという特定シーンを、別アカウントで日々の育児の悩みを扱うことで、フォローする側は「自分が今欲しい情報」だけを選んで受け取れます。これは企業がやりがちな「なんでも1アカウントに詰め込んで焦点がぼやける」問題への明確な対処法です。
2. インスタライブで“買う前の不安”に応える
ベビーカーのように比較検討期間が長く、実物を見て決めたい商材では、写真だけでは購買の後押しになりにくいという課題があります。ピジョンはX(旧Twitter)の公式アカウントで告知したうえで、Instagramライブでベビーカーのラインナップを紹介するという、SNSをまたいだ集客導線を組んでいます。ライブという形式は、質問にその場で答えられるため、比較検討中のユーザーが抱える細かい疑問(サイズ感、収納方法、使い勝手など)を解消しやすいという特性があります。
3. オウンドメディアとSNSを相互に送客させている
育児情報サイト「ピジョンインフォ」内にInstagramフォローを促すページを持ち、SNS側からもサイトへ誘導する。この双方向の導線があることで、SNSは単独の集客チャネルではなく、既存の会員基盤・コンテンツ資産と連動する仕組みとして機能しています。フォロワーを増やすこと自体を目的化せず、既存顧客との関係を深める手段として位置づけている点が特徴です。
投稿の「型」を分解する
公式アカウントの構成から見えてくる、投稿カテゴリの型を整理すると次のようになります。
| 投稿カテゴリ | 想定される内容 | 狙い |
|---|---|---|
| 商品紹介 | 哺乳びん・ベビーカー・離乳食用品などの機能紹介 | 購買検討層への情報提供 |
| シーン訴求 | お出かけ・帰省・旅行時の使い方提案 | 生活文脈の中で商品を想起させる |
| 育児のヒント | 商品に直結しない育児の悩み・工夫の発信 | フォローする理由(有益性)の提供 |
| ライブ配信 | 新商品・人気商品の紹介と質疑応答 | 比較検討層の疑問解消、購入後押し |
| フォロワー参加企画 | プレゼント企画・感謝キャンペーンなど | 既存フォロワーとの関係強化 |
ポイントは、「商品紹介」と「育児のヒント」を明確に分け、後者の比率を意図的に持たせていることです。商品訴求だけのアカウントは短期的には効率的に見えても、フォローする動機が薄く、関係が続きにくいという弱点があります。
世界観のつくり方——トーンとビジュアルの一貫性
複数アカウントに分かれていても、アカウント名の表記ルール(「ピジョン【公式】」「ピジョン【子育てのヒント】」のような統一された命名)や、プロフィール文の構成に共通したフォーマットが見られます。これは細かいことのようですが、ユーザーが複数のアカウントを回遊した際に「同じブランドが発信している」という安心感につながります。
ベビー・育児・医療領域では、過度に装飾的な表現や断定的な効果訴求は薬機法・景表法上のリスクを伴います。ピジョンのアカウント構成から読み取れるのは、「派手な演出で惹きつける」よりも「生活シーンへの寄り添い」で信頼を積み上げるアプローチです。これは同業種だけでなく、医療・健康関連の商材を扱う企業全般に応用できる考え方です。
エンゲージメントを高める施策
公式サイトの告知情報からは、フォロワーに向けた参加型の企画(プレゼント企画、フォロワーへの感謝を目的とした施策など)が定期的に実施されていることが確認できます。具体的な当選人数や実施頻度は時期によって変動するため本記事では数値を明記しませんが、構造として重要なのは次の3点です。
- 参加のハードルを下げる:コメントやフォローなど、負担の軽い行動を応募条件にする
- 告知を複数チャネルで行う:X(@pigeoninfo)とInstagramを連動させ、片方しか見ていないユーザーも取りこぼさない
- 既存顧客への感謝を明確に打ち出す:新規獲得だけでなく、既にフォローしている人への還元を設計に含める
新規フォロワー獲得ばかりに意識が向くと、既存フォロワーとの関係が疎かになりがちです。ピジョンの運用は、この両方をバランスよく設計している点が参考になります。
データで見るInstagram運用の重要性
自社アカウント運用の意義を社内で説明する際は、公的な統計を根拠にすると説得力が増します。以下は本記事の裏付けとして確認できた公開データです。
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、Instagramの利用は若年層だけでなく50代でも4割以上に達するなど、年代を問わず利用が広がっている実態が示されています(出典:総務省「令和7年版情報通信白書」SNS利用動向に関するデータ)。
- Meta社は2023年11月開催の「Meta Marketing Summit Japan 2023」において、Instagramの国内月間アクティブアカウント数が2019年の約3,300万人から4年間で6,600万人以上へと倍増したと発表しています(出典:Meta Marketing Summit Japan 2023発表情報)。
- 株式会社SAKIYOMIが実施し、PR TIMESに掲載された「10代〜20代のInstagram企業アカウントのフォロー状況調査」では、フォローされる企業アカウントに共通する特徴として、世界観の統一感・有益な情報提供・感情を動かすコンテンツの3点が挙げられています(出典:株式会社SAKIYOMIプレスリリース、PR TIMES掲載)。
育児層をメインターゲットとするピジョンの戦略——ライフステージ別の情報設計、有益なコンテンツ比率の確保、世界観の統一——は、こうした調査結果とも整合的です。
明日から試せる実践チェックリスト
自社アカウントに応用する際は、次のチェックリストから着手すると取り組みやすくなります。
- 自社アカウントの投稿を「商品紹介」「シーン訴求」「お役立ち情報」「参加型企画」に分類し、比率を可視化する
- 商品訴求一辺倒になっていないか、直近10投稿を見直す
- ターゲットが複数セグメントに分かれる場合、サブアカウントやハイライト機能での棲み分けを検討する
- 比較検討期間が長い商材があれば、ライブ配信でのQ&A企画を月1回から試す
- 自社サイト・メルマガ・LINEなど既存の顧客接点からSNSへの導線ページを1つ作る
- フォロワー参加型の企画を、新規獲得目的と既存顧客への感謝目的の両方で年数回設計する
- プロフィール文とアカウント名の表記ルールを統一し、複数アカウント間で世界観のズレがないか確認する
- 健康・医療に関わる商材の場合、効果を断定する表現がないか投稿前にダブルチェックする体制を作る
自社に応用する際の注意点
医療・健康・育児関連の商材を扱う場合、効果効能を断定的に表現すると薬機法や景表法に抵触するリスクがあります。ピジョンのアカウントが商品機能そのものより「生活シーンへの寄り添い」を中心に据えているのは、単なるトーンの好みではなく、こうした業界特有の制約とも無関係ではないと考えられます。自社で真似る際も、成果を保証するような表現や、根拠のない比較優位の訴求は避け、事実に基づいた情報提供を軸に設計することをおすすめします。
また、本記事で紹介した内容はあくまで公開情報からの分析であり、ピジョン株式会社の内部方針や具体的な運用数値を示すものではありません。参考にする際は、自社の商材特性・ターゲット・リソースに合わせて調整してください。
まとめ
ピジョン公式Instagramの運用から見えてくるのは、派手な演出やバズを狙うテクニックではなく、「ターゲットのライフステージに合わせたアカウント設計」「商品訴求と有益情報のバランス」「既存の顧客接点との連携」「既存フォロワーへの還元」という、地道だが再現性の高い設計思想です。特に医療・健康・育児のように表現の自由度が限られる業種ほど、こうした構造的な工夫の価値は大きくなります。自社アカウントを見直す際は、まず投稿カテゴリの棚卸しから始めてみてください。
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