「うちのアカウント、なんで伸びないんだろう」と感じたら
新商品の情報を毎週投稿しているのに保存数が伸びない、フィードを開いてもらっても最後まで見てもらえない、担当者が変わるたびに世界観がぶれてしまう——SNS担当者であれば、一度はこうした壁にぶつかったことがあるはずです。特に美容・健康ジャンルは競合アカウントが多く、「何を投稿すれば選ばれるのか」の答えが見えにくい領域でもあります。
そんなときにヒントになるのが、実際に支持を集めている企業アカウントの「型」を分解することです。今回は、化粧品・健康食品の通販ブランドとして知られる「オルビス(ORBIS)」の公式Instagram運用を題材に、投稿の構造・世界観のつくり方・エンゲージメントを生む仕組みを整理し、自社アカウントに応用できるポイントに落とし込みます。本記事では確証のないフォロワー数やエンゲージメント率といった数字は掲載せず、公開されている情報と統計データのみをもとに解説します。

オルビスとは?ブランドとSNS運用の基本方針
オルビスは、ポーラ・オルビスホールディングス傘下でスキンケア・化粧品・健康食品を展開する通販発の美容ブランドです。公式Instagramアカウント「オルビス(ORBIS)」(@orbis_jp)を中心に、ブランド全体のトーンを統一した情報発信を続けています。
公式アカウントの運用方針として特徴的なのは、DMでの問い合わせを受け付けず、代わりに「#オルビス」タグの付いた投稿をストーリーズで随時紹介する、というスタンスです。問い合わせ窓口はコールセンターや公式サイトに集約し、Instagramは「ブランドの世界観を伝え、ファンとのゆるやかな接点をつくる場」として役割を明確に切り分けています。SNSごとの役割を最初に決めておくことは、運用リソースが限られる企業ほど重要な考え方です。
オルビスのInstagram運用を支える「投稿の型」
日経クロストレンドの取材記事「オルビスが編み出した、インスタ『4つの必勝パターン』大公開」(日経クロストレンド)でも紹介されている通り、オルビスは複数枚のカルーセル投稿(画像を複数枚スワイプできる形式)を軸に、投稿ごとに情報の出し方をパターン化しています。
具体的には、1枚目でブランドや商品の世界観が伝わるビジュアルを見せ、2枚目・3枚目で成分やテクスチャー、使い方といった「保存したくなる」実用情報を提示する構成が基本になっています。この型が優れているのは、次の2つの役割を1つの投稿で両立させている点です。
- 1枚目=発見・興味喚起:フィードやおすすめ欄で止まってもらうための「ジャケ買い」的なビジュアル訴求
- 2枚目以降=保存・比較検討:購入検討中のユーザーが後から見返せる情報の蓄積
Instagramのアルゴリズムは「保存」や「シェア」を重要な評価指標として扱っているとされており、1枚目だけでなく2枚目以降まで見てもらう設計は、リーチの広がりにも影響しやすい工夫だといえます。
世界観づくりのポイント:フィード全体で伝える統一感
美容・健康ジャンルのアカウントにとって、フィード全体の「見た目の統一感」はフォローするかどうかを左右する重要な要素です。オルビスの投稿は、商品写真の色調・余白の取り方・フォント使いなどが揃えられており、1投稿単位ではなく「フィード全体で1つの世界観」を作る発想で運用されています。
これは個人のインフルエンサーアカウントにも共通する考え方ですが、企業アカウントの場合は担当者の異動や交代が発生しやすいため、以下のような「世界観のルール化」が特に重要になります。
- 使用する画像のトーン(明るさ・彩度・余白比率)を統一するガイドラインを用意する
- カルーセル投稿の「1枚目の型」「2枚目以降の型」をテンプレート化する
- コピーライティングの語尾・トーン(「〜です・ます」か「〜だよ」かなど)を統一する
- 過去投稿と並べて違和感がないか、投稿前にフィードプレビューで確認する
こうしたルールをドキュメント化しておくことで、担当者が変わっても世界観がぶれにくくなります。
エンゲージメントを生む仕掛け:UGCとハッシュタグ活用
オルビスは「#オルビス」ハッシュタグを付けた一般ユーザーの投稿を、公式アカウントのストーリーズで積極的に紹介しています。これはUGC(ユーザー生成コンテンツ)活用の代表的な手法で、企業側が発信する広告的な情報だけでなく、実際に商品を使った第三者の声を可視化することで信頼性を補強する狙いがあります。
UGCを活用するメリットは、コンテンツ制作の負荷を抑えられるだけではありません。ホットリンクが2024年に実施した調査(PR TIMES掲載、株式会社ホットリンク「Instagram利用者の約55%が、Instagramをきっかけに購入・来店した経験があることが明らかに」)によると、Instagram利用者が商品購入時に参考にする情報として「企業・インフルエンサーの投稿」が上位に挙げられており、企業公式の発信と第三者による発信の両方が購買行動に影響を与えていることが示されています。UGCの紹介は、この「企業発信」と「第三者の声」の橋渡しをする施策として機能していると考えられます。
自社アカウントでUGCを取り入れる場合は、次のステップが実践しやすい流れです。
- ブランド固有のハッシュタグを1つに絞り、プロフィール欄・投稿キャプション・店頭POPなど複数の接点で告知する
- ハッシュタグ投稿を定期的に検索し、紹介してよいか許可を得た上でストーリーズやハイライトに集約する
- 紹介した投稿主に対してリアクション(いいね・コメント・お礼のDM)を行い、継続的な投稿を促す
- 良質なUGCは広告クリエイティブやサイトのレビュー欄にも二次利用を検討する
複数アカウント運用によるターゲット別コミュニケーション
オルビスはメインアカウントに加えて、男性向けブランドの「ORBIS Mr.」(@orbis_mr)や、機能性化粧品ラインの「ORBIS IS」(@orbis_is_jp)、店舗体験を紹介する「スキンケアラウンジ バイ オルビス」など、複数のInstagramアカウントを運用しています。1つのアカウントにすべてのターゲット・商品ラインの情報を詰め込むのではなく、ターゲット層やブランドラインごとにアカウントを分けることで、それぞれのフォロワーにとって「自分ごと化」しやすい情報設計を実現しています。
| アカウント例 | 主なターゲット・目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| オルビス公式(@orbis_jp) | ブランド全体のファン・既存顧客 | 世界観訴求とUGC紹介が中心 |
| ORBIS Mr.(@orbis_mr) | メンズスキンケア層 | 男性向けに特化した商品訴求 |
| ORBIS IS(@orbis_is_jp) | 特定ラインの関心層 | 商品ラインに特化した深掘り情報 |
| スキンケアラウンジ バイ オルビス | 店舗来店・体験に関心がある層 | リアル店舗体験の発信 |
複数アカウント運用は管理コストが増える一方、「メインアカウントのフォロワーを増やすこと」だけを目的にせず、ターゲットごとに最適化した発信ができる点が強みです。すべての企業が同じ規模で実践できるわけではありませんが、「新規顧客向け」と「既存ファン向け」で投稿トーンを分ける、といった小さな単位からでも応用可能な考え方です。
なぜ今、企業アカウントのInstagram運用が重要なのか(データで見る)
ここで、企業がInstagram運用に力を入れる背景にあるデータを確認しておきます。
まず利用者規模についてです。Metaは2019年6月7日、日本国内のInstagram月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと公式発表しています(Meta「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」、Metaについてのニュースルーム)。その後Metaはプラットフォーム別・国別の正式な数値を継続的には公表していませんが、この発表からも、Instagramが日本国内で広範な生活者にリーチできるプラットフォームであることがわかります。
また、総務省「令和6年版 情報通信白書」では、世界のソーシャルメディア利用者数が2023年の49億人から2028年には60億5,000万人に増加すると予測されており、日本国内のソーシャルメディア利用者数も2023年の1億580万人から2028年には1億1,360万人に増加すると見込まれています。SNSが一時的なブームではなく、生活インフラとして定着し続けていることが公的データからも読み取れます。
さらに、購買行動への影響についても公表データがあります。前述のホットリンクの調査(2024年、PR TIMES掲載)では、Instagram利用者の約55%が「Instagramをきっかけに購入・来店した経験がある」と回答しており、企業・インフルエンサーの投稿が購入検討時の参考情報として上位に挙げられています。これは、Instagramが単なる認知拡大の場ではなく、購買の意思決定に直接関わるチャネルになっていることを示すデータといえます。
こうした背景を踏まえると、オルビスのように「世界観の統一」「保存されるカルーセル設計」「UGCによる信頼性補強」を組み合わせた運用は、単なるブランディング施策にとどまらず、購買行動に近い接点を作る施策として理にかなっていると整理できます。
オルビスに学ぶ、明日から実践できるチェックリスト
ここまでの内容を踏まえ、自社アカウントですぐに試せるチェックリストにまとめました。
- 直近のフィード投稿9〜12枚を並べて見返し、色調・トーンに統一感があるか確認する
- カルーセル投稿の「1枚目=発見・興味喚起」「2枚目以降=保存したくなる情報」の型をテンプレート化する
- 自社アカウントで問い合わせ対応をするのか、しないのかを明確にし、プロフィール欄に明記する
- ブランド固有のハッシュタグを1つ決め、投稿・プロフィール・店頭など複数接点で告知する
- ハッシュタグ投稿を週1回はチェックし、紹介できるUGCがないか探す
- ターゲットが複数ある場合、既存アカウント内でトーンを分けるか、サブアカウント化を検討する
- 投稿前にフィードプレビューで「浮いていないか」を必ず確認するフローを作る
すべてを一度に実践する必要はありません。まずは「1枚目と2枚目以降の役割分担」と「フィードの統一感チェック」の2つから着手するだけでも、投稿の見え方は大きく変わります。
まとめ
オルビスのInstagram運用からは、派手なバズ施策ではなく、「型の言語化」「世界観の統一」「UGCによる信頼性の補強」「ターゲット別のアカウント設計」という、地道だが再現性の高い工夫の積み重ねが見えてきます。総務省やMeta、各種調査データが示す通り、Instagramは生活者の情報収集・購買行動に深く関わるチャネルであり続けています。だからこそ、単発のバズを狙うのではなく、投稿の型やルールを整備し、継続的に運用できる仕組みを作ることが、中長期で見たときの伸びにつながります。まずは自社アカウントのフィードを見返すところから、できることを一つずつ試してみてください。
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