京都市公式(City of Kyoto)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/27
「投稿ネタが尽きた」「フォロワーが増えない」と感じたら、自治体アカウントに学ぶ
企業や店舗のSNS担当者から、こんな相談をよく耳にします。「毎月ネタを絞り出すのがつらい」「キャンペーンをやってもフォロワーが増えるだけで終わってしまう」「投稿しても“いいね”が伸びず、何が正解か分からない」。特に地域密着型のビジネスほど、発信できる情報の幅が限られ、同じような写真・同じような文体の投稿を繰り返してしまいがちです。
こうした悩みを考えるうえで参考になるのが、公共・自治体アカウントの運用です。今回は、京都市観光協会(DMO KYOTO)が運営する「@visit_kyoto」(アカウント紹介文に「City of Kyoto Official Account」と明記されている、京都市の公式観光Instagramアカウント)を中心に、京都市が展開するSNS運用全体を分析します。公開情報のみをもとに、「なぜこのアカウントが支持されているのか」「投稿の型」「世界観のつくり方」「エンゲージメント施策」を分解し、企業・店舗アカウントに応用できる具体策に落とし込みます。なお、フォロワー数やエンゲージメント率など裏付けの取れない数値は本記事では扱いません。

京都市公式Instagram「@visit_kyoto」とは何か
「@visit_kyoto」は、京都市の外郭団体であり京都市の観光施策を担うDMO(Destination Management/Marketing Organization)、公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)が運営するアカウントです。同協会は公式サイト上でInstagramキャンペーンの実施概要を毎年公表しており、令和6年度は「秋の色、インスタントに。」、令和7年度は「見つけた!隠れた京都の秋」というテーマでキャンペーンを実施したことが公表されています(出典:公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)ニュースリリース)。
自治体・準公的機関のアカウントというと「お堅い」「事務的」なイメージを持たれがちですが、実際の運用を見ると、テーマ設定・企画性・フォロワー参加型の仕掛けなど、企業アカウントが参考にできる工夫が随所にあります。
伸びている理由①:季節ごとの「テーマ企画」で投稿ネタ切れを防ぐ
DMO KYOTOのInstagram運用で特徴的なのは、単発の投稿を積み重ねるのではなく、毎年・毎シーズン「テーマを持ったキャンペーン」を継続実施している点です。過去の公表実績を時系列で見ると、次のような変遷があります。
- 「とっておきの京都」×「もうひとつの京都」京都 秋のInstagramキャンペーン(コロナ禍の需要回復期に、広域周遊・分散来訪をテーマに実施)
- 「秋の色、インスタントに。」(令和6年度)
- 「見つけた!隠れた京都の秋」(令和7年度)
(出典:公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)公式サイト ニュースリリース)
毎回まったく違う企画をゼロから考えるのではなく、「秋」「隠れた魅力」といった軸を継続させながら、切り口だけを毎年更新するスタイルです。この方式には、投稿ネタを考える負荷を下げつつ、フォロワーにとっては「今年はどんなテーマだろう」という期待感を生み出す効果があります。ネタ切れに悩む企業アカウントでも、通年で使える大テーマ(季節・working process・お客様の声 など)を1つ決め、年ごとに切り口だけを変える方法は、そのまま応用可能です。
伸びている理由②:フォロワーを「発信者」に変えるUGC設計
DMO KYOTOのキャンペーンは、いずれもハッシュタグを使った写真投稿型のUGC(ユーザー生成コンテンツ)キャンペーンとして設計されています。指定ハッシュタグを付けて京都の写真を投稿してもらい、その中から優秀作品を選出・紹介する形式で、過去には協賛企業から景品を募る取り組みも行われています(出典:公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)「インスタグラムキャンペーン協賛品の募集について」)。
この設計の強みは3つあります。
- コンテンツ調達コストの低減:運営側がすべての写真・動画を撮影しなくても、フォロワーが良質な素材を持ち寄ってくれる
- 信頼性の高い発信:公式アカウントの“作り込まれた広告っぽさ”よりも、実際に訪れた人の写真の方が説得力を持ちやすい
- 地域事業者との連携動線:協賛品を地元企業から募ることで、観光客・地元事業者・行政の三者が関わる企画になる
企業アカウントであれば、「お客様の投稿を公式が紹介する」「指定ハッシュタグでレビューを集める」といった小規模な仕組みからでも、同じ効果を狙えます。
伸びている理由③:オーバーツーリズムという社会課題を発信の軸に転換
京都市は近年、観光客が特定エリア・時間帯に集中することによる混雑、いわゆるオーバーツーリズムを行政課題として位置づけています。京都市公式サイトでは「観光客の分散化」という施策ページを設け、比較的空いている時期・時間・場所の魅力をPRし、混雑状況をきめ細かく発信することで快適な観光環境と分散化を両立させる方針を明示しています(出典:京都市公式サイト「観光客の分散化」)。
この行政課題が、そのままInstagramの企画テーマ「もうひとつの京都」「隠れた京都の秋」に転換されている点は非常に示唆的です。「解決したい課題」を「魅力の切り口」に変換することで、行政的な必要性とコンテンツとしての面白さを両立させています。企業でも、在庫の偏り・閑散期の集客・特定商品への依存といった経営課題を、そのまま「まだ知られていない魅力」の発信テーマに転換できる余地があります。
運用体制のプロ化:外部パートナーと学び合うカルチャー
DMO KYOTOは、令和7年度の「京都市観光協会公式インスタグラム運用業務」について、外部委託先を公募する提案依頼(プロポーザル)を実施しています(出典:公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)「【提案依頼】令和7年度 京都市観光協会公式インスタグラム運用業務 委託先募集」)。加えて、「京都の人気instagramアカウントから運用の工夫を学ぶ」というテーマでSNS勉強会・交流会を開催するなど、域内の他の発信者から知見を吸収する場も設けています(出典:同協会「第2回SNS勉強会&交流会」告知)。
これは、SNS運用を担当者個人の感覚や属人的なノウハウに閉じ込めず、外部の専門知見と定期的に接続し続ける仕組みを持っていることを意味します。人手も予算も限られる企業・店舗ほど、こうした「学び直しの機会」を運用計画に組み込むかどうかで、長期的な発信力の差がつきやすくなります。
数字で見るInstagramの重要性
自治体がここまでInstagram運用に力を入れる背景には、国内における同SNSの利用規模があります。
| 指標 | 数値・内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 全年代のInstagram利用率 | 52.6% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| 全年代のLINE利用率 | 91.1% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| 全年代のX(旧Twitter)利用率 | 43.3% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| 全年代のYouTube利用率 | 80.8% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| Instagram国内月間アクティブアカウント数 | 2019年3月時点で3,300万突破 | Meta社(Instagram公式)発表(2019年6月) |
出典として挙げた総務省「令和6年版情報通信白書」は、総務省情報通信政策研究所の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」に基づく公的統計です。またMeta社は2019年6月、国内の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと公式発表しており、その後2024年6月開催のイベント「House of Instagram Japan 2024」において、日本法人担当者が2019年時点から倍増した旨のグラフを示したことが複数メディアで報じられています。こうした背景から、観光・生活情報を含む幅広い層にリーチできるチャネルとして、行政・準公的機関が観光施策の中核にInstagramを据えるのは合理的な判断だと言えます。
京都市に見る「アカウントの使い分け」戦略
もう一つ注目すべきは、京都市(および関連団体)が1つの巨大アカウントに情報を集約せず、目的・ターゲット別にアカウントを分けていることです。京都市公式サイトの「京都市ソーシャルメディア一覧」ページでは、部局ごとに運用されている多数のSNSアカウントが案内されています(出典:京都市公式サイト「京都市ソーシャルメディア一覧」)。
| アカウントの性格 | 主な発信内容 | ターゲット層 |
|---|---|---|
| 観光特化(@visit_kyoto/DMO KYOTO運営) | 観光スポット、季節企画、分散来訪の提案 | 国内外の観光客・旅行検討層 |
| 交通局系アカウント | バス・地下鉄の運行やイベント情報 | 市民・来訪者の交通利用者 |
| 子育て支援系アカウント | 子育てイベント、支援制度の案内 | 子育て世帯 |
| まちづくり・住まい系アカウント | 路地・町家など京都の住環境紹介 | 移住検討層、まちづくり関心層 |
このように部局・テーマごとにアカウントを分割することで、それぞれのアカウントが「誰に何を届けるか」をぶらさずに運用できます。企業でも、採用広報・商品PR・お客様サポートなど、目的が大きく異なる発信を1つのアカウントに詰め込むと、フォロワーにとって「何のアカウントか分かりにくい」状態になりがちです。アカウントを分けるべきか、1つに集約すべきかは規模次第ですが、少なくとも「投稿ごとに軸がぶれていないか」は定期的に見直す価値があります。
明日から真似できる実践チェックリスト
ここまでの分析を、企業・店舗アカウントですぐ試せるアクションに落とし込みます。
- 年間テーマ表を作る:季節・イベントに合わせた大テーマ(例:春・夏・秋・冬ごとの切り口)をあらかじめ1年分決めておき、毎回ゼロから企画を考える負担を減らす
- UGCの受け皿を用意する:指定ハッシュタグを作り、お客様の投稿を公式アカウントで紹介するルールと引用時の許諾フローを整備する
- 経営課題を発信テーマに変換してみる:閑散期・在庫の偏り・知られていない強みなど、社内の課題を「まだ知られていない魅力」として言い換えられないか棚卸しする
- 協賛・コラボ先をリストアップする:UGCキャンペーンの景品や紹介コンテンツを、取引先や地域の事業者と組んで用意できないか検討する
- アカウントの目的を1文で言語化する:「このアカウントは誰に何を届けるためのものか」を明文化し、投稿がそこからずれていないか月1回チェックする
- 学び直しの機会を運用計画に入れる:担当者任せにせず、外部の勉強会・セミナーへの参加や運用委託の見直しを年1回は検討する
- 公的統計で自社ターゲット層のSNS利用実態を確認する:総務省の情報通信白書など公開統計で、狙う年代・属性にどのSNSが強いかを定期的に確認する
いずれも大規模な予算がなくても着手できるものばかりです。重要なのは、単発のキャンペーンで終わらせず、「継続できるフォーマット」として仕組み化することです。
まとめ
京都市公式のInstagram運用(@visit_kyoto/DMO KYOTO運営)を分析すると、支持されている理由は特別な裏技ではなく、①継続可能なテーマ企画でネタ切れを防ぐ、②UGCでフォロワーを発信者に変える、③行政課題を魅力発信の軸に転換する、④外部パートナーとの連携や学び直しで運用を属人化させない、という地道な設計の積み重ねであることが分かります。加えて、京都市全体では目的別にアカウントを使い分け、それぞれのターゲットに合わせた発信を行っている点も、規模の大小を問わず参考にできる考え方です。自社・自店のアカウントを見直す際は、まず「年間テーマ」と「フォロワー参加の仕組み」の2点から着手してみてください。
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