「TikTokは若者向けの娯楽アプリで、うちのようなBtoB企業には関係ない」——そう感じている担当者は少なくありません。一方で、上司や経営層から「TikTokもやってみたら」と突然指示され、何から手をつければいいのか分からず立ち止まってしまうケースも増えています。アカウントを作ったはいいものの、プロフィールの書き方も投稿の頻度も決まらないまま数本投稿して放置してしまう、というのはBtoBのTikTok運用でよくある失敗パターンです。
実際にはTikTokの利用者層はすでに10〜20代だけにとどまらず、社会人全般に広がっています。何となく「若年層向けの流行り物」というイメージで判断してしまう前に、公開されている統計データを踏まえて、自社にとって取り組む価値があるのかを見極め、着手するなら失敗しない設計と初動30日の計画を持って始めることが重要です。本記事では、BtoB企業がTikTok運用を始める前に押さえておくべきアカウント設計の考え方と、最初の30日間で何をすべきかを具体的に解説します。
なぜ今、BtoBがTikTokを検討すべきなのか
TikTokはすでに「若者だけのアプリ」ではありません。TikTok Japanは2025年11月に開催した企業向けイベント「TikTok Year End Summit 2025」で、日本国内の月間アクティブユーザー数(MAU)が4,200万人を突破したと公式発表しました。2022年11月時点の2,120万人から約3年で2倍に伸びており、日本のおよそ3人に1人が利用している計算になります(出典:TikTok For Business ブログ「TikTok Year End Summit 2025」開催レポート、PR TIMES掲載のByteDance株式会社プレスリリース)。
さらに同発表では、日本国内でTikTokに広告を出稿している企業がすでに48万社を超えているとされています。これはBtoC企業だけでなく、採用広報や企業ブランディングを目的にTikTokを活用するBtoB企業が着実に増えていることを示す数字です。
利用者の年代構成についても、総務省情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2025年公表)が参考になります。同調査によると、TikTokの全年代利用率は33.2%で、10代が65.7%、20代が58.7%と若年層で高い一方、社会人層にも一定の利用が広がっていることが読み取れます。BtoB企業がリーチしたい「若手の実務担当者」「将来の意思決定者候補」がすでにTikTok上に相当数存在していると考えられます。
| SNS | 全年代利用率 | 備考 |
|---|---|---|
| LINE | 91.1% | 依然として最も利用率が高い基盤インフラ的SNS |
| YouTube | 80.8% | 動画コンテンツの主戦場 |
| 52.6% | 10〜30代で70%超と若年〜中堅層に強い | |
| X(旧Twitter) | 43.3% | 20代で78.0%と特に高い |
| TikTok | 33.2% | 10代65.7%、20代58.7%で急拡大中 |
| 26.8% | 30代で39.2%とビジネス層に一定の利用 |
(出典:総務省情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」)
こうしたデータを踏まえると、TikTokは「BtoCの若年層向け」という先入観だけで避けるにはもったいないプラットフォームになりつつあります。実際にunyou(https://unyou.media)に集まっているBtoB企業のSNS運用事例でも、採用ブランディングや専門知識の発信を目的にTikTokを組み合わせて成果を出している企業が見られます。業種別の具体的な事例は「BtoB企業のSNS活用成功事例と勝ちパターン」でも紹介しているので、自社の業種に近い事例がないか確認しておくと設計の精度が上がります。

始める前に確認すべき5つの前提条件
アカウントを作る前に、社内で次の5点を確認しておくと、後々の手戻りを防げます。
- 目的の明確化:採用ブランディング、認知拡大、専門性の発信、既存顧客とのエンゲージメント強化のうち、何を最優先にするか
- ターゲットの明確化:エンドユーザー(決裁者)なのか、若手の実務担当者や採用候補者なのか
- 撮影・出演リソース:誰が定期的に出演・撮影・編集を担当できるか(属人化しすぎないか)
- 社内承認フローの整備:投稿前のチェック体制、炎上・情報漏洩リスクへの対応ルール
- 成果指標(KPI)の仮置き:フォロワー数だけでなく、採用応募数や問い合わせ数など事業指標との接続
この5点が曖昧なまま「とりあえず投稿を始める」と、3か月後には「何のためにやっているのか分からない」状態に陥りがちです。特にBtoBは意思決定者に届くまでの距離が長いため、短期的なバズよりも中長期での認知蓄積を前提に社内合意を取っておくことが重要です。
BtoB向けアカウント設計の基本方針
BtoC企業と同じ感覚でアカウントを作ると、ミスマッチが起きやすくなります。BtoB特有の設計方針として以下を意識しましょう。
- 顔の見える発信にする:社名だけの無機質な発信よりも、社員や現場担当者が出演するコンテンツの方がBtoBでは信頼を獲得しやすい
- 専門性と親しみやすさのバランス:業界の専門知識をベースにしつつ、TikTokらしいテンポの良い編集・トレンド音源も適度に活用する
- 採用文脈との親和性を意識する:BtoBのTikTok活用は採用ブランディングと相性がよく、社内の雰囲気や働く人を見せるコンテンツが伸びやすい傾向がある
- 他SNSとの役割分担:X(旧Twitter)で速報性、Instagramで写真・世界観、TikTokで動画によるストーリー性、というように既存アカウントとの役割を整理しておく
プロフィール設計の具体的なチェックリスト
アカウント開設時に最低限整えておきたい項目をチェックリスト化しました。明日からでもすぐに見直せる内容です。
- アカウント名は正式社名または広く認知されているブランド名にしているか
- プロフィール文(自己紹介)に「何をしている会社か」を一文で明記しているか
- プロフィール文に発信テーマ(例:製造業の裏側、SaaS活用術、業界あるある)を明示しているか
- プロフィールリンクを採用ページまたはコーポレートサイトに設定しているか
- アイコンはロゴまたは顔が分かる担当者の写真にしているか(BtoBは顔出しの方が信頼を得やすい傾向)
- カバー画像・固定投稿で「初めて訪れた人が3秒で何のアカウントか分かる」状態になっているか
- 投稿カテゴリ(採用/商品/社内文化など)をあらかじめ3〜4本の柱として決めているか
- 炎上・情報漏洩防止のための投稿前チェック担当者を決めているか
このチェックリストは開設時だけでなく、月1回程度見直すことをおすすめします。フォロワーが増えてから見ると、初期に決めた自己紹介文が実態と合わなくなっていることも珍しくありません。
最初の30日間の運用プラン
BtoBのTikTokは、開始直後から大きな反応を狙うものではなく、最初の30日は「型を作る期間」と割り切ることが重要です。以下は目安となる週別プランです。
| 期間 | 主なタスク | ゴール |
|---|---|---|
| 1週目 | アカウント設計、プロフィール確定、社内承認フロー整備、投稿テーマ3〜4本の決定 | 土台づくりの完了 |
| 2週目 | 投稿開始(週2〜3本目安)、自己紹介・会社紹介系コンテンツを中心に投稿 | 認知の起点となる投稿の蓄積 |
| 3週目 | 社員登場コンテンツ、業務の裏側紹介など「人が見える」投稿を追加 | エンゲージメント(保存・コメント)の反応を見る |
| 4週目 | 反応の良かった型を分析し、投稿テーマを絞り込む。次月の運用方針を社内共有 | 継続運用の型(フォーマット)を確立 |
30日間で狙うべきなのは「バズ」ではなく「継続できる投稿の型」を見つけることです。BtoBはニッチなテーマを扱うことが多いため、最初の1か月で万人受けを狙う必要はありません。むしろ、自社のターゲットとなる担当者・求職者に「刺さる」切り口を探る期間と位置づけましょう。
コンテンツ企画のネタ出しと注意点
BtoBならではのネタ切れを防ぐために、以下のようなテーマの引き出しを用意しておくと投稿が続けやすくなります。
- 業界の専門用語や仕組みを分かりやすく解説する「業界解説シリーズ」
- 自社製品・サービスが使われている現場を紹介する「導入現場密着」
- 社員インタビューや1日の仕事風景を紹介する「社員紹介シリーズ」
- 展示会・イベント出展時の裏側やブース紹介
- 「あるある」形式で業界特有の悩みを共感的に描くショートコント
一方で注意したいのが、情報管理と表現のトーンです。取引先情報や非公開の数値情報が映り込まないよう撮影前に確認する、法務・広報部門との事前チェックフローを設けるなど、BtoC企業以上に慎重な運用体制が必要になります。景品表示法や薬機法に抵触するような効果の断定表現(「必ず売上が伸びる」等)も避け、事実に基づいた発信を心がけましょう。
効果測定とよくある失敗
BtoBのTikTok運用でありがちな失敗は、フォロワー数の増減だけを見て一喜一憂してしまうことです。BtoBの購買・採用の意思決定は長期的なプロセスを経るため、以下のような多面的な指標で評価することをおすすめします。
- 保存数・コメント数(内容への関心度の指標)
- プロフィールへの遷移数・リンククリック数(サイトや採用ページへの送客効果)
- 採用エントリー数、問い合わせ数などの事業指標との相関
- 社内外での「見た」という声(定性的な認知の広がり)
最初の30日、あるいは3か月間はフォロワー数が思うように伸びないことも珍しくありません。unyou(https://unyou.media)に掲載されているBtoB企業のSNS事例でも、短期間で成果を出したケースだけでなく、地道な発信を継続して数か月後に採用応募や問い合わせにつながったケースが確認できます。自社の状況に近い業種の事例を参考にしながら、自社なりの継続可能なペースを見極めることが大切です。
まとめ
TikTokはすでに日本国内で月間4,200万人が利用するプラットフォームに成長しており(TikTok Japan公式発表、2025年11月)、BtoB企業にとっても採用ブランディングや専門性発信の場として無視できない存在になりつつあります。とはいえ、いきなり大きな成果を狙うのではなく、まずは目的とターゲットを明確にし、プロフィールを丁寧に設計し、最初の30日間は「継続できる型」を作ることに集中するのが失敗しないコツです。他社の事例を参考にしながら、自社に合った運用の形を見つけていきましょう。
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