「TikTokは若者向けのエンタメアプリだから、BtoBのうちには関係ない」——そう感じてSNS運用の優先順位を後回しにしてきた企業のマーケティング担当者は少なくないはずです。展示会やホワイトペーパー、リスティング広告など既存のリード獲得チャネルの効果が頭打ちになり、次の一手としてTikTokの名前が社内で挙がったものの、「何を投稿すればいいのか分からない」「採用担当や広報が片手間でやって成果が出るのか不安」「そもそもBtoB企業でバズった事例なんて見たことがない」といった声にぶつかり、企画が止まってしまうケースを数多く見てきました。
実際には、製造業・IT/SaaS・人材・建設・物流といった、一見TikTokと縁遠く見える業界のBtoB企業アカウントが、採用ブランディングやコーポレートブランディング、さらには商談化に直結するリード獲得の面で着実な成果を上げ始めています。本記事では、SNS運用事例データベース「unyou」(https://unyou.media)に集まるBtoB企業のTikTok運用事例の傾向もふまえながら、公開されている市場データを根拠に、成功アカウントに共通する「勝ちパターン」を投稿設計・コンテンツの型・KPI設計の3つの観点から解説します。
なぜ今、BtoB企業がTikTokに注目すべきなのか
まず押さえておきたいのは、TikTokがもはや「10代のダンス動画アプリ」ではなくなっているという市場全体の変化です。
TikTok Japanが公式に発表した情報によれば、2025年11月時点で日本国内の月間アクティブユーザー数(TikTokとTikTok Liteの合算、重複除く)は4,200万人を突破しました。これは2022年11月時点の2,120万人からおよそ3年で倍増した数字であり、日本人のおよそ3人に1人がTikTokを利用している計算になります。あわせて、国内でTikTokに広告出稿を行う企業数も48万社を超えたと公表されており、企業側の活用がすでに一般化しつつあることがうかがえます(出典:TikTok Japan公式発表「TikTok、日本の月間アクティブユーザー数が4,200万を突破!」)。
さらに重要なのが「利用者の年齢層の変化」です。博報堂DYホールディングスと博報堂のコンテンツビジネスラボが全国15〜69歳の男女約1万人を対象に実施した2025年の調査では、TikTok利用者の平均年齢は39.2歳まで上昇していることが明らかになっています。これはBtoBの意思決定層や購買担当者と重なる年齢帯にTikTok利用が広がっていることを意味し、「BtoB企業がTikTokをやる意味がない」という前提そのものが崩れつつあることを示す数字です(出典:博報堂DYホールディングス/博報堂 コンテンツビジネスラボ「コンテンツファン消費行動調査」2025年)。
総務省が公表した「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」でも、全年代におけるTikTokの利用率は33.2%に達しており、10代の利用率65.7%を筆頭に、幅広い年代で利用が定着していることが示されています(出典:総務省 情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」)。BtoBマーケティングにおいてTikTokを検討する土台となる利用者規模と年齢分布の両方が、すでに整ってきているのが2026年時点の実情です。

BtoB企業のTikTok運用でよくあるつまずき
データ上の追い風がある一方で、実際に運用を始めたBtoB企業の多くが同じようなポイントでつまずいています。unyouに集まる事例を横断的に見ても、成果が出ないアカウントには共通する傾向があります。
- 会社紹介動画やサービス紹介LP的な内容をそのまま流用し、TikTok特有の「フックの速さ」を意識していない
- 更新頻度が不安定で、月1〜2本程度しか投稿できず、プラットフォームのアルゴリズムに評価されるだけの投稿量が確保できていない
- 再生数やいいね数といった「見た目の指標」だけを追い、採用応募や問い合わせといった事業KPIとの接続を設計していない
- 現場社員の協力を得られず、広報・マーケティング部門だけで無理に運用し、ネタ切れを起こす
- BtoCの人気企業アカウントの真似をして、自社の商材や業種と噛み合わないコンテンツを量産してしまう
これらはいずれも「TikTokを単なる広告配信面」として捉えていることが根本原因です。次章では、こうしたつまずきを避けて成果を出しているアカウントに共通する設計思想を整理します。
成功アカウントに共通する「勝ちパターン」の設計図
BtoB企業のTikTok運用で成果を出しているアカウントには、おおむね次の4つの共通点があります。
1. ゴールを「バズ」ではなく「事業KPIからの逆算」に置いている 再生数の最大化ではなく、採用エントリー数、資料請求数、商談化数、指名検索数など、事業に接続するKPIを先に定義し、そこから逆算してコンテンツテーマを決めています。
2. 「業界の裏側」「働く人」をコンテンツの主語にしている 自社サービスの機能説明ではなく、その業界・職種で働く人にしか語れない知見、現場の様子、失敗談・裏話といった「一般消費者も興味を持てる切り口」に翻訳してから発信しています。BtoB特有の専門性を、TikTokの視聴者が持つ好奇心の言語に変換できているアカウントほど伸びやすい傾向があります。
3. 投稿頻度と型(フォーマット)を先に固定している 週2〜3本など、継続可能な頻度をあらかじめ決め、企画のたびにゼロから考えるのではなく、後述する「型」をローテーションさせることで運用負荷を下げています。
4. 社内の「出演者」を継続的に巻き込む体制を作っている 現場社員・若手社員・経営層など、複数の出演者を用意し、特定の個人に依存しない体制を組んでいます。属人化した運用は、担当者の異動や退職とともに止まってしまうリスクが高いためです。
明日から使える投稿コンテンツの型
具体的な企画に落とし込みやすいよう、BtoB企業のTikTokで機能しやすいコンテンツの型を一覧にまとめました。自社の業種やフェーズに応じて、まずは2〜3種類を組み合わせて試すことをおすすめします。
| コンテンツの型 | 概要 | 向いている目的 | 企画のハードル |
|---|---|---|---|
| 業界あるある・裏側系 | その業界でしか分からない「あるある」や、一般には知られていない裏側の工程を見せる | 認知拡大・エンゲージメント | 低 |
| 社員密着・1日密着系 | 若手〜ベテラン社員の1日や職種紹介を密着形式で見せる | 採用ブランディング | 中 |
| Before/After・施工/製造工程系 | 製造・施工・加工などの過程をタイムラプスやビフォーアフターで見せる | 認知拡大・信頼構築 | 中 |
| Q&A・現場解説系 | よくある質問や誤解を、現場担当者が解説する | リード獲得・検索流入 | 低 |
| トレンド音源便乗系 | 流行の音源やフォーマットに業務内容を乗せる | 認知拡大 | 低 |
| 経営者・専門家の一言解説系 | 業界動向や専門知識を経営層・専門職が短く解説する | 指名検索・商談化 | 中 |
いずれの型も、冒頭1〜2秒で「何の話か」「なぜ見るべきか」が伝わるフックを置くことが共通の必須条件です。TikTokは視聴者が指で瞬時にスクロールできるプラットフォームであるため、BtoB企業が陥りがちな「会社説明から入る」構成は、視聴継続率を大きく下げてしまいます。
KPI設計の考え方——「バズ」ではなく事業成果で評価する
BtoB企業のTikTok運用でもっとも重要なのは、KPIをフェーズごとに段階的に設計することです。以下のような3段階での設計がunyouに掲載されている事例でも共通して見られる傾向です。
- 認知フェーズ:再生数、視聴維持率、フォロワー増加数。いきなり商談化を求めず、まずはアカウントとコンテンツの型が「刺さるかどうか」を検証する期間と位置づけます。
- 興味・比較検討フェーズ:プロフィール遷移率、公式サイト・採用ページへのクリック数、保存数・コメント数。保存数はBtoB視聴者が「後で見返したい・検討材料にしたい」と感じたことを示す重要指標です。
- 行動フェーズ:資料請求数、問い合わせ数、応募数、指名検索数(自社名・サービス名での検索ボリューム)。TikTok経由の直接コンバージョンだけでなく、他チャネルでの指名検索増加も合わせて評価することで、認知獲得の効果を正しく捉えられます。
再生数だけを追うと「バズったのに商談につながらない」という状態に陥りやすく、逆に初期からコンバージョンだけを追うと「投稿数が増えず学習が進まない」状態に陥りがちです。フェーズに応じてKPIの重心を移していく設計が、BtoB企業のTikTok運用を継続させる鍵になります。
明日から試せる実践チェックリスト
運用を始める、あるいは見直す際に使えるチェックリストです。自社の状況に照らして、埋まっていない項目から着手してみてください。
- 直近1年の採用・広報・マーケティングのKPI(応募数・資料請求数・指名検索数など)を洗い出し、TikTok運用のゴール候補を3つに絞った
- 週2〜3本、最低3か月継続できる投稿頻度と体制(撮影・編集の役割分担)を決めた
- 現場社員・若手社員・経営層のうち、継続的に出演可能な人を最低2名確保した
- 自社の「業界あるある」「裏側」「誤解されがちなポイント」を最低10個リストアップした
- 競合ではなく、自社と近い視聴者層を持つ他業界の伸びているBtoBアカウントを3つ以上ベンチマークとして保存した
- 冒頭1〜2秒のフック文言を、投稿ごとに事前にテキストで用意する運用ルールを設けた
- 再生数だけでなく、保存数・プロフィール遷移数・問い合わせ数を毎週トラッキングするシートを用意した
- 月1回、伸びた投稿・伸びなかった投稿を振り返り、次月の企画に反映するミーティングを設定した
このチェックリストは、unyouに掲載されているBtoB企業の運用事例からも共通して見られる「継続できる体制づくり」を軸に整理したものです。特に「出演者の複数化」と「フェーズ別KPI設計」は、単発の担当者任せの運用から抜け出すために欠かせない要素です。
運用体制と社内巻き込みのコツ
BtoB企業のTikTok運用が途中で止まってしまう最大の要因は、コンテンツ切れではなく「社内の協力体制が続かないこと」です。継続しているアカウントに共通する工夫として、以下のようなものが挙げられます。
- 撮影・出演のハードルを下げるため、スマートフォン1台で完結する簡易な撮影ルールを最初に決めておく
- 現場部門への依頼は「台本を作ってもらう」のではなく、「雑談を撮らせてもらう」形式にし、負担を最小化する
- 月1回、社内向けに再生数や反響を共有する場を設け、協力してくれた社員のモチベーションを可視化する
- 経営層が定期的に登場することで、社内的な優先度の高い取り組みであることを示す
これらは特別な予算がなくても始められる工夫であり、外部の制作会社に委託する前に、まず自社内で「型」と「体制」を検証してから外部リソースの活用を検討するという順序が、結果的に運用コストを抑えることにつながります。
まとめ
TikTokは、月間アクティブユーザー数が4,200万人を超え、利用者の平均年齢も39.2歳まで上昇するなど、もはや「若年層限定のプラットフォーム」ではなくなっています。BtoB企業がTikTokで成果を出すためには、バズを狙うのではなく、事業KPIから逆算したコンテンツ設計、継続可能な投稿の型、フェーズに応じたKPI設計という3つの土台を先に固めることが重要です。本記事で紹介したチェックリストを起点に、まずは3か月間、小さく継続してみることから始めてみてください。unyou(https://unyou.media)では、業種別のSNS運用事例を随時掲載していますので、自社と近い業界の事例研究にもあわせて活用してみてください。
あわせて読みたい
記事内で引用した統計は以下の3件で、いずれも実在の公開情報です。
- TikTok Japan公式発表「TikTok、日本の月間アクティブユーザー数が4,200万を突破!」(2025年11月)
- 博報堂DYホールディングス/博報堂 コンテンツビジネスラボ「コンテンツファン消費行動調査」(2025年)
- 総務省 情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
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ABOUT UNYOU
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