「うちも綺麗な写真は投稿しているのに、なぜかフォロワーが増えない」「投稿を重ねるほど、アカウントの世界観がバラバラになっていく気がする」——美容・コスメ業界のSNS担当者から、こうした悩みをよく聞きます。特に単品の商品訴求を続けているうちに、気づけば「セール告知の羅列」のようなアカウントになってしまい、ブランドらしさが伝わらなくなるケースは少なくありません。
そこで今回は、国内発のオーガニックコスメブランド「THREE(スリー)」の公式Instagram運用を、公開されている情報をもとに分析します。THREEは「なんとなく世界観がある」で終わらせず、投稿の型・世界観のつくり方・フォロワーとの関係構築の設計まで、他業種・他店舗にも応用できる具体的なヒントを数多く持っています。フォロワー数やエンゲージメント率といった裏付けの取れない数字は扱わず、公開情報から読み取れる「構造」に絞って解説します。
THREE(スリー)とはどんなブランドか 基本情報とブランド哲学
THREEは2009年に誕生した日本発のオーガニックコスメブランドです。公式サイトの「ABOUT THREE」では、ブランドの価値観として「NATURAL(自然への敬意)」「HONEST(人や社会への誠実さ)」「CREATIVE(自由でしなやかな創造性)」という3つの軸が掲げられており、ブランド名の由来にもなっています。スキンケアではオーガニックの精油や国産原料にこだわり、天然由来率の高さを訴求しつつも「100%自然由来」を無理に謳わず、自然の力と科学的なアプローチのバランスを重視している点も特徴です。
この「自然と科学のバランス」「心・からだ・肌のすべてに向き合う」という哲学は、そのままInstagramの投稿設計にも反映されています。単なる商品カタログではなく、ブランドの価値観そのものを伝えるメディアとしてアカウントが設計されている、という前提を押さえておくことが、この後の分析を理解するうえで重要です。

THREEのInstagramが「世界観がある」と言われる理由
THREE公式Instagram(@threecosmetics)のプロフィールには「FIND YOUR BALANCE|心・からだ・肌のすべてに。」という一文が掲げられています。これは単なるキャッチコピーではなく、投稿全体を貫くコンセプトとして機能しています。
具体的には、次のような設計思想が読み取れます。
- 商品単体の紹介で終わらせない:新作コスメの発売告知であっても、季節の移ろいや自然のモチーフ、心と身体のバランスといった抽象的なテーマと結びつけて構成されている
- トーン&マナーの統一:写真のトーン、余白の取り方、フォントの使い方などが投稿ごとにバラつかず、フィード全体で「ブランドの世界」を作っている
- ライフスタイル提案としての立ち位置:「効果・効能」を前面に出す訴求ではなく、感情や暮らし方に寄り添う編集方針を取っている
美容業界は薬機法の制約もあり、効果効能を直接的に訴求しづらい業種です。THREEはこの制約を逆手に取り、「効能ではなく体験・世界観で語る」という編集方針に振り切ることで、むしろブランドらしさを強く打ち出すことに成功していると分析できます。
投稿の型を分解する:THREEがやっている4つのフォーマット
世界観のあるアカウントは、感覚だけで作られているわけではありません。THREEの投稿を分解すると、いくつかの型(フォーマット)の組み合わせで成り立っていることが見えてきます。
- プロダクト単体のスタイリング写真:パッケージそのものを主役にした、余白の多いミニマルな構図
- 季節・自然モチーフとの組み合わせ:花、水、光といった自然要素と製品を組み合わせ、ブランドの「NATURAL」という価値観を視覚的に翻訳する投稿
- テクスチャー訴求:クリームやオイルの質感をクローズアップで見せ、使用感を写真・動画で間接的に伝える投稿
- ブランドストーリー・世界観訴求:新作の背景にあるコンセプトや、ものづくりへのこだわりを伝えるストーリーテリング型の投稿
この4つを一定のリズムで組み合わせることで、「毎回違う商品を紹介しているのに、フィード全体としては統一感がある」という状態を作り出しています。これは中小規模の店舗・企業アカウントでも、型さえ決めてしまえば再現可能な考え方です。
エンゲージメントを生む仕掛け:一方通行に見えて計算された設計
THREEのアカウントは、プロフィール欄でDM(ダイレクトメッセージ)への個別返信を行わない旨を明記しており、一見するとフォロワーとの双方向コミュニケーションに消極的に見えます。しかし、これは「エンゲージメントを放棄している」わけではなく、コミュニケーションのチャネルを絞り込む戦略だと捉えることができます。
代表的な仕掛けとして、統一されたブランドハッシュタグ(#threecosmetics)を活用したUGC(ユーザー生成コンテンツ)の収集が挙げられます。フォロワーがこのハッシュタグをつけて投稿した写真をブランド側が発見・活用できる導線を作ることで、DMでの個別対応をしなくても「ユーザーとの接点」を維持している点がポイントです。
問い合わせ対応や個別接客はブランド直営店・公式サイトなど別チャネルに委ね、Instagramは「世界観を伝え、憧れを醸成する場」として役割を明確に絞る。この役割分担の設計こそ、フォロワー対応に人手を割きにくい中小事業者にとって特に参考になる考え方です。
なぜ今、美容ブランドにとって世界観づくりが重要なのか(データで見る背景)
ここで、美容業界がSNS上の世界観づくりに投資する意味を、公開データから確認しておきます。
まず、総務省「令和6年版 情報通信白書」によると、インターネット利用目的のうち「SNS(無料通話機能を含む)の利用」の割合は全体で81.9%と、あらゆる利用目的の中で最も高い数値になっています。また同白書では、20代の利用率が90%超、30代が約85%、60代でも75%超に達しているというデータも示されており、SNSはもはや一部の年代だけのツールではなく、幅広い年代に浸透した生活インフラであることがわかります。
また、Instagramを運営するMeta社は2019年6月7日付の公式発表で、日本国内の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと明らかにしています(Meta公式ニュース「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」)。これ以降、Meta社は国内MAUの更新値を公式には発表していませんが、この発表時点ですでに国内で3,000万を超える規模のユーザーがいたという事実は、美容ブランドにとってInstagramが無視できない接点であり続けている根拠になります。
さらに、購買行動とInstagramの関係について、ホットリンク社の調査(PR TIMES掲載プレスリリース)では、Instagram利用者の約55%が「Instagramをきっかけに商品を購入・店舗に来店した経験がある」と回答しており、商品購入時に参考にする情報として「企業・インフルエンサーの投稿」が上位に挙がっていることが報告されています。これは、Instagramが単なる認知獲得の場ではなく、実際の購買行動に影響を与えるチャネルであることを示すデータです。
これらのデータを踏まえると、THREEのように「効能を直接語れない業種だからこそ、世界観と体験価値で購買意欲を高める」という戦略は、理にかなったアプローチだと言えます。
THREE流に学ぶ、自社アカウントに応用できる具体的ポイント
THREEの運用から抽出できる要素を、実務に落とし込みやすい形で整理すると、以下のようになります。
| THREEの設計要素 | 背景にある考え方 | 自社アカウントへの応用例 |
|---|---|---|
| トーン&マナーの統一 | フィード全体で「ブランドの世界」を作る | 使用するフィルター・色調・余白ルールを事前に決めて文書化する |
| 商品単体で語らない | 季節・自然・感情など抽象的なテーマと結びつける | 新商品投稿も「誰のどんな瞬間に寄り添うか」を一言添えて企画する |
| 投稿フォーマットの型化 | スタイリング写真/自然モチーフ/テクスチャー/ストーリーの4型を回す | 自社なりの2〜4フォーマットを決め、ローテーションで投稿計画を組む |
| ハッシュタグでUGC収集 | DM対応をせずとも顧客接点を維持できる | 覚えやすい統一ハッシュタグを1つ決め、店頭・パッケージ・投稿文で繰り返し告知する |
| チャネルの役割分担 | Instagramは「憧れの醸成」、接客・問い合わせは別チャネル | 予約・問い合わせ導線はプロフィールのリンクや公式サイトに集約する |
明日から試せる実践チェックリスト
分析を「わかった」で終わらせず、実際にアカウントへ反映するためのチェックリストです。
- 直近10投稿を並べて見返し、色味・構図・フォントに統一感があるか確認する
- 「商品名+価格」だけで終わっている投稿がないか、キャプションを見直す
- 自社らしい投稿フォーマットを2〜4つに絞り、名前をつけて社内で共有する(例:「使用感クローズアップ」「季節の一枚」など)
- 覚えやすい統一ハッシュタグを1つ決め、投稿・店頭・レシート等で告知する
- DM・コメント対応にどこまで工数を割けるか現状を棚卸しし、対応範囲を明文化する
- プロフィール欄の導線(予約・問い合わせ・ECへのリンク)が最新か確認する
- 月に1回、投稿を並べて「フィード全体で世界観が伝わるか」を第三者目線でチェックする
一度にすべてを変える必要はありません。まずは「直近投稿の並びを見返す」ことから始めるだけでも、改善点は見えてきます。
まとめ
THREEのInstagram運用は、派手なキャンペーンや裏技的なテクニックに頼るものではなく、「ブランド哲学を投稿フォーマットに落とし込み、一貫して積み重ねる」という地道な設計の積み重ねでした。商品単体で語らず季節や感情と結びつける構成、トーン&マナーの統一、ハッシュタグを軸にしたUGC活用、そしてInstagramと他チャネルとの役割分担——これらはいずれも、業種や規模を問わず応用できる考え方です。
総務省のデータが示すようにSNSは幅広い年代に浸透した生活インフラであり、購買行動調査が示すようにInstagramは実際の購入・来店に影響を与えるチャネルです。自社アカウントの「なんとなく」を「型」に変えていくことが、遠回りに見えて最も確実な一歩になります。
他の美容・コスメブランドや、異業種の運用事例をさらに知りたい方は、unyouの事例データベース(/cases)で同業種・類似業態の運用事例を検索し、自社に応用できるポイントを探してみてください。
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