「SNS担当になったものの、何を投稿すればいいのか分からない」「頑張って投稿しているのに、保存やコメントが増えない」——エンタメ施設や店舗のSNS運用を任されている方なら、一度はこの壁にぶつかったことがあるのではないでしょうか。特にBtoC・集客型のアカウントでは、単に商品やサービスを紹介するだけでは埋もれてしまい、「何を発信すれば"見てもらえる"のか」の答えが見えづらいという悩みをよく耳にします。
そこで本記事では、池袋・サンシャイン水族館のInstagram運用を題材に、なぜこのアカウントが多くのユーザーに支持されているのかを、公開情報とSNS運用の一般的な成功パターンから分解していきます。単なる「すごいですね」という感想で終わらせず、水族館という業種に限らず、他の企業・店舗のSNS担当者が明日から自分のアカウントに応用できる具体的なポイントまで落とし込みます。
なぜ「動物園・水族館系」アカウントはSNSで伸びやすいのか
まず前提として押さえておきたいのが、SNS上で動物・生き物コンテンツが強い理由です。総務省「令和7年版情報通信白書」によれば、2024年時点でのSNS全体の利用率は81.9%に達しており、X(旧Twitter)とInstagramは全年代平均で半数程度が利用、50代でも4割以上が利用するなど、幅広い世代にSNSが浸透しています(総務省「令和7年版 情報通信白書」)。つまり、水族館のようにファミリー層からシニア層まで幅広い来場者を持つ施設にとって、SNSは特定の若年層だけでなく、来場ターゲットのほぼ全世代にリーチできるチャネルになっているということです。
その上で、動物・生き物コンテンツには次のような構造的な強みがあります。
- 視覚的に完結する:文脈を説明しなくても、1枚の写真や数秒の動画だけで魅力が伝わる
- 感情を動かしやすい:「かわいい」「癒される」「面白い」といった感情は、言語や年齢の壁を越えて共有されやすい
- 無限にネタが生まれる:生き物は日々表情や行動が変わるため、コンテンツが枯渇しにくい
サンシャイン水族館のアカウントは、この「業種特性のアドバンテージ」を土台にしつつ、そこに明確な設計・工夫を重ねることで、単なる「かわいい動物アカウント」以上の存在感を作り上げています。次章から、その具体的な作り方を見ていきます。

サンシャイン水族館のInstagram運用|世界観づくりの基本方針
サンシャイン水族館を語る上で欠かせないのが、「天空のペンギン」に代表される展示そのものの強さです。2017年にリニューアルオープンした屋外エリア「天空のペンギン」は、都心のビル群を背景にケープペンギンが頭上を飛ぶように泳ぐ姿が見られる、世界初とされる展示形式です(池袋・サンシャイン水族館 公式サイト)。この「都会×生き物」というコントラストの強いビジュアルは、そのままSNSで拡散されやすい構図になっており、施設側が意図的に「切り取ったときに絵になる展示」を作っている好例といえます。
ここから読み取れるのは、SNS運用の巧拙は投稿の作り方だけでなく、そもそも「撮って共有したくなる現場・商品・空間」を設計段階からつくっているかどうかに大きく左右されるという点です。SNS担当者が投稿テクニックだけを磨いても、素材そのものに「共有したくなる要素」がなければ限界があります。
また、サンシャイン水族館は生き物紹介にとどまらず、絶滅危惧種であるケープペンギンの保全活動にも力を入れています。IUCN(国際自然保護連合)は2024年10月、ケープペンギンを絶滅の危機が極めて高い「絶滅危惧IA類(CR)」に指定しました(株式会社サンシャインシティ ニュースリリース)。これを受け、同館は環境保全教育団体と連携したクラウドファンディングへの協力や、「世界ペンギンの日」に合わせたイベント開催、寄付を伴う啓発活動を継続的に発信しています(池袋・サンシャイン水族館 公式サイト お知らせ)。
これは単なる「かわいい」だけでなく、「知る」「応援したくなる」という感情の層を加える設計です。エンタメ施設であっても、社会的な意義のある活動を発信することで、フォローする理由が「暇つぶし」から「応援」に変わり、関係性がより強くなります。
投稿を「型」で分解する:伸びているコンテンツパターン
公開されている投稿傾向やSNS運用の一般的なセオリーを踏まえると、水族館・動物園系アカウントの投稿は、大きく次のような「型」に整理できます。自施設に置き換えて、どの型が使えそうか確認してみてください。
| 投稿の型 | 主な目的 | 応用できる業種・店舗の例 |
|---|---|---|
| クローズアップ・造形美型(生き物の質感や表情を大写しにする) | 保存・いいねの獲得、世界観の統一 | 飲食店の食材アップ、アパレルの生地・縫製アップ |
| ギャップ・意外性型(「都会×生き物」など対比構造) | シェア・拡散、話題化 | 老舗×新商品、伝統工芸×最新技術などの対比訴求 |
| ストーリー・成長型(赤ちゃん動物の成長記録など) | 継続フォロー動機、リピート閲覧 | 新人スタッフの成長記録、開業・改装の記録 |
| 行動観察・くすっと型(生き物の面白い仕草) | コメント・保存の誘発、親近感醸成 | 店舗スタッフの裏側、失敗談・日常の一コマ |
| 社会的意義型(保全活動・寄付・啓発) | ブランドへの共感、ファン化 | サステナブル調達、地域貢献活動の発信 |
| イベント・季節限定型(ペンギンの日など) | 来館・来店動機の創出、UGC誘発 | 季節メニュー、期間限定キャンペーン |
重要なのは、どれか1つの型に頼るのではなく、複数の型を組み合わせて投稿カレンダーを組んでいる点です。「癒し」だけ、「面白さ」だけの単調な投稿が続くとフォロワーは飽きてしまいますが、型を回すことで飽きられにくいアカウントになります。
エンゲージメントを生む仕掛け:コメント・保存・シェアを誘う工夫
投稿の「型」に加えて、エンゲージメントを高めるための仕掛けも重要です。ここで参考になるのが、株式会社SAKIYOMIがPR TIMESで公開した、10〜20代を対象にした「Instagram企業アカウントのフォロー状況」に関する調査です。この調査では、企業アカウントをフォローする最も多いきっかけは「いってみたい」「買ってみたい」「食べてみたい」と感情を動かされたことで、各ジャンルとも4割以上のユーザーが回答したと報告されています。次いで「有益な情報を得られるから」が約3割で、「アカウントの統一感」は4〜15%にとどまりました(株式会社SAKIYOMI プレスリリース/PR TIMES掲載)。
つまり、デザインの統一感よりも先に、「感情が動くかどうか」がフォローの決め手になっているということです。サンシャイン水族館のようなアカウントは、まさにこの「感情を動かす」設計に長けています。具体的には次のような工夫が見て取れます。
- キャプションで問いかける:「これ何をしているところでしょう?」のように、コメントしたくなる余白を残す
- シリーズ化する:特定の生き物や企画を連続して取り上げ、「続きが気になる」状態を作る
- リアクションしやすい題材を選ぶ:驚き・癒し・発見など、ひとことコメントしやすい感情を喚起する投稿を混ぜる
- 保存したくなる情報を添える:生態や豆知識など、後で見返したくなる要素を加える
これらは水族館に限らず、どんな業種のアカウントでも応用できる普遍的な仕掛けです。
複数SNSでの役割分担と導線設計
サンシャイン水族館は、Instagramだけでなく、X(旧Twitter)や公式サイトのお知らせなど複数のチャネルを運用しています(池袋・サンシャインシティ公式サイト ソーシャルメディアアカウント一覧)。Instagram公式(Meta)は2019年6月、国内の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと発表しており(Meta「Instagramについて」2019年6月発表)、その後も国内利用者数の拡大が業界内で報告され続けています。この規模のプラットフォームで単体の投稿に依存するのではなく、複数チャネルで役割を分けることは、リスク分散の観点からも有効です。
一般的に、水族館・エンタメ施設がSNSを複数運用する際は、次のような役割分担が機能しやすいとされています。
- Instagram:ビジュアル訴求・世界観づくり・保存されるストック型コンテンツ
- X(旧Twitter):速報性のある告知、リアルタイムのリアクション、拡散狙いのカジュアルな発信
- 公式サイト/お知らせ:クラウドファンディングや保全活動など、正確性が求められる情報の一次情報源
- リール・ショート動画:じっくり見せたい生態や展示の魅力を動画で補完
この「一次情報はサイト、拡散はX、世界観はInstagram」という役割分担があるからこそ、それぞれのSNSで無理に同じ内容を発信する必要がなく、チャネルごとに最適化された投稿ができています。
自社アカウントに応用するための実践チェックリスト
ここまでの分解を踏まえて、明日から自分のアカウントで試せるチェックリストにまとめます。
投稿設計の見直し
- 直近10投稿を「型」で分類してみる(偏りがないか確認)
- 「クローズアップ」「ギャップ」「ストーリー」「くすっと」「社会的意義」「季節限定」のうち、使えていない型を1つ選んで次回投稿に取り入れる
- キャプションに「問いかけ」を1つ入れる(コメントの呼び水にする)
現場・商品の見直し
- 自社の商品・空間・スタッフの中に「切り取ったら絵になる瞬間」がないか洗い出す
- なければ、撮影用に小さな工夫(配置・照明・見せ方)を1つ加えてみる
ストーリー・意義の見直し
- 自社の取り組みの中に「応援したくなる」要素(環境配慮・地域貢献・職人技など)がないか棚卸しする
- あれば、単発ではなく継続的な発信企画として設計し直す
運用体制の見直し
- 各SNSチャネルの役割(速報・世界観・一次情報)が明確になっているか確認する
- 同じ内容をすべてのチャネルにコピー投稿していないか見直す
これらは特別な予算や大がかりな体制がなくても、既存の投稿運用の中で今日から着手できる項目です。
よくあるつまずきポイントと対処法
最後に、この分析を自社に応用しようとした際によく起きるつまずきについても触れておきます。
1つ目は、「素材がないから真似できない」という思い込みです。しかし前述のとおり、重要なのは特別な素材そのものより「切り取り方」です。日常の一コマでも、構図や瞬間の選び方次第で感情を動かすコンテンツになり得ます。
2つ目は、「バズった投稿の表面だけ真似してしまう」ことです。単発の話題づくりだけを模倣しても、世界観やストーリー性が伴わなければ一過性で終わり、フォローの定着にはつながりにくくなります。サンシャイン水族館の例でも、「天空のペンギン」という単体の話題性だけでなく、保全活動やシリーズ発信によって継続的な関係性を築いている点が本質です。
3つ目は、「全チャネルで同じ運用をしてしまう」ことです。前章で触れたように、チャネルごとの役割を分けないと、担当者の工数だけが増えて成果が薄まってしまいます。
まとめ
サンシャイン水族館のInstagram運用から見えてくるのは、特別な裏技ではなく、「共有したくなる素材づくり」「感情を動かす投稿の型」「社会的意義による関係性の深化」「チャネルごとの役割分担」という、地道だが再現性のある設計の積み重ねです。総務省の統計が示すとおりSNSはすでに全世代に浸透したインフラであり、Instagramも国内で大規模なユーザー基盤を持つプラットフォームです。だからこそ、業種を問わず「何を、どんな型で、なぜ発信するのか」を言語化できているアカウントが強くなります。まずは自社の直近の投稿を型で仕分けするところから始めてみてください。
他業種のリアルな運用事例をもっと知りたい方は、SNS運用事例データベース「unyou」(https://unyou.media)の事例一覧(/cases)もあわせてご覧ください。エンタメ・レジャー業界をはじめ、様々な業種のSNS運用の型を比較しながら学ぶことができます。
あわせて読みたい
ABOUT UNYOU
unyou は、SNS運用の「成功事例」が集まるデータベースです
Instagram・X・TikTok で実際に成果を出しているアカウントを、業種 × トンマナ × プラットフォームで検索・比較できます。掲載しているのは、世の中に公開されている実在アカウントの分析 600件超。 「自社の業種で何が伸びているのか」を、感覚ではなくデータで確かめられます。
無料相談
自社に合ったSNS運用、プロに相談してみませんか?
「何から始めればいいかわからない」「今の運用が正しいか不安」「外注すべきか迷っている」 ——そんなお悩みに、unyouが蓄積した実運用データをもとにお答えします。 相談は無料、しつこい営業はありません。
無料でSNS運用を相談する