福岡市(Fukuoka City)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/29
「自治体アカウントなんて予算も体制も違うから、うちの会社やお店の参考にはならない」——そう感じてSNS運用の事例研究を後回しにしていないでしょうか。実際には、フォロワーを増やせずに悩んでいる企業・店舗アカウントの担当者が抱える課題は、自治体の広報担当者が抱える課題とかなり似ています。「発信するネタが尽きる」「複数の部署・スタッフが関わって世界観が統一できない」「フォロワーに一方的に情報を届けるだけで参加してもらえない」——これらはどちらの現場でも共通の悩みです。
そこで今回は、福岡市が運用する公式Instagramアカウント群を題材に、公開情報をもとに運用の設計思想を分解していきます。フォロワー数やエンゲージメント率といった裏付けの取れない数字は扱わず、あくまで「誰でも確認できる事実」と「そこから読み取れる型」にフォーカスします。SNS運用事例データベース「unyou」の編集部として、自治体という制約の多い組織がどう工夫しているかを、企業・店舗アカウントに応用できる形に落とし込んでいきます。
福岡市が運用するInstagramアカウントの全体像
福岡市の公式サイト「ソーシャルメディア一覧(Instagram)」を見ると分かるとおり、福岡市は単一のアカウントですべてを発信しているわけではありません。目的や対象読者ごとにアカウントを分けて運用しているのが大きな特徴です。確認できる主なアカウントを整理すると、次のようになります。
| アカウント(運用主体) | 主な目的 | 投稿ジャンルの傾向 |
|---|---|---|
| 【公式】福岡市-広報戦略室(市長室広報戦略室) | 市政・イベント・お知らせの発信 | 市の取り組み、季節のイベント、市長関連情報など |
| 福岡360°(経済観光文化局観光マーケティング課) | 観光プロモーション | 市内の観光スポット、グルメ、景観写真 |
| ユニバーサル都市・福岡(@universal_toshi_fukuoka) | ユニバーサルデザインの普及啓発 | 市民が見つけた「やさしさ」のある場所やサービス |
| 福岡市備蓄促進ウィーク(@fukuokacity_bichikuweek) | 防災・備蓄の啓発 | 防災グッズ、備蓄品の投稿キャンペーン |
| 区公式アカウント(例:西区 @f_nishistagram) | 区単位の地域情報発信 | エリア密着のイベント・スポット情報 |
一つのアカウントに「市政報告」「観光PR」「防災啓発」「区の話題」を全部詰め込むのではなく、目的ごとにアカウントを分けている。この設計自体が、企業アカウントの運用改善に直結するヒントになります。

なぜこの運用が参考になるのか(伸びている理由を分解する)
自治体のSNS運用は、担当者の異動や複数部署の関与によって「投稿の温度感がバラバラになる」失敗が起きやすい領域です。福岡市の運用から読み取れる工夫は、大きく3つに整理できます。
1つ目は、アカウントごとに「誰に何を届けるか」が明確に切り分けられている点です。 観光情報を求めるフォロワーと、防災情報を求めるフォロワーでは、フォローする動機がまったく異なります。これを1つのアカウントにまとめてしまうと、どちらの層にとっても「自分向けではない投稿」が混ざり、フォロー解除やミュートの原因になります。
2つ目は、行政からの一方的な発信だけに頼らず、市民参加型のコンテンツ設計を取り入れている点です。 後述するフォトコンテストやハッシュタグキャンペーンのように、「投稿してもらう」仕組みを継続的に用意することで、運用側が毎回ゼロから撮影・企画をしなくても、コンテンツのネタ切れを防いでいます。
3つ目は、区役所単位・テーマ単位まで運用が分散されていることです。 全市を1つのアカウントでカバーしようとすると、投稿できる情報の解像度がどうしても粗くなります。区単位で運用することで、より地域密着度の高い、フォロワーにとって「自分ごと」として見てもらえる情報発信が可能になっています。
統計から見る、Instagram運用がなお重要な理由
「うちの業種・地域でもInstagram運用に力を入れる意味はあるのか」という疑問を持つ担当者は多いはずです。この点について、公的機関や公式発表のデータを確認しておきます。
まず、総務省「令和7年版情報通信白書」によれば、SNS全体の利用は世代を問わず拡大を続けており、代表的なSNSであるLINEの個人利用率は2014年の55.1%から2024年には94.9%まで伸び、60代に限っても2014年の11.3%から2024年には91.1%まで急伸しています。同白書では、X(旧Twitter)やInstagramについても2024年時点で全体のおよそ半数が利用し、50代でも4割以上が利用するなど、若年層だけのツールではなくなっていることが示されています(出典:総務省「令和7年版情報通信白書」)。
次に、Instagramを提供するMeta(当時のFacebook Japan)は2019年6月7日、日本国内の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したことを公式に発表しています(2019年3月時点のデータ、出典:Meta〈Facebook Japan〉公式発表)。これ以降、Meta側から国内MAUの正式な更新発表は行われていないため、最新の正確な数値を断定することはできませんが、少なくとも公式発表ベースで「数千万規模の国内アクティブアカウントが存在する」ことは事実として押さえておく必要があります。
さらに、SNSマーケティング業界でよく参照されるガイアックス「SNSラボ」やcomnicoなどの調査系メディアも、性別・年齢層別のSNS利用動向を継続的に集計・公開しており、Instagramが20〜40代を中心に高いリーチ力を持つプラットフォームであると位置づけています(出典:株式会社ガイアックス「性別・年齢別 SNSユーザー数」まとめ記事等)。
これらの事実から言えるのは、「地域や業種を問わず、Instagramは無視できない生活インフラの一部になっている」ということです。自治体が複数アカウントを分けてまで運用に投資している背景にも、この利用者基盤の広がりがあります。
福岡市に学ぶ「投稿の型」とコンテンツ設計
福岡市が公開している情報からは、単発の投稿だけでなく「仕組み化されたキャンペーン」がいくつも確認できます。
- フォトコンテスト型(2016年実施):福岡市の魅力を伝える写真をハッシュタグ付きで投稿してもらい、審査員の主観ではなく「いいね!」の数でグランプリ・優秀賞を決定する方式を採用。応募回数の制限を設けなかったことで投稿数を積み上げ、結果的にハッシュタグ経由での市の魅力発信量を増やしています。
- ユニバーサル都市・福岡キャンペーン:市内で見つけたユニバーサルデザインや「やさしさ」を感じた場所・サービスの写真を、指定ハッシュタグを付けて投稿してもらう企画。公式アカウントのフォロー+ハッシュタグ投稿を応募条件にし、抽選でギフト券を提供する設計になっています(出典:福岡市公式サイト「『ユニバーサル都市・福岡』インスタグラムの投稿キャンペーンについて」)。
- 備蓄促進ウィーク投稿キャンペーン:防災・備蓄に関する写真をダイレクトメッセージやメールで事務局に送ると、運営側が代理でアカウントに投稿する仕組みを採用。SNSに不慣れな市民でも参加しやすいよう、投稿のハードル自体を下げているのが特徴です(出典:福岡市公式サイト「『備蓄促進ウィーク』Instagram投稿キャンペーンを実施します」)。
これらに共通するのは、「行政が発信する」から「市民が参加して一緒につくる」への転換です。企業・店舗アカウントでも、お客様の投稿を紹介する、ハッシュタグキャンペーンで写真を集める、といった形で同じ構造を再現できます。
企業・店舗アカウントが今日から真似できるポイント
福岡市の事例を、自社・自店のアカウント運用に落とし込むなら、次のようなアクションに変換できます。
- アカウントの目的を1つに絞る、あるいは目的ごとにアカウントを分ける判断をする。「採用広報」「商品PR」「店舗のキャンペーン告知」を1つのアカウントに混在させていないか、まず棚卸しする。
- フォロワーに投稿してもらう仕掛けを1つ用意する。指定ハッシュタグでの投稿を呼びかける、来店・購入した人の投稿を公式アカウントで紹介する、など小さく始められる。
- 参加のハードルを下げる代替手段を用意する。福岡市の備蓄促進ウィークのように、DMやメールで受け付けて運営側が代理投稿する形にすれば、Instagramに不慣れな層も取り込める。
- エリア・拠点ごとに情報の粒度を変える。複数店舗・複数拠点を持つ場合、全店舗まとめての発信ではなく、店舗単位のアカウントや投稿シリーズを検討する。
- 運用ルールを文書化しておく。福岡市は「福岡360°」について運用ポリシーを公開資料として整備しています。担当者が変わっても世界観がぶれないよう、投稿トーンやNG表現を簡単なルールにまとめておく。
実践チェックリスト:明日から着手できる項目
- 自社アカウントの投稿を直近20件見返し、「誰に向けた投稿か」が1投稿ごとに説明できるか確認する
- フォロワーやお客様の投稿を紹介した実績が直近3か月であるか棚卸しする
- ハッシュタグキャンペーンやUGC企画を、次の四半期に1回は実施できるか検討する
- 複数拠点・複数部署が関わる場合、投稿トーンのルールが文書化されているか確認する
- SNSに不慣れな顧客・関係者でも参加できる投稿代行・簡易応募の仕組みがあるか検討する
- 直近の総務省統計など公的データを踏まえ、自社のターゲット年代におけるInstagram利用状況を改めて確認する
自治体運用ならではの注意点と、企業への示唆
自治体アカウントには、企業以上に厳格な運用ポリシーが存在します。福岡市も観光アカウント「福岡360°」について運用ポリシーの文書を公開しており、投稿内容や著作権、個人情報の扱いについて明確な基準を設けています。これは行政という立場上の制約ですが、企業・店舗にとっても学べる姿勢です。特にUGC企画では、投稿者の権利処理や景品表示に関わるルールを事前に整理しておかないと、後からトラブルになりやすい領域です。キャンペーンを設計する際は、応募条件・権利の扱い・当選連絡方法までを事前に文書化しておくことをおすすめします。
まとめ
福岡市のInstagram運用から見えてくるのは、派手な演出やバズを狙ったテクニックではなく、「目的ごとにアカウントを分ける」「市民に参加してもらう仕組みをつくる」「参加のハードルを下げる」という、地道だが再現性の高い設計です。これらは自治体特有のものではなく、企業や店舗のアカウント運用にもそのまま応用できる考え方です。まずは自社アカウントの目的を棚卸しし、フォロワーが「参加できる」余地をひとつ作ることから始めてみてください。
他の自治体・公共機関や同業種のSNS運用事例をさらに知りたい方は、unyouの事例データベース(https://unyou.media/cases)もあわせてご覧ください。業種・目的別に運用のポイントを比較できます。
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