「うちの企業アカウント、なぜか伸びない」その悩み、運用の型を知らないだけかもしれません
企業のSNS担当者から最も多く聞く悩みは、「投稿を続けているのにフォロワーが増えない」「エンゲージメントが上がらない」「何を投稿すればいいのか毎回悩む」というものです。特に金融・保険業界は、商材の性質上どうしても発信内容が硬くなりがちで、「かたい情報をどうやって親しみやすく伝えるか」という壁にぶつかりやすい業界でもあります。
そんな中、クレジットカードという一見地味なジャンルでありながら、Instagramで着実にファンを増やしてきたのが「楽天カード」の公式アカウント(@rakutencard_official)です。本記事では、公開されている情報とWeb上のデータをもとに、このアカウントがなぜ支持されているのか、投稿の型や運用の工夫を分解し、業種を問わず応用できるポイントに落とし込んでいきます。確証のないフォロワー数やエンゲージメント率の断定は避け、事実として確認できる情報のみを扱います。

楽天カード公式Instagramの基本情報
まず前提として、このアカウントの成り立ちを整理しておきます。楽天カード公式Instagram(@rakutencard_official)は2021年9月6日に開設されました。運用の始まりが特徴的で、note「Rakuten Card Designs」に掲載された社内インタビュー記事によると、2020年度新卒入社の社員数名が「公式Instagramを作りたい」と発案したことがきっかけで立ち上がったアカウントだといいます。その後、2021年度新卒入社のメンバーも運用チームに加わり、若手社員が中心となって企画・投稿を担っている体制が公開されています(出典:note「Rakuten Card Designs」『新卒の発案で公式Instagramを開設。新入社員も活躍できる編成部の魅力』)。
同記事では、アカウント開設を記念したクイズキャンペーンや「楽天カードからの挑戦状」といったゲーム性のある企画を実施したことで、投稿開始から約3カ月で5,000人、約半年で2.6万人以上のフォロワーを獲得したという運用初期の実績も紹介されています。あわせて、現在は情報発信が一方通行になりがちという課題認識のもと、アンケート機能などを使った双方向コミュニケーションを増やしていきたいという今後の運用方針も語られています。
大企業の金融系アカウントであっても、立ち上げは「新卒社員の発案」という小さな起点から始まっている点は、これから自社アカウントを育てたい担当者にとって勇気づけられる事実ではないでしょうか。
なぜ支持されているのか:かたい商材を「生活情報」に翻訳する視点
楽天カードのアカウント運用から読み取れる最大の工夫は、「クレジットカードの説明」をそのまま発信するのではなく、「お得な生活情報」というフレームに翻訳している点です。プロフィール文でも「楽天カードの便利でお得な情報を発信中」と明記されており、金融商品の機能訴求ではなく、生活者にとってのメリットを主語にした発信スタンスが一貫しています。
これは金融・保険業界のアカウントに限らず、専門性が高く硬くなりがちな業種すべてに応用できる視点です。「自社の商品・サービスを説明する」のではなく、「フォロワーの生活や悩みがどう良くなるか」を主語に置き換えるだけで、投稿の見え方は大きく変わります。BtoCの金融アカウントがこの視点転換に成功している事例として、他業種のSNS担当者にとっても参考になるポイントです。
投稿の型を分解する:キャンペーン・お得情報・企画コンテンツ
公開情報から確認できる楽天カードのInstagram運用は、大きく次のような投稿の型に分解できます。
- キャンペーン告知型:ポイント還元やキャンペーン情報など、フォロワーの実利につながる投稿。公式サイトのキャンペーンページ(rakuten-card.co.jp/campaign/)とも連動し、Instagramを情報の入口として機能させている。
- クイズ・参加型企画:アカウント開設記念で実施された「公式インスタグラムクイズ」のように、正解者にプレゼントが当たる形式の投稿。フィードを眺めるだけの受動的な体験から、参加する体験へと変える設計。
- ゲーム性のある連載企画:「楽天カードからの挑戦状」のように、探す・解く・参加するといった能動的なアクションを促す企画。単発ではなく連載形式にすることで、フォロワーが次の投稿を待つ動機を作っている。
この3つの型に共通するのは、「情報を受け取るだけ」で終わらせず、フォロワーに何らかの行動(保存する・答える・参加する)を促す設計になっている点です。情報発信型のアカウントが陥りがちな「フィードを流し見されて終わる」状態を避けるための、具体的な工夫といえます。
双方向コミュニケーションへの意識的なシフト
前述のnote記事では、運用チーム自身が「現状は楽天カードからフォロワーへの一方通行のコンテンツが多い」という課題を明言し、Instagramのアンケート機能(ストーリーズのスタンプ機能)を活用した双方向コミュニケーションを増やしていく方針を示しています。
これは、多くの企業アカウントが見落としがちなポイントです。フィード投稿は「発信」には強い一方、双方向性という点ではストーリーズの投票・質問箱・クイズスタンプの方が圧倒的に手軽に実装できます。楽天カードのように、運用チーム自らが「一方通行になっていないか」を定期的に振り返る姿勢そのものが、アカウントを継続的に改善していくための重要な運用習慣だといえるでしょう。
若手中心の運用体制から学べる継続の仕組み
楽天カードのアカウントは、新卒社員の発案・立ち上げから始まり、翌年度の新卒メンバーも継続して運用チームに加わる体制が公開情報として確認できます。この体制には、企業アカウント運用のヒントが2つ含まれています。
1つ目は、「現場のユーザー目線」を運用に取り込みやすいことです。若手社員は自身もSNSの利用者であることが多く、フォロワーとして見たときに何が刺さるか、何が寒々しく見えるかの感覚を運用に反映しやすい立場にあります。
2つ目は、「属人化を避ける引き継ぎ設計」です。新卒メンバーが毎年入れ替わりながら運用に関わる体制は、特定の担当者だけに運用ノウハウが集中することを防ぎ、担当者が異動・退職しても投稿のトーンや企画の型が継続しやすい仕組みにつながります。中小企業や店舗アカウントでも、複数人で投稿を分担したり、投稿の「型」をマニュアル化しておくことで、同様の継続性を確保できます。
客観的データで見るSNS環境:なぜ金融業界もInstagramに取り組むべきか
楽天カードのような金融系アカウントがInstagramに力を入れる背景には、日本国内のSNS利用環境の変化があります。以下は代表的な公表データです。
| データ項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 全年代のLINE利用率 | 91.1% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| 全年代のInstagram利用率 | 52.6% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| 全年代のX(旧Twitter)利用率 | 43.3% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| 全年代のFacebook利用率 | 26.8% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| Instagram国内月間アクティブアカウント数 | 3,300万(2019年3月時点) | Meta「Instagramについて」公式発表(2019年6月) |
総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、国内の主要SNSサービスの利用率はLINEが91.1%と圧倒的に高い一方、Instagramも52.6%と半数以上の生活者が利用しているサービスとして位置づけられています。またMetaは2019年6月、国内のInstagram月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと公式に発表しており、それ以降の正確な数値は非公開であるものの、生活インフラの一つとして定着していることがうかがえます。
クレジットカードという金融商品は本来「検討期間が長く、比較検討されやすい」商材です。だからこそ、日常的に接触するSNS上で「お得な情報を発信してくれるアカウント」として好意的に認知されておくことは、比較検討の土俵に乗るための重要な接点になります。楽天カードの取り組みは、この構造を踏まえた合理的な戦略と読み取れます。
明日から試せる:自社アカウントに応用するチェックリスト
楽天カードの事例から抽出できる工夫は、業種を問わず応用可能です。以下のチェックリストをもとに、自社アカウントの棚卸しをしてみてください。
- プロフィール文が「商品説明」ではなく「フォロワーが得られるメリット」を主語にして書かれているか
- 直近10投稿のうち、フォロワーに何らかの行動(保存・参加・回答)を促す投稿が1つ以上あるか
- ストーリーズのアンケート・質問箱・クイズスタンプを月に1回以上使っているか
- キャンペーンや企画を単発で終わらせず、連載形式にできないか検討したか
- 投稿の企画・トーンが特定の担当者だけに依存しておらず、複数人で運用・引き継ぎできる状態か
- フィード投稿とキャンペーンページ・LP・公式サイトが導線として連携しているか
- 「かたい商材の説明」になっていないか、生活者目線で投稿を読み直したか
すべてを一度に実装する必要はありません。まずは「プロフィール文の見直し」と「月1回のストーリーズアンケート」など、着手しやすいものから始めることをおすすめします。
他業種でも同じ工夫は応用できる
ここまで見てきたように、楽天カードのInstagram運用は、特別なノウハウというよりも「生活者目線への翻訳」「参加型の企画設計」「双方向コミュニケーションの意識」「継続可能な運用体制」という、地道な積み重ねによって成り立っています。これは金融・保険業界に限らず、専門性が高く堅い印象を持たれやすい業種すべてに共通して応用できる考え方です。
自社と近い業界のアカウントが実際にどのような投稿・企画で成果を出しているかをより詳しく知りたい場合は、SNS運用事例データベース「unyou」(https://unyou.media/cases)で業種別の事例を確認することもおすすめです。同業種・類似ジャンルの運用パターンを比較することで、自社に取り入れやすい打ち手がより具体的に見えてきます。
まとめ
楽天カードの公式Instagramは、新卒社員の発案という小さな起点から始まり、「生活者目線の情報発信」「参加型のキャンペーン企画」「双方向コミュニケーションへの意識的なシフト」「属人化しない運用体制」を積み重ねることで、金融というかたい商材でありながら親しみやすいアカウントとして運用されてきたことが、公開情報から読み取れます。
これらの工夫は、業種や企業規模を問わず取り入れられるものばかりです。まずは自社アカウントのプロフィール文と直近の投稿を見直すところから、できることを一つずつ試してみてください。
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