新日本プロレス(NJPW)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/19
「うちのSNS、なんだかパッとしない…」その悩み、業種の壁を越えたヒントで解決できるかもしれません
Instagramの運用を任されている担当者なら、一度はこんな壁にぶつかったことがあるはずです。投稿は続けているのに保存やコメントが増えない。フォロワーは増えても来店や問い合わせにつながらない。世界観を作りたいのに、日々の業務に追われて「とりあえず告知」の投稿になってしまう——。
こうした悩みを解決するヒントは、意外にも「畑違い」に見える業界の運用事例に隠れていることが少なくありません。今回取り上げるのは、プロレス団体・新日本プロレス(NJPW)の公式Instagram運用です。エンタメ×スポーツというニッチな領域でありながら、ファンコミュニティを巻き込む発信力と、興行動員という明確な事業成果に直結させる設計思想は、業種を問わず多くの企業・店舗アカウントが参考にできる普遍的な構造を持っています。本記事では公開情報をもとに、その運用の型を分解し、明日から自社アカウントに応用できるポイントまで落とし込みます。

なぜ新日本プロレスのSNS運用が注目されるのか
新日本プロレスは、格闘技・プロレス業界の中でも早くからSNSを経営戦略の中核に据えてきた団体として知られています。2012年にカードゲーム大手ブシロードが親会社となって以降、テレビ露出が限られる中でもインターネット・SNSを軸にした情報発信によって業績を立て直した経緯は、複数のビジネスメディアで「V字回復」の事例として報じられてきました(「新日本プロレス『ネット重視』でV字回復」ライブドアニュース、「新日本プロレスのV字回復を支えたSNS戦略と企業ブランディング」広報会議)。
注目すべきは、SNS運用が単なる「話題づくり」で終わっていない点です。公式サイトのニュース発信を核に、公式Twitter(現X)、Instagram、動画配信サービス「新日本プロレスワールド」、グッズ販売、選手個人のSNSまでを連動させ、ファンの興味関心をコンテンツ全体で循環させる設計になっています。企業のSNS担当者にとって重要なのは「フォロワー数」そのものより、この「複数チャネルをどう役割分担させ、事業成果につなげているか」という構造です。
Instagramに与えられた役割 ―「拡散のX」と「世界観のInstagram」の使い分け
新日本プロレスの運用で特徴的なのは、SNSごとに明確な役割分担がなされていることです。公開されているインタビューによれば、同団体はメインの情報発信チャネルとしてTwitter(X)を早期から重視する一方、Instagramについては「情報の拡散というよりブランディングの一環」と位置づけていると語られています(mynavi TECH+「V字回復のカギはSNS活用!新日本プロレスTwitter担当が目指すもの」)。
これは多くの企業アカウントが陥りがちな「すべてのSNSで同じ内容を横流しする」運用とは対照的です。Xでは試合結果・大会告知・速報性のある情報を発信し、Instagramでは選手のビジュアル、会場の熱気、舞台裏のオフショットなど「見て感情が動くコンテンツ」に寄せる。この使い分けが、フォロワーにとって「このアカウントは何のために見るものか」を明確にし、結果としてアカウントの世界観を強くしています。
店舗や企業に置き換えるなら、Xやチャットツールでの告知・お知らせ発信と、Instagramでの世界観訴求(商品の使用シーン、スタッフの人柄、空間の雰囲気など)を意識的に分けるだけでも、フォロワーの受け取り方は大きく変わります。
KPIは「フォロワー数」ではなく「会場を満員にすること」
もう一つ重要な視点が、SNS運用のゴール設定です。Webマーケティングメディア「ferret」の取材に対し、新日本プロレスの広報宣伝担当は、自分たちの使命を「会場をお客様で埋め尽くすこと」だと語っています(ferret「インタビュー前編:KPIは会場をお客様で埋め尽くすこと。新日本プロレスのSNS運用が目指すもの」、後編)。SNS上のいいねやコメント数はあくまで途中経過であり、最終的なKPIは「興行に足を運んでもらうこと」という事業成果に一貫して紐づけられているのです。
この考え方は、飲食店であれば「予約・来店」、美容室であれば「新規予約」、BtoB企業であれば「資料請求・商談化」といった具体的な事業指標に置き換えられます。SNS運用を「バズらせること」自体が目的化してしまうと、投稿は続いても事業への貢献が見えづらくなり、社内での評価も上がりにくくなります。新日本プロレスの事例は、SNS運用担当者がまず「自分たちのSNSは何のためにあるのか」を経営目線で言語化することの重要性を示しています。
投稿コンテンツの"型"を分解する
公開されているアカウントの傾向や複数のメディア取材から見えてくるのは、投稿内容がいくつかの型に整理されていることです。以下は、エンタメ・スポーツ団体のInstagram運用における代表的な投稿タイプと、一般企業・店舗が応用する際の考え方を整理した表です。
| 投稿タイプ | 新日本プロレスでの例 | 一般企業・店舗での応用例 |
|---|---|---|
| 速報・告知系 | 大会結果、試合カード発表 | 新商品発売、キャンペーン告知 |
| 世界観・ビジュアル系 | 入場シーン、会場の熱気、選手のオフショット | 商品の使用シーン、店内の雰囲気、スタッフの表情 |
| ストーリー・人物系 | 選手のキャラクター性、対抗関係の演出 | スタッフの人柄、開発ストーリー、お客様の声 |
| クロスプロモーション系 | 配信サービス「新日本プロレスワールド」への誘導 | 自社ECサイトや予約ページへの誘導 |
| コラボ・タイアップ系 | 他団体・企業とのコラボ企画告知 | 地域店舗・他業種とのコラボ企画 |
重要なのは、これらの型がバラバラに存在するのではなく、「まず世界観で興味を引き、ストーリーで感情移入させ、最後に告知・誘導で行動を促す」という一連の流れの中に組み込まれている点です。投稿を単発の企画として考えるのではなく、フォロワーの感情がどう動いていくかという導線として設計する視点は、業種を問わず応用可能です。
選手個人のSNSとの連携によるリーチの最大化
新日本プロレスのもう一つの強みは、団体公式アカウントだけで完結させず、所属選手個人のSNSと連携させている点です。公式には定期的にSNS講習会を開催し、選手一人ひとりが自身のアカウントを持って発信する体制を整えていると報じられています。海外からのゲスト選手が参戦した際には、その選手自身のSNSフォロワーに向けて配信サービスの入会方法を英語で発信してもらい、海外ファンの会員獲得につなげた事例も紹介されています。
これは、企業でいえば「公式アカウントだけでなく、社員・スタッフ個人の発信力を掛け合わせる」発想に近いものです。美容室であれば各スタイリストのアカウント、飲食店であれば各スタッフの発信、BtoB企業であれば営業担当や技術者個人の発信を、公式アカウントと連携させることで、フォロワー層の異なる複数の入口を作ることができます。公式アカウント単体のリーチには限界があるからこそ、「誰が発信するか」を分散させる設計が効いてきます。
実践チェックリスト ― 明日から自社アカウントで試せること
ここまでの分析を、実際の運用に落とし込むためのチェックリストとして整理します。
- SNSごとの役割を1行で言語化する:「Xは告知、Instagramは世界観」のように、各チャネルの目的を担当者全員が同じ言葉で説明できるか確認する
- 最終KPIを事業指標に接続する:フォロワー数やいいね数ではなく、「来店数」「予約数」「問い合わせ数」など、経営が納得する指標を1つ決める
- 投稿を型に分類してみる:直近30投稿を「告知」「世界観」「ストーリー」「誘導」に仕分けし、偏りがないか棚卸しする
- 感情の導線を意識した投稿順を作る:告知ばかりが続いていないか、世界観づくりの投稿が挟まっているかをカレンダーで確認する
- スタッフ・個人発信の余地を作る:公式アカウントだけに頼らず、社員やスタッフが発信しやすい簡単なルール(ハッシュタグ、投稿頻度の目安など)を用意する
- 外部ゲスト・コラボの発信導線を設計する:協力先やゲストに依頼できる紹介投稿・ストーリーズのフォーマットを事前に準備しておく
客観的なデータで見るSNSマーケティングの今
自社の取り組みに一般化して落とし込む前に、日本国内のSNS活用状況を客観的なデータで確認しておきます。
総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、X(旧Twitter)やInstagramの利用率は年々拡大しており、2024年時点で全体のおよそ半数が利用、50代でも4割以上が利用するなど、若年層だけでなく中高年層にまで利用が広がっていることが示されています(総務省「令和7年版情報通信白書」コミュニケーションツール・SNS)。SNSはもはや若年層向けの限定的なチャネルではなく、幅広い年代にリーチできる基盤になっているといえます。
Instagramの規模感については、運営元のMeta(当時Facebook Japan)が2019年6月7日に発表した公式情報として、国内の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したことが公表されています(Metaについて「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」)。以降、国内MAUの公式な更新発表は行われていませんが、総務省白書の利用率推移からも、この規模がその後さらに拡大していることがうかがえます。
また、企業のSNS運用実態については、東京新聞×PR TIMESが2025年5月に公表した「企業のSNS運用実態と成果に関する徹底調査」で、企業が現在利用しているSNSのうちX(Twitter)とInstagramがともに52.0%で最多となり、SNSを運用する企業の約8割が問い合わせ数の増加や認知拡大など何らかの成果を実感していると報告されています(東京新聞×PR TIMES「企業のSNS運用実態と成果に関する徹底調査(2025年5月)」)。一方で、運用担当者の多くが「社内リソース不足」や「戦略の方向性の不明確さ」を課題として挙げている点も見逃せません。新日本プロレスのように役割とKPIを明確化することは、この課題への一つの解にもなります。
業種の壁を越えて事例から学ぶという発想
新日本プロレスの事例が示すのは、SNS運用の本質が「業界特有のテクニック」ではなく、「役割設計」「KPI設計」「発信主体の分散」といった構造にあるということです。エンタメ・スポーツ業界の手法だからと敬遠せず、構造だけを抽出して自社に当てはめる視点を持つことで、応用の幅は大きく広がります。
同じように、他業種の実在アカウントがどのような投稿設計・世界観づくり・エンゲージメント施策を行っているかを知りたい場合は、SNS運用事例データベース「unyou」の事例一覧ページで、業種別の運用事例を確認してみてください。自社と近い業種・規模のアカウントの実践例から、より具体的なヒントが見つかるはずです。
まとめ
新日本プロレスのInstagram運用は、単なる「エンタメ企業の派手な発信」ではなく、SNSごとの役割分担、事業成果に直結したKPI設計、選手個人を含めた発信主体の分散という、極めて論理的な構造の上に成り立っています。フォロワー数や華やかな投稿デザインに目を奪われがちですが、真似すべきはその設計思想です。まずは自社SNSの役割を1行で言語化するところから始めてみてください。
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