「SNS担当になったものの、何を投稿すればいいのか分からない」「フォロワーは増えても、来店や予約につながっている気がしない」——ホテルや店舗のInstagram運用を任された担当者から、こうした悩みを聞くことは少なくありません。特に老舗ブランドや高単価の業態では、「安売り感」を出さずに世界観を保ちながら発信するバランスが難しく、投稿のたびに「これで合っているのか」という不安を抱えながら運用しているケースが多いのが実情です。
そんなときに参考になるのが、開業から130年以上の歴史を持つ「帝国ホテル」の公式Instagramです。老舗の格式を守りながらSNSという新しいチャネルにどう向き合っているのか、その投稿設計やブランドの伝え方を分解すると、規模の大小や業種を問わず応用できるヒントが見えてきます。本記事では、公開情報とunyou(https://unyou.media)の事例データベースをもとに、帝国ホテルのInstagram運用を分析し、明日から自社アカウントに落とし込める具体的なポイントを整理します。
帝国ホテルのInstagram運用を、まず数字で確認する
分析の前提として、帝国ホテルのアカウント状況を整理します。帝国ホテルは公式Instagramアカウント「Imperialhotel_jp_帝国ホテル 公式(@imperialhotel_jp_official)」を運用しており、東京・大阪・上高地・京都の帝国ホテルグループを横断する形で情報発信を行っています。2026年9月時点で確認できる公開情報では、同アカウントは10万人超のフォロワーを持ち、2,500件以上の投稿を積み重ねています(Instagram公式アカウント閲覧、2026年9月時点)。
また、帝国ホテルは公式サイト上で「インスタグラム帝国ホテル公式アカウントのなりすましに対する注意喚起」を東京・大阪双方で掲載しており、フォロワーに対して偽アカウントのDM内URLを開かないよう注意喚起を行っています(帝国ホテル公式サイト「お知らせ」より)。これは裏を返せば、公式アカウントがユーザーから信頼され、なりすましのターゲットになるほど存在感を持っているという証左でもあります。
ホテル・ウエディング関連ではさらに「帝国ホテル 東京 ウエディング公式アカウント(@imperialweddings.official)」など、目的別に複数アカウントを運用している点も特徴です。1つのブランドで「本体」と「用途別」のアカウントを分けることで、フォロワーが本当に見たい情報にたどり着きやすくしている運用モデルと言えます。

帝国ホテルのInstagramが支持されている3つの理由
投稿内容や運用体制から見えてくる、支持される理由を3つに整理します。
1. 「非日常」を写真一枚で伝える構成力 帝国ホテルの投稿は、アフタヌーンティーや館内の意匠、季節ごとの装飾など、来館しなければ体験できない「非日常」を切り出す構成が中心です。日常的に使えるカジュアルな情報発信ではなく、「ここでしか味わえない体験」を見せることで、フォロー・保存する動機を作っています。
2. 複数拠点・複数目的をひとつのブランドとして束ねる設計 東京・大阪・上高地・京都という拠点、さらにウエディングという目的別アカウントを持ちながらも、共通のトーン(格式・上質さ)を保っている点が、ブランド全体への信頼につながっています。
3. 「なりすまし対策」に代表される、フォロワーとの信頼関係の管理 前述のなりすまし注意喚起のように、公式アカウントであることの信頼性を明示的に守る姿勢も、長期的にフォロワーが安心してフォローを続けられる土台になっています。SNS運用は「投稿の質」だけでなく「運用の誠実さ」も評価対象になるという好例です。
投稿の「型」を分解する:写真・キャプション・頻度
老舗ホテルのSNS運用に共通する投稿の「型」を、一般的なホテル業界の運用モデルと合わせて整理すると、次のように分類できます。
| 投稿テーマ | 狙い | 他業種でも応用できるポイント |
|---|---|---|
| 館内の建築・意匠を切り出すカット | ブランドの歴史・格式を視覚で伝える | 自社の「他にはない場所・設備」を定点で見せる |
| アフタヌーンティー・食のビジュアル | 来店動機を作る、保存されやすいコンテンツ | 商品単体ではなく「体験としての一場面」で見せる |
| 季節装飾・限定企画の紹介 | 「今行く理由」を作り、周期的な話題を提供 | 季節・期間限定のフックで投稿頻度を安定させる |
| ウエディングなど目的別コンテンツ | 検討層に的確に情報を届ける | 目的別サブアカウントやハイライトで情報を整理する |
| お知らせ・注意喚起(なりすまし対策等) | フォロワーとの信頼関係を守る | 有事の情報発信も「ブランドの誠実さ」の一部と捉える |
このように、帝国ホテルの投稿は「映える一枚」を単体で終わらせず、テーマごとに役割を持たせている点が特徴です。単発のバズを狙うのではなく、複数のテーマを組み合わせて継続的にアカウントの世界観を積み上げる設計になっています。
老舗ホテルならではの「世界観」のつくり方
世界観づくりで参考にしたいのは、「新しさ」と「歴史・格式」を両立させている点です。SNSという新しいメディアを使いながらも、投稿のトーン(配色、余白の使い方、キャプションの文体)は落ち着いたものに統一されており、フォロワーが感じる「安心感」を損なわないようにしています。
これは、総務省「令和6年版 情報通信白書」が示すInstagram利用の裾野の広がりとも関係します。同白書によれば、全年代でのInstagram利用率は52.6%に達し、10代〜30代では利用率が70%を超えるとされています(総務省「令和6年版 情報通信白書」)。つまり、若年層だけでなく幅広い年代がInstagramを情報収集の場として使っている以上、老舗ブランドが「若者向けの軽いトーン」に急に寄せる必要はなく、むしろ自社が本来持っているブランドトーンを崩さずに発信し続けることが、幅広い層への訴求につながりやすいということです。
世界観を作る際の実務的なポイントは以下の3点です。
- 色味・トリミングのルールを決める:投稿ごとに雰囲気が変わると「ブランドらしさ」が積み上がらないため、明るさ・彩度・余白の取り方を統一する。
- キャプションの文体を統一する:敬語のレベル、絵文字の使用頻度、文末表現を決めておくと、担当者が変わっても世界観がブレにくくなる。
- 「見せる場所」を絞る:全ての設備・商品を見せるのではなく、ブランドを象徴する場所やメニューに絞って繰り返し登場させることで、記憶に残るビジュアルの型ができる。
エンゲージメントを高める施策と、なりすまし対策からの学び
エンゲージメントという観点では、帝国ホテルのなりすまし注意喚起の事例が示すように、「フォロワーを守る発信」もエンゲージメント施策の一部として捉える必要があります。偽アカウントによるDM詐欺などのリスクが増えている中、公式が明確に注意喚起を出すことは、フォロワーの安心感・信頼を維持し、結果的にアカウントへの継続的な関与(保存・シェア・コメント)を支える土台になります。
また、ホテル業界全体で見ると、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を促す施策として、独自ハッシュタグの運用が広く行われています。例えば、ザ・リッツ・カールトン東京は「#RCmemories」という独自ハッシュタグを設け、利用者の投稿を一元化しUGCを生み出すことに成功した事例が紹介されています(syncAD「ホテル業界、Instagram公式アカウント運用モデル・マーケティング成功事例7選」)。帝国ホテルのように歴史あるブランドでも、こうした独自ハッシュタグやUGCの受け皿づくりは、フォロワーとの双方向の関係構築に有効な打ち手として応用できます。
インバウンド需要という観点も無視できません。JNTO(日本政府観光局)の発表によれば、2025年の訪日外国人数は4,268万人に達しており、海外からの旅行需要は高い水準にあります(JNTO「訪日外客数」)。ホテルのInstagramは国内向けだけでなく、訪日旅行者の情報収集・宿泊先選定の入口にもなり得るため、多言語対応やハッシュタグ設計を含めたエンゲージメント施策の重要性は今後さらに増していくと考えられます。
他業種・他店舗が今日から真似できるポイント
ここまでの分析を、規模や業種を問わず応用できる形にまとめます。以下は、明日から自社アカウントで試せる具体的なチェックリストです。
投稿設計チェックリスト
- 自社の「非日常」「他にはない体験」を1つ言語化できているか
- 投稿の色味・トリミング・キャプション文体のルールを決めているか
- 季節・期間限定のフックを月次で最低1つ用意できているか
- 目的別(商品・サービス別)にハイライトやサブアカウントを整理しているか
- 独自ハッシュタグを1つ設け、UGCの受け皿を用意しているか
信頼構築チェックリスト
- なりすまし・偽アカウントの有無を定期的に検索で確認しているか
- フォロワー向けの注意喚起や重要なお知らせを、通常投稿と同じ導線で発信できているか
- コメント・DMへの返信ルール(誰が・いつまでに対応するか)を決めているか
実践の手順(最初の2週間)
- 直近30件の投稿を見返し、テーマごとに分類する(体験系・商品系・お知らせ系など)
- 上記の表を参考に、自社に当てはめたテーマ分類を3〜5種類に整理する
- 色味・キャプションのトーンをまとめた簡易ガイド(1枚で十分)を作成する
- 独自ハッシュタグを1つ決め、プロフィールや投稿キャプションに固定表示する
- 2週間分の投稿を上記テーマ分類に沿って予約投稿し、保存数・コメント数の変化を確認する
小規模な店舗であっても、「非日常の切り出し方」「トーンの統一」「信頼を守る発信」という3つの視点は、帝国ホテルのような大規模ブランドと同じ考え方で応用できます。
まとめ
帝国ホテルのInstagram運用から見えてくるのは、派手なキャンペーンよりも「ブランドらしさを保った継続的な発信」と「フォロワーとの信頼関係の管理」を重視する姿勢です。投稿テーマの整理、トーンの統一、独自ハッシュタグによるUGCの受け皿づくり、そしてなりすまし対策のような地味だが重要な信頼構築の施策——これらは業種や規模を問わず、自社アカウントに落とし込める具体的なアクションです。
同様の観点で他のホテル・宿泊業種のSNS運用事例を知りたい方は、unyouの事例データベース(/cases)で、業種別の運用事例を数多く紹介していますので、ぜひ自社の運用改善のヒントとして参考にしてください。
あわせて読みたい
ABOUT UNYOU
unyou は、SNS運用の「成功事例」が集まるデータベースです
Instagram・X・TikTok で実際に成果を出しているアカウントを、業種 × トンマナ × プラットフォームで検索・比較できます。掲載しているのは、世の中に公開されている実在アカウントの分析 600件超。 「自社の業種で何が伸びているのか」を、感覚ではなくデータで確かめられます。
無料相談
自社に合ったSNS運用、プロに相談してみませんか?
「何から始めればいいかわからない」「今の運用が正しいか不安」「外注すべきか迷っている」 ——そんなお悩みに、unyouが蓄積した実運用データをもとにお答えします。 相談は無料、しつこい営業はありません。
無料でSNS運用を相談する