SNS担当者なら誰もが感じる「エンタメ企業の投稿、なぜあんなに伸びるのか」という壁
「同じようにキャラクターや商品を紹介しているのに、なぜあのアカウントは保存やシェアが伸びるんだろう」——エンタメ・キャラクタービジネスに関わるSNS担当者なら、一度はこう感じたことがあるはずです。フォロワーを増やしたい、いいねを増やしたいと焦るあまり、投稿のたびに「バズるネタ」を探し続け、気づけば世界観がバラバラになってしまう。そんな悩みを抱える方は少なくありません。
本記事では、玩具・ゲーム・アミューズメント施設まで幅広いIP(知的財産)を展開するバンダイナムコグループのInstagram運用を、公開されている情報をもとに分析します。特定アカウントの華やかな数字を追いかけるのではなく、「なぜこの設計が支持されるのか」「自社・自店舗のアカウントにどう応用できるのか」という構造の部分を丁寧に分解していきます。フォロワー数やエンゲージメント率など、裏付けの取れない数値は掲載しません。事実ベースで、明日から真似できるポイントに落とし込みます。

バンダイナムコのSNS運用を読み解く前提:「1つの巨大アカウント」ではなく「IPごとの多アカウント運用」
バンダイナムコグループのSNS運用を見ていくと、まず気づくのは「バンダイナムコ」という単一の巨大企業アカウントに全てを集約していない、という点です。実際に公開されているアカウントを見るだけでも、遊園施設「ナンジャタウン」の公式アカウント(@namjatown_official)、通販サイト「プレミアムバンダイ【公式】」(@pbandai_official)、玩具ブランド「バンダイ・BANDAI SPIRITS」(@bandaiofficial)、ライセンス商品を扱う「バンダイナムコエンターテインメントライセンス」(@bnei_license)、アミューズメント施設のファミリータイトルを扱う「family_games_bnam」など、目的とIPごとにアカウントが分かれています。バンダイナムコアミューズメントも公式サイト上でSNSアカウント一覧ページ(bandainamco-am.co.jp/sns/)を設け、施設・IPごとの窓口を整理しています。
これは偶然ではなく、バンダイナムコグループが中期経営計画などで一貫して掲げてきた「IP軸戦略」——ひとつのIPを映像・トイホビー・ゲーム・ロケーション(アミューズメント施設)など複数の事業軸で連動させ、価値を最大化するという経営方針——がSNS運用にもそのまま反映された結果だと読み取れます。つまり「バンダイナムコ」というブランドの強さは、1本の投稿の瞬発力ではなく、IPごとに最適化されたアカウント設計の積み重ねから生まれているのです。
ここから得られる最初の教訓は明快です。**「全部を1アカウントに詰め込もうとしない」**こと。複数の商品・サービス・施設を持つ企業ほど、アカウントを分けて役割を明確にした方が、フォロワーにとっても「何が見たくてフォローしているか」が分かりやすくなります。
投稿の型を分解する:世界観を壊さないコンテンツ設計
バンダイナムコ系のアカウント、特に施設系アカウントであるナンジャタウン公式Instagramを見ると、投稿の中心にあるのは「アトラクション」「フード」「シンボルキャラクターとのイベント」など、その場でしか味わえない体験の切り取りです。単なる商品情報の羅列ではなく、来場者が「行ってみたい」「撮ってみたい」と感じるフォトスポットを軸に構成されている点が特徴です。
これは店舗・施設ビジネスに強く応用できる考え方です。投稿を「お知らせ」と「世界観」の2種類に分け、世界観側の投稿比率を意識的に高めることで、アカウント全体の温度感が一定に保たれます。逆に、キャンペーン告知や営業時間変更のような事務的な投稿ばかりが続くと、フォロワーの「見たい理由」がぼやけてしまいます。
エンゲージメントを生む仕掛け:UGC・ハッシュタグキャンペーンの実例
ナンジャタウンでは2025年8月、「AIか、現実か、真相は池袋で。」と題した企画を実施しています(バンダイナムコアミューズメント公式ニュース、PR TIMES掲載)。これは生成AIで作ったかのような写真表現を園内のフォトスポットで実際に撮影できるという体験型の企画で、専用ハッシュタグを付けた投稿を呼びかける形で展開されました。単に「フォトジェニックな場所を作る」だけでなく、「AIか現実か分からない」という話題性を投稿の動機づけに組み込んでいる点がポイントです。
この事例から読み取れる実践知は、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を狙う施策は「撮りたくなる場所」だけでなく「話したくなる文脈」までセットで設計する必要がある、ということです。フォトスポットを作っただけで自然に投稿が増えるほど、今のSNSユーザーは単純ではありません。
データに基づいた意思決定:SNS分析ツール活用の裏側
バンダイナムコアミューズメントは、SNS分析・運用支援ツール「Social Insight」(ユーザーローカル提供)を活用し、複数のSNSアカウントを一括管理しながら、トレンドの移り変わりをチェックし、イベント企画から売上予測までを行っていると、ユーザーローカルが公開する導入事例(sns.userlocal.jp/document/casestudy/bandainamco-am)で紹介されています。同事例では、SNS上のトレンドや反響を意識した施策を実施した結果、あるイベントの売上が前回比210%に伸びたと報告されています。
ここで重要なのは、「バズらせよう」という発想ではなく、「SNS上の反応を観測し、次の企画に反映する」というPDCAの型が運用の土台にあるという点です。感覚だけに頼った投稿ではなく、データを踏まえた仮説検証のサイクルが、結果として安定した反応につながっています。
実在データで見る、Instagram運用の追い風
自社アカウントの数字が伸び悩んでいると、「そもそもInstagram自体が飽和しているのでは」と不安になる方もいるかもしれません。しかし公開データを見る限り、日本国内のInstagram利用はむしろ拡大基調にあります。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| Instagram利用率(全年代) | 52.6% | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 |
| 日本国内月間アクティブアカウント数 | 6,600万以上(2023年11月時点公表) | Meta社(Instagram公式発表) |
| SNSデータ活用によるイベント施策の効果(バンダイナムコアミューズメント事例) | 売上が前回比210%に伸長 | ユーザーローカル公開の導入事例 |
土台となる利用者数が拡大している以上、「伸びない」原因の多くはプラットフォーム側ではなく、アカウント設計や投稿の型にあると考えた方が建設的です。
明日から試せるチェックリスト:バンダイナムコ流の考え方を自社に落とし込む
以下は、ここまでの分析から抽出した、実務にそのまま使えるチェックリストです。
- 複数の商品・施設・サービスを扱っている場合、1アカウントに全部詰め込んでいないか見直す
- アカウントのプロフィール文に、そのアカウントが何を発信する場なのかを明記しているか(例:問い合わせ対応の有無も含む運用方針の明示)
- 投稿を「お知らせ系」と「世界観系」に分類し、世界観系の比率を意識的に確保しているか
- 店舗・施設なら、来場者が思わず撮りたくなる「フォトスポット」を意図的に設計しているか
- UGCを狙う施策では、撮影の動機になる「話題性・文脈」までセットで企画しているか
- ハッシュタグキャンペーンを行う際、参加のハードルが明確でシンプルか
- 投稿後の反応(保存・シェア・コメント傾向)を定期的に振り返り、次回企画に反映する仕組みがあるか
- リール・フィード・ストーリーズの役割を分け、単一フォーマットに依存していないか
このリストは1日で全て実行する必要はありません。まずは「アカウントの役割の明文化」と「投稿の分類」の2つから着手するだけでも、運用の軸がぶれにくくなります。
中小規模のアカウントが誤解しやすいポイント
バンダイナムコのような大手IP企業の事例を見ると、「予算も人員も豊富だからできること」と感じてしまいがちです。しかし、ここまで見てきた要素——アカウントの役割を明確にする、投稿を世界観と告知に分ける、UGCの文脈を設計する、反応をデータで振り返る——は、いずれも予算規模に関係なく実践できる「設計の考え方」です。むしろ多くのアカウント数を持つバンダイナムコだからこそ、各アカウントの役割分担と一貫性が徹底されているとも言えます。1〜2アカウントしか運用していない中小企業・店舗であれば、この考え方はより取り入れやすいはずです。
まとめ
バンダイナムコのInstagram運用から読み取れる要点は、派手なバズを狙う小手先のテクニックではなく、「IPごとにアカウントの役割を分ける設計」「世界観を壊さない投稿の型」「体験の文脈まで設計したUGC施策」「データに基づく振り返りのサイクル」という、地道な運用の積み重ねでした。これらはいずれも、業種や規模を問わず自社アカウントに応用できる考え方です。まずは自社のアカウントが「誰に何を届ける場所なのか」を改めて言語化するところから始めてみてください。
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Instagram・X・TikTok で実際に成果を出しているアカウントを、業種 × トンマナ × プラットフォームで検索・比較できます。掲載しているのは、世の中に公開されている実在アカウントの分析 600件超。 「自社の業種で何が伸びているのか」を、感覚ではなくデータで確かめられます。
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