「うちのアカウントは何が足りないのか」が分からないあなたへ
SNS担当者として日々投稿を続けていると、ふと「他社はどうやって“伸びる投稿”を作っているのだろう」と気になる瞬間があると思います。特にスポーツクラブの公式アカウントは、試合結果という「コンテンツの種」を持ちながらも、日々の運用は地道な積み重ねです。フォロワーとの距離感の作り方、投稿の企画力、ブランドの世界観づくりなど、業種を問わず参考にできる要素が詰まっています。
今回は、Jリーグ・横浜F・マリノスの公式Instagram運用を、公開されている情報をもとに分解してみます。具体的な数字(フォロワー数やエンゲージメント率)は確証が取れないため本記事では扱いませんが、「なぜ支持されているのか」「投稿の型はどうなっているのか」「他の企業や店舗が明日から応用できるポイントは何か」を、事実ベースで整理していきます。自社アカウントの改善ヒントとして、ぜひ最後までお読みください。

横浜F・マリノスのSNS運用体制はどうなっているか
横浜F・マリノスは公式サイト内に「SNS」ページを設け、Instagram・X(旧Twitter)・YouTube・TikTok・LINEなど複数のプラットフォームを横断的に運用していることを明らかにしています。単一の公式アカウントだけでなく、目的や発信内容に応じてアカウントを使い分けている点が特徴です。
一般的にスポーツクラブのSNS運用は、次のように役割分担されるケースが多く見られます。
| アカウントの位置づけ | 主な発信内容 | 企業アカウントに置き換えると |
|---|---|---|
| 公式メインアカウント | 試合結果、選手写真、公式発表 | コーポレート公式アカウント |
| サブ・舞台裏アカウント | 練習風景、オフショット、選手の素顔 | 中の人・採用広報アカウント |
| キャラクター・マスコットアカウント | マスコットの日常、ファン参加企画 | ブランドキャラクター・世界観訴求アカウント |
| 施策特設アカウント/ハッシュタグ企画 | イベント連動、コラボ企画 | キャンペーン・季節企画用の発信 |
このように「公式・舞台裏・キャラクター・企画」で役割を分けることで、フォロワーは目的に応じてアカウントを選んで追いかけられるようになります。1つのアカウントに情報を詰め込みすぎず、発信の粒度を分けているのがポイントです。
投稿の「型」を分解する
Instagramのフィード投稿・リール・ストーリーズには、それぞれ役割の違いがあります。横浜F・マリノスのようなクラブアカウントの運用を見ると、おおむね次のような型に整理できます。
- 試合速報型:得点・勝敗をシンプルなデザインテンプレートで即時発信する投稿。フォーマットを固定することで、フォロワーは「見慣れた型」で情報を素早く受け取れます。
- 選手密着型:練習や移動中、控室など、試合中継では見られない場面を切り取る投稿。ここで「人」としての選手の魅力が伝わります。
- 参加型・共感型:サポーターの投稿やファンアートを紹介する、リポスト中心の投稿。ファンが「発信する側」になれる仕掛けです。
- 世界観型:スタジアムや街、地域の風景を絡めたビジュアル重視の投稿。クラブというブランドの「らしさ」を伝える役割です。
この「型」を持つことのメリットは、担当者が毎回ゼロから企画を考える必要がなくなる点にあります。型を決めてローテーションすることで、投稿頻度と質を両立しやすくなります。
世界観づくりに見る工夫
横浜F・マリノスの取り組みで象徴的なのが、2016年4月10日に日産スタジアムで実施された「#empty(エンプティ)プロジェクト」です。J1リーグ・浦和レッズ戦に合わせ、Instagramの人気インフルエンサー十数名を招待し、無人のピッチやベンチ、ロッカールームなどを自由に撮影してもらい、「#emptyNissanStadium」のハッシュタグを付けて投稿してもらうという企画でした(Jリーグ公式サイト「J.LEAGUE.jp」、サッカーキング等で報じられています)。日本最大級の収容人数を誇るスタジアムを舞台にした、スポーツ界では当時前例の少ない試みだったと伝えられています。
この企画のポイントは、「クラブが発信する」のではなく「第三者の視点でクラブの世界観を切り取ってもらう」構造にあることです。自社目線の投稿だけでは表現しきれない魅力を、外部の目を借りて可視化する発想は、店舗や企業アカウントにも応用できます。例えば、自社スタッフではなく常連客やクリエイターに「オフの空間」を撮ってもらう、といった形です。
また、チーム密着ドキュメンタリー「THE DAY」をYouTubeで継続配信し、日々の練習や試合当日の舞台裏を映像化している点も見逃せません。単発の企画で終わらせず、シリーズ化して定点観測的に発信を続けることで、ファンが「次も見たい」と思う習慣を作っています。
エンゲージメントを生む仕掛け
無観客開催が続いた時期には、「F・マリノス デュアルスタジアム by LINE LIVE」という取り組みも実施されました。スタジアムに来られないサポーターも、配信を見ながら応援コメントやエールスタンプを送り合い、遠隔地からでも一体感を共有できる仕組みです(横浜F・マリノス公式サイトのニュースリリースで告知されています)。これはSNSやライブ配信を「一方通行の発信」ではなく「双方向の応援体験」に変えた事例といえます。
このような取り組みに共通するのは、フォロワーを「見る人」から「参加する人」に変える設計です。企業アカウントでも、単に商品写真を投稿するだけでなく、
- お客様の投稿をストーリーズでリポストする
- コメントへの返信を丁寧に行い、やり取り自体をコンテンツにする
- 「あなたの○○を教えてください」のような参加型の問いかけを定期的に行う
といった工夫で、同様の「参加型の仕掛け」を作ることができます。
なぜ今、Instagram運用に力を入れるべきなのか(データで確認)
ここで、SNS活用の重要性を裏付ける公開データを確認しておきます。
総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、SNSの利用は特定の若年層にとどまらず全世代に拡大しており、X(旧Twitter)やInstagramについても2024年時点で50代の4割以上が利用していると報告されています。かつて「SNSは若者向け」という前提で運用方針を決めていた企業も、ターゲット層の見直しを迫られている状況がうかがえます(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」)。
また、Instagramを運営するMetaは2019年6月、国内の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと公式発表しています。さらにMeta Marketing Summit Japan 2023では、その2019年公表時点から4年間で国内の利用者数が倍以上に広がったとの言及がありました(出典:Meta公式発表「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」、Meta Marketing Summit Japan 2023)。プラットフォームとしての土台が拡大し続けていることが分かります。
一方で、株式会社デジタルファームが実施した「Jリーグ所属クラブチームの各種SNSアカウント開設状況と利用実態調査」では、JリーグクラブによるTwitter・Facebookの活用率が96%に達している一方、Instagram・YouTube・LINEの運用率は相対的に低いという調査結果が示されています(出典:株式会社デジタルファーム調査レポート)。裏を返せば、Instagramにしっかり力を入れて世界観や参加型の企画を作り込んでいるクラブは、競合の中で相対的に目立ちやすいポジションを取れる、ということでもあります。これは「競合が本気で取り組んでいない領域だからこそ差がつきやすい」という、業種を問わず成り立つ構図です。
明日から試せる実践チェックリスト
横浜F・マリノスの事例から得られる示唆を、自社・自店舗のInstagram運用に落とし込むためのチェックリストです。
- 投稿の「型」を3〜4種類に整理する:速報・舞台裏・参加型・世界観型など、目的別のフォーマットを事前に決めておく
- 「中の人」が見える投稿を月1回以上入れる:スタッフや作業風景など、素顔が伝わるコンテンツを定期的に組み込む
- ファン・顧客の投稿を紹介する仕組みを作る:ハッシュタグを決めて、リポストを前提とした導線を用意する
- 第三者視点の撮影機会を年に数回設ける:クリエイターや常連客に撮影を依頼し、自社目線では出てこないカットを増やす
- シリーズ企画を1つ持つ:単発投稿で終わらせず、継続を前提とした連載企画を用意する
- コメント・DMへの返信を運用ルールに組み込む:エンゲージメントは「投稿」だけでなく「やり取り」からも生まれると意識する
- ターゲット年齢層を定期的に見直す:総務省データのように利用者層は拡大しているため、想定読者を固定化しすぎない
このチェックリストは、業種やアカウント規模を問わず着手できる粒度に落としています。すべてを一度に実行する必要はなく、自社の体制に合わせて1つずつ取り入れることをおすすめします。
自社アカウントの型を見つけるには、同業種の事例が近道
ここまで見てきたように、横浜F・マリノスの運用は「役割分担されたアカウント設計」「型のある投稿」「第三者視点を取り入れた世界観づくり」「参加型の仕掛け」という要素で成り立っています。ただし、スポーツクラブの事例をそのまま自社に当てはめるのが難しい場合もあるはずです。
そうしたときは、自社と近い業種・規模のアカウントがどのような工夫をしているかを見るのが近道です。unyouでは、業種別のSNS運用事例を数多くデータベース化しており、同じ悩みを抱えるアカウントがどんな投稿設計・企画で成果につなげているかを確認できます。ぜひunyouの事例データベースもあわせてチェックしてみてください。
まとめ
横浜F・マリノスのInstagram運用は、複数アカウントによる役割分担、投稿の型の整理、第三者視点を取り入れた世界観づくり、そしてファンを「参加者」に変える仕掛けによって支持を集めてきたと考えられます。総務省の情報通信白書が示す通りSNS利用者層は年々拡大しており、Metaの公表データからもプラットフォームとしての規模拡大が続いていることが分かります。一方でJリーグクラブ全体で見るとInstagramの運用率はまだ相対的に低いという調査結果もあり、丁寧に作り込むこと自体が差別化につながる状況です。今回紹介したチェックリストを参考に、まずは投稿の「型」を整理するところから、自社アカウントの改善を始めてみてください。
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