「うちの公式Instagramも、テレビ局みたいに軽やかに伸びてくれたら…」——SNS担当者であれば一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。フォロワーはなかなか増えず、投稿しても反応が薄い。かといって「テレビ局は元々知名度があるから」「予算も人員も違うから」と結論づけてしまうと、そこで学びは止まってしまいます。
実際にはテレビ東京のInstagram運用も、企画・撮影・投稿設計・コメント対応まで、地道な工夫の積み重ねでできています。本記事では、テレビ東京グループが公開している情報とWeb上の公開データをもとに、Instagram運用の「型」「世界観のつくり方」「エンゲージメント施策」を分解し、企業や店舗のSNS担当者が自分のアカウントに応用できるポイントまで落とし込みます。数字については、確証のないフォロワー数やエンゲージメント率は掲載せず、出典が明確な公的データ・調査データのみを引用します。
テレビ東京がInstagramで複数アカウントを使い分ける理由
テレビ東京グループの特徴の一つは、Instagramを「1つの公式アカウントに情報を集約する」のではなく、目的別に複数アカウントへ分散させている点です。公開されている代表的なアカウントだけでも、次のような役割分担が確認できます。
| アカウント(例) | 主な発信内容 | 想定される目的 |
|---|---|---|
| テレ東(@tvtokyo_pr) | ドラマ・バラエティの最新情報、放送の裏話、おすすめコンテンツ紹介 | 番組全体の認知拡大・視聴喚起 |
| テレビ東京アナウンス部(@tvtokyo_announcer) | アナウンサーの素顔、イベント情報、SDGsの取り組み | 「人」を通じた親近感の醸成 |
| テレ東BIZ(@tvtokyo_txbiz) | 経済・ビジネス関連のニュースコンテンツ | ビジネス層への専門コンテンツ訴求 |
| 番組別アカウント(例:土曜ゴールデン @tvtokyo_dosupe) | 個別番組の告知・出演者情報 | 特定番組のファン化・視聴継続 |
さらに、テレビ東京ホールディングスは「ソーシャルメディアについて」という方針ページを公開し、X(旧Twitter)・Instagram・Facebook・TikTok・YouTube・LINEなど複数プラットフォームで公式アカウントを運用し、視聴者との「有益なコミュニケーション」を実現するための利用ルールを明文化しています(出典:株式会社テレビ東京ホールディングス「ソーシャルメディアについて」)。
この「用途別アカウント設計」は、企業や店舗にとっても応用できる発想です。すべての情報を1つのアカウントに詰め込むと、フォロワーが「自分がなぜこのアカウントをフォローしているのか」を見失いやすくなります。逆に、テレビ東京のように「番組情報」「人(中の人)」「専門ジャンル」で役割を分けると、フォロワーは目的に応じてアカウントを選び、期待するコンテンツが得られる安心感を持てます。複数アカウント運用が難しい中小規模の事業者でも、1つのアカウントの中で「投稿の型」を意識的に分ける(後述)ことで、同様の効果を狙うことが可能です。

投稿の「型」を分解する:切り抜きリール・オフショット・日常投稿
テレビ局系アカウントに共通する強みの一つが、素材の豊富さを活かした「型」の使い分けです。SNS運用支援企業のコラムでも、テレビ番組の見どころを短く切り取った「切り抜き動画」をInstagramリールやTikTok、YouTubeショートなど複数のプラットフォームに横展開する手法が、番組認知度の向上に有効な施策として紹介されています(出典:株式会社NAVICUS「【テレビ番組制作者必見】Instagramリールで拡散を実現する切り抜き動画の秘訣」)。
テレビ東京の各アカウントの投稿を見ても、大きく次のような型に整理できます。
- 番組切り抜きリール:放送済みコンテンツの見どころを数十秒に再編集し、リール形式で配信。本編を見ていない層への「入り口」として機能する
- オフショット・メイキング:本編には映らない収録前後の様子を縦型で撮って出しに近い形で公開し、リアルな臨場感を演出する
- 中の人・出演者の素顔投稿:アナウンサーや出演者の普段の様子を見せることで、番組そのものより「人」への親近感を先に作る
- 告知・時系列投稿:放送日時やオンエア直前のリマインドなど、視聴行動に直結する実務的な投稿
この4類型は、テレビ局に限らず応用可能です。例えば飲食店であれば「調理シーン(切り抜き相当)」「仕込み中の裏側(オフショット相当)」「スタッフ紹介(中の人相当)」「営業時間・新メニュー告知(告知相当)」と置き換えることができます。重要なのは、すべての投稿を「告知」だけに寄せないことです。告知ばかりのアカウントは短期的な反応は取れても、フォローし続ける動機(人や世界観への興味)が育ちにくくなります。
世界観のつくり方:公式感とゆるさの絶妙なバランス
テレビ局公式アカウントが持つもう一つの特徴は、「放送局としての信頼性」と「SNSらしい肩の力の抜けたトーン」を両立させている点です。テレビ東京アナウンス部のアカウントでは、番組情報やイベント告知といった公式情報に加えて、アナウンサーの普段の姿やSDGsに関する取り組みといった、視聴者との距離を縮めるコンテンツも発信されています。
この「公式だけど、少し素の顔も見せる」バランスは、企業アカウントが陥りやすい2つの失敗の中間を取っている点が学びになります。
- 公式情報だけに徹してしまう失敗:正確ではあるが、フォローする理由(楽しさ・親近感)が生まれにくい
- ゆるさに寄せすぎてブランドの信頼を損なう失敗:話題性はあっても、企業としての情報発信としての説得力を失う
世界観づくりで真似しやすいポイントは、「投稿の目的ごとにトーンを固定する」ことです。告知投稿は端的かつ正確に、オフショットや中の人投稿は口語的でカジュアルに、といった具合に、投稿の型とトーンをあらかじめセットで設計しておくと、担当者が変わってもアカウントの一貫性を保ちやすくなります。
エンゲージメントを生む仕掛け:コメント・保存・参加型施策
Instagramのアルゴリズムにおいて「保存」や「コメント」「シェア」といった行動は、単純な「いいね」以上に重視されると各種運用ノウハウ記事で繰り返し指摘されています。テレビ局系アカウントの投稿の多くが、視聴者にとって「後で見返したい」「友人にシェアしたい」と思わせる短尺・要点凝縮型のリールを中心に構成されているのは、この特性を踏まえた設計だと考えられます。
実際に、消費者の購買行動そのものにも「保存」が強く関わっているという調査結果があります。エクスクリエが実施し、PR TIMESに掲載された調査によると、Instagramで保存した投稿から実際に商品を購入した経験がある人は55%を超え、男性は公式情報を、女性は口コミを重視する傾向が明らかになっています(出典:エクスクリエ「購買行動調査2025〜Instagram編〜」/PR TIMES掲載)。これはテレビ局アカウントに限らず、あらゆる企業アカウントにとって「保存されるコンテンツ設計」が成果に直結することを示すデータといえます。
エンゲージメントを高める具体策としては、以下のような施策が有効です。
- 投稿キャプションの冒頭で「保存推奨」の理由を明示する(例:「放送日を忘れないように保存推奨」)
- コメント欄でのファン同士のやり取りを促す問いかけを入れる(例:「あなたはどのシーンが好きでしたか?」)
- 視聴者参加型の企画(感想募集、投票、ハッシュタグキャンペーンなど)を定期的に実施する
- ストーリーズの質問機能・アンケート機能を使い、双方向コミュニケーションの頻度を上げる
なぜ今Instagram運用が重要なのか:公的データで見る現状
「そもそも今、Instagram運用に力を入れる意味があるのか」という疑問を持つ担当者もいるかもしれません。この点については、公的機関や公式発表のデータが後押しをしてくれます。
総務省が公表した「通信利用動向調査(令和6年)」では、インターネット利用者のうちSNSを利用している人の割合は81.9%に達しており、SNSはすでに一部の層だけのツールではなく、生活インフラに近い存在になっていることが分かります(出典:総務省「令和6年通信利用動向調査」)。
また、Meta社(Facebook Japan)は2019年、Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと公式発表しています(出典:Meta about.fb.com「インスタグラムの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」)。さらにグローバルでは、Meta社が2024年にInstagramの世界月間アクティブユーザー数が20億人を超えたと公表しており、プラットフォームとしての規模は年々拡大を続けています(出典:Meta社公表データ)。
これらのデータが示すのは、「テレビ局だから特別にリーチできる」のではなく、「Instagramというプラットフォーム自体がすでに巨大な生活者接点になっている」という事実です。だからこそ、テレビ東京のような発信力のあるアカウントの「型」を分解し、自社の規模に合わせて応用する価値があります。
テレビ東京の運用から学ぶ、明日から使えるチェックリスト
ここまでの分析を踏まえ、規模の異なる企業や店舗でも今日から着手できるチェックリストをまとめます。
- 自社アカウントの投稿を「告知」「裏側・オフショット」「人(中の人)」「専門情報」の4分類に仕分けてみる
- 直近10投稿のうち「告知」だけの投稿が半分を超えていないか確認する
- 1本、既存の動画・写真素材から15〜30秒の縦型リールを作ってみる
- キャプションの冒頭に「保存したくなる理由」を一文加える
- ストーリーズでアンケート・質問機能を週1回以上使う
- コメントへの返信を「投稿から24時間以内」に行うルールを決める
- 複数アカウント運用が可能であれば、「メイン」と「中の人・スタッフ」でアカウントを分けることを検討する
- 月1回、保存数・コメント数が多かった投稿を振り返り、共通する型を言語化する
このチェックリストのポイントは、フォロワー数やエンゲージメント率といった「結果指標」ではなく、投稿設計や運用フローという「プロセス」に焦点を当てていることです。プロセスを改善し続けることが、結果的に安定した成果につながります。
業種・規模が違っても応用できるポイントと注意点
テレビ東京の運用をそのまま真似ようとして陥りやすい失敗にも触れておきます。
第一に、素材量の違いを前提にする必要があります。テレビ局は日々の番組制作から自然に素材が生まれますが、一般企業や店舗では意図的に「オフショットになる瞬間」を撮影する仕組みを業務フローに組み込まなければ、継続的な素材確保は難しくなります。撮影を特別な作業にせず、日常業務の延長でスマートフォン撮影する習慣を作ることが現実的な第一歩です。
第二に、複数アカウント運用は「運用体制が整っている場合」に限って有効という点です。アカウントを分けても更新が止まってしまえば、フォロワーの期待を裏切ることになります。まずは1つのアカウントの中で投稿の型を分け、運用が安定してから分割を検討する順序が安全です。
第三に、テレビ局特有の「番組という強いコンテンツの核」がない業種では、投稿の核となるテーマ(専門性、こだわり、スタッフの個性など)を先に言語化しておく必要があります。核が曖昧なまま投稿の型だけを真似ても、世界観としての一貫性は生まれません。
まとめ
テレビ東京のInstagram運用は、単なる知名度の強さではなく、用途別のアカウント設計、切り抜き・オフショット・中の人投稿といった型の使い分け、公式感とゆるさのバランス、そして保存・コメントを意識したエンゲージメント設計の積み重ねによって成り立っています。総務省の調査が示すようにSNS利用はすでに生活者の8割超に広がり、Meta社の発表からもInstagramというプラットフォームの規模は拡大を続けています。この土台の上で、自社の規模や業種に合わせて「型」を再現していくことが、着実な運用改善につながります。まずは今回紹介したチェックリストから、明日の投稿で1つでも試してみてください。
さらに他業種・他企業のSNS運用事例を知りたい方は、unyouのSNS運用事例データベース(/cases)で、業種別・目的別の実例を確認することもおすすめします。
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