ホテルや店舗、観光業のSNS担当者から「毎日きれいな写真を投稿しているのに、フォロワーが増えない」「世界観にはこだわっているつもりなのに、いいねや保存につながらない」という相談をよく受けます。特に高単価な宿泊施設や飲食店の場合、闇雲に「映える写真」を並べるだけでは、フォロワーの心を動かすことができず、結果として予約や来店にもつながりにくいという壁にぶつかりがちです。
そんな中、外資系ラグジュアリーホテルでありながら、開業から30年以上経った今もなお国内外の旅行好き・写真好きから根強く支持され続けているアカウントが「パークハイアット東京」の公式Instagram(@parkhyatttokyo)です。本記事では、SNS運用事例データベース「unyou」の編集部として、このアカウントがなぜ長く愛され続けているのかを、公開されている情報とWeb上の公開データをもとに分解し、業種を問わず自社アカウントに応用できるポイントに落とし込んでいきます。実在アカウントの分析であるため、確証の持てないフォロワー数やエンゲージメント率などの数値は本記事には記載しません。
パークハイアット東京とは?分析の前に押さえておきたい基本
パークハイアット東京は、新宿・新宿パークタワーの高層階(39階〜52階)に位置するラグジュアリーホテルで、1994年の開業以来、建築家ジョン・モーフォードによる普遍的でクラシックなインテリアデザインを保ち続けていることで知られています。館内には、映画「ロスト・イン・トランスレーション」(2003年)の舞台としても有名な「New York Bar」、東京の街並みとともに食事が楽しめる「Peak Lounge」、屋内プールを備えたスパ「Club on the Park」など、写真映えする空間資産を数多く持っています。
公式Instagramアカウントのプロフィールには「Your Home In Tokyo – A Timeless Classic Refined」という一文が掲げられており、これは単なるキャッチコピーではなく、投稿全体を貫くトーン&マナー(トンマナ)そのものになっています。つまりこのアカウントは、「ホテルの宣伝」ではなく「ブランドの世界観をそのまま切り取ったメディア」として運用されている点が、まず最初の特徴です。

なぜ「パークハイアット東京」のアカウントは支持されるのか
分析すると、支持される理由は大きく3つに整理できます。
1つ目は、圧倒的なトンマナの統一感です。 客室からの夜景、New York Barのグラス越しの一枚、館内アートのディテールなど、投稿ジャンルは多岐にわたりますが、色味・光の質感・余白の取り方が一貫しており、フィード全体が1冊の写真集のように見えます。
2つ目は、「ここでしか撮れない」場所性の強さです。 新宿の高層階から見える都市の夜景や富士山、季節ごとに表情を変える窓外の景色は、他のホテルには真似できない資産です。パークハイアット東京はこの「自社にしかない資産」を毎回違う角度で見せることで、飽きさせない投稿を実現しています。
3つ目は、ホテルが持つ物語性の活用です。 映画の舞台になった歴史や、開業以来変わらないデザイン哲学など、「ブランドストーリー」を投稿の端々ににじませることで、単なる宿泊施設ではなく「時間を超えて愛される場所」というポジショニングを補強しています。
投稿の型を分解する:写真・構図・キャプションのパターン
プロフィールや公開されている投稿の傾向を見る限り、投稿は概ね次のような「型」に整理できます。これは他業種のアカウントにもそのまま応用できる分類です。
| 投稿の型 | 狙い | 応用のポイント |
|---|---|---|
| 客室・眺望ショット | ブランドの世界観と非日常感を伝える | 同じ構図・同じ時間帯(マジックアワーなど)で撮ることでシリーズ感を出す |
| レストラン・バーの一皿/一杯 | 五感を刺激し「行ってみたい」を喚起する | 皿の上だけでなく背景(景色・空間)を必ず入れて場所性を伝える |
| 季節・自然の変化 | 定期的な再訪・再フォローの動機をつくる | 桜・新緑・紅葉・雪など「今しか見られない」訴求で保存を狙う |
| インテリア・アートのディテール | ブランドのこだわりを言語化せずに伝える | キャプションは短く、写真に語らせる余白を残す |
| おもてなし・スタッフの所作 | 「人」の温度感を加え、企業らしさを和らげる | 過度な演出を避け、自然な一瞬を切り取る |
このように「何を撮るか」だけでなく「同じ型を繰り返すことでシリーズ化する」設計になっている点が重要です。単発で映える写真を投稿するのではなく、フィード全体で一つの世界観を構築するという発想が、真似できる最大のポイントです。
世界観のつくり方:ブランドをSNSの文法に翻訳する技術
パークハイアット東京の運用から学べるのは、「ブランドの価値観をSNSの文法に翻訳する」という考え方です。具体的には次のような技術に分解できます。
- 色味とトーンの統一:明るすぎず、暖色寄りの落ち着いた色調で統一し、フィード全体の「温度」を揃える
- 余白の使い方:情報を詰め込みすぎず、写真に「間」を残すことで高級感を演出する
- キャプションの節度:セール訴求や過度な形容詞を避け、事実と情景描写を中心にした短文でまとめる
- 多言語対応:インバウンド需要も意識し、日本語・英語を併記することで海外フォロワーにもリーチする
- 投稿頻度の一貫性:毎日大量投稿するのではなく、質を保ちながら一定のペースを守る
これらは高級ブランドに限らず、飲食店や地域の小規模事業者でも「自社らしい色・余白・言葉づかい」を決めて守り続けるだけで再現可能な技術です。
エンゲージメントを高める仕組み:保存・共有されるコンテンツ設計
SNS上で「フォローされる企業アカウント」に共通する要素は、実は公開データからも裏付けられています。SAKIYOMI社がPR TIMESで公表した「10代〜20代若者の『Instagram企業アカウントのフォロー状況の調査』」(2021年7月28日発表)によれば、企業アカウントをフォローするきっかけとして最も多かった回答は「行ってみたい」「買ってみたい」「食べてみたい」といった感情を動かされたことであり、各ジャンルで4割以上のユーザーがこれを挙げています。次いで多かったのが「有益な情報を得られるから」で、約3割のユーザーが回答しています。
この調査結果を踏まえると、パークハイアット東京のような投稿は、まさに「感情を動かすビジュアル」を軸にしており、これが保存・共有につながりやすい設計になっていると考えられます。宣伝色の強い「予約はこちら」型の投稿よりも、「泊まってみたい」「この景色を見てみたい」という感情を先に喚起し、行動導線(プロフィールのリンクやハイライト)は控えめに用意しておくという設計思想が、真似すべきポイントです。
また、位置情報タグやハッシュタグを絞り込み、ゲストが撮影した写真をストーリーズで丁寧に紹介する「UGC(ユーザー生成コンテンツ)の再共有」も、企業アカウントらしさを和らげ、第三者視点の信頼感を加える手法として有効です。
数字で見る、なぜ今ホテル・観光業がInstagram運用に力を入れるべきか
感覚論だけでなく、公開されている統計からもInstagram運用の重要性は裏付けられます。
まず、総務省「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によれば、Instagramの利用率は全年代で52.6%にのぼり、年代別に見ると20代が78.0%、10代が75.0%、30代が70.5%と、旅行やホテル選びの意思決定層である若年〜中堅層で特に高い水準となっています。
| 年代 | Instagram利用率 |
|---|---|
| 10代 | 75.0% |
| 20代 | 78.0% |
| 30代 | 70.5% |
| 40代 | 67.0% |
| 50代 | 52.7% |
| 60代 | 34.7% |
| 全年代 | 52.6% |
出典:総務省「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
また、Instagramを運営するMeta(旧Facebook Japan)は2019年6月の公式発表で、日本国内の月間アクティブアカウント数が2019年3月時点で3,300万を突破したことを明らかにしています。これは発表当時からさらに時間が経過した現在、旅行・宿泊業にとってInstagramが無視できない生活インフラの一部になっていることを示す一つの根拠と言えます。
さらに、Instagram企業アカウントの運用実態について、テテマーチ株式会社はPR TIMESを通じて5,971の企業アカウントを業界別に分析したデータを公表しており、業界ごとに投稿傾向や運用スタイルに違いがあることを示しています。ホテル・旅行業は写真・映像とストーリー性の親和性が特に高い業界であり、パークハイアット東京のような「世界観重視型」の運用がフィットしやすい領域だと考えられます。
明日から試せる実践チェックリスト
自社のInstagram運用に落とし込むための具体的なチェックリストを用意しました。まずは1つずつ、できるところから着手してみてください。
- 自社の色味・光の質感・余白の取り方を3枚の過去投稿で見比べ、統一感があるか確認する
- 「自社にしかない資産」(景色・空間・人・歴史など)を3つ書き出し、まだ投稿していないものがないか棚卸しする
- 直近10投稿のキャプションを見直し、セール色の強い表現がないかチェックする
- 季節や時間帯で変化する要素(自然光・メニュー・装飾)を年間カレンダーに落とし込み、投稿ネタを事前に確保する
- ハッシュタグと位置情報タグを整理し、乱用せず狙ったユーザー層に届く数に絞る
- ゲストやお客様が投稿してくれた写真・動画を、許諾を得た上でストーリーズやハイライトで紹介する仕組みを作る
- 「予約はこちら」型の投稿とセットで、感情を動かす投稿(景色・体験・物語)の比率を意識的に高める
- 月に1度、フィード全体をスマホの画面でスクロールして「1冊の写真集」に見えるか客観的にチェックする
自社に置き換える際の注意点
ここで注意したいのは、パークハイアット東京の運用は「高単価・高級ブランド」だからこそ成立している部分もあるという点です。すべての業種がそのまま同じトーンを真似る必要はありません。重要なのは「世界観を統一する」という考え方そのものであり、色味やキャッチコピーを丸ごとコピーすることではありません。自社の客層・価格帯・提供価値に合わせて、「どんな感情を、どんな型で、どのくらいの頻度で伝えるか」を設計し直すことが、真に応用可能なポイントです。
まとめ
パークハイアット東京のInstagram運用から見えてくるのは、特別なバズテクニックではなく、「ブランドの世界観を一貫して翻訳し続ける」という地道な設計の積み重ねです。投稿の型を決めてシリーズ化すること、自社にしかない資産を使い回すこと、感情を動かすビジュアルを宣伝色より優先すること――これらは総務省やPR TIMES掲載の各種調査が示すユーザー心理とも合致しており、業種や規模を問わず取り入れられる普遍的な考え方です。まずは自社の投稿を1冊の写真集として見返すところから始めてみてください。
同業種であるホテル・旅行業の他のSNS運用事例は、unyou(https://unyou.media/cases)の事例データベースでも多数紹介しています。自社に近い規模・客層のアカウントを探して、投稿の型やキャプションの作り方を比較してみるのもおすすめです。
あわせて読みたい
ABOUT UNYOU
unyou は、SNS運用の「成功事例」が集まるデータベースです
Instagram・X・TikTok で実際に成果を出しているアカウントを、業種 × トンマナ × プラットフォームで検索・比較できます。掲載しているのは、世の中に公開されている実在アカウントの分析 600件超。 「自社の業種で何が伸びているのか」を、感覚ではなくデータで確かめられます。
無料相談
自社に合ったSNS運用、プロに相談してみませんか?
「何から始めればいいかわからない」「今の運用が正しいか不安」「外注すべきか迷っている」 ——そんなお悩みに、unyouが蓄積した実運用データをもとにお答えします。 相談は無料、しつこい営業はありません。
無料でSNS運用を相談する