日本相撲協会(Japan Sumo Association)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/13
「伝統文化を扱うアカウントは、若い世代にどう届けばいいのか分からない」「格式やしきたりを大事にしたいけれど、堅苦しいだけの投稿ではフォロワーが増えない」——スポーツ団体や老舗店舗、伝統工芸などのSNS担当者からは、こうした悩みをよく聞きます。歴史や格式を守りながら、SNSでは親しみやすさも出したい。この両立は、想像以上に難しいテーマです。
そんな中で、大相撲を統括する公益財団法人日本相撲協会の公式Instagram(@sumokyokai)は、伝統競技でありながらSNSを積極的に活用し、稽古風景や取組の裏側、力士の素顔を発信し続けている好例です。本記事では、公開されている運用の経緯や実際の投稿内容、公的機関の統計データをもとに、日本相撲協会のInstagram運用を分解し、他業種・他店舗が明日から応用できるポイントに落とし込みます。
日本相撲協会のInstagramが多くの企業から注目される理由
日本相撲協会は、Twitterを2011年から運用していたのに対し、Instagramの運用開始は2017年9月からと後発です(出典:株式会社GENEROSITYによる導入事例「日本相撲協会」ケーススタディ)。つまり、すでにTwitterで一定のファンコミュニケーションの土台ができていたところに、あえてInstagramという新しいチャネルを追加した形です。
この経緯が示唆するのは、「1つのSNSで完結させるのではなく、SNSごとに役割を分けて使う」という発想です。Twitterで速報性のある実況・告知を担い、Instagramでは稽古風景や力士の日常、伝統文化としての大相撲の魅力をビジュアルで見せる——というように、プラットフォームの特性に合わせて発信内容を出し分けているのが特徴です。これは、複数のSNSを運用している企業・店舗にとって非常に参考になる考え方です。

運用の背景:本場所への若年層集客とインバウンド対応という2つの狙い
日本相撲協会がInstagram運用に力を入れる背景には、明確な課題意識があります。導入事例によれば、大相撲の来場者に比較的若年層が少ないことから、Instagramユーザー層にも大相撲に興味を持ってもらうきっかけを作ることが目的とされています(出典:株式会社GENEROSITY「日本相撲協会」ケーススタディ)。
実際に2018年には、SNSフォトプリントサービス「SnSnap」と、その場で動画がもらえるカメラサービス「MirrorSnap」を導入し、「#相撲」のハッシュタグを付けて投稿してもらうキャンペーンを、年6回開催される本場所のうち全六場所で実施しています(出典:PR TIMES掲載、株式会社GENEROSITYのプレスリリース)。これは「会場に来た人が自然にSNSへ投稿したくなる仕掛け」を用意した施策であり、単なる公式アカウントからの発信だけでなく、来場者自身をコンテンツの発信源にした点が重要です。
もう一つの追い風が、訪日外国人観光客からの人気の高まりです。国技館では観客の1割強が外国人観光客という状況になっており(出典:SPAIA「大相撲は海外でも人気が急上昇。その実態に迫ります」)、モンゴル、ジョージア、中国、ロシア、エジプト、ブラジルなど世界各国出身の力士が増えていることも、海外からの関心を後押ししています。さらに2023年にNetflixで配信されたドラマ『サンクチュアリ』の世界的ヒットが、相撲人気を本格的に押し上げたとも報じられています(出典:NewsPicks「インバウンドが熱狂!相撲が『高付加価値化』に成功している理由」)。ビジュアル中心で言語の壁を越えやすいInstagramは、こうした海外ファンに直接リーチできるプラットフォームとして理にかなっています。
投稿の"型"を分解する:繰り返し使われているフォーマット
伝統文化や専門性の高い業界のアカウントほど、「何を投稿すればネタ切れしないか」に悩みがちです。日本相撲協会のアカウントを含め、大相撲関連の公式発信で繰り返し使われている投稿の型を整理すると、以下のように分類できます。
| 投稿タイプ | 具体的な内容 | 狙い | 応用できる業種の例 |
|---|---|---|---|
| 稽古・舞台裏 | 申し合い稽古、すり足の稽古、巡業先での練習風景 | 「表舞台では見られない姿」で親近感を演出 | 飲食店の仕込み風景、工房の制作過程 |
| 本番ハイライト | 取組の一場面、決まり手、勝敗の瞬間 | 競技そのものの迫力を伝え新規層を惹きつける | イベント本番の見せ場、接客の瞬間 |
| 人物・素顔 | 力士のオフショット、表情、インタビュー的な投稿 | 「人」に感情移入してもらいファン化を促す | スタッフ紹介、職人の人柄紹介 |
| 伝統・文化解説 | 決まり手の説明、行事の役割、化粧まわしなどの由来 | 業界特有の知識を分かりやすく伝え専門性を示す | 老舗の道具・技法の由来説明 |
| 巡業・地域連携 | 各地の巡業先での様子、地域とのふれあい | 地域とのつながりをアピールし新規接点を作る | 出店・催事の様子、地域イベント参加 |
| ユーザー参加型 | ハッシュタグキャンペーン、来場者の投稿を活用 | フォロワー自身が発信者になる仕組みづくり | 来店フォトキャンペーン、口コミ促進施策 |
この型で共通しているのは、「知っている人向けの専門的な内容」と「初めて見る人でも楽しめるビジュアル」を意図的に混ぜている点です。稽古や決まり手の解説のような専門性の高い投稿だけに偏らず、力士の素顔や巡業先の雰囲気といった「誰でも見て楽しい」投稿を織り交ぜることで、コアファンと新規層の両方を取りこぼさない設計になっています。
世界観のつくり方:伝統と親しみやすさを両立するトーン設計
日本相撲協会のアカウントが伝統文化のアカウントとして参考になるのは、格式を落とさずに親しみやすさを出す「トーンの使い分け」です。土俵入りや行事の所作といった格式のある場面はそのままの荘厳さを保ちつつ、稽古場や巡業先の様子ではリラックスした表情や日常的な一コマを見せる。この緩急が、フォーマルになりすぎず、かといって軽薄にもならないバランスを生んでいます。
伝統文化・老舗・専門店のSNS担当者が陥りやすい失敗は、「格式を守らなければ」という意識が強すぎて、投稿がすべて告知や説明調になってしまうことです。逆に若年層向けを意識しすぎて悪目立ちする過度にカジュアルな演出をすると、既存ファンや業界内からの信頼を損ないかねません。日本相撲協会の運用は、この中間——「伝統的な世界観の中に、人間味のある一瞬を差し込む」というバランス感覚が、老舗ブランドや専門性の高い業種にとって特に参考になります。
エンゲージメントを高める施策:ハッシュタグキャンペーンと参加型の仕掛け
先述の「SnSnap」「MirrorSnap」を使ったキャンペーンは、来場者が会場で撮った写真・動画にハッシュタグを付けて投稿する仕組みで、公式アカウントが一方的に発信するだけでなく、ファン自身がコンテンツの担い手になる設計です(出典:PR TIMES、株式会社GENEROSITYのプレスリリース)。これにより、公式アカウントのフォロワー以外の目にも「#相撲」のハッシュタグを通じて情報が届く、いわゆるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の拡散効果が期待できます。
このような参加型施策のポイントは、「難しい応募条件を課さない」ことです。来場して写真を撮り、ハッシュタグを付けて投稿するだけ、というシンプルな導線だからこそ、多くの来場者が気軽に参加できます。企業や店舗がキャンペーンを設計する際も、応募条件を複雑にしすぎず、来店・利用の延長線上で自然に投稿してもらえる仕組みを意識すると良いでしょう。
統計で見る、いま企業・店舗がInstagram運用に力を入れるべき理由
日本相撲協会のような伝統ある団体がSNS発信に力を入れる背景には、日本国内のSNS利用状況の変化があります。総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、インターネット利用者のうち「SNS(無料通話機能を含む)の利用」の割合は81.9%と、インターネットの利用目的の中で最も高い項目になっています。年代別に見ると20代では利用率が90%を超え、30代でも約85%、これまでSNS利用が少ないとされてきた60代でも75%を超える水準まで普及が進んでいます(出典:総務省「令和6年版情報通信白書」)。
つまり、SNSはもはや若年層だけのツールではなく、シニア層を含めた幅広い世代への接点になっているということです。日本相撲協会のように、もともと客層に高年齢層が多い業界であっても、SNSを新規の若年層獲得だけでなく、既存ファン層との関係維持にも活用できる土壌が整っていると言えます。
また、Instagramというプラットフォーム自体の規模も見逃せません。運営元のMeta社は2022年第7〜9月期の決算発表で、Instagramの全世界の月間アクティブユーザー数(MAU)が20億人を突破したことを明らかにしています(出典:Meta社 2022年第3四半期決算発表)。これだけの規模のプラットフォームで発信を続けることは、国内だけでなく海外ファンとの接点を作るうえでも大きな意味を持ちます。前述の通り、大相撲は国技館の観客の1割強を外国人観光客が占めるまでになっており、ビジュアル起点で言語の壁を越えやすいInstagramは、インバウンド需要を取り込むうえでも理にかなったチャネルです。
明日から真似できる実践チェックリスト
日本相撲協会の運用から抽出できる要素は、業種を問わず応用可能です。自社・自店のアカウントに当てはめて、以下をチェックしてみてください。
- SNSごとに役割を分けているか(速報・告知用、世界観訴求用など、目的を混在させていないか)
- 「表舞台」だけでなく「舞台裏・仕込み・準備」の投稿を月に1本以上入れているか
- スタッフや職人など「人」にフォーカスした投稿を定期的に発信しているか
- 業界の専門知識を、初心者にも分かる言葉で解説する投稿を用意しているか
- 来店・来場者が気軽に参加できるハッシュタグキャンペーンを設計しているか(応募条件は複雑にしすぎない)
- 投稿のトーンが「フォーマルすぎる」「カジュアルすぎる」のどちらかに偏っていないか、定期的に見直しているか
- 海外からの関心がある業種であれば、翻訳キャプションや多言語ハッシュタグを添えているか
- 定点観測できる投稿カテゴリ(稽古・本番・人物・解説・地域連携・参加型など)を自社なりに整理し、ネタ切れを防ぐ仕組みを作っているか
このチェックリストを月次の振り返りに組み込むだけでも、「なんとなく投稿を続けている」状態から、意図を持った運用へ切り替えるきっかけになります。
まとめ
日本相撲協会のInstagram運用は、①Twitterで速報性、Instagramで世界観訴求という役割分担、②来場者を巻き込んだハッシュタグキャンペーンによるUGC創出、③稽古や素顔といった「舞台裏」と土俵入りなどの「格式」を織り交ぜたトーン設計、④若年層とインバウンドという2つの新規層への意識的なアプローチ、という要素が組み合わさって成り立っています。
これらは特別な予算やノウハウがなくても、投稿の企画段階で意識するだけで取り入れられる考え方です。伝統や専門性を大切にしながらSNSでの発信に悩んでいる担当者の方は、まず本記事のチェックリストから、自社のアカウントに足りない要素を1つずつ確認してみてください。
より業種に特化した運用事例を知りたい方は、unyouの事例データベース(/cases)でスポーツ・地域団体・伝統文化系アカウントの他事例もあわせてご覧ください。
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