HubSpotのInstagramアカウントを見て「BtoBのSaaS企業なのに、なぜこんなに投稿が拡散されているんだろう」と感じたことはないでしょうか。自社もSNS運用を頑張っているのに、フォロワーは増えず、投稿への反応も薄い。特にBtoB・IT業界では「そもそもInstagramに向いていないのでは」という迷いを抱えている担当者も少なくありません。
しかし、HubSpotのアカウントを丁寧に分解していくと、そこには偶然ではなく、明確な「型」と「世界観設計」があることが見えてきます。本記事では、公開情報をもとにHubSpotのInstagram運用を分析し、業種を問わず応用できるポイントに落とし込みます。フォロワー数やエンゲージメント率など、確証の持てない数値は掲載せず、投稿の構造や運用思想に焦点を当てて解説します。
HubSpotとは?Instagram運用の前提を押さえる
HubSpotは、CRM・マーケティングオートメーション・営業支援ツールなどを提供するアメリカ発のSaaS企業です。もともとインバウンドマーケティングという概念を広めた企業としても知られ、自社ブログや教育コンテンツ「HubSpot Academy」を通じて、マーケティング担当者・営業担当者に向けた情報発信を長年続けてきました。
この「教育コンテンツを主軸にした情報発信」という土台があるからこそ、InstagramというビジュアルSNSに進出した際にも、単なる商品宣伝ではなく「見て役立つ」「見て共感できる」投稿を作れているのが特徴です。BtoB企業がInstagramで苦戦しがちな理由の多くは「何を発信すればいいか分からない」ことにありますが、HubSpotはブログ・Academy・自社調査レポートという既存資産を、Instagram向けに再編集する形でコンテンツの土台を作っています。

なぜ支持されているのか:世界観と発信軸
HubSpotのInstagramを特徴づけているのは、大きく分けて次の3つの発信軸です。
1つ目は「マーケティング・営業に関するノウハウの図解化」です。ブログ記事や調査レポートの要点を、カラフルなイラストとインフォグラフィックにまとめて発信するスタイルが一貫しています。難しい概念を短時間で理解できる形に翻訳している点が特徴です。
2つ目は「オフィスカルチャー・働く人にフォーカスした投稿」です。社員の日常やチームの雰囲気を切り取ったコンテンツを織り交ぜることで、「無機質な企業アカウント」ではなく「人が見える企業アカウント」という印象を作っています。
3つ目は「マーケター・ビジネスパーソンあるあるのユーモアコンテンツ」です。会議、締め切り、KPIといった仕事あるあるをネタにしたミーム的な投稿を挟むことで、堅い情報発信の合間に共感と親近感を生み出しています。
この3つの軸を統一されたブランドカラー・イラストタッチで貫いていることが、「情報発信アカウント」でありながら「見ていて飽きないアカウント」として成立している理由だと分析できます。
投稿の型を分解する
HubSpotの投稿を機能別に整理すると、以下のような型に分解できます。自社アカウントの投稿カレンダーを組む際の参考にしてください。
| 投稿タイプ | 目的 | フォーマットの特徴 | 自社で真似するポイント |
|---|---|---|---|
| ノウハウ解説カルーセル | 教育・信頼獲得 | 表紙で結論提示→複数枚で要点分解 | ブログ記事の要点を3〜7枚に再編集する |
| データ・調査結果の図解 | 権威性・保存されやすさ | グラフや数値をイラスト化 | 自社調査や業界データを可視化する |
| オフィスカルチャー紹介 | 親近感・採用ブランディング | 実際の社員・オフィスの様子 | スタッフの一言コメントを添える |
| 仕事あるあるユーモア | エンゲージメント・拡散 | イラストやテキストミーム | 業界特有の「あるある」をネタ化する |
| 動画・リール | リーチ拡大 | 短尺・テンポの速い編集 | 1つのTipsを15〜30秒で完結させる |
ポイントは、どの投稿タイプも「単発」で終わらせず、シリーズ化・フォーマット固定化されていることです。フォーマットが決まっていると、フォロワーは「あ、いつものやつだ」と認識しやすくなり、投稿の巡回速度が上がります。
エンゲージメントを生む具体的な仕掛け
HubSpotの運用から読み取れるエンゲージメント施策は、特別な裏技ではなく、地道な設計の積み重ねです。
まず、カルーセル投稿における「1枚目の結論提示」です。SNSでは最初の1枚で興味を持たれなければ最後まで見てもらえません。HubSpotの投稿は1枚目に「結論」や「問い」を置き、続きを見たくなる構成にしています。
次に、ユーモアコンテンツとノウハウコンテンツの比率設計です。情報発信ばかりだと「勉強しなければ見られない」アカウントになり疲弊されますが、共感ネタを挟むことで気軽に見てもらえる導線ができます。
さらに、コメント欄を活用した対話です。BtoB企業のアカウントであっても、投稿内容に対する質問やあるあるへの共感コメントに反応することで、フォロワーとの距離を縮めています。これはSNSアルゴリズム上も、保存・コメント・滞在時間といった指標に良い影響を与えると考えられています。
日本のSNS環境とデータで見る、Instagram活用の重要性
こうした運用が有効に働く背景には、SNSの利用実態があります。総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、LINEに次いでYouTube・Instagramが幅広い年代で高い利用率を維持していると報告されており、Instagramは若年層だけでなく30〜40代のビジネスパーソン層にもリーチできるプラットフォームであることが分かります。
またMeta社は、Instagramの世界の月間アクティブアカウント数が20億を超えたことを公表しており、単なる若者向けアプリではなく、グローバル規模の情報接触チャネルへと成長していることが分かります。BtoB企業であっても、意思決定者や担当者個人がプライベートで日常的にInstagramに接触している以上、そこでの発信が指名検索や採用ブランディングに波及する可能性は十分にあります。
さらにHubSpot自身が発信する調査レポート「Social Media Trends」でも、短尺動画や「作り込みすぎない・人間味のあるコンテンツ」が消費者・ビジネスパーソン双方の関心を集める傾向にあると指摘されています。HubSpotのInstagram運用は、この自社発信の知見を自ら実践している事例とも言えます。
これら3つのデータが示すのは、「Instagramは業界を問わず接触機会の多いチャネルであり、かつ完璧な作り込みよりも人間味のあるコンテンツが評価されやすい」という共通の潮流です。
明日から真似できる実践ステップ(チェックリスト)
HubSpotの分析から得られた要素を、自社アカウントに落とし込むための実践ステップをまとめます。
- 既存のブログ記事・調査データ・FAQをリストアップし、カルーセル化できそうなネタを月5本以上ピックアップする
- 投稿を「ノウハウ」「カルチャー・人物」「あるあるユーモア」の3カテゴリーに分類し、週の投稿比率を決める(例:ノウハウ2、カルチャー1、ユーモア1)
- カルーセルの1枚目は「結論」または「読者の悩み」を一言で提示するフォーマットに統一する
- ブランドカラー・フォント・イラストタッチを3〜5色以内に固定し、投稿ごとの世界観のブレをなくす
- 自社の「業界あるある」を10個書き出し、月1〜2本のペースでユーモア投稿に変換する
- コメント・DMへの返信ルールを決め、24時間以内の一次返信を目安にする
- 月1回、保存数・コメント数・シェア数が高かった投稿を振り返り、型として継続するか判断する
いきなり全てを完璧に整える必要はありません。まずは「投稿カテゴリーの3分類」と「1枚目に結論を置く」の2点だけでも導入すると、投稿の一貫性が大きく変わります。
自社アカウントに落とし込むときの注意点
HubSpotの型をそのまま真似ても、業種やブランドイメージが異なれば同じようには機能しません。特に注意したいのは以下の点です。
第一に、ユーモアコンテンツは業界・顧客層に合った「あるある」でなければ空振りします。マーケター向けのネタをそのまま流用するのではなく、自社の顧客が日常的に感じている悩みや小さなストレスを言語化することが重要です。
第二に、カルチャー発信は「見せかけ」ではなく実態が伴っている必要があります。社員が写る投稿は好感度が高い一方、実態と乖離した演出は逆効果になりかねません。
第三に、継続できる更新頻度を最初に設計することです。型を作っても運用が止まってしまえば意味がありません。無理のない本数から始め、社内の制作フローを固めることを優先してください。
自社の業種でどのような発信が実際に成果につながっているかを知りたい場合は、SNS運用事例データベース「unyou」の事例一覧で、業界の近い企業・店舗の運用事例を確認してみることをおすすめします。IT・SaaS業界に限らず、小売・飲食・美容など幅広い業種のInstagram・SNS運用パターンを比較できます。
まとめ
HubSpotのInstagram運用が支持されている背景には、特別なバズ施策ではなく、「ノウハウの図解化」「カルチャー発信」「共感ユーモア」という3軸を、統一された世界観のもとで継続的に発信し続ける地道な設計がありました。BtoB・IT業界だからInstagramに向いていないと考える前に、既存のブログや調査データをビジュアル資産として再編集する視点、そして投稿カテゴリーを型として固定する視点を取り入れてみてください。
まずは本記事のチェックリストから、無理なく始められる項目を1つ選んで実践することが、アカウントの世界観を育てる第一歩になります。
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