「他社の投稿は"世界観がある"のに、うちのアカウントは商品写真を並べているだけになってしまう」「フォロワーは増えているのに、コメントもいいねも思ったほど伸びない」——SNS担当者から、こうした悩みを聞く機会は少なくありません。とくに美容・コスメ業界は競合アカウントが多く、似たようなビジュアルの中でどう差別化するかに頭を悩ませている方が多いはずです。
そんなときに参考になるのが、北海道発の化粧品ブランド「SHIRO(シロ)」の運用です。SHIROは派手なキャンペーンやインフルエンサー起用に頼るのではなく、ブランドの世界観そのものを丁寧に積み上げるコミュニケーションで、美容業界の中でも独自のポジションを築いてきたブランドとして知られています。本記事では、公開情報をもとにSHIROのInstagram運用を分解し、企業や店舗のSNS担当者が自分たちのアカウントに応用できるポイントを整理します。なお、フォロワー数やエンゲージメント率など裏付けのとれない数値は本記事では扱わず、公開されている事実と統計データに基づいて解説します。
SHIROというブランドの成り立ちを知っておく
運用手法を真似る前に、まずSHIROというブランドの背景を押さえておくことが重要です。SHIROは2009年、北海道・砂川市で「LAUREL(ローレル)」というブランド名でスタートしました。もともとは土産物店から始まった会社が、北海道産の素材にこだわった石けんやコスメを展開するようになり、2015年にブランド名を「shiro」へ変更、2019年のブランド10周年を機に現在の「SHIRO」へとリニューアルしています(SHIRO CO., LTD.公式サイト「シロの歴史を辿ってみました」より)。
ブランドを牽引してきた今井浩恵氏は、ローレル時代から経営に携わり、2021年に社長を退任した後は会長・ブランドプロデューサーとしてクリエイティブ全体を統括する立場に移っています。経営者自身がブランドの世界観づくりに深く関わり続けている点は、SHIROの発信に一貫性が生まれている背景のひとつと考えられます。
この「土地・素材・人の物語からブランドが育ってきた」という成り立ちを理解しておくと、SHIROのSNS発信がなぜ"作り込まれた広告"ではなく"自然体の世界観"に見えるのかが理解しやすくなります。

SHIROのInstagramが支持されている3つの理由
公開されているSHIROの投稿やブランドに関する記事・分析を踏まえると、支持される理由は大きく3つに整理できます。
1. ビジュアルトーンが徹底して統一されている SHIROの投稿は、白を基調とした余白の多い写真、装飾を削ぎ落としたプロダクト撮影、季節の自然物を添えたカットなど、フィード全体を通じて色数とトーンが揃っています。1枚1枚の投稿単体ではなく「フィード全体で世界観を見せる」設計になっているのが特徴です。
2. 商品説明ではなく"物語"として発信している 香りや使用感といったスペックの説明に終始せず、香りにまつわるストーリーや、使うシーンの提案として投稿を組み立てているのが特徴です。これは美容・化粧品ブランドが特に意識すべき点で、成分や効能を羅列するだけの投稿は保存・共有されにくく、世界観への共感がフォローの動機になりにくい傾向があります。
3. トレンドを追いすぎず、ブランドの軸をぶらさない SHIROに関するブランディング分析記事(note「SHIROがつくっている『世界観』」など)では、SHIROの姿勢として「トレンドを追わない」「声高に主張しない」「自然や人に対して誠実である」という一貫した態度が指摘されています。SNS運用において短期的なバズを狙うと世界観が崩れやすくなりますが、SHIROは軸を保つことを優先しているように見受けられます。
投稿の"型"を分解する
SHIROのような一貫性のある発信は、感覚だけで作られているわけではなく、投稿の役割を意図的に使い分けていると考えられます。企業アカウントが真似しやすいように、投稿タイプごとの狙いを整理すると次のようになります。
| 投稿タイプ | 主な目的 | 自社アカウントで真似できるポイント |
|---|---|---|
| プロダクト単体カット | ブランドの世界観・トーンを印象づける | 撮影の色数・背景・光の当て方をルール化し、毎回同じトーンで統一する |
| 使用シーン・ライフスタイルカット | 商品を使った後の生活イメージを想起させる | 「使う前」ではなく「使った後にどう感じるか」を写真や言葉で見せる |
| 香り・素材のストーリー投稿 | 情緒的な共感・保存を促す | スペック説明で終わらせず、開発背景や素材への想いを一言添える |
| Instagramライブ・新作紹介 | ロイヤル顧客とのリアルタイムな接点をつくる | 新商品の初出し情報をライブで先出しし、フォロワー限定感を演出する |
| UGC・お客様の投稿の紹介 | 第三者視点での信頼を補強する | ハッシュタグを用意し、ユーザー投稿を定期的にリポストする運用ルールを作る |
このように投稿を「世界観訴求」「ストーリー訴求」「関係構築」の3つの役割に分けて考えると、闇雲に商品写真を並べる運用から抜け出しやすくなります。
世界観をつくるための具体的な手法
「世界観をつくりましょう」と言われても、何から手をつければよいか分からないという声はよく聞きます。SHIROの発信から読み取れる具体的な手法を、実践しやすい形に落とし込むと以下のようになります。
- 色数を減らす:使用する色を2〜3色に絞り、フィルターや加工のトーンを統一する。白・生成り・ベージュなど近い色味で構成すると、写真の質がまちまちでも世界観が保たれやすくなります。
- 余白を恐れない:商品情報を詰め込みすぎず、あえて余白を残す。情報量を減らすことが、かえって「丁寧なブランド」という印象につながります。
- 言葉のトーンを統一する:投稿文の語尾や一人称、絵文字の使用ルールを決めておく。担当者が変わっても文体がぶれないようにすることが、長期的な世界観の一貫性を支えます。
- "なぜ"を語る:素材を選んだ理由、パッケージを変えた理由など、意思決定の背景を言語化して発信する。単なる新商品告知よりも共感や保存を得やすくなります。
- 経営者・つくり手の思想を薄く混ぜる:SHIROのように経営層がブランドの世界観づくりに深く関与している場合、その思想を完全に隠すのではなく、インタビューや記事という形で間接的に発信に反映させると、ブランドに厚みが生まれます。
エンゲージメントを高めるコミュニケーション設計
世界観の統一と並んで重要なのが、フォロワーとの関係構築です。SHIROの運用で参考になるのは、一方通行の発信で終わらせず、コメント対応やUGCの活用、Instagramライブといった双方向のコミュニケーションを組み合わせている点です。
一般的な傾向として、Instagramは「見るメディア」から「触れる・体験するメディア」へと役割が広がっていると指摘されており(PR TIMES掲載、株式会社eclore「Instagram運用チームの組織構造と役割分担の実態を解明」調査、2025年)、企業アカウントにおいてもコメント返信やライブ配信、保存・シェアを促す設計など、閲覧だけで完結しない運用体制が求められる傾向が強まっています。特にコスメ・美容ジャンルは購買前の情報収集にSNSが使われやすく、双方向のやり取りが購買意欲に直結しやすい領域です。
また、日本国内におけるSNS利用は世代を問わず広がっており、総務省「令和6年版情報通信白書」でも、SNSは若年層だけでなく幅広い年代の生活情報インフラとして定着していることが指摘されています。美容ブランドのアカウントであっても、特定の年代だけをターゲットにするのではなく、幅広い層の目に触れる前提で情報設計をする必要があります。
なお、Instagramを運営するMeta社は2018年6月、全世界の月間アクティブアカウント数が10億を突破したと公式発表しており、国内についても2019年6月の発表で月間アクティブアカウント数が3,300万を突破した(2019年3月時点)としています。これらの公式発表からも分かる通り、Instagramは一時的な流行のプラットフォームではなく、中長期でブランドとの接点を育てる場として位置づけて運用する価値があるSNSだといえます。
明日から試せるチェックリスト
SHIROの事例から抽出したポイントを、実際のアカウント運用に落とし込むためのチェックリストとしてまとめます。
- 直近9〜12投稿をグリッド表示で見返し、色数が3色以内に収まっているか確認する
- 投稿キャプションの一人称・語尾・絵文字ルールを1枚のドキュメントにまとめ、複数人で運用しても文体がぶれないようにする
- 直近の投稿のうち「スペック説明だけの投稿」が何割あるかを数え、半分以上ならストーリー訴求型の投稿に置き換える
- 商品開発や仕入れの"なぜ"を語れるネタを月1本以上ストックしておく
- 自社商品にまつわるハッシュタグを1つ決め、プロフィール欄に明記してUGCを集めやすくする
- コメントへの返信率・返信スピードを週次で振り返る運用ルールを作る
- 新商品情報の「先出し」をライブ配信やストーリーズで行い、フォロワー限定の特別感を設計する
まずは1〜7を1週間かけて棚卸しし、できていない項目から着手するだけでも、フィードの印象は変わっていきます。
中小企業・店舗が応用する際の注意点
SHIROの手法を参考にする際、規模の異なる企業や店舗がそのまま真似ようとすると、かえって運用が続かなくなることがあります。以下の点には注意が必要です。
- 撮影クオリティを無理に追わない:世界観の一貫性は色数や構図のルール化で担保できる部分が大きく、必ずしも高価な機材が必要なわけではありません。
- 誇大な表現は避ける:美容・化粧品を扱う場合、効果効能を断定的に表現すると景品表示法や薬機法に抵触するおそれがあります。「物語で語る」ことと「効果を保証する」ことは切り分けて考える必要があります。
- 一貫性は仕組みで守る:担当者の感覚に頼ったトーン管理は属人化しやすいため、投稿ルールをドキュメント化し、誰が運用しても世界観がぶれない体制を整えることが重要です。
- 数字だけを追わない:フォロワー数やいいね数の増減だけを目的にすると、ブランドの軸がぶれやすくなります。SHIROのように「トレンドを追わない」姿勢を保ちながら、中長期でファンを育てる視点を持つことが大切です。
まとめ
SHIROのInstagram運用が支持されている背景には、派手な施策ではなく、ビジュアルトーンの統一、商品説明にとどまらないストーリーテリング、コメント対応やUGC活用といった地道なコミュニケーション設計の積み重ねがあります。ブランドの成り立ちや経営者の思想が発信の軸として一貫していることも、世界観に厚みを持たせている要因のひとつと考えられます。
自社アカウントに応用する際は、SHIROの表面的なビジュアルを模倣するのではなく、「色数を絞る」「投稿の役割を分ける」「なぜを語る」「双方向のコミュニケーションを設計する」といった、仕組み化できる部分から取り入れていくのが現実的です。規模や業種が違っても、世界観を仕組みで支えるという考え方は多くのアカウントに応用できます。
unyouでは、SHIROのような美容・コスメ業界に限らず、業種別・目的別のSNS運用事例を継続的に蓄積しています。自社の業種に近い事例や、より詳細な運用の型を知りたい方は、ぜひ事例データベースもあわせてご覧ください。 SNS運用事例データベース「unyou」で他社の事例を見る
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