北海道日本ハムファイターズ(Hokkaido Nippon-Ham Fighters)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/17
「投稿はしているのに、フォロワーが増えない」「エンゲージメントが伸びず、社内での評価も上がらない」――SNS担当者であれば、一度はこの壁にぶつかったことがあるはずです。特にBtoCの店舗・施設・イベント系のアカウントでは、「何を発信すれば"ファン"がついてくれるのか」が見えないまま、なんとなく告知だけを続けてしまいがちです。
そんなとき参考になるのが、プロスポーツ球団のSNS運用です。中でも北海道日本ハムファイターズは、2023年の本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」開業を機に、単なる「試合結果の告知」から「ボールパーク全体のライフスタイルを見せる」運用へと大きく舵を切ったことで知られています。本記事では、公開されている情報をもとに、同アカウントのInstagram運用がなぜ支持されているのかを構造的に分解し、企業・店舗アカウントが応用できるポイントに落とし込みます。フォロワー数やエンゲージメント率といった、裏付けの取れない数値は本記事では扱わず、公開情報・公式発表・信頼できる報道をもとに解説します。
北海道日本ハムファイターズのSNS運用が注目される背景
北海道日本ハムファイターズは2023年3月、北海道北広島市に本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」を含む複合施設「北海道ボールパーク Fビレッジ」を開業しました。単なる野球場ではなく、温浴施設やホテル、ショップ、公園などを備えた「まち」としてブランディングされており、球団としても「野球観戦」だけでなく「そこで過ごす時間そのもの」を発信対象にする必要が生まれました。
ITmedia ビジネスオンラインの取材記事「ファイターズファンはなぜこんなに熱狂する? その裏にある"緻密なデータ戦略"」によると、2025年のFビレッジ来場者数は459万人となり、前年比10%増で過去最高を記録したと報じられています(出典:ITmedia ビジネスオンライン、2025年11月21日)。来場者が右肩上がりで増えている背景には、SNSやアプリを含めたデジタル接点の設計が深く関わっていると分析されています。
この「施設全体をコンテンツ化する」という発想が、Instagram運用にもそのまま反映されているのが特徴です。

前提として押さえておきたいSNS利用の全体傾向
自社アカウントの戦略を考える前に、日本国内のSNS利用状況を公的データで確認しておきましょう。総務省「令和7年版 情報通信白書」では、SNSの利用が世代を問わず拡大していることが示されており、Instagramは幅広い年代で利用が進み、50代でも一定割合が利用しているとされています。またLINEの個人利用率は2014年の55.1%から2024年には94.9%まで拡大しており、60代でも2014年の11.3%から2024年には91.1%まで伸びていると報告されています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」)。
この数字が示すのは、「SNSはもはや若年層だけのメディアではない」という事実です。ファイターズのようなファン層の年齢幅が広い対象にリーチする組織にとって、Instagramだけでなく複数のSNSを使い分ける必然性がここにあります。実際にファイターズは、Instagram・X(旧Twitter)・TikTok・Facebook・LINE公式アカウントなど、複数のプラットフォームを併用する体制を取っています(出典:北海道日本ハムファイターズ公式サイト「公式SNSアカウント」ページ)。特にTikTokは2025年4月1日に公式アカウントを新規開設しており(出典:北海道日本ハムファイターズ公式サイト ニュースリリース)、動画ショート市場の拡大に合わせて発信チャネルを継続的にアップデートしている姿勢がうかがえます。
マルチアカウント戦略という設計思想
ファイターズのSNS運用でまず目を引くのは、「1つの公式アカウントに情報を詰め込む」のではなく、「目的別にアカウントを分割している」点です。公式サイトの「公式SNSアカウント」ページでは、球団公式アカウントのほかに、応援ガール「ファイターズガール」の公式Instagram、マスコット「フレップ」のアカウント、グッズ・ショップ情報専用のXアカウントなど、複数の専門アカウントが案内されています(出典:北海道日本ハムファイターズ公式サイト)。
なお「ファイターズガール」公式Instagramは2018年2月28日に開設されたと公式発表されており(出典:北海道日本ハムファイターズ公式サイト ニュースリリース)、球団公式アカウントよりも先行して特化型アカウントの運用ノウハウを積み上げてきた経緯があります。
この設計を一般化すると、次のように整理できます。
| アカウントの切り口 | 役割 | 企業・店舗での応用例 |
|---|---|---|
| 球団(本体)公式 | 試合結果・イベント告知・世界観発信のハブ | コーポレート公式アカウント |
| キャラクター/タレント系 | 親しみやすさ・キャラクター人気の醸成 | マスコット・スタッフ個人・ブランドキャラクター |
| グッズ・物販専用 | 購買導線の明確化、告知の埋没防止 | ECサイト連携・店舗のセール情報専用アカウント |
| 動画特化(TikTok等) | 新規層・若年層へのリーチ拡大 | 商品紹介・現場のリアルタイム感を伝える動画発信 |
1つのアカウントですべての目的を担おうとすると、フォロワーごとに「見たい情報」と「流れてくる情報」がずれてしまい、フォロー解除や関心の低下を招きやすくなります。アカウントを分けることで、それぞれのフォロワーの期待値と投稿内容を一致させやすくなるのが最大の利点です。
投稿の「型」を分解する
一般に公開されている投稿傾向を見ると、プロ野球球団の公式Instagramは大きく次のようなカテゴリで構成されていることが多く、ファイターズのアカウントもこの型に沿って運用されています。
- 試合速報・ハイライト:得点シーンや勝敗結果をリール・カルーセル形式で発信
- 選手の素顔・オフショット:ユニフォーム姿ではない、練習や移動中などの自然な表情
- ボールパーク自体の魅力紹介:グルメ、景観、季節ごとのイベントなど「観戦以外」の価値
- ファンとの接点を可視化する投稿:来場者の様子、応援風景、ファンから寄せられた反応の紹介
- ファイターズガール・マスコットなどのエンタメコンテンツ:試合の合間を彩るステージや撮影会の様子
重要なのは、「試合結果」という更新性の高い情報だけでなく、「観戦以外の理由でも見たくなる投稿」が一定の比重を占めている点です。これはFビレッジが「野球観戦以外の目的でも訪れる場所」として設計されていることと整合しており、SNS運用が施設戦略と一体化していることを示しています。
「エスコンフィールドHOKKAIDO」という世界観づくり
ファイターズのSNSが単なる「球団アカウント」を超えて支持される理由の一つは、エスコンフィールドという場自体が強いビジュアル資産になっていることです。北海道の自然、開閉式屋根から見える空、季節ごとの景観の変化など、野球の試合内容に依存しない「絵になる素材」が豊富にあります。
ビルコム株式会社のブログ記事「『野球場』から『まち』へ、ブランドの概念を拡張するPR戦略」では、エスコンフィールドが北海道を代表する観光地としてのポジションを目指し、ブランドの概念そのものを拡張するPR戦略を取っていると紹介されています(出典:ビルコム株式会社 公式ブログ)。SNS上の投稿も、この「観光地化」というブランド戦略と地続きになっていると捉えられます。
企業アカウントに置き換えると、「自社の商品・サービスそのもの」だけでなく、「その商品・サービスが存在する空間や背景」を撮影対象にできないかを考えることが応用ポイントになります。飲食店であれば厨房や仕込みの様子、アパレルであれば生地や制作工程、地域の店舗であれば周辺の街並みなどが該当します。
データドリブンなファン育成との連動
見落とされがちですが、ファイターズのSNS・アプリ運用は「発信して終わり」ではなく、来場データと接続されている点が特徴です。前出のITmedia記事では、公式アプリ登録時に「応援しているチーム」などの属性データを取得し、独自の顧客ID「F VILLAGEアカウント」に紐づけて、来場頻度や物販購入実績などと合わせて分析していると報じられています(出典:ITmedia ビジネスオンライン、2025年11月21日)。
また、Braze社が公開している導入事例ページでは、ファイターズ・スポーツ&エンターテイメントが自社IDデータと顧客エンゲージメントプラットフォーム「Braze」を統合し、来場者数やチケット売上の拡大につなげていることが紹介されています(出典:Braze公式サイト 導入事例ページ)。
SNSの投稿そのものは無料で見られるコンテンツですが、そこで醸成された「行きたい」という気持ちを、アプリ登録・チケット購入・来場という行動にどうつなげるかまで設計されている点が、単なる「バズ狙い」の運用と一線を画しています。中小企業や店舗であっても、Instagramのプロフィールリンクや、投稿内で案内するLINE公式アカウントなどを使って、「見る」から「行動する」への導線を用意することは十分に応用可能です。
明日から試せる実践チェックリスト
ここまでの分解を踏まえ、自社・自店のInstagram運用に落とし込むためのチェックリストをまとめます。
- アカウントの役割を1つに絞れているか確認する 告知・世界観発信・キャラクター訴求など、複数の目的を1アカウントに詰め込みすぎていないか棚卸しする
- 「商品・サービス以外」の撮影対象をリストアップする 制作過程、店舗の周辺環境、スタッフの日常など、商品そのものに依存しないネタを最低5つ書き出す
- 更新系コンテンツと世界観系コンテンツの比率を決める セール告知・新商品情報などの「即時性」コンテンツと、ブランドの雰囲気を伝える「世界観」コンテンツの投稿比率をあらかじめ決めておく(例:3対7など)
- プロフィールから先の導線を1つに絞る リンクを複数並べるのではなく、今もっとも遷移してほしい行動(予約・購入・登録)に絞ったリンクを設置する
- リール・動画フォーマットの投稿を定例化する 週1本など、無理のない頻度でショート動画の投稿枠を確保する
- 反応が良かった投稿の「型」を記録する 保存数・共有数が伸びた投稿の共通点(時間帯・構図・テーマ)を月次でメモし、次の企画に反映する
いきなりすべてを完璧に実行する必要はありません。まずは1と2の「棚卸し」から始めるだけでも、投稿内容の重複や迷いが減り、運用の軸が明確になります。
まとめ
北海道日本ハムファイターズのInstagram運用が支持されている背景には、①目的別にアカウントを分けるマルチアカウント設計、②試合結果だけに依存しない「観戦以外の価値」を発信する投稿の型、③エスコンフィールドという場そのものをブランド資産として活かす世界観づくり、④SNS・アプリでの発信を来場データやCRM施策と接続する仕組み、という複数の要素が組み合わさっていることが見えてきます。
これらは大規模な球団だからこそ実現できる特別な手法ではなく、「アカウントの役割を明確にする」「商品以外の撮影対象を用意する」「行動導線を1つに絞る」といった、企業や店舗のアカウントでも今日から着手できる考え方の集合体です。自社のSNS運用を見直す際は、まず本記事のチェックリストから小さく試してみることをおすすめします。
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