「うちの公式Instagramも、物件写真を並べているだけになっている気がする」「担当者が変わるたびに世界観がバラバラになる」「フォロワーは増えても反応が薄い」——住宅・不動産業界のSNS担当者から、こうした悩みを聞く機会は少なくありません。特に住宅メーカーは商品点数が少なく投稿ネタが尽きやすい上に、施主の個人情報やプライバシーへの配慮も必要で、他業種以上に運用のハードルが高い分野です。
そんな中で、大手住宅メーカーの積水ハウスは、複数のInstagramアカウントを使い分けながら、一貫した世界観と高い写真クオリティで安定した発信を続けています。本記事では、積水ハウスの公開されている運用情報をもとに、なぜこのアカウント群が支持されているのか、どんな「型」で投稿を作っているのかを分解し、他の企業・店舗のSNS運用にも応用できるポイントに落とし込んでいきます。なお本記事では、確証のとれないフォロワー数やエンゲージメント率などの数値は掲載せず、公開情報・統計データに基づいて解説します。
積水ハウスのInstagram運用の全体像
積水ハウスは、単一の公式アカウントだけでSNSを運用しているわけではありません。公式サイト「公式SNSのご紹介」ページや各アカウントの情報によると、積水ハウスグループは目的別に複数のInstagramアカウントを運用しています。
- 積水ハウス株式会社(@sekisuihouse):企業全体のブランドを発信するメインアカウント
- 積水ハウス ノイエ(@sekisuihouse_noie):企画型戸建て分譲ブランド「ノイエ」の専用アカウント
- デザインオフィス/積水ハウス(@designoffice_by_sekisuihouse):設計・デザイン領域に特化した発信
- 積水ハウス/賃貸住宅シャーメゾン(@shamaison_sekisuihouse):賃貸住宅ブランド「シャーメゾン」専用
- 積水ハウス/分譲マンション グランドメゾン(@grandemaison_sekisuihouse):分譲マンションブランド専用
- JUNOPARK(@junopark_sekisuihouse)、TRIP BASE STYLE(@tripbasestyle.official):新規事業・ライフスタイル提案系のブランドアカウント
さらにYouTube、X(旧Twitter)、Facebook、ポッドキャストなど複数のSNS・メディアを組み合わせて情報発信を行っていることも、同社の公式サイトで案内されています。一つのアカウントにあらゆる情報を詰め込むのではなく、「誰に何を届けるか」でアカウントそのものを分けている点が、積水ハウスのSNS運用の土台になっています。

なぜ住宅業界にとってSNS発信が重要なのか(データで見る)
住宅は検討期間が長く、購入前の情報収集の比重が非常に大きい商材です。ここで公開データを見てみましょう。
- 総務省「令和6年版 情報通信白書」では、世界のソーシャルメディア利用者数は2023年の49億人から2028年には60億5,000万人に増加すると予測されており、コミュニケーション用途に加えて動画コンテンツ視聴やライブコマースなど用途の多様化が進んでいると分析されています。日本国内の利用者数についても、2023年の1億580万人から2028年には1億1,360万人へ増加する見通しが示されています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。
- ゼロシード株式会社が実施した注文住宅購入経験者を対象とした調査によれば、回答者674人のうち約7割(68%、458人)が住宅購入の情報収集にInstagramを活用したと回答しています。理由として「実際に建てた人の声が一番ためになる」「ホームページと違ってリアルな部分が見られるので判断材料になる」といった声が挙がっています(出典:ゼロシード株式会社調査、PR TIMES掲載リリースより)。
- Meta社(Facebook Japan)は2019年6月、Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと公式発表しています(出典:Metaについて「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」)。
これらのデータからわかるのは、住宅という高額・長期検討商材において、Instagramは単なる広告媒体ではなく「リアルな暮らしを確認する情報源」として機能しているということです。積水ハウスの運用は、まさにこのニーズに応える形で設計されています。
投稿の「型」と世界観のつくり方
積水ハウスのInstagram投稿を分析した複数の第三者記事では、共通して「写真のクオリティの高さ」と「見せ方の構成力」が指摘されています。住宅・不動産業界のInstagram活用事例を分析するガイアックスの記事では、積水ハウスの投稿について、昼と夜、外観と内観といった異なる切り口の写真を組み合わせることで、一つの住まいを多角的に想像させる構成になっていると分析されています(出典:株式会社ガイアックス「決め手はユーザーに響くハッシュタグ!不動産業界のInstagram活用7事例」)。
また住宅・不動産業界のSNS事例を扱うfind-model.jpの記事では、積水ハウスのアカウントは物件紹介やルームツアーを中心に発信しつつ、実際に暮らしている人の体験談や部屋紹介の動画を組み合わせることで、閲覧者が「自分がそこに住むイメージ」を持ちやすい構成になっている点が特徴として挙げられています(出典:find-model.jp「住宅・不動産業界のInstagramアカウント運用事例5選」)。
ここから読み取れる「型」を整理すると、次のようになります。
- 同じ住宅を「昼/夜」「外観/内観」など複数カットで見せ、1件の物件で複数の投稿ネタを作る
- 完成写真だけでなく、実際の暮らしぶりが伝わるカットを混ぜる
- ルームツアー的な動画・リール形式で、写真だけでは伝わらない「奥行き」や「動線」を見せる
- ブランドごとにアカウントを分け、世界観のトーン(企業ブランド/デザイン特化/賃貸/分譲)を統一する
一つの投稿を「単発の広告」として作るのではなく、「同じ素材から複数の切り口を作る」という考え方は、投稿ネタに悩む中小の店舗・企業アカウントにもそのまま応用できます。
ハッシュタグ戦略から見る「見つけてもらう」設計
企業アカウントのハッシュタグ選定を分析したnote記事では、@sekisuihouseが固定のブランドハッシュタグに加えて、投稿内容に合わせた検索されやすいハッシュタグを使い分けている点が指摘されています(出典:note「【企業Instagram考察】@sekisuihouse(積水ハウス)から見る効果的なハッシュタグの選び方」)。
具体的には、以下のようにハッシュタグを役割ごとに使い分ける設計が確認できます。
| ハッシュタグの種類 | 役割 | 積水ハウスでの例 |
|---|---|---|
| ブランド/企業タグ | 自社アカウント・キャンペーンへの導線をつくる | #積水ハウスファミリー、#愛着のある家 |
| 検索需要タグ | 住まい探し中のユーザーの検索意図に合わせる | #開放感、#くつろぎ、#4階建て など暮らしのキーワード |
| キャンペーン限定タグ | UGCを可視化し、投稿を横断的に集める | #わが家の幸せ時間(フォトコンテスト企画) |
一般ユーザーが「素敵な暮らし」を探すときに使う検索ワードを先回りしてハッシュタグに組み込むことで、フォロワー以外の潜在層にもリーチできる設計になっている点が、積水ハウスのハッシュタグ運用の特徴です。
UGC・フォトコンテスト施策によるエンゲージメント設計
積水ハウスは公式サイト上で「Instagram写真投稿コンテスト」を継続的に実施していることが確認できます。「#わが家の幸せ時間」をテーマにしたオーナー限定のフォトコンテストでは、自宅で撮影した写真を指定のハッシュタグ(#愛着のある家、#積水ハウスファミリーなど)とともに投稿してもらい、抽選でカメラや調理家電といった賞品が当たる企画になっています(出典:積水ハウス公式サイト「Instagram写真投稿コンテスト」ページ)。
このような施策のポイントは、企業側が一方的に発信するのではなく、実際の住まい手(オーナー)に投稿してもらう「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」を軸にしている点です。UGCには次のような効果が期待できます。
- 第三者による投稿のため、企業発信よりも信頼性が高く受け止められやすい
- オーナー自身がハッシュタグ経由で発見されることで、既存顧客のロイヤルティ向上にもつながる
- 企業側の撮影・制作コストをかけずに、リアルな生活シーンの投稿ネタを継続的に集められる
住宅のように「購入後も長く使われる」商材では、既存顧客を巻き込んだUGC施策は、新規見込み客への信頼獲得と既存顧客のファン化を同時に狙える手法だと言えます。
他の企業・店舗が明日から試せる実践ポイント
積水ハウスの運用から抽出できる考え方は、住宅業界に限らず、写真・映像で商品や空間を見せる業種全般に応用できます。以下はそのまま使えるチェックリストです。
- 1つの商品・空間・サービスから「複数の切り口」の写真を撮る運用ルールを決める(例:昼/夜、全体/ディテール、完成形/使用シーン)
- アカウントを分けるべきか検討する(ブランドやターゲットが複数ある場合、1アカウントに詰め込みすぎていないか見直す)
- 固定のブランドハッシュタグ(1〜2個)と、検索需要に合わせた個別ハッシュタグ(投稿ごとに変える)を分けて運用する
- 既存顧客・利用者に投稿してもらうための「参加しやすい」ハッシュタグキャンペーンを設計する(賞品は高額でなくてよい)
- 静止画だけでなく、空間の奥行きや動線が伝わる動画・リールを月1本でも組み込む
- 投稿を「広告」ではなく「暮らしのリアルな一場面」として見せられているか、投稿前にチェックする
- なりすまし・偽アカウント対策として、公式アカウント一覧を自社サイトに明記しておく(積水ハウスも公式サイトで注意喚起を行っています)
特別な予算やインフルエンサーを起用しなくても、「素材の見せ方」と「ハッシュタグの役割分担」、そして「顧客を巻き込む設計」の3点は、小規模な店舗アカウントでも今日から着手できる部分です。
まとめ
積水ハウスのInstagram運用を分解すると、特別な裏技があるわけではなく、①目的別にアカウントを設計する、②1つの素材から複数の切り口で投稿をつくる、③ハッシュタグを役割ごとに使い分ける、④既存顧客を巻き込んだUGC施策でエンゲージメントを生む、という地道な積み重ねであることが見えてきます。総務省の統計が示す通りSNS利用者は今後も増加が見込まれ、住宅購入検討者の多くがInstagramを情報収集に使っているという調査結果もあります。写真・映像で商品や空間の魅力を伝える業種であれば、積水ハウスの型は十分に参考にできるはずです。自社のアカウントを見直す際は、まず投稿の「切り口」とハッシュタグの「役割分担」から着手してみてください。
同業種・近い業種の運用をさらに詳しく知りたい方は、unyouの事例データベース(/cases)で不動産・住宅業界をはじめとした他社のSNS運用事例もあわせてチェックしてみてください。
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