「毎日投稿しているのに保存もシェアも増えない」「他社アカウントは何が違うのか分からないまま真似して失敗する」——SNS運用を任されている担当者なら、一度はこうした壁にぶつかった経験があるのではないでしょうか。特に旅行・観光業界は競合アカウントが多く、しかも「きれいな写真を載せるだけ」では埋もれてしまう領域です。
そこで今回は、楽天トラベル公式Instagram(@rakutentravel)を題材に、なぜこのアカウントが多くのユーザーに見られ続けているのかを、公開されている投稿の構成・世界観・仕掛けから分解していきます。数字を誇張して「バズる方程式」を語るのではなく、明日から自社アカウントに応用できる具体的なポイントに落とし込むことを目的としています。
楽天トラベルのInstagram運用の全体像
楽天トラベル公式アカウントは、全国のホテル・旅館・観光地の情報を、宿泊予約サービスという「楽天トラベル」本体の強みを活かしながら発信しているのが特徴です。単発のホテル紹介にとどまらず、「エリア×テーマ」で複数施設をまとめて紹介する構成が多く見られ、フィードを訪れたユーザーが「次の旅行の行き先候補」を一度に比較検討できるようになっています。
また、プロフィール欄のハイライト(ストーリーズのアーカイブ)を都道府県別・キャンペーン別に整理している点も特徴的です。フィード投稿で興味を持ったユーザーが、ハイライトから関連情報にすぐアクセスできる導線が用意されており、「見て終わり」にせず「次のアクションにつなげる」設計になっていることが読み取れます。

なぜ楽天トラベルの投稿は「見てもらえる」のか
Instagramのフィードは可処分時間の奪い合いです。ユーザーがスクロールする指を止めるかどうかは、最初の1枚(サムネイル)で決まると言っても過言ではありません。楽天トラベルの投稿を見ると、サムネイル画像に「〇〇の絶景宿8選」「〇〇観光スポット7選」のように、テキストで内容と件数を明示しているものが多くあります。
これは行動経済学でいう「情報の予見可能性」を高める工夫です。ユーザーは開く前に「自分に関係のある情報かどうか」「読むのにどれくらい時間がかかるか」を判断してからタップします。件数やエリア名を先出しすることで、旅行先が決まっている人にも決まっていない人にも「自分ごと化」させやすくしているのです。
加えて、旅行とSNS・写真の関係について、公益財団法人日本交通公社が実施した「JTBF旅行実態調査トピックス(国内旅行におけるSNS・写真に対する意識/実態)」では、旅行中に写真を撮影した人は全体の8割にのぼり、そのうち「撮影してSNSに投稿した」と答えた割合はZ世代男性で5割を超えるという結果が出ています。さらに、旅先での撮影によって「旅行中・旅行後の満足度が高まった」と答えた人は6.5割に達しています。つまり旅行というジャンルは、もともと「写真を撮りたい」「共有したい」という欲求と親和性が高く、Instagramというプラットフォームと非常に相性が良いのです。楽天トラベルの運用は、この土壌の上に成り立っていると言えます。
投稿の「型」を分解する
楽天トラベルの投稿を継続的に見ていくと、いくつかの共通した「型」が浮かび上がってきます。
- まとめ型サムネイル:「〇〇選」で件数と条件を明示し、カルーセル(複数画像スワイプ)で各施設を1枚ずつ紹介する
- 右上エリア表記: 画像の右上や隅に都道府県名・エリア名を統一フォーマットで配置し、目的の地域を探しているユーザーが一目で判別できるようにする
- キャプションでの実用情報の補完: 施設名・エリア・特徴を簡潔に記載し、写真だけでは伝わらない予約検討に必要な情報を補う
- 保存を前提とした構成: 「行きたい宿リスト」として保存されることを狙い、情報密度を高めた投稿にする
この型の共通点は、「映え」だけで終わらせず、実用的な検索性・比較可能性を持たせている点です。写真の美しさはあくまで入口であり、その先に「保存する理由」「予約サイトに移動する理由」を設計しているのが、単なる観光写真アカウントとの違いだと言えます。
世界観・トンマナのつくり方
企業アカウントが陥りやすい失敗の一つが、「投稿ごとに世界観がバラバラになる」ことです。楽天トラベルの場合、写真のトーン(明るさ・彩度)やテキストのフォント・配置が投稿間である程度統一されており、フィード全体を並べたときに「楽天トラベルらしさ」が視覚的に伝わるようになっています。
これは楽天トラベルに限らず、Instagramで支持されているアカウントに共通する設計です。世界観をつくる際には、以下の要素を事前にルール化しておくと運用がぶれにくくなります。
- 使用する写真のトーン(暖色寄り/寒色寄り、彩度の高さ)
- テキストを載せる位置とフォントの統一
- キャプションの一人称・文末表現(「〜です・ます」か「〜だ」かなど)
- ハッシュタグの構成(エリア名・カテゴリ名・キャンペーン名など役割ごとに分類)
エンゲージメントを高める仕掛け
楽天トラベルはフィード投稿だけでなく、季節ごとのフォトコンテスト企画などユーザー参加型の施策も行っています。ユーザーが撮影した旅先の写真を指定ハッシュタグで募集し、公式アカウントが紹介するという構造は、いわゆるUGC(ユーザー生成コンテンツ)活用の典型的な手法です。
UGC活用が有効なのは、企業が発信する情報よりも「他の利用者のリアルな体験」の方が閲覧者の意思決定に影響しやすいためです。総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、全年代におけるSNSの利用率はLINEが91.1%、Instagramが52.6%、X(旧Twitter)が43.3%、Facebookが26.8%となっており、Instagramは若年層だけでなく幅広い年代に浸透したプラットフォームになっています。つまり、UGCを軸にした施策は特定の年代だけでなく、比較的広い顧客層にリーチできる土台がすでに整っているということです。
また、Meta社(Facebook Japan)が2019年6月に発表した情報では、Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3,300万を突破し、日本国内のデイリーアクティブアカウントの70%がストーリーズ機能を利用していると公表されています。ハイライトを積極的に活用する楽天トラベルの運用は、この「ストーリーズ利用率の高さ」という国内ユーザーの行動特性を踏まえた設計だと考えられます。
楽天トラベルの投稿設計 早見表
観察できる投稿の型を、目的別に整理すると以下のようになります。
| 投稿タイプ | フォーマット | 主な目的 | 狙う反応 |
|---|---|---|---|
| まとめ型(〇〇選) | カルーセル+件数明示サムネイル | 比較検討の材料提供 | 保存・プロフィール遷移 |
| エリア特化型 | 単体施設+右上エリア表記 | 特定地域を探すユーザーへの訴求 | 検索・保存 |
| キャンペーン/フォトコンテスト | ストーリーズ+UGC募集 | ユーザー参加・関係構築 | コメント・投稿・タグ付け |
| ハイライト整理 | ストーリーズアーカイブ | フィードで興味を持った後の導線 | プロフィール滞在・外部遷移 |
自社アカウントに応用する実践チェックリスト
大きな予算や専属チームがなくても、以下の考え方は明日から取り入れられます。
- サムネイルに「件数」「対象」「エリア(または対象読者)」をテキストで明示しているか
- フィード全体を並べたとき、写真のトーンやテキストの配置に統一感があるか
- 投稿は「映え」で終わらず、保存・比較検討につながる情報量になっているか
- プロフィールのハイライトを、カテゴリ別・地域別など探しやすい単位で整理しているか
- お客様・ユーザーが投稿した写真や声を紹介する仕組み(UGC活用)があるか
- キャプションの一人称・文末表現・絵文字の使い方にルールがあり、担当者が変わってもぶれないか
- 「保存された投稿」「プロフィールへのアクセスにつながった投稿」を定期的に振り返り、型として言語化できているか
特に最初の2つ(サムネイルの情報設計とトーンの統一)は、撮影機材や予算をかけなくても、既存の写真素材とテキスト配置の工夫だけで着手できる部分です。
効果測定と改善のまわし方
型をつくったら終わりではなく、どの投稿が保存されやすいか、どのハイライトがよく開かれているかをInstagramのインサイト機能で継続的に確認し、反応の良かった構成要素(サムネイルの文言、カルーセルの枚数、投稿時間帯など)を次の投稿に反映させるサイクルが欠かせません。楽天トラベルのような大規模アカウントも、一度の投稿で完成形にたどり着いているわけではなく、こうした小さな検証の積み重ねの上に現在の運用があると考えられます。
同じ旅行・宿泊業界や、写真・ビジュアルが重要になる業種のアカウントが実際にどのような運用をしているかは、SNS運用事例データベース「unyou」の事例一覧でも確認できます。自社と近い規模感・業態の事例と比較しながら、取り入れられる部分を探してみてください。
まとめ
楽天トラベルのInstagram運用が支持されている背景には、「まとめ型サムネイルによる情報の予見可能性」「エリア表記や保存を前提とした実用的な情報設計」「ハイライトを活用したストーリーズ導線」「UGCを取り入れた参加型施策」といった、再現性のある工夫が積み重なっています。フォロワー数やエンゲージメント率といった数字だけを追いかけるのではなく、投稿の「型」と「世界観のルール」を自社の状況に合わせて言語化し、小さく検証を回していくことが、遠回りに見えて最も着実な近道です。まずはチェックリストの中から1つ、明日投稿する内容に取り入れてみてください。
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