CLANE(クラネ)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/14
「毎日投稿しているのに、フォロワーが増えない」「おしゃれな写真を並べているだけで、フィードに一貫した世界観が生まれない」——アパレルや店舗のSNS担当者から、こうした悩みを聞く機会は少なくありません。特にInstagramは競合アカウントも多く、何を真似すればいいのか、そもそも何が「効いている」施策なのかが見えにくいプラットフォームです。
そこで今回は、アパレルブランド「CLANE(クラネ)」の公開情報をもとに、Instagram運用がなぜ支持されているのかを構造的に分析します。フォロワー数やエンゲージメント率など、確証の持てない数字は扱いません。あくまで公開されている事実と統計データをもとに、投稿の型・世界観のつくり方・エンゲージメント施策を分解し、自社アカウントに応用できるポイントに落とし込んでいきます。
CLANEとは|"買う理由"のある服づくりとブランドの背景
CLANEは、モデルやブランドプロデューサーとして活動していた松本恵奈氏が2015年に立ち上げたアパレルブランドです。ブランドコンセプトは「ORIGINAL STANDARD」。定番的なアイテムに現代的な柄・素材・デザインを取り入れ、「特別な一枚」として長く愛用できる服を提案しています。2016年にはメンズライン「CLANE HOMME」も展開を開始しました。
CLANEを語るうえで欠かせないのが、コロナ禍を契機としたSNS発信の強化です。WWDJAPANの報道によれば、CLANEは全直営店が休業を余儀なくされたタイミングでSNSでの発信に本格的に力を入れ、特にYouTubeでの動画配信にも積極的に取り組みました。その結果、ブランドを手がける松本氏のプライベートな様子まで公開されるようになり、「ブランドをより身近に感じさせる」効果が生まれたと報じられています。同記事では、2023年1月期の売上高が40億円前後に達し、コロナ前の2020年1月期(13億円)と比較して3倍以上に伸長したこと、そしてECが全体売上の6割を占めるまでに成長したことも紹介されています(出典:WWDJAPAN「コロナ禍を経て年商3倍 『クラネ』の"買う理由"のある服」)。
つまりCLANEは、店舗が使えない状況下で「SNS+EC」を主戦場に据え、そこで結果を出してきたブランドだといえます。この背景を踏まえると、CLANEのInstagram運用を"デザインが良いから伸びている"という表面的な理解で終わらせず、「なぜその発信がECの購買行動につながっているのか」という仕組みの部分まで分解する価値があります。

なぜCLANEの発信は"刺さる"のか|3つの構造
CLANEのSNS発信を分解すると、大きく3つの構造が見えてきます。
1つ目は「ブランドと人格の一体化」です。 CLANEはクリエイティブディレクターである松本恵奈氏自身の存在が、ブランドの世界観と強く結びついています。ブランドの公式アカウントを見るだけでなく、ディレクター個人の発信も含めて"面"で世界観を作っているのが特徴です。単なる商品紹介ではなく、「このブランドを作っている人はどういう人で、何を考えているか」までが伝わる設計になっているため、フォロワーは商品だけでなく人に対しても愛着を持ちやすくなります。
2つ目は「完璧すぎない親近感」です。 前述のWWDJAPANの報道でも触れられているとおり、CLANEはプライベートな様子まで発信することで、作り込まれたブランドイメージだけでなく、生活者としてのリアルな一面を見せています。これは、洗練された世界観を保ちながらも「手が届く」「共感できる」というバランスを取るための重要な設計思想です。
3つ目は「EC導線を前提にした発信設計」です。 CLANEの発信はEC比率が全体の6割に達しているというデータが示すとおり、単なるブランディングにとどまらず、実際の購買行動につながる導線を強く意識しています。Instagramでの発信は「見て終わり」ではなく、「見て、欲しくなって、ECで買う」までの一連の流れを前提に設計されていると考えられます。
投稿の型を分解する|フィード・リール・ストーリーズの使い分け
Instagram運用において重要なのは、フィード投稿・リール・ストーリーズという3つのフォーマットをどう役割分担させるかです。CLANEのようなアパレルブランドの発信パターンを一般化すると、以下のような型に整理できます。
| フォーマット | 主な役割 | 具体的な投稿内容の例 |
|---|---|---|
| フィード投稿 | 世界観の構築・ブランドイメージの一貫性 | コーディネート写真、シーズンビジュアル、着用イメージ |
| リール | 新規層へのリーチ・商品の"動き"を見せる | 着回し動画、素材感・シルエットが分かる着用シーン |
| ストーリーズ | 双方向コミュニケーション・購買後押し | 質問箱、投票機能、入荷連絡、セール告知、日常の発信 |
| ライブ配信/動画 | ブランド人格の可視化・信頼構築 | ディレクター自身によるトーク、商品紹介、Q&A |
この型で重要なのは、「フィードで作った世界観」を「ストーリーズやライブで人格化し、購買に近い場所まで引き寄せる」という一連の流れです。世界観だけを作り込んでも購買には直結しませんし、逆に売り込みばかりでは世界観が崩れてしまいます。CLANEの発信は、この2つの役割を明確に分けたうえで組み合わせている点が参考になります。
世界観のつくり方|トンマナの統一と"余白"の設計
Instagramのフィードを開いたときに、ひと目でブランドだと分かる状態をつくることは、世界観づくりの基本です。CLANEのようなアパレルブランドの場合、以下のような要素で統一感を出していると考えられます。
- カラートーン:極端に派手な色を避け、ベーシックカラーを軸にした落ち着いたトーンで統一する
- 構図の反復:同じような角度・引きの写真を並べることで、フィード全体にリズムが生まれる
- 余白の使い方:商品を詰め込みすぎず、余白を残すことで「特別感」や「上質さ」を演出する
- 人物の一貫性:同じモデルやディレクター本人が繰り返し登場することで、"顔"としての記憶が定着する
特に重要なのが「余白」です。情報を詰め込みすぎたフィードは、投稿数が多くても世界観として記憶に残りにくくなります。CLANEのようなブランドが選ばれる理由のひとつは、"見せすぎない"ことによって、フォロワー側に想像の余地を残している点にあると考えられます。
エンゲージメントを生む仕組み|双方向のコミュニケーション設計
CLANEの発信で参考になるもう一つのポイントが、「一方通行の発信で終わらせない」姿勢です。ディレクター自身が発信の前面に立つことで、コメント欄やストーリーズの質問機能を通じたやり取りが生まれやすくなり、フォロワーは"見ているだけの存在"から"やり取りできる相手"へと変わります。
これは心理学的にも裏付けのある現象です。人は一方的に情報を受け取るよりも、双方向のやり取りがある相手に対して信頼や親近感を抱きやすいとされています。ブランドアカウントであっても、運営者の顔や人格が見える発信は、フォロワーとの心理的な距離を縮める効果があります。
また、Instagramと購買行動の関係についても、公開されている調査データが参考になります。株式会社ファンくるがPR TIMESで公開した消費者動向調査では、回答者の80%がInstagramをきっかけに商品を知り、そのうち70%が実際に購入した経験があると報告されています(出典:株式会社ファンくる「インスタグラムにおける消費者動向調査」、PR TIMES掲載)。さらに株式会社マージェリックが実施した調査では、Instagramでの購入経験者のうち約7割が衝動買いを経験しており、ショッピング機能の認知度は約5割、今後利用してみたいと回答した割合は6割強にのぼるとされています(出典:株式会社マージェリック「Instagramのショッピング機能に関する調査」)。
これらのデータから読み取れるのは、Instagramが単なる認知獲得の場ではなく、「発見→感情の動き→衝動的な購買」までを一つのプラットフォーム内で完結させやすいという特性です。CLANEのように、世界観づくりと人格の可視化を両立させている発信は、この"感情が動く瞬間"を作り出しやすい設計だといえるでしょう。
データで見るSNS活用の重要性
自社のSNS運用に投資判断を求める際、社内で「なぜ今Instagramに力を入れるべきか」を説明する場面もあるはずです。その際の裏付けとして、公的機関のデータも押さえておきましょう。
総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、インターネット利用者のうちSNS(無料通話機能を含む)を利用している割合は全体で81.9%と、あらゆる用途の中で最も高い数値を示しています。年代別に見ると20代では利用率が90%を超え、30代でも約85%、60代でも75%を超える水準に達しており、SNSはもはや一部の若年層だけのツールではなく、幅広い年代の生活インフラになっていることが分かります(出典:総務省「令和6年版情報通信白書」)。
こうした背景を踏まえると、CLANEのようにSNS発信をEC売上の柱に据える戦略は、特定のブランドだけの特殊な成功例ではなく、生活者の行動変化に沿った合理的な選択だと理解できます。アパレルに限らず、店舗ビジネスや小規模事業者であっても、同様の構造を自社アカウントに応用できる余地は十分にあります。
自社アカウントに応用する実践チェックリスト
CLANEの分析から得られる要素を、明日から自社アカウントで試せる粒度に落とし込みます。
世界観づくりの見直し
- 直近9〜12投稿のスクリーンショットを並べて、フィード全体のトーンが統一されているか確認する
- 商品写真に「余白」を意識的に残し、詰め込みすぎた構図を減らす
- 使用するモデル・出演者を固定し、"顔"としての一貫性を持たせる
投稿フォーマットの役割分担
- フィードは世界観・ブランドイメージの発信に特化させる
- リールは新規層へのリーチを狙い、商品の動きや着用シーンを見せる
- ストーリーズでは質問箱・投票機能を使い、双方向のやり取りを意識的に増やす
人格の可視化
- 経営者・スタッフ・店長など、発信の「顔」になる人物を1人以上決める
- 商品紹介だけでなく、日常的な発信やプライベートな一面も一定割合で織り交ぜる
- コメントやDMへの返信を、テンプレートではなく人格が伝わるトーンで行う
購買導線の設計
- Instagramショッピング機能を設定し、投稿から商品ページへ直接遷移できるようにする
- ストーリーズのリンク機能やハイライトを使い、迷わず購入ページへ辿り着ける導線を作る
- 「衝動買いされやすい瞬間」を意識し、限定感・タイミングを伝える投稿を定期的に組み込む
これらは特別な予算や大規模な体制を必要とするものではなく、既存の運用フローに組み込める粒度の施策です。まずはフィードのトーン統一とストーリーズの双方向機能から着手し、効果を見ながら他の施策に広げていくのが現実的な進め方です。
応用する際の注意点
CLANEの事例を参考にする際に気をつけたいのは、「表面的な写真の雰囲気だけを真似ること」で終わらせないことです。CLANEの発信が機能している背景には、ディレクター自身のブランドに対する明確な思想と、コロナ禍という環境変化に対応してSNS発信を戦略的に強化してきた経緯があります。単に洗練された写真を並べるだけでは、同じような効果は再現できません。
重要なのは、①誰が発信の「顔」になるかを決める、②世界観と購買導線を分けて設計する、③一方通行ではなく双方向のコミュニケーションを組み込む、という3つの構造を自社の業種・規模に合わせて調整することです。アパレルと美容室、飲食店ではフォーマットの最適解は異なりますが、この3つの構造自体は業種を問わず応用可能な考え方です。
まとめ
CLANEのInstagram運用が支持されている背景には、単なるデザインの良さだけでなく、「ブランドと人格の一体化」「完璧すぎない親近感」「EC導線を前提にした発信設計」という3つの構造がありました。またWWDJAPANの報道が示すように、コロナ禍という環境変化を契機にSNS発信を戦略的に強化し、ECが売上の6割を占めるまでに成長させた経緯も見逃せません。
総務省の調査が示すとおりSNSはすでに幅広い年代に浸透した生活インフラであり、PR TIMESやマージェリックの調査が示すとおりInstagramは「発見から購買」までを一つのプラットフォームで完結させやすい特性を持っています。この構造を理解したうえで、自社アカウントのフィード設計・投稿フォーマットの役割分担・発信者の人格の可視化・購買導線の3点を見直すことが、明日から実践できる第一歩になります。
unyou(https://unyou.media)では、こうしたアパレル業界を含む様々な業種のSNS運用事例を蓄積しています。自社と近い業態・規模のアカウントがどのような投稿設計やエンゲージメント施策を行っているかは、[事例データベース](https://unyou.media/cases)から具体的に確認できますので、ぜひ自社の運用改善にお役立てください。
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