「参考になりそうだけど、何がすごいのか言語化できない」という悩み
美容ブランドや店舗のSNS担当者と話していると、決まって出てくる相談があります。「LUNASOLのようなアカウントを見ると世界観が整っていて憧れるけれど、自分たちの投稿と何が違うのか具体的に説明できない」というものです。写真は綺麗に撮っているつもりなのに統一感が出ない、投稿を続けているのにフィードに「ブランドらしさ」が積み上がっていかない——そんな停滞感を抱えている方は少なくないでしょう。
大きな会社のブランドだから予算も人手も違う、と片付けてしまうのは簡単です。ですが実際に投稿を分解してみると、LUNASOLの運用には予算規模に関係なく真似できる「型」が多く含まれています。本記事では、公開されている情報をもとにLUNASOLのInstagram運用を要素分解し、中小規模の企業・店舗アカウントでも応用できるポイントに落とし込んでいきます。なお、フォロワー数やエンゲージメント率など裏付けの取れない数字は掲載せず、確認できる公開情報・統計データのみを根拠として扱います。

LUNASOLというブランドの土台を理解する
LUNASOLは、花王グループのカネボウ化粧品が展開する化粧品ブランドです。ブランド名は「月(Luna)」と「太陽(Sol)」を組み合わせた造語で、内側からにじみ出るような美しさをテーマに、丁寧なメイクによって心が浄化されていくような感覚——いわゆる「浄化されるメイク」を提案してきたブランドとして知られています。
さらに注目したいのは、LUNASOLが花王・カネボウ化粧品グループの中で重点育成対象とされる主力ブランド群(いわゆるG8ブランド)の一角に位置づけられている点です(出典:WWDJAPAN「花王が化粧品ブランドを大幅に整理 戦略ブランドに投資集中」)。つまりLUNASOLのSNS運用は、単発のキャンペーンではなく、ブランド価値を中長期で積み上げる経営戦略の一部として設計されていると読み取れます。この「短期の数字よりも世界観の一貫性を優先する」という前提を理解しておくと、後述する投稿の型がなぜそうなっているのかが腑に落ちやすくなります。
なぜ今、美容ジャンルでInstagram運用が重要なのか
「うちの業界でもSNSは必須なのか」と迷う担当者のために、まず数字で状況を整理します。
総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、全年代におけるInstagramの利用率は52.6%にのぼり、前年から4.2ポイント上昇しています。特に10代〜20代では利用率が70%を超えており、若年層への接点として圧倒的な存在感を持つプラットフォームであることがわかります。
美容領域に絞るとさらに顕著です。美容消費者を対象にした調査では、化粧品の情報収集手段としてInstagramが31.8%でトップとなり、口コミサイトやTikTok、店頭スタッフ、YouTubeを上回っています(出典:ネットショップ担当者フォーラム掲載の美容消費者動向調査)。とりわけ20代前半では約48.6%がInstagramを情報源として挙げており、年齢が上がるにつれて比率は下がる傾向にあります。
加えて、購買行動への影響も見逃せません。宣伝会議・MimiTVが実施した「美容オタク世論調査」では、SNS上のPR投稿を参考にして実際にコスメを購入した経験がある人が75.1%にのぼると報告されています。つまり美容ジャンルにおいて、Instagramは単なる認知獲得の場ではなく、購買直前の「最後のひと押し」を担うチャネルになっているということです。
| 出典 | わかること | 現場への示唆 |
|---|---|---|
| 総務省「令和6年版 情報通信白書」 | Instagram利用率は全年代52.6%、10〜20代は70%超 | 若年層向けブランドほどInstagram優先度を上げるべき |
| 美容消費者動向調査(ネットショップ担当者フォーラム) | 化粧品の情報収集手段でInstagramが31.8%で最多 | 検索エンジン代わりに「発見タブ・ハッシュタグ検索」対策が必要 |
| 宣伝会議・MimiTV「美容オタク世論調査」 | PR投稿経由の購入経験者が75.1% | フィードは広告ではなく「購買前の比較材料」として設計する |
LUNASOLの投稿を分解する:3つの型
公開されている投稿を観察すると、LUNASOLのフィードはおおむね次の3つの型の組み合わせで構成されていることがわかります。
- 新作・季節コレクション訴求型:春夏・秋冬など季節ごとの新色コレクション発売にあわせて、パッケージのビジュアルとカラースウォッチ(色見本)を組み合わせた投稿を集中的に展開します。単品ではなく「コレクション」として見せることで、フィード全体が一つのシーズンストーリーとして機能します。
- メイクアップ提案・使用感訴求型:実際にアイシャドウやチークを使ったメイクの完成イメージを見せ、質感や発色を伝える投稿です。テキストや静止画だけでなく、リール動画で発色プロセスやツヤ感の変化を見せる手法も取り入れられています。
- 世界観・ブランドストーリー型:月と太陽のモチーフ、洗練されたゴールドやパール系のトーンなど、ブランドコンセプトそのものを想起させるビジュアルを定期的に挟み込みます。新商品の告知一色にならないよう「ブランドらしさ」を思い出させる投稿を意図的に配置しているのが特徴です。
この3つの型が交互に登場することで、フィードを開いたときに「新作の情報」と「ブランドの世界観」の両方が伝わる構成になっています。単発の話題性投稿だけを追いかけるアカウントとの違いは、この型の反復にあると言えるでしょう。
世界観をつくるためのトンマナ設計
LUNASOLのフィードで一貫しているのは、色数を絞った統一感のあるトーン&マナー(トンマナ)です。ゴールド・パール・ディープカラーを基調とし、背景や小物の色味まで含めてブランドカラーの範囲内に収めています。これは高級化粧品ブランドに限った話ではなく、次のように分解すると業種を問わず応用できます。
- メインカラーを2〜3色に絞る:ブランドロゴやパッケージカラーから抽出し、投稿ごとに使う色の上限を決める。
- 光の当て方を統一する:自然光か人工光か、順光か逆光かを毎回変えず、撮影条件をルール化する。
- 余白の取り方をそろえる:商品を画面いっぱいに配置するか、余白を残すかをアカウント全体で統一する。
- フォントと文字の入れ方を固定する:テキストを画像に重ねる場合、フォント・サイズ・配置位置をテンプレート化する。
これらは特別な機材がなくても、スマートフォンとプリセット(編集アプリの色調補正設定)の使い回しだけである程度再現可能です。重要なのは「毎回ゼロから撮り方を考えない」ための撮影・編集ルールを先に決めてしまうことです。
エンゲージメントを高める施策の考え方
美容ブランドのアカウントに共通する施策として、次のような要素が組み合わされています。
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用:ユーザーが自分のアカウントで商品を使った投稿をした際、ブランド側が許諾を得て公式アカウントで紹介する。第三者の投稿は広告色が薄く、購入検討中のユーザーに安心感を与えます。
- リール動画によるプロセス訴求:発色の変化やメイクのビフォーアフターなど、静止画では伝わりにくい「変化」を動画で見せる。Instagramのアルゴリズム上もリールは新規ユーザーへのリーチが伸びやすい形式です。
- コメント欄での丁寧な応答:新色に関する質問や色選びの相談に対して、ブランド側が具体的に回答することで、フィード外のやり取りが信頼構築につながります。
- ハッシュタグとキーワードの一貫性:ブランド名・商品名・カテゴリ名を組み合わせたハッシュタグを毎回同じ形式で使うことで、ユーザーが検索してたどり着きやすくなります。
これらはいずれも、フォロワー数の多寡に関係なく明日から着手できる施策です。むしろアカウント規模が小さいうちの方が、コメント一つひとつに時間をかけて返信できるという利点もあります。
自社アカウントで真似するための実践チェックリスト
以下は、LUNASOLの運用から抽出した要素を、自社・自店舗のアカウントに落とし込むためのチェックリストです。まずは1〜3の「土台」から着手することをおすすめします。
- □ ブランドカラーを2〜3色に絞り、投稿の色調ルールを紙一枚にまとめたか
- □ 撮影の光源・角度・余白のルールを決め、担当者が変わっても再現できる状態にしたか
- □ 投稿を「新商品訴求」「使用シーン提案」「世界観訴求」の3タイプに分類し、週の投稿計画にバランスよく配置しているか
- □ 季節や商品発売のタイミングに合わせて「コレクション」として見せる投稿の連番設計をしているか
- □ ユーザー投稿(UGC)を探し、許諾を取ったうえで紹介する運用フローを用意したか
- □ リール動画で「変化・プロセス」を見せるフォーマットを最低ひとつ用意したか
- □ コメント・DMへの返信ルール(トーン、対応時間の目安)を決めているか
- □ ハッシュタグの組み合わせをテンプレート化し、投稿ごとにばらつかせていないか
- □ 薬機法・景品表示法に抵触する表現(効果効能の断定、誇大な比較表現など)が含まれていないかを投稿前にダブルチェックしているか
特に9番目は見落とされがちですが、美容・化粧品ジャンルは薬機法の規制対象になりやすい業種です。「シミが消える」「必ず若返る」といった効果を断定する表現や、他社製品との優劣を明示する比較表現は避け、事実に基づいた表現にとどめる運用ルールを事前に決めておくことが、長期的にアカウントを守ることにつながります。
世界観重視のブランドから学ぶ際の注意点
LUNASOLのようなナショナルブランドの運用をそのまま模倣しようとすると、撮影機材やモデル起用など予算面で挫折しやすいのも事実です。重要なのは「同じ予算で同じことをする」ことではなく、「一貫性を保つ仕組み」を自分たちの規模に合わせて再現することです。トンマナのルール化、投稿タイプの分類、UGC活用の3つは、個人経営の店舗や中小企業のアカウントでも十分に取り入れられる考え方です。
同じ美容・コスメ業種や、世界観づくりを重視する他業種のアカウントがどのように運用を設計しているかを知りたい場合は、SNS運用事例データベース「unyou」の事例一覧ページで、業種別・目的別の実例を比較検討してみることをおすすめします。自社と近い規模感・業態の事例を見つけることで、より現実的な運用計画が立てやすくなります。
まとめ
LUNASOLのInstagram運用は、単発のバズを狙うものではなく、ブランドカラーを絞ったトンマナ設計、新作訴求・使用提案・世界観訴求という3つの投稿タイプの反復、そしてUGCやリールを活用したエンゲージメント施策の積み重ねによって成り立っています。総務省の統計が示す通りInstagramの利用率は年々高まり、美容領域では購買行動に直結するチャネルになっていることを踏まえると、これらの型を自社の規模に合わせて取り入れることは、多くの企業・店舗アカウントにとって現実的な次の一手になるはずです。まずはチェックリストの1〜3番、トンマナと投稿タイプの整理から着手してみてください。
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