「うちの会社もインスタを頑張っているのに、なぜか伸びない」その悩み、住宅・不動産業界に特有の壁かもしれません
注文住宅やリフォーム、賃貸経営など「住まい」を扱う企業のSNS担当者から、「施工事例を投稿しているのに保存数が増えない」「フォロワーは増えても問い合わせにつながらない」という相談をよく耳にします。住宅という高単価・長期検討商材は、フォロワーの購買サイクルが長く、投稿の効果が見えにくいという構造的な難しさを抱えています。
そんな中、大手ハウスメーカーの住友林業は、戸建住宅事業とリノベーション住宅事業でそれぞれ公式Instagramアカウントを運用し、施工事例やブランドの世界観を発信し続けています。本記事では、住友林業のInstagram運用を公開情報とWeb上の分析記事、SNS運用事例データベース「unyou」の知見をもとに分解し、「なぜ支持されているのか」「どの部分なら自社アカウントにも応用できるのか」を、明日から試せるレベルまで落とし込んで解説します。数字が独り歩きしないよう、フォロワー数やエンゲージメント率など裏取りできない数値は本記事では扱わず、公式発表や公的統計など出典が明確なデータのみを引用します。

住友林業のInstagram運用の基本情報
住友林業は2017年12月、戸建住宅事業とリノベーション住宅事業において、それぞれ初となるInstagram公式アカウントを同時に開設したと公式サイトで発表しています(住友林業「~戸建住宅事業・リノベーション住宅事業~当社初 Instagram公式アカウントを同時開設」2017年12月25日付ニュースリリース)。この発表からわかるのは、住友林業がSNSを「思いつきの広報施策」ではなく、事業単位でアカウントを切り分けた計画的なチャネルとして位置づけている点です。
さらに住友林業は「ソーシャルメディアポリシー」を公式サイトで公開し、グループ全体のSNSアカウント一覧をPDFで管理・開示しています(住友林業「ソーシャルメディアポリシー」sfc.jp)。運用ルールと参加姿勢を明文化し、グループ会社を含めて統制の取れた発信体制を敷いていることも、長期的にブランドの世界観がぶれない理由のひとつと考えられます。戸建住宅公式アカウントのほか、緑化事業や賃貸住宅事業など、事業ごとにアカウントを分ける設計思想も特徴です。
なぜ住友林業のInstagramは支持されているのか
住宅・不動産業界のInstagram活用を分析した複数の業界メディアの記事では、住友林業の戸建住宅公式アカウントについて、施工実例を軸にしたビジュアル訴求と、来場者を巻き込むハッシュタグ運用が共通して評価されています。ポイントを整理すると、次の3つに集約できます。
- 「暮らしの解像度」を上げる写真構成:単なる部屋の全体写真ではなく、空間の広がりが伝わるよう写真を分割して投稿する、あるいは複数カットで同じ空間を多角的に見せる工夫がされています。
- 一貫したブランドメッセージ:「#いい木と住むこと。」というキャッチコピーをハッシュタグ化し、投稿・キャプション・キャンペーンを横断して使い続けています。
- 顧客参加型の設計:展示場を訪れた見込み客自身が同じハッシュタグを使って投稿できるようにすることで、企業発信だけでなくUGC(ユーザー生成コンテンツ)を巻き込む構造になっています。
これは「素敵な写真を撮る」だけの表面的なテクニックではなく、ブランドの核となる言葉を軸に、企業投稿と顧客投稿の両方が同じ世界観に収束するよう設計されている点が本質だと言えます。
投稿の「型」を分解する
住宅系Instagramにありがちな失敗は、「完成写真を撮って載せるだけ」で終わってしまうことです。住友林業の投稿から読み取れる型は、次のように整理できます。
- 導入カット:空間の第一印象を決める広角ショット
- 分割・多角ショット:同じ空間の別アングルや部分ズームを複数枚構成にして、Instagramのカルーセル機能で「見る」体験そのものを引き延ばす
- 暮らしの情景を描くキャプション:素材や設備のスペックだけでなく、「この場所で家族がどう過ごすか」を言葉にして、閲覧者が自分の生活に重ね合わせやすくする
- ハッシュタグでの導線設計:ブランドハッシュタグを使い、投稿単体で終わらせず、他の施工事例やアカウント全体への回遊を促す
この型が優れているのは、写真の「映え」だけに依存せず、キャプションとハッシュタグまで含めて一つの体験としてデザインされている点です。他業種にも応用できる汎用的な構造だと言えます。
世界観のつくり方
住友林業のような大手ハウスメーカーがSNSで世界観を作る際に押さえているのは、次の3要素だと考えられます。
| 要素 | 住友林業の工夫 | 他業種で応用する際のポイント |
|---|---|---|
| トンマナの統一 | 木の質感・自然光を活かした写真トーンで統一 | 自社の強みを象徴する色・素材・光を決めてフィルターやトーンを揃える |
| 事業ごとのアカウント分割 | 戸建住宅とリノベーションでアカウントを分離 | ターゲット層や検討フェーズが異なる事業は無理に一本化せず分ける |
| ブランドフレーズの一貫使用 | 「いい木と住むこと。」を全投稿・キャンペーンで統一使用 | 覚えやすい短いフレーズを決め、キャプション・ハッシュタグ・広告文まで統一する |
このように、世界観づくりとは「おしゃれな写真を撮ること」ではなく、事業構造・言葉・ビジュアルの3点を一致させる設計作業だという点が、住友林業の事例から見えてきます。
エンゲージメントを生む施策
エンゲージメントというと「いいね」や「保存」の数字に目が行きがちですが、住友林業の運用で参考になるのは、数字を追う前の「巻き込みの設計」です。
- ブランドハッシュタグを顧客に開放する:展示場来場者や施主が投稿する際にも同じハッシュタグを使ってもらうことで、企業アカウント単独では出せない「生活者目線」の投稿が蓄積されていきます。
- キャプションで検討行動を後押しする:間取りや設備の説明で終わらせず、「休日の朝、ここでコーヒーを飲む」といった行動を想像させる言葉を添えることで、保存(あとで見返す)行動につながりやすくなります。
- 投稿頻度よりも一貫性を優先する:事業ごとにアカウントを分けているからこそ、それぞれのアカウントが扱うテーマがぶれず、フォローする理由が明確になります。
総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、インターネット利用の目的・用途のうち「SNS(無料通話機能を含む)の利用」は全体で81.9%と最も高い割合を占めています。生活のあらゆる場面でSNSが情報収集・比較検討の起点になっていることを踏まえると、住宅のような高額商材でも「検討初期の接点」としてInstagramを位置づける戦略は理にかなっていると言えます。
数字で見るSNS活用の背景データ
自社アカウントの運用方針を社内で説明する際、根拠となる公的データを持っておくと説得力が増します。ここでは確証のある出典のみを紹介します。
- 総務省「令和6年版 情報通信白書」:インターネット利用の目的・用途で「SNSの利用」が81.9%と全用途中で最多。
- Meta社発表(2023年11月、Meta Marketing Summit Japanでの発表):Instagramの国内月間アクティブアカウント数が6,600万以上に到達(2019年6月発表の3,300万から4年間で倍増)。
- 住友林業「ソーシャルメディアポリシー」(sfc.jp):グループ全体で公式SNSアカウント一覧を公開し、目的・参加姿勢を明文化して運用している。
Instagramの国内利用規模がこの数年で大きく拡大し、かつSNS利用がインターネット利用の主要用途になっている以上、住宅・不動産のような検討期間の長い商材でも、認知から比較検討まで幅広いフェーズでInstagramが接点になり得ることがうかがえます。
自社アカウントに応用するための実践チェックリスト
ここまでの分析を、明日から自社アカウントで試せるチェックリストに落とし込みます。
- 事業・ターゲットごとにアカウントを分けるべきか棚卸しする:扱う商材やターゲット層が大きく異なる場合、1アカウントに詰め込まず分割を検討する。
- ブランドを象徴する短いフレーズを1つ決める:キャプション・ハッシュタグ・広告文で使い回せる言葉を用意する。
- 1投稿=1空間を、複数カットのカルーセルで構成する:全体・部分・別アングルの最低3カットを用意する運用ルールを作る。
- キャプションに「暮らしのシーン」を1文入れる:スペック情報だけで終わらせず、利用シーンを想像させる一文を必ず加える。
- 顧客が使えるハッシュタグを用意し、来店・施工時に案内する:名刺やパンフレット、店内POPなどオフラインでも告知する。
- 投稿トーン(色味・光の当て方)を統一するルールを1枚のシートにまとめる:担当者が変わってもトンマナがぶれないようにする。
- 月に1回、保存数が高かった投稿の共通点を振り返る:感覚ではなく投稿ごとの傾向をメモに残し、次の投稿に反映する。
これらは特別な予算やツールを必要とせず、投稿の設計思想を変えるだけで着手できるものばかりです。住友林業の事例が示しているのは、派手な施策よりも「一貫性のある設計」の積み重ねがブランドとしての世界観を作るという、地道だが再現性の高いアプローチです。
業界特有の注意点
住宅・不動産業界でInstagramを運用する際に留意したい点も補足します。
- 施主・顧客の個人情報や物件の特定情報への配慮:施工事例を投稿する際は、掲載の許諾範囲を契約時に明確にしておく。
- 「映え」だけを追わない:高額商材ほど、閲覧者は「自分ごと化」できるかどうかを重視するため、生活シーンを想像させる情報設計が写真の美しさ以上に重要になる。
- 成果を急がない:検討期間が長い商材では、フォロー〜問い合わせまでのリードタイムも長くなることを前提に、中長期的な指標設計をする。
まとめ
住友林業のInstagram運用から読み取れる要点は、①事業単位でアカウントを分け目的を明確にすること、②ブランドを象徴する言葉を一貫して使い続けること、③顧客自身が発信に参加できるハッシュタグ設計をすること、の3つに集約されます。いずれも大企業だけの特権ではなく、規模を問わず自社アカウントに取り入れられる考え方です。まずは本記事のチェックリストから、明日試せるものを1つ選んで実践してみてください。
住宅・不動産業界以外の運用事例や、業種別の成功パターンをさらに知りたい方は、SNS運用事例データベース「unyou」の事例一覧ページもあわせてご覧ください。
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ABOUT UNYOU
unyou は、SNS運用の「成功事例」が集まるデータベースです
Instagram・X・TikTok で実際に成果を出しているアカウントを、業種 × トンマナ × プラットフォームで検索・比較できます。掲載しているのは、世の中に公開されている実在アカウントの分析 600件超。 「自社の業種で何が伸びているのか」を、感覚ではなくデータで確かめられます。
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