「うちのアカウントは伸びないのに、なぜあのホテルは...」その悩み、運用の"型"で解決できます
自社のInstagramを毎日更新しているのに、保存数もコメントも増えない。投稿ネタが尽きて、気づけば「新商品のお知らせ」ばかりが並ぶフィードになっている——宿泊業や店舗のSNS担当者から、こうした相談をよく耳にします。特に旅行・宿泊業は「写真映えする素材があるのに活かしきれていない」ケースが多く、もったいないと感じる場面が少なくありません。
一方で、星野リゾートのInstagramは、旅行・宿泊業界の中でもSNS運用の成功事例としてたびたび紹介される存在です。特別な裏ワザがあるわけではなく、「世界観の統一」「体験ベースの発信」「UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用」といった、実は多くのアカウントが再現できる型を、ブランドごとに一貫してやり切っている点に強みがあります。本記事では、公開情報をもとに星野リゾートのSNS運用を分解し、自社アカウントに応用できるポイントを具体的に整理します。なお本記事では、確証の持てないフォロワー数やエンゲージメント率などの数値は掲載していません。

星野リゾートのSNS運用の全体像
星野リゾートは「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」「BEB」など複数のブランドを展開しており、Instagramもブランドごとにアカウントを分けて運用しているのが特徴です。公式ブランドアカウント(@hoshinoresorts.official)に加え、施設単位・ブランド単位のアカウントが多数存在し、それぞれが独自の世界観で情報発信を行っています。
日経クロストレンドの取材記事では、星野リゾート代表の星野佳路氏が「若者の顧客を増やすためにSNSを活用している」と語っており、特に若年層をターゲットにした「BEB軽井沢」ではSNSのみで告知を行い、宿泊した顧客自身がSNSで発信してくれることで広告効果を得ていると紹介されています(出典:日経クロストレンド)。つまり星野リゾートのSNS戦略は、単なる「情報発信チャネル」ではなく、顧客自身が発信したくなる体験・ビジュアルを設計することに重心が置かれているのが特徴です。
興味深いのは、星野氏自身がSNS活用について「理論的にはまだプリミティブ(原始的)で、正しい手法が確定できていない段階だと思っている」と述べている点です(出典:日経クロストレンド)。大手企業であっても手探りで運用を続けているという事実は、中小規模のアカウント運用者にとっても勇気づけられる情報ではないでしょうか。
なぜ「伸びている」と評価されるのか:3つの共通ポイント
各種メディアで紹介されている星野リゾートのSNS運用の特徴を整理すると、共通して挙げられるポイントは大きく3つあります。
1. ブランドごとに世界観を統一している 「星のや」は上質で非日常な和の世界観、「BEB」はカジュアルで若者向けのトーンというように、ブランドコンセプトとフィードの色味・文体・写真の構図が一致しています。アカウントを開いた瞬間に「どのブランドか」が伝わる設計です。
2. 投稿を"モノ"ではなく"体験"として見せている 客室や施設のスペック紹介ではなく、「その場所で何が体験できるか」を軸にした投稿構成になっている点が、業界分析記事でも繰り返し指摘されています。
3. ユーザー投稿(UGC)を積極的に活用している 宿泊客が自発的に投稿したくなるようなハッシュタグや撮影スポットを用意し、公式アカウントがそれを紹介・引用する循環をつくっている点も特徴として挙げられます。
投稿の"型"を分解する:体験ベースの発信とは
インスタアンテナ等の分析記事によれば、星野リゾートのInstagram運用における鉄則として、次のような要素が挙げられています。
- 世界観をブランドごとに統一すること
- 投稿は"体験ベース"で構成すること(モノ紹介ではなく、そこで過ごす時間や感情を伝える)
- オリジナルのハッシュタグを育てること
- お客様投稿(UGC)を促す仕掛けをつくること
- "人"や"日常"を見せることで親近感を演出すること
これらは特別な技術やツールを必要とするものではなく、投稿の「企画の立て方」に関わる型です。例えば同じ客室の写真でも、「〇〇畳の和室」という説明的なキャプションではなく、「窓を開けた瞬間に広がる、朝もやの中の山並み」といった体験の描写に変えるだけで、フィード全体の印象は大きく変わります。
ストーリーズ・ハイライトの活用法
星野リゾートの運用でもう一つ注目したいのが、ストーリーズとハイライトの使い分けです。ブランドごとにストーリーズで情報を発信し、それをハイライトにまとめることで、ブランドの認知や施設理解、利用意向の向上につなげているとされています。
フィード投稿は「世界観を伝える資産」として蓄積し、ストーリーズは「今この瞬間の情報(空室状況、季節のイベント、期間限定プランなど)」を伝える場として使い分ける——この2階建て構造は、更新頻度に悩む運用担当者にとって参考になる設計です。フィードを世界観重視でゆっくり更新し、ストーリーズで鮮度の高い情報をこまめに出すことで、「更新疲れ」を防ぎながら情報発信量を確保できます。
自社アカウントに応用できる具体的ポイント
星野リゾートの運用から抽出できる要素を、実際に明日から試せるレベルまで分解すると、以下のようになります。
| 星野リゾートの要素 | 自社アカウントでの応用例 |
|---|---|
| ブランドごとの世界観統一 | 投稿前に「トーン&マナー表」を作成し、フィルター・文体・絵文字使用有無を統一する |
| 体験ベースの投稿 | 「モノの説明」ではなく「そこで得られる感情・時間」をキャプションの主語にする |
| オリジナルハッシュタグの育成 | 独自ハッシュタグを1つ決め、投稿・プロフィール・店頭POPなど全接点で告知する |
| UGC(ユーザー投稿)の活用 | 顧客の投稿をストーリーズで積極的に紹介し、「紹介されるかもしれない」体験を作る |
| ストーリーズ/ハイライトの使い分け | フィードは世界観、ストーリーズは即時性の高い情報という役割分担を決める |
| "人"を見せる発信 | スタッフの日常や裏側を月数回ペースで発信し、親近感を演出する |
明日から試せるチェックリスト
自社アカウントに落とし込む際の実践手順を、チェックリスト形式でまとめます。
- 直近20投稿を並べて見たとき、色味・トーンに統一感があるか確認する
- キャプションが「スペック説明」ではなく「体験の描写」になっているか、3投稿分を書き直してみる
- 自社ならではのオリジナルハッシュタグを1つ決め、プロフィール欄・投稿・店頭に統一表記で掲載する
- 顧客・来店客がそのハッシュタグを使いたくなる仕掛け(撮影スポット、割引特典など)を1つ用意する
- 週に1回、UGC投稿をストーリーズで紹介する運用フローを決める
- フィード用とストーリーズ用で「発信する情報の役割」を分けて運用カレンダーに落とす
- 月1〜2回、スタッフや裏側を見せる投稿を企画する
- 競合・同業種の投稿を5アカウント分ベンチマークし、自社に足りない要素を書き出す
SNS利用の前提データから見る、なぜInstagramに注力すべきか
宿泊業がInstagramに力を入れる背景には、国内のSNS利用状況も関係しています。総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、全年代における主要ソーシャルメディアの利用率は、LINEが91.1%、Instagramが52.6%、X(旧Twitter)が43.3%、Facebookが26.8%となっており、動画系ではYouTubeが80.8%、TikTokが33.2%と報告されています(出典:総務省「令和6年版情報通信白書」)。
また、Instagramを運営するMeta社は、2023年11月開催の「Meta Marketing Summit Japan 2023」において、日本国内の月間アクティブアカウント数が2019年公表時点の3,300万から倍以上に拡大したことを明らかにしています(出典:Meta Marketing Summit Japan 2023発表情報)。
さらに総務省の統計では、日本のソーシャルメディア利用者数は2023年の1億580万人から2028年には1億1,360万人まで増加すると予測されています(出典:総務省「令和6年版情報通信白書」)。
これらのデータからは、旅行・宿泊のようにビジュアルで魅力を伝えやすい業種にとって、Instagramが引き続き主要な情報接点であり続けることがうかがえます。星野リゾートのように、ブランドごとに世界観を作り込む投資は、この利用者基盤の広さを踏まえると合理的な選択と言えるでしょう。
中小規模の宿泊施設・店舗が陥りやすい失敗パターン
星野リゾートの事例と対比する形で、伸び悩むアカウントに共通する失敗パターンも整理しておきます。
- 告知投稿ばかりになっている:新プラン・キャンペーンの告知が続くと、フォロワーは「広告アカウント」と認識し離脱しやすくなります。
- フィードに統一感がない:担当者が変わるたびにトーンが変わり、ブランドイメージが定まらない。
- UGCを活かせていない:顧客が投稿してくれているのに、公式が紹介・リポストする仕組みがない。
- ハッシュタグが毎回バラバラ:オリジナルハッシュタグが育たず、検索経由の流入も生まれない。
- フィードとストーリーズの役割が同じ:どちらも同じような告知になっており、使い分けができていない。
これらは星野リゾートの運用から逆算すると、いずれも「世界観の設計」「体験ベースの発信」「UGCの循環」のいずれかが欠けていることに起因していると整理できます。
まとめ
星野リゾートのInstagram運用は、派手な仕掛けよりも「ブランドごとの世界観統一」「体験を主語にした投稿」「UGCを循環させる仕組み」「フィードとストーリーズの役割分担」といった、地道な型の積み重ねによって成り立っています。これらは大手だけの特権ではなく、宿泊施設や店舗規模のアカウントでも十分に再現可能な考え方です。まずは直近の投稿を見直し、本記事のチェックリストから1つずつ着手してみてください。
他の企業・店舗のSNS運用事例をより詳しく知りたい方は、unyouの事例データベース(/cases)で同業種・類似業種のアカウントも併せてチェックしてみることをおすすめします。
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