ワークマン(WORKMAN)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/13
「SNS担当になったものの、何を投稿すればいいのか分からない」「毎日投稿しているのに反応が薄い」「広告予算がないなかで、どうやってファンを増やせばいいのか」——アパレルや小売、飲食など、現場で日々の運用を任されている担当者であれば、一度はこうした壁にぶつかったことがあるのではないでしょうか。とくに実店舗を持つ業態では、SNS担当が広報も兼務していることが多く、時間もノウハウも限られたなかで「とりあえず投稿する」運用になりがちです。
そんな中で、業界内外から継続的に注目されているのが作業服・ワークウェア専門店「ワークマン(WORKMAN)」のSNS運用です。単なる「バズった投稿」ではなく、アンバサダー制度・UGC活用・商品開発への接続という「仕組み」として設計されている点が、多くの企業にとって参考になります。本記事では、公開されている情報をもとにワークマンのInstagram運用を分解し、他の企業や店舗アカウントがそのまま応用できるポイントに落とし込んで解説します。なお、フォロワー数やエンゲージメント率など裏付けの取れない数値は本記事には記載していません。
ワークマンのSNS運用がなぜ注目されるのか
ワークマンは長らく「建設・土木・製造業向けの作業服店」というイメージが強い企業でした。しかし2018年以降、防水・防寒・透湿といった機能素材を一般客向けにも展開し始め、2020年10月16日には女性をメインターゲットにした新業態店舗「#ワークマン女子」を横浜市に出店しています(Business Insider Japan「#ワークマン女子ってなに? ユニクロ追撃の秘策は"インスタ映え"だけではない…急成長企業の次の一手」)。この業態名にあえて「#(ハッシュタグ)」を冠している点が象徴的で、企業が一方的に発信するのではなく、SNS上でユーザーが自発的に言及し、拡散する構造を最初から狙って設計されていることがわかります。
さらに現在では、ワークマン公式アカウントに加えて「ワークマンプラス」「ワークマン女子」、そして2025年7月31日に新設された「Workman Colors」公式アカウント(ワークマン公式サイト「【Workman Colors Instagram公式アカウント】のお知らせ」より)など、ブランドライン・客層ごとにアカウントを分けて運用している点も特徴です。一つのアカウントに全商材を詰め込むのではなく、見せたい世界観ごとにアカウントを分割することで、フォロワーが「自分に関係のある情報だけ」を受け取れる設計になっています。

「聞く」運用と「言わせる」運用——UGCを軸にした情報発信
ワークマンの運用でまず参考にすべきは、公式アカウントが「宣伝を主目的にしていない」ように見える点です。SNS上やブログで「バイク通勤用に着ると防寒性が高い」「アウトドアで着てもおしゃれ」「フェスの雨対策に使える」といった、作業服という本来の用途とは異なる使い方をユーザー自身が発見・発信したことが、ワークマンの新業態展開のきっかけになったと報じられています(口コミラボ「#ワークマン女子 は何故流行したのか。作業服のイメージを覆す『ブランディング』戦略」)。
つまり、企業側が「こう使ってください」と提案するのではなく、ユーザーの自然な使い方(UGC=ユーザー生成コンテンツ)を観察し、そこから新しい切り口を見つけて商品化・打ち出し直すという順序になっています。これは一般的な企業アカウント運用が陥りがちな「言いたいことを言う」発信とは逆のアプローチであり、応用範囲の広い考え方です。
広告費をかけない「アンバサダー制度」という仕組み
ワークマンのSNS戦略の中核をなすのが、独自の「アンバサダー制度」です。ワークマン公式サイトの紹介ページ「WORKMAN/ワークマンプラス公式アンバサダーご紹介!」によれば、ワークマン製品を継続的に愛用し発信してくれる人や、専門分野の知見を持ち製品開発への助言ができる人を公式アンバサダーとして認定しており、2026年時点で公開されているアンバサダーは36名です。
このアンバサダー制度の特徴は、原則として金銭報酬を支払わない点にあります。その代わりにアンバサダーには「新製品発表会への招待」「新製品のモニター機会」「どこよりも早い情報解禁」といった待遇が提供されます(PR GENIC「アンバサダーと築く"Win-win"な関係。ワークマンのマーケティング戦略とは」等)。アンバサダー側は自身の発信力・専門性のアピールにつながり、ワークマン側は現場目線のリアルな声を商品開発に取り込めるという、双方にメリットのある関係性が設計されています。
一般的な「インフルエンサーマーケティング」が広告費を払って投稿してもらう一方向の取引になりやすいのに対し、ワークマンのアンバサダー制度は「情報の先出し」という金銭以外の価値交換を軸にしている点が異なります。これは予算の少ない中小企業や店舗アカウントでも応用しやすい発想です。
UGCを資産化する仕組み——「workmanフォト」の事例
ワークマンはユーザーが投稿したInstagramコンテンツを、公式オンラインストア上の販促コンテンツとして再活用する取り組みも行っています。PR TIMES掲載の株式会社visumoのプレスリリース「ワークマン公式オンラインストアでInstagramの投稿のUGCを活用したコンテンツ『workmanフォト』をリリース」によれば、ワークマンは公式オンラインストア内の「#ワークマン女子」コーナーにおいて、ユーザーがSNSに投稿した着用画像などのUGCを収集・掲載するツールを導入し、購入検討中のユーザーに「実際に着るとこうなる」というリアルな情報を届ける施策を行っています。
これは、SNS上で生まれた投稿を「SNSの中だけで消費させない」という発想です。ハッシュタグキャンペーンなどでUGCを集めても、多くの企業はSNS内でリポストして終わってしまいますが、ワークマンはそれをECサイトの購買導線にまで組み込んでいます。SNS担当者だけで完結させず、EC担当・商品部門と連携して「集めたUGCをどこで再利用するか」まで設計している点は、部門を横断して真似する価値がある取り組みです。
世界観のつくり方——「作業服」から「使い方の発見」へ
ワークマンのアカウントを見ると、投稿の多くが「商品単体の紹介」ではなく「その商品をどのシーンでどう使うか」という文脈で構成されています。防寒ウェアであれば通勤・キャンプ・釣りなど、レインウェアであればフェスや自転車通勤など、想定用途を具体的なシーン単位に分解して見せることで、「作業服専門店」という固定イメージを持つ生活者にも「自分ごと化」してもらいやすくなっています。
この「シーンで見せる」発想は、ワークマン女子という業態そのものにも表れています。店舗設計自体を「インスタ映え」にこだわって作り込んだことが報じられており(Business Insider Japan、前掲)、SNS上の見え方を起点に店舗体験まで一貫して設計している点が、単発のSNS施策ではなく「ブランディング」として機能している理由だと考えられます。
背景にあるSNS利用環境の変化
こうした施策が機能する背景には、日本国内のSNS利用が生活インフラ化している状況があります。総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、SNSの利用は年代を問わず広がっており、20代の利用率は9割超、30代で8割台半ば、60代でも7割超と報告されています。特定の若年層だけの媒体ではなく、幅広い年代の生活者が日常的に接触するチャネルになっているため、ワークマンのように客層の広い商品を扱う企業にとってもSNSは主要な情報接点になっています。
また、Instagramの国内利用規模についても、Meta担当者が「Meta Marketing Summit Japan 2023」(2023年11月開催)で言及した内容として、国内月間アクティブアカウント数が6,600万以上に達したと報じられています(日経クロストレンド「Instagramの国内MAUは6600万人以上か【SNS定点観測】」)。これは2019年に公表された3,300万から4年間で倍増した水準であり、企業がInstagramを軽視できない規模になっていることを裏付けるデータです。
一般的な企業アカウント運用との違い(比較表)
ワークマンの運用と、多くの企業でありがちな運用スタイルを比較すると、次のような違いが見えてきます。
| 観点 | よくある企業アカウント運用 | ワークマン型の運用 |
|---|---|---|
| 発信の起点 | 企業が伝えたいこと(新商品・セール情報) | ユーザーが実際にしている使い方・声 |
| インフルエンサー活用 | 金銭を払って投稿を依頼する単発施策 | 情報の先出し等と引き換えのアンバサダー制度で継続関係を構築 |
| UGCの扱い | リポスト・いいねで終わる | ECサイトの購買導線にまで再活用する |
| アカウント設計 | 1アカウントに全情報を集約 | ブランドライン・客層ごとにアカウントを分割 |
| 商品開発との関係 | SNSは広報部門の範囲で完結 | ユーザーの声・アンバサダーの助言を商品開発に還元 |
こうして並べると分かるとおり、ワークマンの運用は「SNS担当者だけが頑張る施策」ではなく、商品開発・EC・店舗運営を横断した仕組みとして設計されている点が最大の違いです。
明日から試せる実践チェックリスト
自社アカウントにすべてを一気に取り入れるのは難しくても、考え方の一部は規模を問わず応用できます。以下の項目から着手できそうなものを確認してみてください。
- 自社商品について、SNSやレビューで「想定外の使われ方」をされていないか検索・確認する
- 投稿を「商品紹介」ではなく「利用シーン紹介」の型に組み替える(誰が・どこで・どう使っているか)
- 熱心なリピーターや常連客に、金銭報酬以外の価値(先行情報・試作品モニターなど)を提示できないか検討する
- ユーザー投稿(UGC)を集める場だけでなく、集めたあとの再活用先(ECの商品ページ、店頭POPなど)を先に決めてから収集を始める
- 複数の客層・商品ラインを抱えている場合、1アカウントに詰め込みすぎていないか棚卸しする
- コメント・DMで寄せられる要望や不満を、SNS担当だけで抱えずに商品担当へ定期的に共有するフローを作る
- 投稿頻度よりも「文脈(シーン)が伝わっているか」を投稿ごとにチェックする
いずれも、大きな予算やフォロワー数を前提とせずに始められる項目です。重要なのは「バズる投稿」を狙うことではなく、顧客の声を起点にした継続的な仕組みを作ることだと言えます。
まとめ
ワークマンのInstagram運用が参考になるのは、単発の話題性だけに頼らず、アンバサダー制度によるファンとの継続的な関係構築、UGCをECの購買導線にまで組み込む仕組み、ブランドライン別のアカウント設計など、複数の施策が「顧客の声を商品と発信に還元する」という一つの思想でつながっている点です。総務省の調査が示すとおりSNSはすでに幅広い年代の生活インフラであり、Instagramの国内利用規模も拡大を続けています。フォロワー数やバズを追う前に、まずは「自社の顧客が商品をどう使い、何を発信しているか」を観察するところから、自社なりの運用方針を見直してみてはいかがでしょうか。
同業種であるアパレル・ファッション業界の他社事例も、unyouの事例データベース(/cases)で確認できます。自社の規模や客層に近いアカウントの運用方針を探してみてください。
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