「うちの投稿は毎回同じような反応しか返ってこない」「フォロワーは増えても、保存やコメントにつながらない」——SNS担当者としてこうした壁にぶつかっている方は少なくないはずです。特に食品・飲食・生活関連の商材を扱う企業やお店では、レシピや料理コンテンツを軸にした発信が定番化している一方で、他社との差別化が難しく「見た目は真似できても、なぜあのアカウントだけ支持されているのか分からない」と感じることも多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、日本最大級のレシピサービスを運営するクックパッド株式会社の公式Instagram運用を、公開されている情報をもとに分析します。単なる紹介にとどめず、「なぜこの型が機能するのか」「BtoB企業や店舗アカウントが応用できる部分はどこか」という視点で分解していきます。フォロワー数やエンゲージメント率など、裏付けの取れない数字は本記事では扱いません。あくまで投稿の構造・設計思想から学べるポイントに焦点を当てます。
クックパッドはSNS運用の「お手本」になり得るのか
クックパッド株式会社は1997年に設立され、1998年からレシピ検索・投稿サービスを開始した企業です。東京証券取引所プライム市場に上場しており、国内でも老舗かつ大規模なレシピプラットフォームとして知られています。同社の強みは、専門家ではなく「一般ユーザーが投稿したレシピ」と、実際に作った人が写真付きで感想を残す「つくれぽ」という仕組みにあります。つまり創業当初から、企業発信ではなくユーザー発信・ユーザー参加型のコンテンツ文化を土台にしてきた会社です。
この「ユーザー参加を前提にした設計思想」は、そのままSNS運用にも受け継がれていると考えられます。企業アカウントが陥りがちな「広告っぽさ」「一方通行な発信」を避け、フォロワーが「自分ごと化」できる投稿設計を積み重ねている点が、長く支持されている理由の一つと言えるでしょう。

クックパッドという会社の基本情報とSNS運用の背景
BtoB企業がSNS運用を検討する際、まず押さえておきたいのは「なぜその企業がその媒体を使うのか」という前提です。クックパッドの場合、料理・レシピというテーマ自体がInstagramと非常に相性の良いジャンルです。写真・動画を中心とした視覚的なプラットフォームであるInstagramは、完成品の見栄えや調理工程を見せることに強みがあり、レシピという情報形態と構造的に噛み合っています。
実際、Instagram(旧Facebook)は2018年6月に世界の月間アクティブアカウント数が10億を突破したと公式に発表しており、その後もFacebook Japan(現Meta Japan)は2019年6月、国内の月間アクティブアカウント数が3,300万に達したと公表しています(出典:Instagram公式発表、Facebook Japan発表)。写真・動画中心のプラットフォームがこれだけの規模で日常的に利用されている以上、料理という視覚訴求力の高いジャンルを持つ企業がここに軸足を置くのは合理的な選択です。
加えて、総務省が毎年公表している「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、Instagramは10代・20代を中心に利用率が高く、写真・動画による情報収集・発見のチャネルとして定着していることが繰り返し報告されています(出典:総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」)。レシピという「今日の献立を決めたい」という即時的なニーズと、発見型のSNS利用行動は親和性が高く、クックパッドがInstagramに力を入れる背景として整合性があります。
クックパッドのInstagram投稿を分解する|3つの型
公開されている投稿内容を確認すると、クックパッドのInstagram運用にはいくつかの明確な「型」が見て取れます。BtoB企業のアカウント設計にそのまま応用できる考え方なので、要素ごとに整理します。
1. 課題解決型の短尺動画 「時短」「節約」「今日の献立に迷ったとき」など、生活者が日常的に抱える小さな悩みを起点にした縦型動画です。手順を字幕付きで見せることで、音声オフでも内容が伝わる設計になっています。これはInstagramのリール機能が主要な導線となっている業界全体の傾向とも一致します。
2. 季節・行事に紐づいたテーマ設定 行事食や旬の食材を扱うことで、「今、見る理由」をつくっています。カレンダー的な話題は、フォロワーが受動的に情報を得たいタイミングと重なりやすく、保存行動(あとで見返す)につながりやすい設計です。
3. ユーザー参加を前提にした投稿設計 クックパッド本体のサービスが「つくれぽ」文化を軸にしているように、Instagram上でもコメント欄での反応や、フォロワーの体験を引き出す問いかけが見られます。企業が一方的に発信するのではなく、フォロワーが「自分の話」として反応できる余白を残している点が特徴です。
世界観とトーン&マナーのつくり方
クックパッドの投稿に共通するのは、「専門的すぎない」トーンです。プロの料理家の完璧な仕上がりを見せるのではなく、家庭で再現可能な範囲の見た目・手順にとどめています。これは同社が長年培ってきた「一般ユーザーの投稿を主役にする」というサービス哲学と一致しており、企業アカウントでありながら生活者目線の距離感を保つ工夫だと分析できます。
BtoB企業が陥りやすい失敗の一つに、「自社の実績や専門性を伝えたいあまり、フォロワーとの距離が遠くなる」ことが挙げられます。クックパッドの事例から学べるのは、専門性を「わかりやすさ」に翻訳して届ける姿勢です。難しい調理理論を語るのではなく、「今日の夕飯どうしよう」という生活者の悩みに寄り添う言葉選びが、世界観の一貫性をつくっています。
エンゲージメントを高める仕掛け
料理・レシピジャンルのSNS運用において、エンゲージメントを高めるためによく使われる仕掛けを、クックパッドの投稿傾向から整理すると以下のようになります。
| 仕掛け | 内容 | 狙い |
|---|---|---|
| 保存を意識した情報設計 | 手順や分量を画面内に完結させ、後で見返せる構成にする | 「保存」というアルゴリズム上重要な指標を高める |
| コメント欄での双方向性 | 「あなたはどう作りますか」といった問いかけ | フォロワーの参加感を高め、コメント数を伸ばす |
| プロフィール導線の明確化 | プロフィール文やハイライトからアプリ・サイトへ誘導 | Instagramを起点に自社サービスへ送客する |
| シリーズ化・カテゴリ化 | 「時短」「節約」などテーマ別にハイライト整理 | 新規フォロワーが過去投稿にもアクセスしやすくする |
こうした仕掛けは特別な技術を必要とせず、投稿設計の工夫だけで再現可能です。特に「保存」を意識した情報設計は、フォロー・いいね以外の指標としてSNSアルゴリズム上も重視されやすいとされており、業種を問わず応用価値の高いポイントです。
他業種でも真似できる5つの実践ポイント
クックパッドの事例から抽出できる、業種を問わず応用可能なポイントを整理します。
- 専門性を「翻訳」して届ける:自社の強みや実績をそのまま語るのではなく、生活者・顧客の悩みの言葉に置き換えて発信する。
- 保存されることを前提に投稿を設計する:情報を1投稿内で完結させ、後から見返す価値をつくる。
- 季節・時期性を活用してタイミングをつくる:行事や季節の話題に自社の商材・サービスを結びつけ、「今見る理由」を提供する。
- フォロワーが参加できる余白を残す:一方的な発信ではなく、コメントで返答したくなる問いかけを入れる。
- プロフィール・ハイライトを導線として設計する:投稿だけでなくアカウント全体を、自社サービスへの入り口として整える。
明日から試せるチェックリスト
実際に自社アカウントで取り入れる際は、以下の項目から着手すると進めやすくなります。
- 直近の投稿は、自社目線ではなく「顧客・生活者の悩み」から始まっているか
- 1投稿だけで内容が完結しており、保存したくなる情報量になっているか
- 季節・時期のイベントと紐づけたテーマを月間カレンダーに落とし込めているか
- コメント欄で返信したくなる問いかけや余白を投稿文に入れているか
- プロフィール文・ハイライトが、自社サービスへの導線として機能しているか
- 専門用語や実績アピールに偏らず、平易な言葉で価値を伝えられているか
これらは高度な制作体制がなくても、投稿企画の段階で見直せる項目です。まずは直近5〜10投稿を上記チェックリストに照らして棚卸しすることから始めてみてください。
同じように実在アカウントの運用を分解した事例は、unyouの事例データベース(/cases)でも業種別に多数紹介しています。食品・飲食・生活関連ジャンルの他社事例と比較することで、自社に合った型を見つけやすくなります。
まとめ
クックパッドのInstagram運用から見えてくるのは、特別な技術やバズを狙う演出ではなく、「生活者の悩みに寄り添う情報設計」を地道に積み重ねている姿勢です。専門性をわかりやすく翻訳すること、保存を意識した投稿設計、季節性の活用、フォロワーが参加できる余白づくり——これらはいずれも、業種やアカウント規模を問わず取り入れられる考え方です。自社アカウントの投稿を見直す際は、まず本記事のチェックリストから小さく試し、反応を見ながら型を磨いていくことをおすすめします。
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