「投稿を頑張っているのに、フォロワーが増えない」「毎日更新しているのに、コメントもシェアも反応が薄い」——SNS担当者からよく聞く悩みです。特にスポーツクラブや地域密着型のブランドは、ファンとの距離を近づけたいという想いがある一方で、「何を投稿すれば熱量が伝わるのか」「一過性のバズではなく、継続的に愛されるアカウントにするにはどうすればいいのか」という壁にぶつかりがちです。
そこで今回は、Jリーグの中でもSNS運用の巧みさで知られるセレッソ大阪の公式Instagramを取り上げ、なぜ支持されているのか、投稿の型や世界観づくり、エンゲージメント施策を分解します。単なる「すごいですね」で終わらせず、業種を問わず自社アカウントに応用できる具体的なポイントまで落とし込みますので、明日からの運用に役立ててください。
セレッソ大阪のInstagram運用が注目される理由
セレッソ大阪は、Jリーグクラブの中でもSNS全体のフォロワー基盤が厚いクラブのひとつとして知られています。サッカー専門メディア「フットボールチャンネル」が2026年2月に報じたJリーグ全60クラブのSNSフォロワー数ランキングによると、セレッソ大阪はX(旧Twitter)とInstagramを合わせた総フォロワー数で上位に位置し、X単体で23万人台、Instagram単体でも16万人規模のフォロワーを抱えていると報じられています(出典:フットボールチャンネル「大人気! Jリーグクラブ、SNSフォロワー数ランキング6位〜10位」)。
同記事では、X単体で40万人を超えるフォロワーを持つクラブはJリーグ全60クラブ中5つしか存在しないと指摘されており、上位クラブとセレッソ大阪のファンベースの大きさが際立っていることがわかります。数字だけを見ても「なぜここまで支持されているのか」という疑問が湧きますが、その背景には偶然ではない設計があります。

アカウント設計の巧みさ ― 「ひとつにまとめない」戦略
セレッソ大阪のSNS運用の大きな特徴は、目的ごとにアカウントを細かく分けている点です。トップチームの公式アカウントのほかに、レディースチーム、サッカースクール、アカデミー(育成組織)、公式グッズ専用アカウントなど、複数のInstagramアカウントが並走して運用されています。
これは一見非効率に見えるかもしれませんが、実は理にかなった設計です。
- 情報の純度が保たれる:グッズ情報を見たい人と、育成年代の選手の成長を追いたい保護者では、求めている情報がまったく異なります。ひとつのアカウントに全部詰め込むと、フォロー動機がぼやけてしまいます。
- フォロー解除されにくい:興味のない情報に埋もれることがないため、「自分に関係ある発信だけをフォローする」という選択がしやすく、結果的に各アカウントのエンゲージメント率が安定しやすくなります。
- チーム内の役割分担がしやすい:スクール担当者がスクールアカウントを、グッズ担当者がグッズアカウントを運用できるため、現場の熱量がそのまま投稿に反映されやすくなります。
企業やお店に置き換えると、「採用広報」「商品紹介」「お客様の声」のようにテーマが混在しているアカウントは、フォロワーから見て「結局何のアカウントなのか」がわかりにくくなりがちです。規模が大きくなってきたら、テーマ単位でのアカウント分割や、少なくとも投稿カテゴリの明確化を検討する価値があります。
世界観のつくり方 ― 「セレ女」に学ぶファンダム醸成
セレッソ大阪のSNS戦略を語るうえで欠かせないのが、女性サポーター「セレ女」の存在です。2012年頃から急増したとされる女性ファン層に向けて、クラブは継続的に企画やイベントを展開してきました。スポーツナビの記事によると、セレッソ大阪が実施した「セレ女デー」では、女性の新規来場者数が前年比で30%増加したと報じられています(出典:Sports Navi「セレッソ大阪が仕掛けた“セレ女デー”、女性新規来場者が30%増加」2023年10月)。
この事例が示唆するのは、SNS単体の施策ではなく、リアルイベントとSNS発信を連動させることで、特定のファン層に「自分ごと化」してもらう世界観づくりが機能しているという点です。Instagram上でも、選手のオフショットやファン参加型の企画など、女性ファンが「見たい」「共有したい」と感じるコンテンツが継続的に発信されており、それが新規ファンの獲得だけでなく、既存ファンの熱量維持にもつながっていると考えられます。
自社アカウントに置き換えるなら、「誰の心を動かしたいのか」というターゲット像を具体的に描き、そのターゲットが喜ぶ企画をSNSとリアルの両方で設計することが重要です。漠然と「幅広い層に届けたい」と考えるより、まずは熱量の高い一部の層に深く刺さる発信を続けるほうが、結果的にアカウント全体の支持につながりやすくなります。
日本のSNS利用環境を踏まえた背景
そもそも、なぜスポーツクラブがここまでSNS運用に力を入れるのか。その背景には、日本国内のSNS利用率の拡大があります。総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、LINEの利用率は2014年の55.1%から2024年には94.9%へと増加し、60代においても2014年の11.3%から2024年の91.1%へと大幅に伸びています。さらに同白書では、X(旧Twitter)やInstagramといったソーシャル・ネットワーキング・サービスについても、2024年時点で全体の半数程度が利用し、50代でも4割以上が利用するなど、幅広い年齢層に利用が拡大していると報告されています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」)。
つまり、SNSはもはや若年層だけのメディアではなく、40代・50代のファン層にもリーチできるチャネルになっています。セレッソ大阪のように複数アカウントで情報を出し分ける戦略は、こうした幅広い年齢層・関心層それぞれに最適化した情報を届けるうえで理にかなっていると言えます。
エンゲージメントを生む具体的な施策
セレッソ大阪の運用から読み取れる、エンゲージメントを高めるための実践的な要素を整理すると、以下のようになります。
| 施策の型 | 具体的な内容 | 応用できる業種の例 |
|---|---|---|
| アカウント分割 | 目的別(本体・グッズ・育成・ファンクラブ等)にアカウントを分け、情報の純度を保つ | 複数事業を持つ企業、多店舗展開の小売・飲食 |
| リアルイベント連動 | 「セレ女デー」のような参加型イベントをSNSで告知・レポートし来場動機をつくる | 店舗、教室、地域密着ビジネス |
| オフショット・舞台裏発信 | 選手やスタッフの素顔、練習風景など「公式らしくない」親近感のあるコンテンツ | 製造業の裏側、スタッフ紹介、開発秘話 |
| ターゲット特化コンテンツ | 特定ファン層(セレ女など)に向けた企画・グッズ・投稿を継続的に発信 | 特定顧客層への深耕マーケティング |
| 育成・ストーリー発信 | アカデミー選手の成長など、長期的な物語を追えるコンテンツ | 人材育成、新卒採用、BtoB企業のプロジェクトストーリー |
これらに共通するのは、「単発の告知」ではなく「継続的に追いたくなる物語」を提供している点です。フォロワーは一度の投稿だけでファンになるわけではなく、繰り返し接触する中で愛着を形成していきます。
明日から試せるチェックリスト
自社・自店舗のInstagram運用に落とし込むための実践チェックリストを用意しました。
- アカウントの目的を1行で書き出す:「誰の、どんな悩みや興味に応えるアカウントか」を明文化する。複数の目的が混在していたら、投稿カテゴリを分けるか、アカウント分割を検討する。
- 直近10投稿を見直す:告知系(お知らせ・宣伝)と、共感系(舞台裏・人物・ストーリー)の比率を数える。告知ばかりに偏っていないか確認する。
- 「顔が見える」投稿を1本つくる:スタッフや商品づくりの裏側など、公式感を薄めた等身大のコンテンツを企画する。
- ターゲット層を1つに絞った企画を立てる:全員に向けた発信ではなく、特定の顧客層が「自分ごと」と感じる企画を月1回でも実施する。
- リアルの場との連動を設計する:店舗イベント・展示会・体験会などがあれば、事前告知→当日発信→事後レポートの3段階でSNS発信する。
- 継続できる更新頻度を決める:無理な毎日更新より、質を保てる頻度(週2〜3回など)を決めて守る。
- 保存・共有されやすい投稿形式を試す:ノウハウ系やビフォーアフター、まとめ系の投稿はフィードに保存されやすく、アルゴリズム上も評価されやすい傾向があります。
これらは特別な予算やツールがなくても、明日から着手できる内容です。まずは1と2の「棚卸し」から始めると、今のアカウントの課題が見えてきます。
よくある失敗パターンと回避のヒント
多くの企業アカウントが陥りやすい失敗として、次のようなものがあります。
- 告知だけのアカウントになってしまう:セール情報やイベント告知ばかりでは、フォローする理由が「お得情報を逃さないため」に限定されてしまい、熱量あるファンが育ちにくくなります。
- ターゲットを絞りきれない:「誰にでも好かれたい」という思いから当たり障りのない投稿が続くと、印象に残らないアカウントになりがちです。セレッソ大阪の「セレ女」施策のように、特定層への深い訴求が結果的に裾野を広げることもあります。
- 単発施策で終わってしまう:バズった投稿があっても、そこで得たフォロワーへの継続的なフォローアップがなければ、関係性はすぐに薄れてしまいます。
まとめ
セレッソ大阪のInstagram運用が支持されている背景には、目的別のアカウント設計、「セレ女」のような特定ファン層への深い訴求、そしてリアルイベントとSNS発信を連動させる一貫した戦略がありました。総務省「令和7年版 情報通信白書」が示すようにSNSの利用は幅広い年齢層に広がっており、フォロワー数ランキング(フットボールチャンネル調べ)やセレ女デーの来場者データ(Sports Navi報道)からも、継続的な取り組みが具体的な成果につながっていることがうかがえます。
大切なのは、規模の大小にかかわらず「誰に、どんな物語を届けたいのか」を明確にし、告知だけでなく共感を生むコンテンツを継続することです。今回紹介したチェックリストを参考に、まずは自社アカウントの棚卸しから始めてみてください。
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