「あのブランドはなぜ支持されるのか」がわからないまま運用を続けていませんか
コスメブランドのSNS担当者になったものの、「投稿すればするほど世界観がバラける」「新作情報を出しているのに反応が薄い」と感じたことはないでしょうか。競合や人気ブランドのアカウントを眺めては、「同じように商品を紹介しているはずなのに、なぜあちらは統一感があってファンがついているのか」と悩んでしまう——これは美容・コスメ領域のSNS担当者に共通する悩みです。
その代表例としてよく名前が挙がるのが、メイクアップブランド「ADDICTION(アディクション)」の公式Instagramアカウントです。派手なキャンペーンや過度な演出があるわけではないのに、ブランドとしての一貫した空気感を保ち続けています。本記事では、公開情報をもとにADDICTIONのInstagram運用を分解し、投稿の型・世界観のつくり方・エンゲージメントを生む導線という3つの切り口で分析します。そのうえで、他の企業や店舗アカウントが「明日から」応用できる具体的なポイントに落とし込んでいきます。なお、フォロワー数やエンゲージメント率など裏付けの取れない数値は本記事には記載していません。

ADDICTIONというブランドの土台を知る
分析の前提として、ADDICTIONというブランドそのものの成り立ちを押さえておきます。ADDICTIONは2009年、ニューヨーク在住のメイクアップアーティストAYAKOをクリエイティブディレクターに迎えてスタートしたコスメブランドです(出典:ADDICTION BEAUTY公式サイト「ABOUT ADDICTION」、ファッションプレス「アディクション(コスメ) : ADDICTION」)。2020年以降はクリエイティブディレクターがKANAKAへと引き継がれ、「エッジーかつエフォートレス」というコンセプトのもと、誰もが自分らしいスタイルを楽しめるブランドとして発展してきました。
また、ブランドは「ADDICTION TOKYO」という打ち出し方で、東京の感性と日本発のクオリティを世界観の軸に据えている点も特徴です。都会的で洗練されたトーンでありながら、日常に馴染むナチュラルな仕上がりを目指すという方向性は、Instagram上のビジュアルにもそのまま反映されています。
つまりADDICTIONのSNS運用は、ゼロから「バズる投稿」を狙っているのではなく、ブランドが元々持っているコンセプト(メイクアップアーティスト発・都会的・エッジーかつエフォートレス)を、Instagramというフォーマットに翻訳して伝え続けているという点が出発点です。これは他のブランドにも応用できる考え方で、SNS運用を始める前に「自社のブランドコンセプトを一文で言語化できているか」を確認することが、世界観づくりの土台になります。
ADDICTIONのInstagram投稿を分解する
公式Instagramアカウント(@addictionbeauty_official)や公式オンラインショップに掲載されているInstagramギャラリーを見ると、投稿は大きく次のような役割に分けて設計されていることが読み取れます。
| 投稿の型 | 主な目的 | ビジュアルの傾向 |
|---|---|---|
| プロダクトビジュアル | 新色・新製品の認知 | パッケージや質感が際立つ構図、統一感のある背景色 |
| メイクアップアーティスト起点のビジュアル | ブランドの専門性・世界観の訴求 | エッジーかつエフォートレスな仕上がりを見せるビジュアル |
| コレクション・季節企画 | 話題化・回遊の起点づくり | シーズンごとのテーマカラーやコンセプトを統一して展開 |
| ハウツー・使い方訴求 | 購買後押し・EC送客 | 質感や発色がわかる寄りのカット、使用シーンの提示 |
このように役割を分けたうえで投稿しているため、フィード全体を眺めたときに「何を伝えたいアカウントなのか」が一目で伝わります。逆に、多くの企業アカウントで起きがちな失敗は、キャンペーン告知・日常投稿・セール訴求などの目的が異なる投稿を、同じトーンで無秩序に並べてしまうことです。ADDICTIONの事例から学べるのは、投稿する前に「この投稿はどの型に属するのか」を決めてから作る、という順番の徹底です。
世界観を統一するための具体的な工夫
Instagram上での「世界観」は、色(カラーパレット)・トーン(写真の加工や光の当て方)・構成(グリッド全体の配置バランス)の3要素で構成されると整理されています(出典:ガイアックス ソーシャルメディアラボ「世界観の表現か、お役立ち情報の発信か。化粧品業界Instagram活用事例7選」)。ADDICTIONのアカウントは、ブランドコンセプトである「エッジーかつエフォートレス」を軸に、この3要素を一貫させることで、単発の投稿でも「ADDICTIONらしさ」が伝わる状態を作っています。
具体的に他ブランドが真似できるポイントは以下の通りです。
- カラーパレットを3〜4色に絞る:ブランドカラーと季節限定色をどう共存させるかをあらかじめルール化しておく
- 加工トーンを統一する:明るさ・彩度・コントラストの基準値を決め、投稿者が変わっても同じ質感になるようにする
- グリッド単位で確認する:1枚単位ではなく、投稿予定を3投稿・9投稿単位で並べて確認してから公開する
- コンセプトワードを社内で共有する:「エッジーかつエフォートレス」のような一言のコンセプトを、投稿の判断基準として関係者全員が持つ
世界観づくりはデザイナー一人が頑張るものではなく、判断基準を言語化してチームで共有できるかどうかが再現性を左右します。
エンゲージメントを生む導線設計
ADDICTIONは公式オンラインショップ内に「SHOP BY INSTAGRAM」という専用ページを設け、Instagram投稿とEC商品ページを直接つなげる導線を用意しています(出典:ADDICTION BEAUTY公式オンラインショップ)。これは、Instagramを「見て終わり」のメディアにせず、購買行動へとつなげるための仕組みです。
美容領域におけるSNSの購買影響力は、公的な調査でも裏付けられています。美容メディア「EMME」を運営するgracemodeが実施した調査では、Z世代のうち73%がインフルエンサーの紹介した商品を購入した経験があり、化粧品購入時に参考にするSNSとして7割以上がInstagramを挙げています(出典:gracemode「インフルエンサーの影響力調査」、2023年4月公開、ネットショップ担当者フォーラム掲載)。ビジュアル訴求力の高いInstagramは、美容・コスメというジャンルと特に相性が良いプラットフォームだといえます。
さらに、Meta社(Instagram公式)は国内の月間アクティブアカウント数が6,600万以上(2023年11月時点)にのぼると発表しており、幅広い年代にリーチできる基盤があることも、美容ブランドがInstagramに投資する合理性を裏付けています。加えて総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によれば、Instagramの利用率は10代〜30代で70%を超えており、コスメの主要な購買層と利用者層が重なっていることがわかります。
こうしたデータを踏まえると、ADDICTIONのように「フィードで世界観を作り、ECへの導線を明確に用意する」という設計は、単なる見せ方の工夫ではなく、購買行動の実態に沿った合理的な施策だと理解できます。
なぜこの運用が「支持される理由」になるのか
ここまでの分析をまとめると、ADDICTIONのInstagram運用が支持されている背景には、次の3つの一貫性があると考えられます。
- ブランドコンセプトとビジュアルの一貫性:「エッジーかつエフォートレス」という言葉が、投稿の色味・構図・メイクの見せ方すべてに反映されている
- 投稿目的の設計の一貫性:プロダクト訴求・アーティスト起点の訴求・季節企画・ハウツーという役割分担が明確で、フィードを見たときに情報が整理されている
- 購買導線の一貫性:Instagramでの発見から、EC上のギャラリーページを介して購入までがスムーズにつながっている
派手な施策や大きな予算がなくても、この3つの一貫性は多くの企業・店舗アカウントで再現可能な考え方です。むしろ中小規模のブランドほど、「一貫性を保つ」という地味な積み重ねが差別化要因になります。
明日から試せる実践チェックリスト
自社のInstagram運用にADDICTIONの分析結果を応用する場合、次のチェックリストから着手することをおすすめします。
- 自社ブランドのコンセプトを一言で言語化し、関係者間で共有できているか
- 直近9投稿を並べて、色味・トーン・構図に統一感があるか確認したか
- 投稿ごとに「プロダクト訴求」「世界観訴求」「企画・季節ネタ」「使い方・ハウツー」のどれに当たるか分類できているか
- プロフィールやハイライトから、ECサイトやオンラインショップへの導線が用意されているか
- 投稿判断の基準(コンセプトワードやNGトーン)をドキュメント化し、担当者が変わっても再現できる状態にしているか
- 競合や同業種の成功事例を定期的に見て、自社に応用できる要素を棚卸ししているか
特に最後の「同業種の事例を棚卸しする」という工程は見落とされがちですが、他社の型を知ることで自社の投稿判断のスピードが大きく上がります。
まとめ
ADDICTIONのInstagram運用は、派手な施策ではなく「ブランドコンセプトの一貫した翻訳」によって支持を得ている好例です。カラーパレットやトーンを揃えること、投稿の役割を事前に設計すること、そしてECへの導線を明確に用意すること——これらは予算規模を問わず、どの企業・店舗アカウントでも取り入れられる考え方です。まずは自社のコンセプトを一言で言語化するところから、明日のアカウント運用を見直してみてください。
より多くの業種・業態のSNS運用事例を知りたい方は、unyouの事例データベース(/cases)で、美容・コスメ業界をはじめとした他社の運用パターンもあわせてチェックしてみてください。
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