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吉本興業の公式Instagramは、所属芸人のオフショットとお笑いライブの舞台写真を二本柱に据えた、エンタメ業界における「ファンとの距離を縮める」設計が際立つアカウント。bioで掲げる『FANY』というブランド世界観を軸に、テレビでは見られない素顔や舞台裏を切り取ることで、所属タレントの個性とライブの臨場感を同時に届けている。毎月実施される「楽しみな公演ランキング投票」は、フォロワーを単なる視聴者から能動的な参加者へと引き上げる仕掛けで、UGC的なエンゲージメントとライブ送客の両立を狙った設計。1000件超の投稿数とフォロワー約8.9万人という規模感は、企業公式というよりタレント横断型のファンメディアとしての立ち位置を確立しており、複数芸人を横串で発信できる総合事務所ならではの強み。認証バッジ付きの公式運用ながら、堅さよりも親しみやすさを優先したトーンが、お笑いというコンテンツ特性と噛み合っている。
エンタメ業界のフォロワー規模分布(業界平均: 22.9万)
舞台照明の暖色オレンジ×楽屋裸電球の温かみある光を基調に、芸人の素顔は自然光・ノーフィルター寄りで生っぽく、ライブ写真はスポットライトのコントラストを活かして高揚感を演出。フォントはゴシック体中心で『FANY』ロゴの手書き風ニュアンスが柔らかさを添える。編集は過度な加工を避け、被写体の表情と現場の空気感を最優先にした即時性重視の構成。
お笑いライブの舞台写真で臨場感を訴求
芸人オフショットでテレビ外の素顔を可視化
月次の楽しみな公演ランキング投票でUGC誘発
コンテンツの軸は『所属芸人のオフショット』と『お笑いライブの舞台写真』の二本柱で、投稿1,004件という蓄積が示す通り、長期にわたり一貫したフォーマットを維持している。単写真投稿が主体で、カルーセルは複数芸人の出演ライブ告知に活用。リールは舞台袖の様子や芸人同士の絡みなど『動きと音』が活きる素材に限定し、フィードの静的な世界観を崩さない設計が見て取れる。
競合となるテレビ局公式や他芸能事務所アカウントが番組宣伝・タレント単体ブランディングに寄るのに対し、吉本は『FANY』というブランド傘下で複数芸人を横串で発信する“ファンメディア化”戦略を選択。総合事務所のスケールメリットを活かし、特定タレントのファンが他の所属芸人を発見する導線として機能している点が独自性。
毎月の『楽しみな公演ランキング投票』はストーリーズのスタンプ機能を起点にしたUGC設計の核で、フォロワーを受動的視聴者から能動的参加者へ転換させると同時に、投票結果がそのままライブ送客KPIに直結する仕組み。bioのlit.link経由でFANYチケットサイトへの導線を一本化し、エンゲージメントから購買までの距離を最短化している。
エンタメ業界特有の『タレント個人のSNSに公式の存在感が埋没する』課題に対し、吉本は“公式でしか撮れない楽屋・舞台裏カット”を希少資源化することで差別化。個人アカウントと競合せず補完関係を築く設計は、所属タレントを抱える事務所の理想形といえる。
代理店が学ぶべき示唆は三点。第一に、ブランド名(FANY)を前面に出すことで個別タレント依存リスクを分散し、長期的なアカウント資産化を実現している点。第二に、月次の参加型企画を“制度化”することでコンテンツ枯渇を防ぎつつ送客動線を組み込む構造設計。第三に、認証バッジを持つ大企業公式でありながら堅さを排し、絵文字や顔文字を交えた親密なトーンを貫くことで、業界カテゴリ(エンタメ)の本質である『楽しさ』との一貫性を担保している点である。
ライブ写真とオフショットの二軸で舞台と素顔を両立
月次の公演投票企画でファン参加型の継続接点を設計
複数所属芸人を横断発信し総合事務所の強みを最大化
吉本興業のInstagram運用は、開設当初(2013〜2015年頃と推測される)は所属芸人の番組宣伝やイベント告知を中心とした『お知らせ掲示板』的フェーズだったと考えられる。その後2017〜2019年頃、テレビ依存からの脱却と『よしもとIR』『FANYマート』など自社IP化を進めた時期に合わせ、アカウントもタレント横断のファンメディア型へ転換した可能性が高い。2020年のコロナ禍でライブ興行が壊滅的打撃を受けた局面では、無観客配信『FANY ONLINE TICKET』への送客導線としてSNSの役割が再定義され、現在の『lit.link→FANYチケット』という購買直結型の構造が固まったと推測される。
過去には個別芸人のスポット告知投稿や、テレビ番組連動キャンペーンなど『メディア発のコンテンツ転載』が試されたと見られるが、タレント個人アカウントとの差別化に苦戦したため、『公式でしか撮れない楽屋・舞台裏カット』という希少資源戦略に収斂したと推測される。リール導入初期には漫才切り抜き等も試行された可能性があるが、現在は『動きと音が活きる素材限定』と用途を絞り込んでいる。
同業界比較では、ホリプロ・松竹芸能等が比較的早くタレント別アカウント分散戦略を取ったのに対し、吉本は『FANY』ブランド傘下に集約する一本化戦略の確立がやや遅かったと推測される。一方、月次の参加型投票企画によるUGC設計と送客KPI直結の仕組み化は、芸能事務所の中では先行事例といえる。
現在の運用にも残る名残として、創業111年超の『笑い=現場主義』のDNAが過度な加工を避けた生っぽい編集に表れ、舞台照明の暖色や楽屋の裸電球という美術的継続テーマがブランド資産化している。bio冒頭の『FANY』表記も、2017年頃の自社プラットフォーム戦略開始以来の継続シグナルである。
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