東京ヤクルトスワローズ(Tokyo Yakult Swallows)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/17
「うちの会社もSNSを頑張っているのに、なぜかフォロワーが増えない」「投稿は続けているのに反応が薄い」——SNS担当者であれば、一度はこうした壁にぶつかった経験があるのではないでしょうか。特にBtoCではない業種や、いわゆる「地味な業界」だと感じている企業ほど、「うちには映える商材がないから」「有名人やタレントがいないから」と諦めてしまいがちです。
しかし、プロ野球球団のSNS運用を見ると、実はヒントの宝庫であることに気づきます。試合結果を伝えるだけなら退屈になりがちなアカウントを、ファンが毎日チェックしたくなる「メディア」に育てているからです。本記事では、東京ヤクルトスワローズの公式Instagram運用を、公開されている情報をもとに分析し、企業・店舗のSNS担当者が明日から応用できるポイントに落とし込んでいきます。
なぜ今、プロ野球球団のInstagram運用に注目すべきなのか
まず前提として、SNSがすでに情報接触の主要な入口になっているという事実を押さえておく必要があります。総務省「令和6年版 情報通信白書」によると、インターネットの利用目的・用途として「SNS(無料通話機能を含む)の利用」の割合は81.9%と、数ある用途の中で最も高い水準になっています。つまり、ユーザーとの接点を考えるうえで、SNSはもはや「あれば良い」チャネルではなく、企業や団体が情報発信の起点として設計すべき主戦場になっているということです。
Instagramに限定しても、その存在感は小さくありません。Meta(About Meta)が2019年6月に発表した公式情報によれば、日本国内におけるInstagramの月間アクティブアカウント数は3,300万を突破したとされています。発表から年数が経っている数字ではありますが、Metaが自社で公表した実績値であるという点で信頼性が高く、Instagramが日本国内で無視できない規模のプラットフォームへと成長してきた経緯を裏付けるデータといえます。
プロ野球というコンテンツ自体も、SNSとの相性が良い領域です。J:COM株式会社が2025年3月27日に発表した「プロ野球観戦時の視聴傾向とSNS利用の実態」に関する調査(PR TIMES掲載)では、SNSでプロ野球関連コンテンツを見ていた理由として「試合のポイントをハイライト的に見られるから」(46.4%)、「映像に映らない試合の動きが見られるから」(39.6%)、「リアルタイムに情報が得られるから」(38.6%)が上位に挙がっています。これは裏を返せば、球団側が発信する短尺の映像や写真、実況的な投稿が、ファンの「見る理由」に直結しているということです。試合そのものを見ていない人にもリーチできる、いわば「セカンドスクリーン」としての役割をSNSが担っているのです。
こうした土壌の上で、東京ヤクルトスワローズはどのようにInstagramを設計し、運用しているのでしょうか。

東京ヤクルトスワローズのSNS運用体制:複数アカウントの役割分担
東京ヤクルトスワローズの特徴としてまず挙げられるのが、目的別にアカウントを分けて運用している点です。球団公式サイトの「東京ヤクルトスワローズ公式SNS」ページや過去のニュースリリースによると、少なくとも次のようなアカウントが確認できます。
- 球団公式アカウント(@swallows_ys_official):チーム全般の情報発信を担うメインアカウント。
- グッズ公式アカウント(@goods_yakultswallows):2021年1月1日に開設。新商品の紹介を中心に、店舗情報や再入荷情報などグッズに特化した情報を発信。
- マスコットキャラクター「つばみ」公式アカウント(@ys_tsubami_hime):2019年からInstagramでの発信を開始。マスコットの「つばみ」の可愛さとともに、TEAM SWALLOWSの魅力を伝える役割を担う。
これは単に「アカウントが多い」という話ではありません。1つのアカウントに全ての情報を詰め込むと、フォロワーは「自分が求めている情報が埋もれてしまう」と感じ、離脱しやすくなります。逆に目的別にアカウントを分けることで、グッズ好きのファンはグッズアカウントを、キャラクター推しのファンはマスコットアカウントを、それぞれ迷わずフォローできる状態を作り出しています。これは、フォロワーの興味関心ごとに「入り口」を複数用意するというオウンドメディア設計の基本であり、企業アカウントにも応用できる考え方です。
また、グッズアカウントの開設が球団公式ニュースとして正式にアナウンスされている点も見逃せません。SNSアカウントの開設を単なる裏方作業として済ませるのではなく、公式サイトやプレスリリースを通じて「告知イベント」として扱うことで、既存ファンへの周知と初速のフォロワー獲得を同時に狙っている運用姿勢がうかがえます。
投稿の「型」を分析する:繰り返し使われる構成パターン
SNS運用がうまくいっているアカウントに共通するのは、「毎回ゼロから考えていない」ことです。東京ヤクルトスワローズのアカウント群を横断的に見ると、投稿内容はおおむね以下のようなパターンに整理できます。
- 試合・選手のハイライト系:得点シーンや好プレー、試合前後の選手の様子など、試合の「熱量」を切り取るタイプの投稿。
- 舞台裏・オフショット系:練習風景やロッカールーム、移動中の様子など、テレビ中継では見られない裏側を見せるタイプ。
- グッズ・物販系:新商品の告知、再入荷情報、店舗での限定販売情報など、購買行動に直結する情報。
- キャラクター・エンタメ系:マスコット「つばみ」を主役にした、ファン層を選ばないライトなコンテンツ。
- イベント・応援企画系:ファン参加型の企画やキャンペーン、ファンサービスに関する告知。
この5つの型を意識すると、「今日は何を投稿しよう」と毎回悩む状態から抜け出せます。重要なのは、これらの型を一つのアカウントに全て詰め込むのではなく、アカウントの目的に応じて配分を変えている点です。メインアカウントは1と2と5を中心に、グッズアカウントは3に特化、マスコットアカウントは4に寄せる、というように役割と投稿の型を連動させることで、フォロワーにとって「このアカウントをフォローすれば何が得られるか」が明確になります。
世界観のつくり方:マスコット「つばみ」というブランド人格
東京ヤクルトスワローズの運用で特に参考になるのが、マスコットキャラクターをSNS上の「人格」として活用している点です。「つばみ」は球団マスコット「つば九郎」の妹という設定で1999年から登場しているキャラクターで、Wikipediaの記述によれば背番号283を持つなど、球団の中で長年育てられてきた既存IP(知的財産)です。このキャラクターに独立したInstagramアカウントを持たせ、一人称視点での発信を任せることで、球団の公式発表とは異なる「親しみやすいトーン」の情報発信が可能になっています。
企業アカウントの多くは「中の人」というキャラクターを匿名で立てる手法を取りますが、東京ヤクルトスワローズの場合は、すでに存在する公式キャラクターにその役割を担わせている点が特徴です。これにより、次のようなメリットが生まれます。
- 発信内容に一貫した「声のトーン」を持たせやすい
- 硬い公式発表と、柔らかいキャラクター発信を明確に切り分けられる
- ファンにとって「今日はつばみが何をしているか」という継続的な視聴動機が生まれる
これは、必ずしも公式マスコットを持たない企業でも応用可能な考え方です。商品そのものやロゴをキャラクター的に擬人化したり、店舗の看板メニューに固定の「語り口」を与えたりすることで、同様の効果を狙うことができます。
エンゲージメントを高める仕組み:ルール変化とファン参加型施策
プロ野球のSNS活用を語るうえで欠かせないのが、観戦者自身がSNSに投稿する「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」との関係です。日本野球機構(NPB)は2025年9月1日、「写真・動画等の撮影及び配信・送信規程」の改定を公式に発表しました。観戦者によるSNS投稿のルールが整理されたことは、球団公式アカウントにとっても、ファンが撮影した写真・動画をどう公式コンテンツに絡めていくかという設計に直結する重要な環境変化です。
さらに、先述のJ:COMの調査では、SNSにプロ野球関連コンテンツを投稿していた理由として「個人的な観戦記録、備忘録として」「野球観戦の面白さ、楽しさを伝えたいから」「球場の雰囲気、盛り上がりを共有したいから」が上位に挙がっています。つまりファンは、単に受け取るだけでなく「自分も発信したい」という欲求を強く持っているということです。
こうした構造を踏まえると、球団公式アカウントに求められる役割は、以下の3つに整理できます。
- 一次情報の提供:試合結果や選手情報など、ファンが安心して拡散できる正確な情報源になる。
- 投稿したくなる余白の提供:写真映えするグッズやイベント演出など、ファンが「撮って投稿したい」と思える体験を設計する。
- ファン投稿の可視化:ハッシュタグ企画やストーリーズでの紹介を通じて、ファンの発信を公式が拾い上げる。
企業アカウントであっても、「自分ごと化」できる余白を投稿に残すこと、そしてユーザーが発信した内容を公式が拾うことは、フォロワーとの心理的距離を縮める有効な手段です。
アカウント別の役割整理
ここまでの内容を、目的・コンテンツ・応用ポイントの観点で整理すると以下のようになります。
| アカウントの位置づけ | 主なコンテンツ | 企業・店舗が応用できるポイント |
|---|---|---|
| メイン(会社・団体の顔) | 試合結果、選手情報、イベント告知 | 一次情報の発信源として、正確性と更新頻度を担保する |
| 物販・商品特化 | 新商品、再入荷、店舗情報 | 購買意欲の高い層だけを集める専用の入り口をつくる |
| キャラクター・世界観特化 | マスコット目線の日常、ゆるい発信 | 硬い情報発信と切り離し、ファン化・情緒的な接点をつくる |
自社にすでに複数の商材やブランドがある場合、この「役割分担」の発想はそのまま転用できます。逆に、1つのアカウントしか持てないリソースの場合は、投稿の中で「型」を意識的に切り替えることで、擬似的に同じ効果を狙うことができます。
自社アカウントに応用できる具体的ポイント
ここまでの分析を踏まえ、企業・店舗のSNS担当者がすぐに検討できるアクションに落とし込みます。
- アカウントの目的を1文で言語化する:「このアカウントは誰の、どんな悩みや興味に応えるためのものか」を明文化する。目的が曖昧なまま投稿を続けると、型がぶれてフォロワーに刺さらなくなる。
- 投稿の「型」を5つ以内に絞る:スワローズの例のように、ハイライト系・舞台裏系・商品系・キャラクター系・参加企画系など、自社に置き換えた型を先に決めておく。
- 既存の「顔」を探す:マスコットがなくても、代表的な商品、看板スタッフ、ロゴキャラクターなど、感情移入の窓口になり得る存在を洗い出す。
- ユーザー投稿を拾う導線を作る:指定ハッシュタグやタグ付け投稿をストーリーズやリールで紹介する仕組みを、無理なく続けられる頻度で設計する。
- アカウント開設・リニューアルを「告知イベント」にする:自社サイトやメールマガジンなど既存の接点でアカウント開設を周知し、初速のフォロワーを取りこぼさない。
明日から試せるチェックリスト
読み応えのある分析も、実行に移せなければ意味がありません。以下を上から順にチェックしてみてください。
- 自社のInstagramアカウントの「目的」を1文で書き出せるか確認した
- 直近10投稿を上記5つの「型」に分類し、偏りがないか確認した
- 自社にとっての「顔」(人・キャラクター・商品)を最低1つ言語化した
- ユーザーがタグ付け・ハッシュタグ投稿したくなる仕掛け(撮影スポット、演出、キャンペーン)が1つ以上あるか棚卸しした
- 直近のお知らせ・新商品情報がSNS用に再構成されているか(サイト掲載文の転載になっていないか)確認した
- ユーザー投稿を紹介する頻度・ルール(週1回など)を決めた
- 複数アカウント運用が可能な場合、目的ごとにアカウントを分けるべきかを検討した
一度に全てをやろうとせず、まずは1〜2項目から着手するだけでも、投稿の一貫性は大きく改善します。
同業種・他ジャンルの事例に学ぶ
今回はスポーツ・Instagramというジャンルに絞って分析しましたが、SNS運用の型やエンゲージメント施策は業種を超えて応用できる部分が多くあります。unyouのSNS運用事例データベース(/cases)では、スポーツ・エンタメ領域を含む様々な業種の実例を紹介しています。自社と近い業種・アカウント規模の事例を探し、投稿の型や運用体制を比較してみることをおすすめします。
まとめ
東京ヤクルトスワローズのInstagram運用を分析すると、特別な裏技があるわけではなく、「目的別のアカウント設計」「投稿の型の整理」「既存キャラクターを活かした世界観づくり」「ファン参加型の仕組み」という、地に足のついた積み重ねが土台になっていることが見えてきます。総務省やMeta、業界調査が示す通り、SNSはすでに生活者の情報行動の中心にあり、プロ野球というコンテンツはその特性と相性良く付き合ってきました。
自社に有名なキャラクターやタレントがいなくても、目的の言語化、投稿の型の整理、そして「誰かの顔」を立てる工夫は、規模を問わずすぐに着手できます。今回紹介したチェックリストを起点に、まずは自社アカウントの現状を棚卸しすることから始めてみてください。
あわせて読みたい
ABOUT UNYOU
unyou は、SNS運用の「成功事例」が集まるデータベースです
Instagram・X・TikTok で実際に成果を出しているアカウントを、業種 × トンマナ × プラットフォームで検索・比較できます。掲載しているのは、世の中に公開されている実在アカウントの分析 600件超。 「自社の業種で何が伸びているのか」を、感覚ではなくデータで確かめられます。
無料相談
自社に合ったSNS運用、プロに相談してみませんか?
「何から始めればいいかわからない」「今の運用が正しいか不安」「外注すべきか迷っている」 ——そんなお悩みに、unyouが蓄積した実運用データをもとにお答えします。 相談は無料、しつこい営業はありません。
無料でSNS運用を相談する