ザ・リッツ・カールトン(The Ritz-Carlton)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/11
「うちのアカウント、投稿は続けているのに反応が薄い」その悩み、運用の「型」がないだけかもしれません
Instagramで自社アカウントを運用していると、こんな壁にぶつかることはないでしょうか。毎週のように新作情報やキャンペーンを投稿しているのに保存やコメントが伸びない。フォロワーは増えても「見てもらえている実感」がない。競合アカウントと何が違うのか言語化できないまま、なんとなく「センスの差」で片付けてしまっている――。特にホテルや旅行、飲食など「体験」を売る業種では、写真のクオリティだけでは差がつきにくく、運用チーム自身が疲弊してしまうケースも少なくありません。
こうした悩みを解くヒントは、実は派手なバズ施策ではなく「誰の言葉で、何を、どう見せるか」という設計にあります。今回は、世界的なラグジュアリーホテルブランド「ザ・リッツ・カールトン(The Ritz-Carlton)」のInstagram運用を題材に、公開されている一次情報をもとに投稿の型や世界観づくりの仕組みを分解し、中小規模の店舗・企業アカウントでも応用できるポイントに落とし込みます。本記事は、SNS運用事例データベース「unyou」の編集部が、公開情報とWeb上の一次資料をもとにまとめています。

ザ・リッツ・カールトンのInstagram運用の全体像
ザ・リッツ・カールトンのInstagram運用の根幹にあるのは、ブランドプラットフォーム「Let Us Stay With You(あなたと共に、いつまでも)」という考え方です。このコンセプトのもと、ホテル自身が撮影した完璧な客室写真や料理写真だけを並べるのではなく、実際に宿泊したゲストが投稿した写真・動画を集め、ブランドの世界観として再構成していく運用が特徴です。
The Shorty Awardsに掲載されているケーススタディによれば、ザ・リッツ・カールトンのInstagramフィードは「ユーザー生成コンテンツ(UGC)のみを共有する」設計になっており、投稿の85%以上がゲスト自身の投稿を活用したものだと紹介されています(出典:The Shorty Awards「A Glimpse into the Ritz: Content Marketing」)。つまり、ホテルという「非日常の舞台」を、ブランド自身の言葉ではなく、そこにいたゲストの言葉と視点で語らせているわけです。これは、自社の宣伝色を強く出しがちな企業アカウントにとって、大きなヒントになります。
なぜUGC中心の運用が支持されているのか|#RCMemoriesの設計思想
このUGC中心の運用を象徴するのが、ハッシュタグキャンペーン「#RCMemories」です。The Shorty Awardsの受賞記録によると、このキャンペーンの当初の目標は「ブランド自身の発信を全体の20%程度にとどめ、残り80%をゲストが生み出すコンテンツにする」というものでした。そして2015年には目標を上回り、#RCMemoriesに関連するコンテンツの95%が実際のゲストによる自然発生的な投稿だったと報告されています。同時期、このハッシュタグはInstagramとTwitter(現X)を合わせて5億インプレッション以上を生み、Twitterで約1万件、Instagramで約2.3万件使用されたと記録されています(出典:The Shorty Awards「#RCMemories of The Ritz-Carlton」)。
さらに、ゲストの投稿をブランド側が丁寧に精査するプロセスも運用の要です。Corporate Social Media Team(企業のソーシャルメディア専任チーム)が投稿を確認したうえで、承認された写真のみを公式アカウントに掲載するという体制が取られており、単なる「ハッシュタグを集めて自動転載する」仕組みではなく、編集・キュレーションを介して世界観の一貫性を保っている点が重要です。ここが、多くの企業アカウントが陥りがちな「UGCを集めたはいいが統一感がなく雑多になる」という失敗との分かれ目になっています。
投稿の型を分解する
公開されている事例をもとに、ザ・リッツ・カールトンの投稿設計を要素に分解すると、次のような型が見えてきます。
- 主語の転換:ホテルではなく「ゲストの物語」を主語にしたキャプション(例:家族旅行の記念日、プロポーズの瞬間など、パーソナルな体験の切り取り)
- 一貫した審美基準:投稿元は多数のゲストでも、光の入り方や色味、構図のトーンをブランド側が選定基準として統一
- 短く情緒的なコピー:機能や設備の説明ではなく、感情や記憶を喚起する短い言葉を添える
- 参加への明確な導線:「#RCMemoriesをつけて投稿してください」という参加ルールをプロフィールやキャンペーンページで明示
この型は、The Ritz-Carltonが2014年に展開したゲストの体験談を6語で表現する「Six Word Wows」といった関連施策にも共通しています(出典:PR Newswire「The Ritz-Carlton Hotel Company Shares Guest Stories With "Six Word Wows"」)。長い説明文ではなく、短く強い言葉で「記憶」を切り取るという編集方針が一貫している点が特徴です。
エンゲージメントを生む仕組み
ザ・リッツ・カールトンの運用でもう一つ注目すべきは、「投稿してもらう」ための導線設計です。当時の施策では、ハッシュタグ投稿を収集するツールを使って該当コンテンツを見つけ出し、公式サイト上に「Your Memories」という専用ページを設けてTwitterやInstagramに投稿された写真をまとめて可視化する仕組みが作られていました(出典:Retail Dive「the ritz carlton aggregates ugc to scale memories campaign」)。
つまり、SNS上での発信だけでなく、「投稿すればブランドの公式な場に掲載されるかもしれない」という参加のインセンティブを、オウンドメディア(自社サイト)側にも用意していたことになります。これはフォロー・いいねだけでなく、ゲストの行動(投稿)そのものを引き出す仕組みとして機能していました。中小規模の店舗でも、「投稿してくれたお客様の写真を店頭やサイトで紹介する」という形で応用可能な考え方です。
日本国内のSNS利用動向とInstagram運用の重要性
ここまで見てきたような「顧客に語らせる」運用が有効なのは、日本国内でもSNSの利用が世代を問わず広がっているという背景があります。総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、X(旧Twitter)やInstagramは2024年時点で全体のおよそ半数が利用しており、50代でも4割以上が利用するなど、幅広い年齢層に利用が拡大していると報告されています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」)。
また、Instagramの国内利用者規模についても、Meta社が2023年11月開催の「Meta Marketing Summit Japan 2023」において、2019年に公表した国内月間アクティブアカウント数3,300万から、4年間で倍以上に拡大したと発表しています(出典:Meta Marketing Summit Japan 2023)。
こうした背景から、旅行・宿泊業に限らず、体験や世界観を伝える業種にとってInstagramは無視できないチャネルであり続けています。一方で、利用者層が広がったからこそ「誰の声で、何を伝えるか」という設計の差が、そのままアカウントの支持のされ方の差になっているとも言えます。
他業種・自社アカウントに応用できる具体的ポイント
ザ・リッツ・カールトンの事例から抽出できる考え方を、実際に明日から試せるレベルまで分解すると、以下のようになります。
| ザ・リッツ・カールトンの施策 | 背景にある考え方 | 中小規模アカウントでの応用例 |
|---|---|---|
| #RCMemoriesでゲスト投稿を収集 | ブランドの声より顧客の声を主役にする | 自社の商品・店舗タグをお客様に依頼し、DMで掲載許可を取って紹介する |
| Corporate Social Media Teamによる審査・キュレーション | 世界観の一貫性を保つ | 転載する投稿は「トーン・色味・構図」の基準を決めて選ぶ |
| 「Your Memories」のような専用ページ | 投稿する動機(掲載される喜び)を用意する | 「毎月ベストショットを公式で紹介」など参加型企画を告知に明記 |
| 短く情緒的なキャプション | 機能訴求ではなく記憶・感情を喚起する | 商品説明ではなく「その商品がある瞬間」を言葉にする |
| ハッシュタグの用途を明確化 | 参加ルールをシンプルにする | ハッシュタグは1〜2個に絞り、プロフィール欄に固定表示する |
明日から試せるチェックリスト
- 自社の投稿のうち、UGC(お客様が投稿したもの)の比率を数えてみる。ゼロなら、まずは既存の顧客投稿に「掲載してよいか」の確認DMを送るところから始める
- 転載・紹介する投稿を選ぶ際の「選定基準」を3つほど言語化し、担当者間で共有する(例:自然光か/商品が主役か/表情や手元が写っているか)
- 自社発信の投稿キャプションを見直し、スペック説明が中心になっていないか確認する。1投稿につき1つだけ「感情ワード」を入れてみる
- 参加してもらうためのハッシュタグを1つに絞り、プロフィール文とハイライトに固定表示する
- 「掲載されたら嬉しい」と思ってもらえる仕組み(公式サイト掲載・月間ベスト紹介など)を、無理のない範囲で1つ用意する
- 月に一度、UGC比率・保存数・コメント内容の傾向を振り返り、キャプションの型を微調整する
いずれも高額な広告費や大規模なキャンペーン体制を必要としない、運用の「設計」の話です。フォロワー数や規模に関わらず着手できる点が重要です。
運用を仕組み化するときの注意点
一つ補足しておきたいのは、UGCを活用する際は必ず投稿者への許諾確認を行うことです。ザ・リッツ・カールトンの事例でも、Corporate Social Media Teamが投稿を確認・承認するプロセスを経てから公式アカウントに掲載しており、無断転載ではなく「許諾を前提としたキュレーション」であることが運用の信頼性を支えています。また、UGCだけに頼り切ると発信量が不安定になりやすいため、ブランド側の投稿とのバランス(比率の目安を決めておく)も合わせて設計しておくと運用が安定します。
まとめ
ザ・リッツ・カールトンのInstagram運用を分解すると、その核にあるのは高価な機材や凝った演出ではなく、「ブランドではなく顧客に語らせる」という設計思想でした。#RCMemoriesに代表されるUGC中心の運用、投稿を審査・キュレーションする体制、そして参加したくなる導線づくりは、業種や規模を問わず応用できる考え方です。総務省の白書が示すとおりSNSの利用者層は世代を超えて広がっており、だからこそ「誰の声で語るか」という設計の差が、アカウントが支持されるかどうかを左右します。まずは自社アカウントのUGC比率を数えるところから、小さく始めてみてください。
同業種・旅行や宿泊、体験型ビジネスの他社事例は、SNS運用事例データベース「unyou」の事例一覧でも紹介しています。他社がどのような投稿設計・エンゲージメント施策を行っているか、ぜひあわせてご覧ください。
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