「毎日投稿しているのに、フォロワーが増えない」「世界観を統一したいけど、何を基準に決めればいいのか分からない」「EC事業者としてSNSを使いこなしている会社の“中身”を知りたい」——ハンドメイド・雑貨・アパレルなど、写真映えする商品を扱うEC・通販事業者の担当者なら、一度はこうした壁にぶつかった経験があるのではないでしょうか。
Instagramは「なんとなく続けている」だけでは成果が出にくいメディアです。だからこそ、すでに支持を集めているアカウントの構造を分解し、自社に応用できる部分を見つけることが、遠回りのようで一番の近道になります。今回は、国内最大級のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)byGMOペパボ」のInstagram運用を題材に、公開情報をもとにその特徴を分析します。数字を誇張することなく、明日から実践できるレベルまで落とし込んでいきます。
minneとは?EC×ハンドメイドという特殊なポジションを理解する
minneはGMOペパボ株式会社が運営する、ハンドメイド作品専門のオンラインマーケットです。GMOペパボの発表によれば、2023年5月末時点で登録作家・ブランド数は87万件を突破し、出品作品数は1,635万点以上、累計流通額は1,000億円を超えています(出典:GMOペパボ株式会社 プレスリリース「国内最大のハンドメイドマーケット『minne(ミンネ) byGMOペパボ』、累計流通額が1,000億円突破」)。
この規模感がまず重要です。minneは単一ブランドのEC通販ではなく、「無数の個人作家が集まるプラットフォーム」であるため、公式Instagramアカウントの役割は自社商品を売り込むことではなく、①一般ユーザー(買い手)に作品の魅力を伝えること、②作家(売り手)の活動を後押しすることの2つに分かれています。この「二枚看板」構造こそ、minneのSNS運用を理解する最初のポイントです。

なぜ「二枚看板」のアカウント運用が支持されるのか
minneはユーザー向けの公式アカウントとは別に、作家・ブランド支援を目的とした「minne LAB by GMOペパボ」というアカウントを運用しています。ここでは新機能の案内やセミナー情報、作品づくりのヒントなどが発信されており、一般ユーザー向けの世界観(作品の魅力を伝える写真中心の発信)とは明確にトーンを分けています。
これは、フォロワー層によって「見たい情報」が違うという当たり前の事実に、アカウントの設計段階できちんと向き合っている例です。多くの企業アカウントが陥りがちな失敗は、「お客様向けの発信」と「取引先・関係者向けの発信」を1つのアカウントに詰め込んでしまい、結果としてどちらの読者にも刺さらない投稿になることです。minneのように目的別にアカウントを分ける、あるいは1つのアカウントでもハイライトやストーリーズで情報の受け皿を分けるだけでも、世界観のブレを大きく減らせます。
投稿の「型」を分解する
minneやminne作家のInstagram活用を見ていくと、投稿は大きく次のようなパターンに整理できます。EC・通販事業者が自社アカウントの棚卸しをする際のフレームとしても使える分類です。
| 投稿タイプ | 主な目的 | 応用のポイント |
|---|---|---|
| テーマ特集(季節ギフト・使い方提案など) | 商品を「文脈」の中で見せ、購買のきっかけを作る | 単品紹介より「◯◯な人へのギフト特集」の方が保存されやすい |
| 作り手・作家紹介 | 作り手の顔や想いを伝え、信頼と愛着を醸成する | EC事業者なら生産者・スタッフ・開発秘話に置き換え可能 |
| 使い方・活用Tips | 商品理解を深め、購入後の満足度を高める | ハウツー系はフィード保存率が高く、発見タブにも乗りやすい |
| キャンペーン・新機能告知 | 販促・回遊のきっかけを作る | 告知だけの投稿を連発せず、他の型と交互に配置する |
| ユーザー・作家の投稿紹介(UGC) | 第三者の声で信頼性を補強する | ハッシュタグ経由で集めた投稿をストーリーズで積極的にシェア |
minneは公式ヘルプページでも、作家に向けて「#母の日ギフト」「#夏アクセサリー」のように“何についての投稿・作品なのか”が一目で分かるハッシュタグを使うことを推奨しています(出典:minne公式ヘルプ「SNSでハッシュタグを活用しよう」)。これは投稿単体の設計だけでなく、プラットフォーム全体としてハッシュタグ経由の発見導線を意識的に設計している証拠でもあります。
エンゲージメントを生む仕組み——「売り手を増やす」がSNS戦略になっている
minneのSNS運用でもう一つ特徴的なのは、公式アカウントだけでなく、87万件を超える作家自身がそれぞれInstagramで発信し、minneへの導線を作っている点です。GMOペパボは2018年に、作家が自分のInstagram投稿からminneの購入ページへスムーズに誘導できる「Instagramショッピング機能」導入ツールを公開しており(出典:GMOペパボ株式会社 プレスリリース「ハンドメイドマーケット『minne(ミンネ)』『Instagramショッピング機能』を簡単に導入できるツールを公開」)、個々の作家のSNS活動がそのままプラットフォーム全体の集客装置になる設計がされています。
さらにminneの公式ヘルプでは、SNSでの発信がファンづくりや購買行動に貢献しているという作家自身の回答が紹介されており、Instagram経由でminneを訪れるユーザーが他のSNS経由よりも多い傾向がある、と案内されています(出典:minne公式ヘルプ「SNSで作品を宣伝しよう」)。つまりminneにとってのInstagram運用は、公式アカウント単体の発信力だけでなく、「売り手にSNS活用を促す仕組みそのもの」を含めて設計されているのです。これは一社完結型のEC・通販事業者にとっても、スタッフや協力店舗、既存顧客を巻き込んだ発信ネットワークをどう作るか、というヒントになります。
統計から見る、EC・通販事業者がInstagramに投資すべき理由
「なぜここまでSNSに力を入れる必要があるのか」を裏付けるデータも押さえておきましょう。
まず、総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、全年代のSNS利用率はLINEが91.1%、Instagramが52.6%、X(旧Twitter)が43.3%となっており、Instagramは主要SNSの中でも高い利用率を維持しています(出典:総務省「令和6年版情報通信白書」)。写真・動画中心の発信と親和性が高いハンドメイド・雑貨・アパレル系のEC事業にとって、Instagramが依然として有力なチャネルであることが読み取れます。
また、Meta社は2019年6月の発表で、日本国内のInstagram月間アクティブアカウント数が同年3月時点で3,300万を突破したことを公表しています(出典:Meta「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」)。これは国別の公式数値としては最新の公表データであり、それ以降Metaは国別ユーザー数を定期的には公開していません。したがって現在の正確な数値を断定することはできませんが、公式に発表された実績値として、日本国内における普及の広がりを裏付ける材料になります。
もう一つ、GMOペパボは2019年に「ハンドメイド 主婦・主夫作家の意識調査」を実施し、専業主婦・主夫として活動する作家の8割以上がものづくり活動によって収入を得ていたと発表しています(出典:GMOペパボ株式会社 プレスリリース「『minne』が『ハンドメイド 主婦・主夫作家の意識調査』を実施」)。SNS発信を含めた地道な活動が、実際の収入につながっている作家が一定数存在するというこの調査結果は、「発信の積み重ねが事業の成果に結びつく」ことを示す一次情報として参考になります。
明日から試せる実践チェックリスト
minneの事例から抽出できる要素を、自社アカウントですぐに検証できるチェックリストに落とし込みました。
- 投稿を「商品紹介」だけに偏らせず、上記5つの型(特集・作り手紹介・Tips・告知・UGC)に分類し、比率を可視化する
- 顧客向け発信と社内・取引先向け発信が同じアカウントに混在していないか確認し、必要ならハイライトやアカウントで分離する
- ハッシュタグは「何についての投稿か」が一目で分かる具体的なものを、投稿ごとに使い分けているか見直す
- 自社だけでなく、スタッフ・生産者・既存顧客が発信したくなる仕組み(タグ付け企画、紹介キャンペーンなど)があるか棚卸しする
- UGC(ユーザーや取引先の投稿)を定期的にストーリーズやリポストで紹介する運用フローを作る
- 月に一度、投稿タイプ別の保存数・プロフィールアクセス数を振り返り、反応の良い型に投稿比率を寄せる
いきなり全てを完璧にする必要はありません。まずは直近1か月の投稿を上記の型に分類してみるだけでも、自社アカウントの偏りが見えてくるはずです。
SNS運用事例データベース「unyou」では、EC・通販業界をはじめとした他社の運用事例も多数掲載しています。同業種・類似規模のアカウントがどのような投稿設計をしているか具体的に知りたい方は、事例一覧ページもあわせてご覧ください。
まとめ
minneのInstagram運用は、公式アカウント単体の発信力に頼るのではなく、①目的別にアカウントの世界観を分ける、②投稿を型としてパターン化し発見・保存されやすい設計にする、③87万件超という規模の作家自身がSNS発信を行う仕組みを後押しする、という3つの要素が組み合わさって成り立っています。フォロワー数やエンゲージメント率といった数字だけを追うのではなく、「誰に」「何を目的に」発信するアカウント構造になっているかを見直すことが、規模の大小を問わずどのEC・通販事業者にも応用できる第一歩です。
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