「うちの会社もInstagramを頑張っているのに、なかなか保護者や子育て層に刺さらない」「教育系・習い事系のアカウントで、何を投稿すればフォローされるのか分からない」——SNS担当者からよく聞く悩みです。特に教育・学習塾業界は、サービス内容が地味に見えやすく、写真映えもしにくいため、投稿のネタ切れに悩みがちなジャンルの筆頭です。
そんな中、公文教育研究会が運営する公式Instagramアカウント「KUMON(公文式・くもん)【オフィシャル】」(@kumon_jp_official)は、教育業界のSNS運用として長年にわたり継続的な発信を続けている代表的な事例のひとつです。本記事では、公開されている投稿内容やキャンペーン施策、そして子育て層のSNS利用に関する公的データ・調査データをもとに、KUMONの運用がなぜ成立しているのかを分解し、業種を問わず応用できるポイントに落とし込みます。なお、フォロワー数やエンゲージメント率など裏付けの取れない数値は本記事では扱わず、公開情報から確認できる「型」や「仕組み」に絞って解説します。
KUMON(公文式)のInstagram運用で起きていること
KUMONの公式Instagramアカウントは、プロフィール欄に「KUMONの学びは世界共通」といった世界観を掲げ、学習教材そのものの宣伝だけでなく、子どもたちの学びの様子や日常の「できた」「たのしい」という気持ちを軸にした発信を継続しています。具体的には以下のような投稿の型が確認できます。
- 4コマ漫画形式での「KUMONあるある」「よくある質問」への回答コンテンツ
- 世界各国のKUMON生を紹介する動画・特集コンテンツ
- 無料体験学習などの申込導線を兼ねた告知投稿
- ユーザーがハッシュタグをつけて投稿した子どもの学習風景を公式アカウントが紹介する企画
これらは単発のキャンペーンではなく、アカウントの根幹となる「投稿カテゴリ」として繰り返し運用されている点が特徴です。派手なバズを狙うのではなく、教育サービスという特性上どうしても伝わりにくい「学ぶことの楽しさ」や「継続することの価値」を、漫画・動画・ユーザーの声という複数のフォーマットに分解して届けている点が、息の長い運用につながっていると考えられます。

なぜ子育て層への発信にInstagramが有効なのか
KUMONのようにInstagramを主戦場に据える教育・子育て関連事業者が多いのには、データ的な裏付けがあります。
まず、総務省「令和6年版 情報通信白書」によると、全年代におけるInstagramの利用率は52.6%で、LINE(91.1%)に次ぐ主要SNSのひとつとなっています。特に10代〜30代では利用率が70%を超えており、子育て世代の中心となる年代に強く浸透しているSNSであることが分かります。
さらに、子育て層に限定した調査ではより顕著な傾向が見られます。講談社が運営するメディア・コミュニティ・ラボが発表した「with class子育てママ白書」(PR TIMES掲載)では、30代〜40代の子育てママの情報源としてInstagramを利用している割合が99%という結果が示されています。習い事や教育サービスの検討段階で、保護者が真っ先に開くのがInstagramである可能性が高いということです。
加えて、マムズラボ株式会社が実施した未就学児ママ向けのInstagram利用実態調査では、1回あたりの閲覧時間は「5〜15分」が最も多く42.4%を占め、約8割(78.3%)が短時間の閲覧を行っているという結果も出ています。家事や育児、仕事の合間の「すきま時間」に消費されやすいメディアであることが読み取れ、教育系アカウントであっても「重い」「長い」コンテンツより、テンポよく読める4コマ漫画やショート動画が好まれやすい土壌があることを裏付けています。
| データ・調査 | 出典 | 示唆されること |
|---|---|---|
| 全年代のInstagram利用率52.6%、10〜30代は70%超 | 総務省「令和6年版 情報通信白書」 | 子育て世代の中心層に強くリーチできるSNS |
| 30代〜40代子育てママの情報源、Instagramが99% | 講談社「with class子育てママ白書」(PR TIMES) | 習い事・教育サービス検討時の主要な接触チャネル |
| 1回の閲覧時間「5〜15分」が42.4%、短時間閲覧が78.3% | マムズラボ株式会社 調査 | すきま時間でも完結する短尺・軽量コンテンツが有利 |
投稿設計を分解する:漫画・動画・UGCの三層構造
KUMONの投稿ラインナップを整理すると、大きく3つの役割に分けて設計されていることが分かります。
- 共感・啓発レイヤー:4コマ漫画によるQ&A形式のコンテンツ。「学習を続けさせるコツ」「よくあるつまずき」など、保護者が日常的に感じている悩みに寄り添い、フォローする動機を作る役割を担っています。
- 信頼・実績レイヤー:世界各国のKUMON生を紹介する動画コンテンツ。「多くの国と地域で学ばれている」という世界観を、個々の生徒のリアルな学びの様子を通じて伝え、ブランドの規模感と信頼性を補強しています。
- 参加・拡散レイヤー:ユーザーがハッシュタグをつけて投稿した写真やエピソードを公式が紹介するUGC企画。フォロワー自身が発信者になることで、アカウントの外側にもKUMONの世界観が広がっていきます。
この3層構造が重要なのは、「会社が言いたいこと(商品訴求)」と「ユーザーが見たいこと(共感・実例)」を分離しつつ、同じアカウントの中で両立させている点です。教育・習い事系のアカウントが陥りがちな失敗は、体験申込の告知ばかりを繰り返してしまい、フォローするメリットが感じられなくなることです。KUMONの投稿設計は、この失敗を避けるヒントになります。
世界観づくりの工夫:ハッシュタグキャンペーンとUGC活用
KUMONは「#kumonfriends」というハッシュタグを軸に、ユーザーが公式アカウントをフォローしたうえで学習の様子や日々のエピソードを投稿する仕組みを継続的に運用しています。加えて、子育て系メディア「HugMug」とのコラボレーションによる「KUMON×HugMug インスタキッズフォトコンテスト」も複数回にわたって開催されており、「わが家の学習スタイル」「はじめたい・やってみたい」「喜ぶ瞬間」といったテーマを設定して投稿を募る形式が確認できます。
このような取り組みのポイントは、単に「投稿してください」と呼びかけるのではなく、
- 参加しやすい具体的なテーマ(お題)を毎回設定していること
- 外部の子育てメディアと連携し、KUMON以外の場所からも参加者を呼び込んでいること
- 集まった投稿を公式アカウントや自社サイトで紹介し、「投稿すると取り上げてもらえるかもしれない」という参加メリットを提示していること
の3点です。ユーザーに「発信する理由」を明確に用意することで、企業アカウント単体では生まれにくい熱量とコンテンツ量を確保している点が、長期運用の支えになっています。
オウンドメディアとの連携で「点」を「面」にする
KUMONはInstagramの投稿だけで完結させず、「KUMON BUZZ PLACE」という自社の口コミ・評判サイトを別途運営し、KUMON生や保護者の生の声を集約しています。Instagramで集めたUGCやエピソードが、こうしたオウンドメディア側のコンテンツとしても活用される構造になっている点は、SNS単体で戦っている企業アカウントにとって参考になる部分です。
SNSは拡散力に優れる一方、過去の投稿が資産として蓄積・検索されにくいという弱点があります。KUMONのように「SNSで集めた声」を「検索されるオウンドメディア」に転用する導線を持つことで、Instagram上の一過性の投稿を、比較検討フェーズの保護者が後から見返せる資産に変換していると捉えられます。単発のSNS運用にとどめず、自社サイトやブログとセットで設計する発想は、業種を問わず応用可能です。
他社・他店舗が明日から真似できる実践ポイント
KUMONの事例から抽出できる要素は、必ずしも教育業界だけのものではありません。以下は、業種を問わず翌日から着手できるチェックリストです。
- 自社サービスの「悩みあるある」を洗い出し、Q&A形式や漫画・スライド形式で1本コンテンツ化してみる
- 顧客・利用者に発信してもらうための「専用ハッシュタグ」を1つ決め、プロフィール欄と投稿キャプションに固定表示する
- ハッシュタグ投稿を紹介する際のルール(画像の二次利用可否、クレジット表記など)を事前に文書化しておく
- 年に数回でよいので、テーマを絞った「投稿募集キャンペーン」を企画し、参加ハードルを下げる具体的なお題を用意する
- 可能であれば、自社と親和性の高い外部メディア・インフルエンサーとの共同企画を検討する
- SNSで集まった声や写真を、自社サイトの事例紹介・口コミページなど「検索される場所」にも転載・蓄積する仕組みを作る
- 「商品訴求」「共感・啓発」「参加型UGC」の3カテゴリを意識して投稿カレンダーを組み、告知だけに偏らないようにする
いきなり全てを揃える必要はありません。まずは専用ハッシュタグを1つ決めて固定表示するところから始めるだけでも、ユーザー投稿を集める土台ができます。
教育・習い事業界ならではの注意点
一方で、教育サービスという業態上、忘れてはならない注意点もあります。子どもの写真を扱うUGC企画では、投稿者本人(保護者)からの許諾範囲を明確にし、二次利用や商用利用の可否をあらかじめ規約に明記しておくことが不可欠です。また、学習効果や成績向上について断定的な表現を使うことは、業界の信頼性を損なうリスクがあるため避けるべきです。KUMONの投稿が「体験談」や「日々の様子」を軸にしているのも、こうした業界特性を踏まえた設計だと考えられます。自社で応用する際も、成果を保証するような表現ではなく、利用者のリアルな声を尊重する姿勢を貫くことが重要です。
まとめ
KUMON(公文式)の公式Instagram運用は、派手なバズ施策ではなく、「共感を生む啓発コンテンツ」「信頼を積み上げる実績紹介」「ユーザーを巻き込むUGC企画」という3つの役割を組み合わせ、さらに自社のオウンドメディアと連携させることで、一過性で終わらない発信の仕組みを作っている点が特徴です。総務省の統計や子育て層向けの各種調査が示す通り、Instagramは子育て世代への情報発信において依然として中心的なチャネルであり、教育・習い事業界に限らず、顧客との接点づくりに悩む事業者にとって参考になる要素の多い事例と言えます。まずはチェックリストの中から1つでも着手し、自社らしい「投稿の型」を育てていくことをおすすめします。
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