「他社の真似をして投稿しているのに、なぜかフォロワーが増えない」「セール告知ばかりで、ブランドの世界観が伝わっている気がしない」——アパレル・ファッション業界でSNS担当者として働いていると、こうした悩みにぶつかる場面は少なくありません。投稿数を増やしても反応が薄い、スタッフの顔出し投稿に抵抗がある、EC連携をどう設計すればいいかわからない。一つひとつは小さな課題でも、積み重なると「何のために投稿しているのか」が見えなくなってしまいます。
そんなときに参考になるのが、実際にファンから支持を集めているアカウントの「型」を分解してみることです。本記事では、TOKYO BASEが運営するセレクトショップ「STUDIOUS(ステュディオス)」のInstagram運用を題材に、投稿の型・世界観のつくり方・エンゲージメント施策を整理し、他業種・他ブランドのアカウントにも応用できるポイントへ落とし込みます。公開情報とSNS運用事例データベース「unyou」の知見をもとに、確証のない数値には触れず、明日から実践できるレベルまで具体化していきます。
STUDIOUSとはどんなブランドか
STUDIOUSは、アパレル企業TOKYO BASEが展開するセレクトショップ・オリジナルブランドです。「From JAPAN to THE WORLD」というコンセプトのもと、輸入ブランドを軸にする一般的なセレクトショップとは一線を画し、東京発のデザイナーズブランドを中心に200以上のブランドを取り扱っていることが特徴です。原宿本店をはじめ、コンセプトの異なる複数の路面店(原宿本店・2nd・3rdなど)を展開し、国内外に店舗網を広げています。ニューヨークやソウルにも店舗を構えるなど、「日本のモード」を海外に発信する姿勢を明確に打ち出しているブランドです。
このブランドとしての立ち位置——「セレクトショップでありながら、東京の同時代性を編集して見せる」というポジショニングは、そのままInstagram運用の軸にもなっています。何を投稿するか以前に、「誰に、何を伝えるブランドなのか」が明確であることが、STUDIOUSのアカウントに一貫性を感じさせる土台になっていると考えられます。

投稿の型を分解する
STUDIOUSのアカウント運用を観察すると、投稿内容はおおむね以下のような型に整理できます。単一のフォーマットに依存せず、目的別に投稿を使い分けている点が特徴です。
| 投稿の型 | 主な目的 | 応用のポイント |
|---|---|---|
| 新作・別注アイテム紹介 | 商品認知・購買導線 | 単品訴求ではなく「なぜ今このアイテムか」の文脈を添える |
| スタッフコーディネート | 共感・自分ごと化 | プロモデルより実店舗スタッフの方が「着用イメージ」が伝わりやすい |
| ブランドコラボ・別注企画 | 話題性・独自性の訴求 | セレクトショップならではの編集力を可視化する |
| 店舗・スタッフ紹介 | 人となり・世界観の補強 | フォロワーが「会いに行きたくなる」接点をつくる |
| ショート動画(Reels) | 新規層へのリーチ拡大 | 静止画では伝わらない素材感・シルエットの動きを見せる |
この型の分け方自体は目新しいものではありませんが、重要なのは「どの型をどの頻度で、どの導線に接続するか」を設計している点です。新作紹介はECサイトへの回遊を、スタッフコーディネートは店舗来店や親近感の醸成を、といったように、投稿ごとに役割を分担させることで、フィード全体が単調な広告色に寄りすぎるのを防いでいます。
スタッフを主役にする設計
STUDIOUSの運用で特徴的なのは、公式ECサイト上にスタッフのコーディネートを身長・店舗別に閲覧できるランキングページを用意している点です。Instagram単体の施策ではなく、EC上のスタッフコンテンツとSNS発信が地続きになっている設計と言えます。
これは他業種にも応用しやすい考え方です。プロモデルの写真は「憧れ」を喚起できますが、購買の最後のひと押しになるのは「自分と体型が近い人が着ている姿」であることが少なくありません。アパレルに限らず、飲食店であればスタッフのおすすめメニュー、美容室であればスタイリスト自身の作例など、「中の人」を主役にしたコンテンツは、フォロワーとの心理的距離を縮める効果が期待できます。
世界観の一貫性をどうつくるか
STUDIOUSのアカウントを見ていくと、トーン&マナーの統一が徹底されています。具体的には次のような要素が一貫しています。
- 写真の色味・彩度(ブランドカラーに近いトーンで統一)
- 構図(人物の切り取り方、余白の使い方)
- キャプションの文体(説明的すぎず、簡潔に世界観を添える)
- ハッシュタグの使い方(ブランド名・企画名を軸に絞り込む)
これらは一見地味な要素ですが、フィード全体を俯瞰したときに「このアカウントらしさ」を生み出す決定的な要因になります。逆に言えば、投稿ごとに写真のトーンやキャプションの温度感がバラバラだと、フォロワーは「ブランドの人格」を認識しづらくなります。世界観の一貫性は、センスの良し悪しという曖昧な話ではなく、色味・構図・文体という具体的なルールに落とし込める設計事項です。
エンゲージメントを高める工夫
投稿単体の質に加えて、STUDIOUSはフォロワーとの接点を増やす仕掛けも複数持っています。複数のサブアカウント(海外店舗アカウントを含む)を展開して接点を分散させていることや、店舗スタッフ個人のアカウントと公式アカウントが緩やかに連携し、ユーザーが「お気に入りのスタッフ」を見つけやすい構造になっていることなどが挙げられます。
公式アカウント単体で完結させず、スタッフ個人・店舗別・海外拠点といった複数の発信軸を持つことで、フォロワーが自分の興味関心に近い入り口からブランドに接触できるようになります。これは、一つの公式アカウントに全ての発信を集約しがちな企業にとって、示唆のある設計です。
データで見るInstagram運用の重要性
ここまで見てきた運用の工夫は、実際のデータからもその意義を裏付けることができます。
まず、Instagramの利用状況について、総務省「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和6年版情報通信白書)によると、Instagramの利用率は全年代で52.6%に達し、10代・20代では70%を超える水準となっています。STUDIOUSの主なターゲット層である20〜30代のファッション感度の高い層にとって、Instagramはすでに生活インフラの一部になっていると言えます。
次に、Instagramと購買行動の関係については、ホットリンクの調査(マナミナ掲載)で、Instagram利用者の約5割が同プラットフォームをきっかけに商品を購入または来店した経験があると報告されています。商品購入時に参考にする情報としては、企業アカウントやインフルエンサーの投稿が上位に挙げられており、公式アカウントの発信が実際の購買行動に直結し得ることが示されています。
さらに、アパレル業界とECの関係については、経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、衣類・服装雑貨等のBtoC-EC市場規模は2兆7,980億円、EC化率は23.38%に達しており、物販系分野全体の平均を大きく上回る水準です。実店舗とECの両方を持つアパレル企業にとって、SNSは単なる認知施策ではなく、EC送客・店舗送客の両方を担う重要な導線になっていることが読み取れます。
自社アカウントに応用するための実践チェックリスト
STUDIOUSの運用から得られる示唆を、明日から自社アカウントで試せる具体的なアクションに落とし込みます。
- 投稿の型を3〜5種類に整理する:新作紹介・スタッフ/中の人紹介・企画もの・お客様の声・短尺動画など、目的別に投稿カテゴリを言語化する
- カテゴリごとに導線を決める:どの投稿がECへの送客を狙い、どの投稿が来店・ブランド共感を狙うのかを事前に決めておく
- 色味・構図・文体のルールを1枚のシートにまとめる:新規投稿者が増えても世界観がぶれないようにする
- 「中の人」を主役にする投稿を月1回以上入れる:スタッフ、担当者、制作の裏側など、企業アカウントに人格を持たせる
- 既存の顧客接点(EC・店舗)とSNSを地続きにする:スタッフページやレビューコンテンツをSNSでも展開できないか棚卸しする
- 投稿頻度より「役割分担」を優先する:毎日投稿することより、型ごとの役割が機能しているかを月次で振り返る
- 数字を追う前にフィード全体のトーンを月1回見直す:投稿ごとの色味・構図がバラついていないかをチェックする
これらは特別な予算やツールがなくても着手できる項目です。重要なのは、個々の投稿の巧拙よりも、「型」と「世界観」と「導線」が設計として噛み合っているかどうかです。
まとめ
STUDIOUSのInstagram運用は、派手な施策よりも、ブランドのポジショニング(東京発のセレクトショップ)を軸に、投稿の型・スタッフを主役にした設計・トーン&マナーの統一・複数アカウントによる接点分散を丁寧に積み上げていることが特徴です。総務省や経済産業省の統計が示す通り、Instagramはすでに多くの消費者の購買行動に影響を与えるチャネルであり、アパレルに限らずEC化が進む業種ほどSNSとECの導線設計が重要になっています。
自社アカウントを見直す際は、まず投稿の型を整理し、どの投稿が誰に何を届けるためのものかを言語化するところから始めてみてください。unyouでは、業種別・目的別にSNS運用事例を集めたデータベースを公開しています。自社と近い業態・規模の事例を探したい方は、事例一覧ページもあわせてご覧ください。
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