UGCの投稿がなかなか増えず、キャンペーンを打っても「いいね」はつくのに肝心の投稿が集まらない——そんな悩みを抱えているSNS担当者の方は少なくないはずです。広告費をかけても効果が頭打ちになり、上司からは「もっとお客様の声を活用できないか」と言われるものの、具体的にどう仕組み化すればよいのか分からないまま時間だけが過ぎていく、というケースもよく耳にします。
UGC(User Generated Content、ユーザー生成コンテンツ)は、単に「バズればラッキー」な偶然の産物ではありません。投稿が生まれやすい設計、投稿したくなる動機づけ、そして企業側が投稿を発見・活用する運用フローを組み合わせることで、継続的に生み出せる「仕組み」に変えることができます。本記事では、UGCマーケティングの基本定義から市場データ、投稿を増やすための具体的な手順、明日から使えるチェックリストまでを網羅的に解説します。
UGCマーケティングとは何か
UGCとは、企業ではなく一般の消費者(ユーザー)が作成・発信するコンテンツの総称です。SNSの投稿、レビューサイトへの口コミ、ブログ記事、写真・動画など形式はさまざまですが、共通しているのは「企業の広告表現ではなく、生活者自身の言葉・視点で語られている」という点です。
UGCマーケティングとは、こうしたユーザー発信のコンテンツを企業が意図的に生み出しやすくし、収集・活用することでブランドの認知や購買意欲の向上につなげる一連のマーケティング活動を指します。広告のように企業が費用を払って露出を買うのではなく、実際に商品・サービスを利用した第三者の声を通じて信頼を獲得する点が最大の特徴です。
似た概念に「口コミマーケティング」がありますが、UGCマーケティングはSNS時代に最適化された広義の概念と捉えるとわかりやすいでしょう。口コミが「人から人へ伝わる評判」であるのに対し、UGCは「テキスト・写真・動画として可視化され、再利用可能な形で残るコンテンツ」である点に違いがあります。
なぜ今、UGCが重要視されているのか
背景には生活者の情報収集行動の変化があります。総務省の「通信利用動向調査」では、個人のインターネット利用者のうちSNSを利用している割合が8割を超える水準で推移していることが継続的に示されており、SNSはすでに一部の若年層だけのものではなく、幅広い世代の生活インフラになっています。
あわせて、主要SNSの国内利用規模も大きくなっています。LINEヤフー株式会社が公表している決算関連資料では、LINEの国内月間アクティブユーザー数(MAU)が9,600万人超に達しているとされており、日本の人口の大部分にリーチできるプラットフォームであることがわかります。また、Instagramについては運営元のMeta社(当時Facebook Japan)が国内の月間アクティブアカウント数を3,300万人と公表した実績があり、写真・動画を主体としたビジュアルコミュニケーションの土台として広く定着しています。
こうした巨大なプラットフォームの上で、企業公式アカウントの発信よりも「友人・知人・第三者の投稿」が接触機会として圧倒的に多くなっているのが現在のSNS環境です。企業が発信できる情報量には限界がありますが、ユーザー一人ひとりが発信者になれば、その情報の総量とリーチは何倍にも拡張します。これが、企業がUGCを「増やす仕組み」として捉える必要がある理由です。
UGCがもたらす効果・メリット
UGCを増やす取り組みには、主に次のような効果が期待できます。
- 信頼性の向上:企業発信の広告よりも、実際に使った人の声のほうが受け手の警戒心を下げやすく、購買検討の後押しになりやすい傾向があります。
- コンテンツ制作コストの分散:写真・動画・レビューなど、本来は企業が撮影・制作する素材の一部をユーザーが代わりに生み出してくれるため、コンテンツ制作の負荷を下げられます。
- 検索・SNS上での接触機会の増加:投稿数が増えるほど、ハッシュタグ検索や商品名検索での露出機会が増え、新規顧客との接点が広がります。
- 既存顧客との関係強化:投稿を企業がリポストしたりコメントで反応したりすることで、顧客がブランドに対して「見てもらえている」という実感を持ちやすくなります。
- 商品・サービス改善のヒント収集:投稿内のコメントや反応から、生活者のリアルな使用感や改善要望を拾いやすくなります。
一方で、UGCは「待っていれば自然に増える」ものではなく、投稿のきっかけ・動機・導線を設計しない限り一定数以上には広がりにくいという点も押さえておく必要があります。
UGCが増えない典型的な原因
UGC施策がうまくいかない企業には、いくつか共通するパターンがあります。
- 投稿する理由がユーザー側にない:単に「投稿してください」と呼びかけるだけでは、ユーザーにとって投稿する動機(承認欲求を満たせる、特典がある、話題として面白いなど)が不足しています。
- 投稿のハードルが高い:指定のハッシュタグが長い、投稿フォーマットが複雑、応募条件が分かりにくいなど、手間がかかると離脱されやすくなります。
- 投稿しても企業に見つけてもらえない:せっかく投稿しても企業側が拾ってくれないと感じると、次第に投稿意欲が下がっていきます。
- 投稿を促すタイミングが商品購入後の一度きり:購入直後だけでなく、使用中・使用後の複数のタイミングで接点を作れていないケースが多く見られます。
- 社内に収集・活用の運用フローがない:投稿を集める仕組みはあっても、それを二次利用(サイト掲載や広告転用など)する体制が整っておらず、施策が単発で終わってしまう。
これらの原因は裏を返せば、そのまま改善のヒントになります。次章で具体的な仕組みづくりのステップを解説します。
お客様の投稿を増やす仕組みの作り方【実践ステップ】
UGCを継続的に生み出す仕組みは、大きく「動機づけ」「導線設計」「収集・活用」の3段階に分けて考えると整理しやすくなります。
ステップ1:投稿したくなる動機を設計する
- 専用ハッシュタグを用意する:短く覚えやすく、かつ他社・他ジャンルと被らないオリジナルハッシュタグを設定します。
- 投稿すると得られるメリットを明確にする:割引・ノベルティ・抽選プレゼントなどのインセンティブに加え、「公式アカウントに紹介される」「コミュニティの一員として認知される」といった非金銭的な動機も有効です。
- 世界観・映える要素を商品・空間に組み込む:パッケージデザイン、店舗の内装、盛り付けなど、投稿したくなる「絵になる瞬間」をあらかじめ用意しておきます。
ステップ2:投稿までの導線を簡単にする
- 購入直後・来店時・商品使用中など、複数のタッチポイントで投稿を促すPOPやメッセージを設置する。
- QRコードやリンクから、投稿方法やハッシュタグがすぐわかるページに誘導する。
- レビュー投稿フォームやSNS投稿ボタンを購入完了メールやアプリ内に組み込み、入力の手間を最小限にする。
ステップ3:投稿を収集し、活用する運用フローを作る
- 指定ハッシュタグや位置情報タグの投稿を定期的にモニタリングする担当・時間を決める。
- 良質な投稿は本人に許諾を取ったうえで、公式SNSでのリポストやEC・LP上への掲載に活用する。
- 投稿してくれたユーザーには必ずリアクション(いいね・コメント・お礼メッセージ)を返し、「見てもらえている」体験を作る。
- 月次でUGCの投稿数・エンゲージメント・活用実績を振り返り、企画内容を改善していく。
このサイクルを止めずに回し続けることが、UGCを一過性のキャンペーンではなく「仕組み」として機能させる鍵になります。
主要SNSの特徴とUGC施策の相性
プラットフォームによってユーザー層や投稿の性質が異なるため、自社の商材に合わせて注力するチャネルを選ぶことが重要です。
| SNS | 国内利用規模の公表実績 | UGCとの相性・特徴 |
|---|---|---|
| LINE | MAU 9,600万人超(LINEヤフー社公表) | クローズドな友だち関係が中心で、公開型UGCよりもクーポン共有・口コミ拡散の起点として活用しやすい |
| 月間アクティブアカウント数3,300万人(Meta社公表) | ビジュアル訴求と相性が良く、ハッシュタグキャンペーンによるUGC収集の主戦場になりやすい | |
| X(旧Twitter) | 拡散性の高いテキスト・画像投稿が中心 | リポスト機能により口コミが短期間で広がりやすく、リアルタイムな感想投稿が集まりやすい |
| TikTok | ショート動画中心の若年層に強い | 商品の使い方・体験を動画で伝えるUGC(レビュー動画・開封動画など)との相性が高い |
※各SNSの利用者数は各社の公表時点の実績値であり、公表時期によって差があります。自社のターゲット層と照らし合わせたうえで、最新の公式発表値を確認して活用してください。
明日から試せるUGC施策チェックリスト
すぐに着手できる項目から取り組むことで、UGC創出の仕組みを小さく始めることができます。
- 自社オリジナルの投稿用ハッシュタグを1つ決めている
- 商品パッケージ・店舗・梱包物のどこかに、ハッシュタグや投稿の呼びかけを明記している
- 購入後のメール・LINE通知・レシートなどに投稿を促す一文を入れている
- 投稿してくれたユーザーへの返信・リポストを行う担当と頻度を決めている
- 投稿を許諾なく無断転載していないか、利用規約・DM確認のフローを整えている
- 月に一度、投稿数やエンゲージメントを振り返るミーティングの場がある
- レビュー投稿フォームやEC上の口コミ欄を、スマホから3分以内で入力できる設計にしている
まずはチェックが付かなかった項目を1つだけ選び、来月までに着手することから始めるとよいでしょう。
UGC活用時に注意すべきポイント
UGCを企業側で二次利用する際には、いくつか気をつけるべき点があります。
- 投稿者本人からの掲載許諾を得る:SNS上の投稿であっても、公式サイトや広告など別の媒体に転載する場合は、原則として投稿者本人の許諾を得ることがトラブル防止につながります。
- 景品表示法・ステルスマーケティングへの配慮:企業が対価(金銭・商品提供など)を渡してユーザーに投稿してもらう場合、それが広告であることが一般消費者に分かるよう明示することが求められます。「これは第三者の自然な感想である」と誤認させるような演出は避ける必要があります。
- 誇張表現や事実と異なる投稿の扱い:ユーザーの投稿内容であっても、企業が公式に活用・紹介する以上、著しく誇大な表現や事実誤認を招く投稿はそのまま拡散しないよう内容を確認しましょう。
- 著作権・肖像権への配慮:投稿内に第三者や他者の著作物が写り込んでいないかを確認したうえで活用することも大切です。
これらのルールを社内で明文化し、UGC収集・活用の担当者が同じ基準で判断できる状態にしておくことが、長期的に安全にUGCマーケティングを継続するための土台になります。
まとめ
UGCマーケティングは、広告費をかけずに信頼性の高い情報発信を増やせる可能性を持つ一方で、「投稿する動機」「投稿までの導線」「収集・活用の運用フロー」という3つの仕組みを継続的に設計・運用して初めて機能するものです。総務省の調査が示すように国内のSNS利用は生活インフラとして定着しており、LINEやInstagramをはじめとする各プラットフォームの利用規模も非常に大きいことから、UGCを軸にした情報発信の重要性は今後も高まっていくと考えられます。
まずは自社にとって相性の良いSNSを1つ選び、専用ハッシュタグの設定や投稿を促す一言の追加など、小さな一歩から仕組みづくりを始めてみてください。
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