「TikTokアカウントを始めてみたものの、再生数が伸びない」「エンジニアに出演を頼んだら渋い顔をされた」「なんとなく続けているが、採用にも売上にも効果が見えない」——IT企業のマーケティング担当者や広報担当者から、こうした相談を受ける機会が増えています。BtoB色が強い、専門性が高い、エンジニアが表に出たがらないなど、IT業界特有の事情があるにもかかわらず、他業界の「バズ事例」をそのまま真似て失速するケースは非常に多いのが実情です。
TikTokはもはや「若者向けの娯楽アプリ」ではなく、採用広報・BtoBマーケティング・企業ブランディングの主要チャネルの一つになりつつあります。だからこそ、目的設計や体制づくりを誤ると、時間とコストをかけたのに成果が出ない「失敗運用」に陥りやすいのも事実です。本記事では、IT企業のTikTok運用でありがちな失敗7選と、その具体的な改善策を、公開されている統計データと合わせて解説します。
なぜ今、IT企業がTikTok運用に取り組むべきなのか
まず前提として、TikTokの利用規模とIT企業がここに参入する意義を数字で確認しておきましょう。
TikTok Japanが公式Newsroomで発表した情報によると、日本国内の月間アクティブユーザー数(MAU)は2025年11月時点で4,200万人を突破しました。2022年11月時点の2,120万人から約3年でほぼ倍増しており、単純計算で日本の総人口の3人に1人がTikTokを利用している計算になります。同発表では、TikTokに広告出稿する企業が48万社を超え、TikTok上で創作活動を行うクリエイターが226万人を超えたことも明らかにされています(出典:TikTok Japan公式Newsroom「TikTok、日本の月間アクティブユーザー数が4,200万を突破!」2025年11月27日)。
また、総務省情報通信政策研究所が公表した「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、全年代におけるTikTokの利用率は33.2%で、LINE(91.1%)・YouTube(80.8%)・Instagram(52.6%)・X(43.3%)に次ぐ位置にありますが、10代に限ると利用率は65.7%まで跳ね上がります。若手エンジニアやIT業界を志望する学生層へのリーチという観点では、無視できない数字です。
| SNS | 全年代の利用率 | 特徴 |
|---|---|---|
| LINE | 91.1% | 生活インフラ化、年代を問わず利用 |
| YouTube | 80.8% | 動画系で最大の到達力 |
| 52.6% | ビジュアル訴求・ブランディングに強い | |
| X(旧Twitter) | 43.3% | 情報拡散・エンジニアコミュニティとの親和性 |
| TikTok | 33.2%(10代は65.7%) | 若年層への到達力、採用広報との相性 |
| 26.8% | ビジネス層・BtoB色がやや強い |
出典:総務省情報通信政策研究所「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
さらに、電通が発表した「2025年 日本の広告費」では、日本の総広告費が8兆623億円(前年比105.1%)と4年連続で過去最高を更新し、インターネット広告費は4兆459億円で初めて総広告費の過半数(50.2%)を占めました。動画共有系の広告費も5,126億円まで拡大しており、SNS系(5,508億円)に急接近しています(出典:電通「2025年 日本の広告費」2026年3月5日発表)。動画コンテンツへの予算シフトは今後も続く見通しであり、IT企業がTikTokに投資する土台は整っていると言えます。
こうした市場環境を踏まえたうえで、実際の運用現場で起きがちな失敗を見ていきます。unyouのSNS運用事例データベース(https://unyou.media)でもIT・エンジニア系企業のTikTok活用事例が公開されており、業界カテゴリで絞り込んで他社の投稿傾向や運用体制を参考にすることができます。自社の運用を見直す際の比較材料としても活用してみてください。

失敗1:ターゲット不在の「バズ狙い」コンテンツに偏る
トレンド音源や流行りのダンス企画に乗ることは悪いことではありませんが、「バズること」自体が目的化すると、フォロワーは増えても採用応募や商談につながらないアカウントになりがちです。IT企業がTikTokを運用する目的は、多くの場合「採用ブランディング」「サービス認知」「エンジニアコミュニティとの接点づくり」のいずれかです。目的が曖昧なままバズを追うと、フォロワーの属性がターゲットとずれ、成果測定もできなくなります。
改善策:企画を出す前に「この動画は誰に、何を持ち帰ってほしいのか」を1行で言語化するルールを設ける。採用目的なら「弊社で働くとどんな1日を過ごすか」、サービス認知目的なら「このツールでどんな課題が解決するか」など、目的と視聴後の行動をセットで設計します。
失敗2:採用ブランディングと商用PRの目的を混同する
「エンジニア採用も強化したいし、製品も知ってほしい」と欲張って1つのアカウントに全部詰め込むのも典型的な失敗です。視聴者は「このアカウントは何を発信しているのか」を数秒で判断するため、投稿ごとにテーマがバラバラだとフォローされにくく、アルゴリズム上もおすすめに乗りにくくなります。
改善策:まずはアカウントの主目的を1つに絞り、プロフィール文・投稿テーマ・ハッシュタグを一貫させます。採用と製品PRの両方を伝えたい場合は、投稿内の「シリーズ企画」として枠を分ける(例:週2回は「エンジニアの日常」、週1回は「機能紹介」)など、テーマの整理を優先しましょう。
失敗3:エンジニアの「顔出し・声出し」ハードルを軽視する
現場から最も多く挙がる悩みが「出演してくれる社員がいない」です。エンジニアは対外露出に慣れていないケースが多く、無理に依頼すると社内の協力を得られなくなり、運用そのものが止まってしまいます。
改善策:顔出しを前提にせず、画面録画・イラスト・字幕中心の構成でも成立する企画を用意する。出演のハードルを「1本30秒・台本あり・NGカット可」など明確な条件にして依頼することで、社員の心理的負担を下げられます。協力してくれた社員には社内で評価・還元する仕組みを作ると継続的な協力を得やすくなります。
失敗4:投稿頻度が続かず「幽霊アカウント化」する
立ち上げ当初は週3〜4本投稿していたのに、数週間で更新が止まる「幽霊アカウント」も非常によくあるパターンです。片手間の担当者一人に運用を任せきりにすると、通常業務が忙しくなった瞬間に更新が止まります。
改善策:1人担当ではなく「企画・撮影・編集・投稿」を分業できる体制を最低2〜3人で組む。さらに1ヶ月分のネタを先出しでストックし、撮影日をあらかじめ月次でブロックしておくことで、繁忙期でも投稿を止めないための余力を確保します。
失敗5:分析指標を見ずに感覚だけで運用を続ける
再生数だけを見て一喜一憂し、視聴維持率・プロフィールクリック率・保存数といった重要指標を確認していないケースも失敗の温床です。再生数が伸びても、目的(採用応募や問い合わせ)につながっていなければ意味がありません。
改善策:週次で「視聴維持率」「プロフィールアクセス率」「フォロー転換率」「外部リンク・応募ページへの遷移数」を最低限のKPIとして記録し、月次で振り返る運用フローを作ります。数値が悪い投稿は感覚ではなく、冒頭2秒の掴み・テロップの視認性・尺の長さなど要素ごとに仮説を立てて検証しましょう。
失敗6:炎上・コンプライアンスリスクへの備えがない
IT企業は技術情報や社内事情に触れる機会が多く、意図せず機密情報や誤解を招く表現を投稿してしまうリスクがあります。特に採用系コンテンツでは、他社比較や待遇に関する発言が炎上の火種になりやすい点に注意が必要です。
改善策:投稿前チェックリストを整備し、①機密情報・個人情報が映り込んでいないか、②他社や競合を貶める表現がないか、③誇大な表現や事実と異なる説明がないか、④法務・人事の確認が必要な内容か、を必ず確認するフローを設けます。担当者だけの判断で公開せず、複数人でのダブルチェックを標準化しましょう。
失敗7:内製と外部委託の体制設計を誤る
「とりあえず全部内製で」「とりあえず代理店に丸投げ」のどちらも失敗につながりやすい選択です。内製に固執すると専門ノウハウ不足で伸び悩み、丸投げすると自社の技術的な魅力やカルチャーが正しく伝わらないコンテンツになりがちです。
改善策:企画・出演・社内調整は内製、撮影技術やトレンド分析・編集は外部パートナーと役割分担するハイブリッド型を検討します。外部に委託する場合は、IT業界の運用実績があるかどうかを事前に確認することが重要です。委託先選定の基準については、失敗しないSNS運用代行会社の選び方でも詳しく解説しています。
明日から試せる改善チェックリスト
これまでの内容をもとに、すぐに着手できるチェックリストをまとめました。
- アカウントの主目的(採用/認知/コミュニティ形成)を1つに絞れているか
- プロフィール文と直近10投稿のテーマに一貫性があるか
- 顔出しなしでも成立する企画フォーマットを用意しているか
- 投稿担当が1人に依存していないか(最低2〜3人の分業体制)
- 1ヶ月分の投稿ネタと撮影日をあらかじめストックしているか
- 視聴維持率・プロフィールアクセス率などのKPIを週次で確認しているか
- 投稿前チェックリスト(機密情報・比較表現・誇大表現の確認)が運用フローに組み込まれているか
- 内製と外部委託の役割分担が明確になっているか
このチェックリストを月初にチーム全員で見直すだけでも、失敗パターンの多くは未然に防げます。
まとめ
IT企業のTikTok運用は、総務省の調査やTikTok公式の発表からも分かる通り、若年層への到達力という点で大きな可能性を持つチャネルです。一方で、目的が曖昧なままバズを追ったり、出演者の負担を軽視したり、体制づくりを誤ったりすると、成果につながらないまま運用が止まってしまうリスクも抱えています。今回紹介した7つの失敗パターンとチェックリストを参考に、自社の目的とリソースに合った無理のない運用体制を設計してみてください。他社の実際の運用スタイルを比較したい場合は、unyouのSNS運用事例データベース(https://unyou.media)でIT業界の事例を確認するのもおすすめです。
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引用した統計はすべて実在の一次情報(総務省情報通信政策研究所、TikTok Japan公式Newsroom、電通「日本の広告費」)を検索で確認した上で記載しています。ファイルへの保存が必要であれば、保存先を教えてください。
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