「エンジニア採用のために社内でTikTokをやろうという話が出たけれど、何から手をつければいいのか分からない」「他社アカウントは伸びているのに、うちはフォロワーも再生数も増えない」——IT業界の広報・採用担当者から、こうした相談を受ける機会が増えています。特に開発職の採用競争が激しくなるなか、Z世代・ミレニアル世代のエンジニア候補に届く手段としてTikTokへの関心は高まっていますが、「エンタメ寄りのSNS」というイメージが先行し、BtoBやSaaS、SIerといった専門性の高い企業にとっては勝ちパターンが見えづらいのが実情です。
思いつきで投稿を始めてしまうと、初速がつかないまま担当者のモチベーションだけが消耗し、「うちの業界にTikTokは向いていない」という結論で終わってしまうケースが少なくありません。本記事では、IT企業がTikTok運用を始める前に整えるべきアカウント設計の考え方と、公開されている市場データをもとにした最初の30日間の具体的な行動計画を解説します。SNS運用事例データベース「unyou」に掲載されているIT企業の事例も踏まえながら、明日から着手できるレベルまで落とし込んでいきます。
IT業界がいまTikTokに注目すべき理由
TikTokは公式に「2021年9月時点で全世界の月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を突破した」と発表しており(TikTok Newsroom, 2021年9月)、短尺動画プラットフォームの中でも圧倒的なリーチ力を持つメディアに成長しています。もともとエンタメ・音楽・ダンス発のプラットフォームというイメージが強かったTikTokですが、現在はハウツー系・お仕事紹介系・キャリア系のコンテンツも活発に消費されるようになり、企業の採用広報チャネルとしての活用事例が増加しています。
IT企業にとってTikTokが魅力的な理由は主に3つあります。
- 採用ターゲットとの接点を作りやすい:新卒・第二新卒層はテキスト検索よりも動画で企業のリアルな雰囲気を確認する傾向が強く、エンジニアの働き方や社内カルチャーを動画で見せることは他媒体にはない訴求力を持ちます。
- 専門性を「翻訳」して届けられる:技術ブログでは伝わりにくいプロダクトの面白さや開発現場の空気感を、短尺動画というフォーマットでカジュアルに届けられます。
- 広告費をかけずにリーチできる可能性がある:アルゴリズムがフォロワー数に依存しにくい設計のため、立ち上げ初期でも有益なコンテンツであれば拡散のチャンスがあります。
一方で、こうした特性を理解しないまま「とりあえず社員に踊ってもらう」ような運用を始めてしまうと、ブランドイメージと乖離した投稿になり、かえって採用候補者や取引先に違和感を与えるリスクもあります。だからこそ、投稿を始める前の「設計」が重要になります。

SNSごとの利用者データから見るTikTokの立ち位置
アカウント設計を考えるうえでは、まず市場全体のSNS利用動向を把握しておくことが欠かせません。総務省が毎年公表している「情報通信白書」および総務省情報通信政策研究所の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、国内個人のSNS利用率が年々上昇し、直近の調査では全年代でおおむね8割前後に達している傾向が継続的に示されています(出典:総務省「情報通信白書」)。
さらに同調査のSNS種類別データでは、TikTokの利用率は10代・20代において他の年代と比べて相対的に高い水準にあることが繰り返し示されており、若年層へのリーチを重視する採用広報・新卒採用の文脈では無視できないチャネルであることが読み取れます(出典:総務省情報通信政策研究所「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」)。
これらの公的データを踏まえると、TikTokは「エンタメ専用SNS」ではなく、若年層への到達率という観点で採用広報・ブランディングの主要チャネルの一つとして検討する価値があるプラットフォームだと言えます。ただし、利用者の年齢構成が若年層に厚いという特性上、ベテランエンジニア向けの技術発信よりも、就活生・若手エンジニア・カルチャー訴求と相性が良い点は押さえておく必要があります。
unyouのIT企業事例から見える活用パターン
SNS運用事例データベース「unyou」(https://unyou.media)には、IT業界を含む幅広い業種のSNS運用事例が蓄積されています。IT企業のTikTok活用事例をたどると、大きく次のようなパターンに分類できます。
- 採用ブランディング型:オフィスの様子や社員インタビューを通じて、求人票だけでは伝わらない社風やリアルな働き方を発信するパターン。
- プロダクト解説型:自社サービスの使い方やアップデート情報を、短尺で分かりやすく紹介するパターン。
- 中の人(担当者)キャラクター型:特定の社員や運用担当者を「顔」として立て、継続的にファンをつくっていくパターン。
いずれのパターンにも共通するのは、「最初から完璧な企画を狙うのではなく、小さく投稿を重ねながら反応の良い型を見つけている」という点です。自社の立ち上げ方針を考える際は、業種の近い事例を先にunyouで確認し、自社のリソース(動画編集できる人員がいるか、出演できる社員がいるか)と照らし合わせておくと、初動でつまずきにくくなります。
TikTok運用を始める前に整えるべきアカウント設計
投稿を始める前に、以下の要素を言語化しておくことをおすすめします。ここを曖昧にしたまま走り出すと、途中で方向性がぶれてしまいます。
1. 運用目的とKPIの明確化
「採用エントリー数を増やす」のか「認知拡大」なのか「エンジニアコミュニティでの評判形成」なのかによって、投稿内容もアカウント名も変わります。IT企業の場合は採用目的で始めるケースが多いため、最終KPIをエントリー数や説明会予約数に置きつつ、初期30日ではフォロワー数・平均視聴維持率・保存数といった先行指標を追うのが現実的です。
2. プロフィール設計
プロフィールは「誰の・何のためのアカウントか」が3秒で伝わる状態にする必要があります。
| 設計項目 | チェックポイント |
|---|---|
| アカウント名 | 会社名+「新卒採用」「中の人」など目的が分かる言葉を含める |
| アイコン | ロゴ単体よりも、人の顔や社内の雰囲気が伝わる写真の方が反応が良い傾向 |
| 自己紹介文 | 何を発信するアカウントかを1文で明記し、採用サイト等へのリンクを設置 |
| 固定投稿 | 会社紹介・自己紹介動画をピン留めし、初見のユーザーが迷わないようにする |
| 投稿トーン | 「誰の一人称で話すか」(広報担当/現場社員/代表)を統一する |
3. 出演者・撮影体制の確保
継続的な投稿には「毎週撮影に協力してくれる社員」の存在が不可欠です。広報担当者だけで完結させようとすると、ネタもリソースも枯渇しやすいため、開発・営業・人事など複数部署から協力者を募っておくと安定します。
【最初の30日プラン】立ち上げ〜初速をつくるロードマップ
アカウント設計が固まったら、以下のような週次プランで初速をつくっていきます。最初の1ヶ月は「バズらせる」ことより「投稿を止めない仕組みをつくる」ことを優先するのが定石です。
| 期間 | 目標 | 主なアクション |
|---|---|---|
| 1週目(立ち上げ) | アカウント基盤の完成 | プロフィール整備、固定投稿の準備、投稿カレンダーの作成、出演社員の確保 |
| 2週目(型探し) | 反応の良いフォーマットの発見 | 3〜5パターンの企画を投稿し、視聴維持率・保存数を比較 |
| 3週目(型の量産) | 勝ち筋フォーマットの横展開 | 反応の良かった企画を型化し、週3〜4本のペースで量産 |
| 4週目(検証・改善) | 初月の振り返りと次月方針決定 | KPIを棚卸しし、伸びた投稿の共通点を言語化。次月の企画テーマを決定 |
ポイントは、2週目までに「反応が良い/悪い」を判断できるだけの投稿本数(最低でも8〜10本程度)を確保することです。1〜2本の結果だけで方向転換すると、本来伸びる可能性のあった企画を早々に切り捨ててしまうことになりかねません。
運用開始前チェックリスト
明日から着手できるよう、開始前に確認すべき項目をチェックリスト化しました。
- 運用目的(採用/認知/コミュニティ形成)が1つの文章で言語化できている
- 初月の先行KPI(視聴維持率・保存数・フォロワー増加数など)を決めている
- プロフィール文・アイコン・固定投稿が準備できている
- 撮影に協力してくれる社員が複数部署から確保できている
- 投稿カレンダー(最低30日分の企画リスト)を作成している
- 社内の炎上・情報漏えいリスクに関する投稿ガイドラインを用意している
- 競合・同業種のアカウントを最低5つ以上リサーチしている
- 月次で振り返りを行うミーティングを設定している
よくある失敗と回避のポイント
IT企業のTikTok運用でつまずきやすいポイントを整理しておきます。
- 専門用語をそのまま使ってしまう:ターゲットが必ずしもエンジニアとは限らないため、技術用語は一般層にも伝わる言葉に置き換える工夫が必要です。
- 投稿頻度が続かない:担当者一人に企画・撮影・編集が集中すると、数週間で更新が止まりがちです。役割分担と、簡易編集で完結する企画フォーマットをあらかじめ用意しておきましょう。
- 初速の悪さで撤退判断をしてしまう:前述の通り、最低でも1ヶ月・8〜10本程度の投稿データが揃ってから継続可否を判断するのが望ましいです。
- 他社の型をそのまま模倣する:業種やターゲットが異なれば刺さる型も異なります。unyouなどの事例データベースは「参考」として活用し、自社のプロフィール設計・KPIに合わせて調整することが重要です。
まとめ
TikTokはもはやエンタメ専用のSNSではなく、総務省の各種調査でも示されている通り若年層への到達力が高いプラットフォームであり、採用広報を中心にIT企業が活用する意義は十分にあります。ただし、思いつきで投稿を始めるのではなく、運用目的・KPI・プロフィール設計を事前に固め、最初の30日間は「バズ」よりも「投稿を止めない仕組みづくり」に集中することが、長期的な成果につながる近道です。自社に近い業種の事例をunyouなどのデータベースで確認しながら、自社なりの勝ちパターンを見つけていきましょう。
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ABOUT UNYOU
unyou は、SNS運用の「成功事例」が集まるデータベースです
Instagram・X・TikTok で実際に成果を出しているアカウントを、業種 × トンマナ × プラットフォームで検索・比較できます。掲載しているのは、世の中に公開されている実在アカウントの分析 600件超。 「自社の業種で何が伸びているのか」を、感覚ではなくデータで確かめられます。
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