経営者から「SNSの数字、結局どうなってるの」と聞かれるたびに、うまく答えられずに気まずい空気になった経験はないでしょうか。フォロワー数や「いいね」の推移は日々追っているのに、いざ報告の場になると「で、それが売上にどうつながっているの」と切り返され、言葉に詰まってしまう。担当者としては真面目に運用しているつもりなのに、評価されるどころか「SNSって意味あるの」という空気を感じてしまう——これは特別なケースではなく、多くのSNS担当者が抱える共通の悩みです。
すれ違いの根っこには、経営者とSNS担当者が「見ている景色」も「使っている言葉」も違うという構造的な問題があります。この記事では、経営者がSNS担当に本当に求めていることを整理した上で、社内での報告・説得の場でそのまま使える指標設計、言い回し、チェックリストを提示します。公開データも交えながら、明日からの実務にすぐ落とし込める内容にまとめました。
なぜ経営者とSNS担当は「すれ違う」のか
すれ違いが起きる最大の理由は、SNS運用の成果が「見えにくい指標」に偏りがちだからです。SNS担当者はフォロワー数、エンゲージメント率、インプレッション数といった「SNSの中で完結する指標」を日々追いかけます。一方で経営者が見ているのは、売上、問い合わせ数、採用応募数、ブランドの信頼といった「事業の指標」です。この2つの指標がレポート上でつながっていないと、経営者からは「頑張っているのは分かるが、それが会社にとって何なのか分からない」という評価になってしまいます。
総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」でも触れられているように、SNSはすでに10代・20代で利用率9割を超え、全年代平均でも8割前後に達する生活インフラです。経営者もこの事実自体は理解しています。問題は「SNSが重要なのは分かるが、自社にとって何が成果なのかが定義されていない」という点にあり、これはSNS担当者側から歩み寄って言語化する必要がある領域です。

経営者がSNS担当に本当に求めていること5つ
現場での相談事例や社内報告の失敗パターンを整理すると、経営者がSNS担当に求めていることは概ね次の5つに集約されます。
- 事業目標との接続:フォロワー数ではなく、問い合わせ・売上・採用など経営指標への貢献度を示してほしい
- リスク管理:炎上や誤情報拡散などのレピュテーションリスクを事前に察知し、対応方針を持っていてほしい
- 投資対効果の説明責任:広告費や制作費を投じた分、何が返ってきたのかを数字で説明してほしい
- 競合・業界内でのポジション把握:自社が同業他社と比べてどの立ち位置にいるのかを把握していてほしい
- 中長期の運用方針:単発の投稿ではなく、半年〜1年単位でどこに向かうのかロードマップを持っていてほしい
これらはどれも「SNSに詳しくなってほしい」という要求ではなく、「経営判断に使える材料を用意してほしい」という要求です。SNS担当者が専門用語やSNS独自の指標だけで会話をしていると、経営者からは「翻訳されていない報告」に見えてしまいます。
データで見るSNSの重みと経営者の関心
経営者を説得する材料として、公開されている利用者数データは有効です。代表的なプラットフォームの国内利用者数は以下の通り公表されています。
| プラットフォーム | 公表された国内利用者数 | 出典 |
|---|---|---|
| LINE | 月間利用者数 約9,600万人(2024年時点) | LINEヤフー株式会社 公表資料 |
| YouTube | 月間利用者数 7,120万人(2023年) | Google・Nielsen調査 |
| X(旧Twitter) | 月間利用者数 4,500万人(2017年公表、以後も継続的に引用) | X(旧Twitter)Japan 公表資料 |
| 利用者数 3,300万人(2019年公表) | Facebook Japan(現Meta)公表資料 | |
| TikTok | 月間アクティブユーザー数 2,700万人超(2021年公表) | TikTok Japan 公表資料 |
こうした数字は「なぜSNSに投資すべきか」を説明する際の前提として使えますが、経営者に刺さるのはここから先です。重要なのは「自社の顧客層がどのプラットフォームにどれだけ滞在しているか」「競合がどこに注力しているか」を照らし合わせ、投資判断の根拠に変換することです。単に「利用者数が多いから重要です」ではなく、「自社のターゲット層の年代・行動特性とプラットフォームの利用実態が一致しているため、ここに投資する合理性がある」という形で語ることで、説得力が大きく変わります。
経営者に伝わるレポートの型(テンプレート)
報告の場ですれ違いを防ぐには、レポートの構成そのものを「経営者の関心順」に組み替えることが有効です。以下の順番でレポートを構成してみてください。
- 結論:今月の運用が事業にどう貢献したか(問い合わせ数、EC流入・売上、採用応募数など)を1行で
- 主要KPIの推移:事業指標→中間指標(クリック・遷移)→SNS指標(フォロワー・エンゲージメント)の順で並べる
- 要因分析:伸びた/落ちた投稿・施策とその理由
- リスク・課題:炎上リスクや競合の動きなど、経営判断が必要な事項
- 次月のアクションと必要な意思決定:予算・人員・承認が必要な事項を明記
ポイントは、SNS指標をいきなり見せるのではなく、必ず事業指標を先頭に置くことです。フォロワー数の増減は「中間指標の中間指標」に過ぎず、経営者にとっては最後に確認する情報で十分です。
すれ違いを防ぐ言い回し・社内説得テンプレート
数字を用意しても、伝え方次第で受け取られ方は変わります。以下はそのまま使える言い回しの例です。
- 予算の追加承認を得たいとき:「今期はエンゲージメント率が〇%改善し、そのうち〇件が実際の問い合わせにつながりました。同じ投資対効果を来期も再現するには、〇〇の予算が必要です」
- 成果が出ていない時期の説明:「フォロワー数は伸び悩んでいますが、既存顧客の再購入率に寄与するコンテンツへ比重を移しています。事業指標としては〇〇に表れています」
- 炎上リスクを共有するとき:「現時点でリスクは顕在化していませんが、業界内で類似の炎上事例が発生しています。当社の投稿ガイドラインを再点検し、対応フローを事前に整備したいと考えています」
- 中長期方針を提案するとき:「単月の数字ではなく、半年スパンでの顧客獲得コストの変化を指標に置きたいと考えています。合意いただけますか」
共通しているのは、SNS用語を主語にせず、経営者が普段使う「投資」「リスク」「コスト」「意思決定」という言葉に翻訳している点です。
明日から使える社内説得チェックリスト
すれ違いを防ぐために、次回の報告前に以下を確認してください。
- レポートの1枚目に事業指標(売上・問い合わせ・応募数)を置いているか
- SNS独自の指標(フォロワー数・いいね数)だけで結論を語っていないか
- 競合や業界内の動向と自社の立ち位置を比較できているか
- リスク(炎上・誤情報・法令)について事前に触れているか
- 次に必要な意思決定(予算・人員・承認)を明確に提示しているか
- 中長期のロードマップと、今月の施策のつながりを説明できているか
- 同業種・同規模の成功事例を引き合いに出せる材料を持っているか
最後の項目は特に重要です。経営者は「うちの業界で他社はどうやっているのか」を強く気にします。ここで自社の勘や経験則だけでなく、他社の運用実態を示す事例データがあると、説得力が一段階上がります。
業界事例を武器にする——unyouの活用法
「競合がどうしているか分からない」「他業種の成功パターンを知りたい」という場面では、SNS運用事例データベース「unyou」(https://unyou.media)のような外部データベースを参照するのも有効な手段です。業種別・目的別に実際の運用事例を確認できるため、社内説得の場で「同業他社ではこういう投資対効果が出ている」という材料として引用しやすくなります。自社だけの実績データに限界を感じている場合は、こうした事例データベースを併用し、経営会議での提案資料に厚みを持たせる方法も検討してみてください。
まとめ
経営者がSNS担当に求めているのは、SNSの専門知識そのものではなく、「事業にどうつながっているかを翻訳して説明する力」です。フォロワー数やエンゲージメント率といったSNS指標を否定する必要はありませんが、それらを事業指標の手前に置き、投資対効果・リスク・中長期方針という経営者の関心軸に沿って再構成することで、すれ違いは大きく減らせます。今回紹介したレポートの型、言い回し、チェックリストを次回の報告から一つずつ取り入れてみてください。あわせて、他社の運用実態を参照できる事例データベースを活用すれば、社内説得の材料はさらに強化できます。
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