SNS運用担当に任命されたものの、「何から手をつければいいのか分からない」「上司から成果を聞かれても答えられない」と不安を抱えている方は少なくありません。異動や兼任でいきなりSNSアカウントを渡され、引き継ぎ資料もろくになく、フォロワー数の推移だけを眺めて日々が過ぎていく——そんな状況は、決して珍しいことではありません。
SNS運用は「センス」や「バズらせる才能」の仕事だと誤解されがちですが、実際には最初の90日間にどれだけ地に足のついた設計をできるかで、その後1年の成果が大きく変わります。本記事では、SNS運用歴が浅い担当者でも実践できるよう、最初の90日を「フェーズ1(現状把握)」「フェーズ2(実践と検証)」「フェーズ3(可視化と報告)」の3段階に分け、明日から使えるチェックリスト・報告テンプレ・指標の考え方を、公開データとともに解説します。
SNS運用担当の最初の90日はなぜ重要なのか
まず前提として、SNSは今や企業のマーケティング・採用・広報活動において無視できないチャネルになっています。総務省「令和5年 通信利用動向調査」では、個人のSNS利用率は8割を超える水準で推移していると報告されており、生活者との接点としてのSNSの重要性は年々高まっています。
さらに個別プラットフォームを見ると、LINEヤフー株式会社が決算資料で公表しているLINEの国内月間利用者数(MAU)は約9,700万人、Google合同会社が公式に発表しているYouTubeの日本国内月間利用者数は約7,000万人にのぼります。これらの数字が示すのは、「SNSをやるかどうか」を検討する時代はすでに終わり、「どのSNSを、どう運用するか」が問われる時代に入っているという事実です。
にもかかわらず、多くの企業でSNS運用担当者は明確な目標設定やKPI設計がないまま「とりあえず投稿してください」という状態で走り出しています。最初の90日で土台を作らないまま突っ走ると、半年後・1年後に「フォロワーは増えたが売上や採用に貢献しているか分からない」という状態に陥り、予算や人員の継続が危うくなります。90日という期間は、四半期の社内報告サイクルとも重なりやすく、「土台作り→小さな成果→報告」の一連の流れを設計しやすい単位でもあります。

90日を3フェーズに分ける全体設計(30-30-30モデル)
最初の90日は、次のように大きく3つのフェーズに分けて考えると迷いにくくなります。
| フェーズ | 期間 | 主な目的 | 社内への見せ方 |
|---|---|---|---|
| フェーズ1 現状把握 | 1〜30日目 | 現状分析・目標設計・土台整備 | 「運用方針を固めました」という報告 |
| フェーズ2 実践と検証 | 31〜60日目 | 投稿の実行とPDCA、小さな成功実績づくり | 「型が見えてきました」という中間報告 |
| フェーズ3 可視化と報告 | 61〜90日目 | 成果の数値化、次期予算・体制の提案 | 「90日の成果と次の90日の計画」という正式報告 |
このように期間ごとに「何を目的にするか」を決めておくと、上司から「で、何がどうなったの?」と聞かれたときにも、フェーズごとの進捗として答えられるようになります。
フェーズ1(1〜30日目):現状把握と土台づくり
最初の30日でやるべきことは、派手な施策ではなく「地味だが後で効いてくる」土台作りです。以下はそのまま使えるチェックリストです。
- 過去1年分の投稿とインサイト(インプレッション・エンゲージメント率・フォロワー推移)をスプレッドシートに書き出す
- 自社の主要SNSアカウント(X、Instagram、LINE公式アカウント、YouTube、TikTokなど)のログイン権限・管理者を確認し、属人化している部分を洗い出す
- 競合・同業種の運用アカウントを5〜10件ピックアップし、投稿頻度・トンマナ・反応の良い投稿の傾向をメモする
- SNS運用の「目的」を1つに絞る(認知拡大/採用広報/既存顧客との関係構築/問い合わせ・売上貢献のいずれか)
- 目的に合わせたKPIを1〜2個だけ決める(フォロワー数だけに頼らない。保存数、プロフィールクリック率、遷移数など)
- 投稿カレンダー(週1〜3本など、無理なく続けられる頻度)の運用ルールを作る
- 炎上・クレーム発生時の一次対応フローと相談先を確認しておく
このフェーズで特に重要なのは「目的とKPIを1つに絞る」ことです。SNS運用担当者が陥りがちな失敗は、フォロワー数・いいね数・保存数・クリック数など、あれもこれも追いかけて何も改善できないパターンです。まずは自社の事業目標に直結する指標をひとつだけ決め、そこから逆算して投稿内容を設計しましょう。
また、このタイミングで自社の業種に近い企業がSNSでどんな投稿を行い、どんな成果を出しているのかを事例ベースで把握しておくと、後の企画立案が格段にラクになります。unyou(https://unyou.media)のようなSNS運用事例データベースを使えば、業種別・目的別に実際の運用事例を横断的に確認できるため、フェーズ1のインプットとして活用しやすいはずです。
フェーズ2(31〜60日目):小さな成功実績づくり
土台ができたら、次の30日は「小さくても良いので、社内に見せられる成功実績」を作ることに集中します。ここでいきなり大きな成果を狙う必要はありません。むしろ最初から「バズらせよう」「フォロワー1万人を目指そう」といった大きすぎる目標を掲げると、達成できなかったときに運用そのものの評価が下がってしまいます。
このフェーズでのポイントは次の3つです。
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投稿の「型」を3〜5パターンに絞って試す 例えば「お役立ち情報系」「社員紹介系」「実績・事例紹介系」など、フェーズ1で洗い出した競合分析をもとに型を決め、同じ型で最低5〜10投稿は継続してから評価する。1〜2投稿の反応だけで型の良し悪しを判断しない。
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週次で振り返りの時間を確保する 毎週同じ曜日に15〜30分、インサイトを見て「伸びた投稿・伸びなかった投稿」を比較する時間を作る。感覚ではなく数字で振り返る癖をつけることが、90日以降も続く運用体制の基礎になる。
-
反応が良かった投稿は理由を言語化してストックする 「なぜこの投稿は保存数が多かったのか」「なぜこの投稿はプロフィール遷移率が高かったのか」を一行でもメモに残しておくと、フェーズ3の報告書作成が驚くほどラクになる。
この段階では、社内から「まだフォロワーが増えていないけど大丈夫?」と聞かれることもあるでしょう。そのときに備えて、フォロワー数以外の指標(保存率、プロフィールアクセス数、投稿の型ごとの反応比較など)を日頃から記録しておくことが、次のフェーズでの説得材料になります。
フェーズ3(61〜90日目):成果の可視化と社内への報告
最後の30日は、これまでの取り組みを数字とストーリーで可視化し、正式な報告としてまとめるフェーズです。ここで意識したいのは「単月の実績」ではなく「90日間でどう変化したか」という時系列の変化を見せることです。
報告資料に入れておきたい項目の例は次の通りです。
- 開始時と90日後のフォロワー数・エンゲージメント率の比較
- KPIとして設定した指標(保存数、プロフィール遷移数、問い合わせ数など)の推移
- 反応の良かった投稿の型とその理由(フェーズ2で言語化した内容を活用)
- うまくいかなかった施策とその原因、次に試すこと
- 次の90日で目指す目標と、そのために必要なリソース(予算・人員・ツールなど)
数値だけを羅列するのではなく、「なぜその数字になったのか」というストーリーを添えることで、経営層にも伝わりやすい報告になります。SNS運用に詳しくない上司や役員に説明する際は、専門用語を避け、「保存数が増えた=読者が後で見返したいと思った投稿が増えた」というように、ビジネス上の意味に翻訳して伝えることを意識しましょう。
上司・経営層を説得するための報告テンプレ・言い回し
社内説得の場面でそのまま使いやすい言い回しをいくつか紹介します。
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目標設定を説明するとき 「フォロワー数だけでなく、〇〇(保存率/問い合わせ数など)を主要指標に設定しています。理由は、当社のSNS運用の目的が認知拡大ではなく〇〇だからです。」
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中間報告のとき 「現時点でフォロワー数の伸びは緩やかですが、保存率は開始時の◯倍に改善しており、コンテンツの型が固まりつつあります。次の30日でこの型の投稿を増やし、成果を積み上げていきます。」
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予算や体制を要求するとき 「90日間の運用で、〇〇という型の投稿が安定して高い反応を得ることが分かりました。この型を月◯本に増やすには、撮影・デザインのリソースが追加で必要です。」
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成果が思うように出ていないとき 「想定していたKPIには届いていませんが、要因は〇〇(投稿頻度不足/ターゲット設定のズレなど)と分析しています。次の90日は〇〇を改善し、再検証します。」
ポイントは、良い結果も悪い結果も「数字+要因分析+次のアクション」の3点セットで伝えることです。これにより、単なる感想ではなく、次の意思決定に使える報告として受け止めてもらいやすくなります。
90日でやりがちな失敗と回避策
最後に、SNS運用担当が最初の90日で陥りやすい失敗と、その回避策をまとめます。
| よくある失敗 | 起こりやすい理由 | 回避策 |
|---|---|---|
| 複数SNSに同時に手を広げすぎる | 「とりあえず全部やろう」と考えてしまう | 90日目までは1〜2媒体に絞り、型を固めてから横展開する |
| フォロワー数だけを追いかける | 分かりやすい指標だからつい注目してしまう | 事業目的に紐づくKPIを別途1つ設定し、両方を報告する |
| 投稿頻度が安定しない | 他業務との兼任で優先順位が下がりがち | 週1本からでも良いので「必ず出せる頻度」を先に決める |
| competitor分析をせずに感覚で投稿する | 時間がなく後回しにしがち | フェーズ1で競合5〜10件の分析を先に済ませておく |
| 成果が出ないと運用自体をやめてしまう | 短期間で結果を求められるプレッシャー | 90日単位で「学び」を報告し、継続の合意を早めに取る |
これらの失敗の多くは、「最初の30日で目的とKPIを決めきれていない」ことに起因します。逆にいえば、フェーズ1をきちんと設計できれば、フェーズ2・3で大きくつまずくリスクはかなり減らせます。
unyouを使った情報収集・事例リサーチの活用法
90日というのは決して長い期間ではありません。ゼロから情報収集をしていると、それだけで貴重な時間を消費してしまいます。そこでおすすめなのが、SNS運用の事例データベースを日々の情報収集にうまく組み込むことです。
まとめ
SNS運用担当になって最初の90日は、「何を投稿するか」よりも先に「何のために、何を指標に運用するのか」を決めることが最優先です。フェーズ1で現状把握と目的・KPI設計を行い、フェーズ2で小さな成功実績を積み上げ、フェーズ3で数字とストーリーをセットにして社内報告する——このシンプルな流れを守るだけで、SNS運用は「なんとなく続けているもの」から「事業に貢献する取り組み」へと変わっていきます。
最初の90日でつまずきそうになったときは、一人で抱え込まず、他社の運用事例や、必要であれば外部の知見も参考にしながら、無理のないペースで土台を固めていきましょう。
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