「うちのブランドもキャラクターや世界観を大事にしたSNS運用をしたい」「投稿はしているのに、なぜか温度感のあるフォロワーが増えない」——企業やお店のSNS担当者からは、こうした悩みをよく耳にします。特に"世界観づくり"が重要な業種ほど、何を投稿すればブランドらしさが伝わるのか、どこまでキャラクター性を出していいのか、判断に迷いやすいものです。
そこで今回は、日本を代表するキャラクターIP企業・サンリオが運用する「サンリオ【公式】」のInstagramアカウントを題材に、支持されている理由と投稿の型を分解します。フォロワー数やエンゲージメント率といった裏付けの取れない数字は扱わず、公開されている運用方針や施策、公的統計をもとに、他業種のアカウントにも応用できる考え方を整理していきます。
サンリオ【公式】アカウントの基本情報とSNS運用体制
サンリオは公式サイトの「ソーシャルメディア」ページで、X(旧Twitter)、Facebook、LINE、Instagram、YouTube、TikTok、SHOWROOM、Blog、note、Blueskyなど複数のプラットフォームで公式アカウントを運用していることを明示しています(出典:サンリオ公式サイト「ソーシャルメディア」https://www.sanrio.co.jp/socialmedia/)。Instagramの「サンリオ【公式】」(@sanrio_official_jp)は、キャラクターグッズやイベント情報を届けるハブ的な位置づけのアカウントで、これとは別にハローキティやシナモロールなど個別キャラクターの公式アカウント、サンリオピューロランドなど施設単位のアカウントも並行して運用されています。
つまりサンリオのSNS戦略は「1つの公式アカウントに情報を集約する」のではなく、目的・キャラクター・施設ごとにアカウントを分け、それぞれの文脈に合った発信をするマルチアカウント構造になっている点が特徴です。企業アカウントというより「メディアブランドの集合体」として捉えると理解しやすくなります。

なぜサンリオのSNS運用は「支持される」のか?3つの構造的理由
見た目の投稿デザインだけを真似しても、サンリオのような反応は得づらいものです。まず押さえておきたいのは、運用の"土台"にある3つの構造的な強みです。
- IP(知的財産)そのものがコンテンツになる:キャラクターのビジュアル・セリフ・世界観設定が既に完成されているため、投稿の「素材」に困りにくい。
- キャラクター単位でファンダムが分かれている:全キャラクターを一括りにせず、キャラクターごとに熱量の高いファン層が存在し、それぞれに刺さる発信ができる。
- オンラインとオフラインの導線が明確:グッズ購入・イベント参加・専門店来店など、投稿の先にある行動がはっきりしている。
この3つは、キャラクターIPを持たない一般企業や店舗にもヒントになります。「自社らしい世界観の言語化」「顧客層のセグメント別発信」「投稿の先にある行動導線の設計」は、業種を問わず応用できる考え方です。
投稿の「型」を分解する|世界観・キャラクター・季節性
公開されている投稿内容や関連する運用事例から見えてくるのは、投稿が一定の「型」に沿って設計されていることです。代表的な型を整理すると、以下のようになります。
| 投稿の型 | 主な内容 | 狙い |
|---|---|---|
| キャラクター紹介・エピソード型 | キャラクターの性格や設定を掘り下げる投稿 | 新規フォロワーの理解促進・愛着形成 |
| 季節・イベント連動型 | 誕生日、季節の行事、記念日に合わせた投稿 | 話題性の創出、リアルタイム性の演出 |
| グッズ・新商品紹介型 | 新作グッズやコラボ商品の告知 | 購買・来店導線の設計 |
| キャンペーン・参加型 | 投票企画やハッシュタグ企画への参加を促す投稿 | エンゲージメント(保存・コメント・シェア)の獲得 |
| 世界観・ビジュアル訴求型 | ブランドトーンを保った写真・イラスト投稿 | ブランドイメージの一貫性維持 |
ポイントは、これらの型が「毎回バラバラに」出てくるのではなく、一定のトーン&マナー(色使い、フォント、キャラクターの表情の統一感)のもとで循環している点です。世界観の一貫性があるからこそ、キャンペーン投稿や告知投稿が浮かずに馴染み、フォロワーは「らしさ」を感じ続けられます。
エンゲージメントを生む仕組み|サンリオキャラクター大賞とUGC施策
サンリオのSNS施策の中でも特に参加型エンゲージメントの好例として挙げられるのが「サンリオキャラクター大賞」です。450を超えるサンリオキャラクターの中から人気投票で順位を決めるこの企画は、公式ニュースリリースでも毎年大きく告知されており(出典:株式会社サンリオ ニュースリリース「2026年サンリオキャラクター大賞」投票スタート、corporate.sanrio.co.jp/news/20260409.html、PR TIMES掲載)、投票期間中はSNS上でファンが自発的に「推しキャラ」を発信し合う流れが生まれます。
近年は投票の楽しみ方を伝える動画投稿や、懐かしいグッズを紹介するハッシュタグ企画など、コアファンだけでなく"すそ野を広げる"発信にも力を入れていることが報道でも紹介されています。これはSNS運用における重要な原則、「フォロワーに"見るだけ"ではなく"参加させる"仕掛けを作る」ことの好例といえます。
また、サンリオピューロランドのInstagram運用では「#ピューロジェニック」という独自ハッシュタグを設定し、来園者のUGC(ユーザー投稿コンテンツ)を生み出す施策を行っていることが、運用支援会社の実績紹介ページで公開されています(出典:株式会社トライバルメディアハウス実績紹介ページ、tribalmedia.co.jp/works/sanrio-2/)。公式が一方的に発信するのではなく、ユーザーが「投稿したくなる状況」をブランド側が設計している点は、店舗アカウントにもそのまま応用できる考え方です。
データで見る「なぜ今、企業もInstagramに力を入れるべきか」
キャラクターIPを持たない企業であっても、Instagram運用の重要性を裏付ける公的データ・調査は複数存在します。
- 総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、インターネット利用者全体における「SNS(無料通話機能を含む)の利用」の割合は81.9%と、数ある利用目的の中で最も高い割合を占めています。
- 同白書では、日本のソーシャルメディア利用者数は2023年の1億580万人から、2028年には1億1,360万人まで増加すると予測されています。
- Meta(旧Facebook Japan)は2019年6月、Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したことを公式に発表しており(出典:Metaニュースルーム「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」about.fb.com/ja/news/2019/06/japan_maaupdate-2/)、その後も国内ユーザー基盤は拡大を続けてきたと各種調査機関がまとめています。
- 株式会社ホットリンクの調査(PR TIMES掲載)では、Instagram利用者の約55%が「Instagramをきっかけに商品を購入・店舗に来店した経験がある」と回答しており、高額商品(買回品)の購入者に限ると、企業・ブランドの公式アカウントをフォローしている割合が、Instagramを参考にしなかった層より高いという結果も示されています(出典:株式会社ホットリンク プレスリリース、prtimes.jp/main/html/rd/p/000000345.000002235.html)。
これらのデータが示すのは、「Instagramは"見て終わり"のメディアではなく、購買や来店に直結する行動導線を持つメディアになっている」という事実です。サンリオのようなキャラクター訴求だけでなく、飲食・小売・BtoBなど幅広い業種で、公式アカウントの存在自体がブランド接点として機能する時代になっています。
中小企業・店舗アカウントが真似できる5つのポイント
サンリオの運用をそのままコピーすることはできませんが、構造として応用できるポイントは多くあります。
- 「自社らしさ」を言葉にしてから投稿設計に落とす:色・トーン・キャラクター(人でもマスコットでも)の一貫性を先に決める。
- 投稿を「型」でパターン化する:紹介型・季節連動型・商品告知型・参加型など、あらかじめカテゴリーを用意しておくと運用が安定する。
- フォロワーが「参加できる」企画を定期的に用意する:投票、アンケート、ハッシュタグ企画など、コメントや保存を誘発する仕掛けを作る。
- 投稿の先にある行動を明確にする:来店してほしいのか、購入してほしいのか、公式サイトを見てほしいのか、投稿ごとに目的を持たせる。
- プラットフォームごとに役割を分ける:全SNSで同じ投稿をするのではなく、Instagramはビジュアル訴求、Xは速報性、LINEは個別誘導など、媒体特性に応じて使い分ける。
明日から試せる実践チェックリスト
すぐに着手できるよう、具体的なチェック項目に落とし込みました。自社アカウントの棚卸しに使ってみてください。
- 直近10投稿を並べて見たとき、色・フォント・雰囲気に統一感があるか確認する
- 「紹介」「季節」「商品告知」「参加型」の投稿比率を数えて、告知投稿に偏りすぎていないか見直す
- 直近1ヶ月でフォロワーが参加できる企画(アンケート・投票・ハッシュタグ)を1つ以上実施したか確認する
- プロフィール文と固定投稿(ハイライト)が「初めて訪れた人」にブランドの世界観を伝えられているか見直す
- 投稿ごとに「見た人に何をしてほしいか」を一言で説明できるか自問する
- Instagram・X・LINEなど、媒体ごとに投稿内容を意図的に変えているか確認する
まとめ
サンリオ【公式】のInstagram運用は、キャラクターIPという強力な資産に加え、投稿の型の一貫性、参加型企画によるエンゲージメント設計、プラットフォームごとの役割分担といった、汎用性の高い運用構造の上に成り立っています。フォロワー数のような表面的な数字を追うのではなく、「世界観の一貫性」「参加できる仕掛け」「行動導線の明確化」という3つの視点で自社アカウントを見直すことが、規模や業種を問わず取り組める第一歩です。
他業種・他業態の企業やお店が実際にどのような投稿設計・施策でSNSを伸ばしているのか、より具体的な事例を知りたい方は、unyouのSNS運用事例データベース(/cases)で、エンタメ・小売・飲食など様々な業種の実例を確認できます。自社に近い業種・規模の事例から、明日から使えるヒントを探してみてください。
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