「うちのアカウントは伸びない」と感じたら、まず大手の運用を分解してみる
「投稿はしているのに、いいねも保存も増えない」「本部からは“もっとSNSに力を入れろ”と言われるが、何を発信すればいいのか分からない」——飲食店や食品ブランドのSNS担当者から、こうした悩みを聞く機会は少なくありません。とくに競合が多いハンバーガー・ファストフード業界では、写真を撮って投稿するだけでは埋もれてしまい、フォロワーとの関係づくりまで手が回らないという声もよく聞きます。
一方で、モスバーガーのように長年愛されてきたブランドは、SNS上でも独自の世界観と発信の型を持っています。フォロワー数やエンゲージメント率といった非公開の数値を推測で語ることはできませんが、公開されている投稿内容やブランド戦略、企業の発信姿勢を丁寧に分解すれば、規模の大小にかかわらず自社アカウントに応用できるヒントは数多く見つかります。本記事では、モスバーガーのSNS発信を「投稿の型」「世界観のつくり方」「エンゲージメント施策」という3つの切り口で分析し、明日から実践できる具体策に落とし込みます。

モスバーガーというブランドの背景とSNS発信の土台
モスバーガーの企業理念には、創業者・桜田慧氏が掲げた「感謝される仕事をしよう」という言葉が根底にあります。この理念は現在も継承されており、毎年3月12日は「モスの日」として、創業の原点に立ち返り、お客様や地域への感謝を伝える日に定められています。ブランド名の「MOS」自体が「Mountain(山)」「Ocean(海)」「Sun(太陽)」の頭文字に由来しており、自然や地域とのつながりを大切にするという世界観が、社名の成り立ちからすでに一貫しています。
この「地域密着」「感謝」というブランドの核は、SNSの発信内容にもそのまま反映されています。全国一律の画一的なキャンペーン告知だけでなく、地域や季節と結びついた発信を行うことで、フォロワーが「自分ごと」として受け取りやすい設計になっている点が特徴です。単なる商品紹介アカウントではなく、ブランドの理念を体現する場としてSNSを位置づけていることが、他の企業アカウントとの違いを生んでいます。
投稿の型を分解する——「商品訴求」と「ブランドストーリー」の使い分け
企業のInstagram運用でよくある失敗は、新商品告知やキャンペーン情報といった「売り込み投稿」ばかりが続き、フォロワーが離脱してしまうケースです。モスバーガーのブランド全体の発信を見ると、大きく分けて次のような投稿の型が使い分けられていることが分かります。
- 新商品・期間限定メニューの訴求:季節限定バーガーや地域限定商品など、「今しか食べられない」という限定性を打ち出す投稿
- ブランドストーリー・企業活動の発信:社会貢献活動「モスの森」や「モスの日」など、企業理念や地域貢献の取り組みを伝える投稿
- 公式note・オウンドメディアとの連携:Instagramだけでなく公式noteも開始し、商品開発の裏側や企業の想いをより深く伝えるストック型コンテンツと連動させている
- 50周年などの節目施策:ブランドの歴史や歩みを振り返る特設コンテンツを用意し、長年のファンとの関係を再確認する機会をつくる
重要なのは、「売る投稿」と「共感してもらう投稿」を意図的に配分している点です。フィードのすべてが商品写真だと広告色が強くなりすぎますが、理念や社会活動の発信を挟むことで、ブランドへの好感度を維持しながら商品訴求への抵抗感を下げる効果が期待できます。
世界観のつくり方——ビジュアルとトーンの一貫性
モスバーガーのブランドカラーである深緑と、野菜のみずみずしさ・手づくり感を打ち出す商品写真の撮り方には一貫性があります。「注文を受けてから調理する」という同社の看板の姿勢とも重なり、丁寧に作られた温かみのある食品写真が多いのは、ブランドの根幹にある価値観をビジュアルで体現しているといえます。
世界観づくりで参考にしたいのは、次の3点です。
- カラーとトーンの統一:ブランドカラーを軸に、明るすぎず落ち着いた色味で統一することで、フィード全体に「ブランドらしさ」を持たせる
- 商品だけでなく“つくる過程”も見せる:出来立て感や手づくり感を訴求することで、価格競争ではなく体験価値で差別化する
- 理念を言葉で語る投稿を混ぜる:地域貢献や環境活動など、商品と直接関係のない発信もブランドの世界観の一部として組み込む
これは大企業に限った話ではありません。個人店や中小チェーンであっても、「なぜこの店をやっているのか」「素材へのこだわり」といったストーリーを言語化し、写真のトーンと合わせて発信することで、同様の効果を狙うことができます。
エンゲージメントを生む仕掛け——ローカルアカウントとリールの活用
モスバーガーのSNS運用でとくに特徴的なのは、本部の公式アカウントに加えて、各店舗が独自にInstagramアカウントを運用している点です。実際に検索すると、特定の店舗名を冠した公式アカウントが複数存在しており、地域のお客様に向けて、その店舗ならではの情報(新人スタッフの紹介や、地域限定の取り組みなど)を発信していることが確認できます。
この「本部アカウント×店舗アカウント」の二層構造には、次のようなメリットがあります。
| 発信主体 | 主な役割 | フォロワーとの関係性 |
|---|---|---|
| 本部公式アカウント | 全社共通の新商品・キャンペーン・ブランドストーリーの発信 | 広く浅く、ブランド全体のファンにリーチ |
| 店舗公式アカウント | 地域のお客様向けの情報、店舗の日常、スタッフの様子など | 狭く深く、来店頻度の高い常連客との関係構築 |
| 公式note・オウンドメディア | 商品開発の背景や理念など、ストック型で深い情報 | 熱量の高いファンへの掘り下げた情報提供 |
さらに、動画広告の活用にも早くから力を入れており、AAinc社との協業事例では、Facebook・Instagram・X(旧Twitter)・LINEの4媒体でスマートフォン視聴に特化した動画広告を配信し、動画再生回数が457万回に達し、オンライン販売件数が1.3倍に増加したことが公表されています(AAinc「モスバーガー導入事例」)。冒頭の1〜2秒で視線を止める編集の工夫を重ねていた点も特徴で、「フィードをスクロールする手を止めさせる」という視覚的な設計思想は、現在のリール動画の運用にも通じる考え方です。
数字で見る、いま飲食業がInstagramに注力すべき理由
モスバーガー個別の数値ではなく、業界全体の統計を確認すると、飲食店がInstagramに力を入れる合理性がより明確になります。
総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、2024年時点でのInstagram利用率は全年代で54.8%に達しており、X(旧Twitter)とあわせて全体の半数程度が利用するほか、50代でも4割以上が利用するなど、幅広い年齢層に利用が拡大していることが示されています(総務省「令和7年版 情報通信白書」)。
また、ファストマーケティングが実施した飲食店の選び方に関する調査(PR TIMES掲載)では、SNSや動画サイトで気になる飲食店に出会うと回答した人が約8割にのぼり、そのうち約7割がInstagramに、約6割がGoogleマップに気になる飲食店の情報を保存していると回答しています(ファストマーケティング「飲食店の選び方 2025年最新調査結果」)。
加えて、StoreProが実施したZ世代の飲食店選びに関する調査では、飲食店選びの参考にするSNSとして最も多く挙げられたのがInstagramで67.5%、次いでYouTube48.1%、TikTok46.1%という結果が示されています(マナミナ掲載「Z世代の飲食店選びにおけるSNSの影響力と活用実態」調査)。
これらのデータから分かるのは、「Instagramに情報を載せておくこと」自体が、来店検討の入口として機能しているという事実です。フォロワー数の多寡以前に、検索・保存の受け皿としてアカウントを整備しておくことの重要性が裏付けられています。
明日から真似できる実践チェックリスト
モスバーガーの発信構造を参考に、自社・自店舗のアカウントで今日から見直せるポイントをチェックリストにまとめました。
- 直近9〜12投稿を見返し、「商品訴求」と「ストーリー・理念系」の比率が極端に偏っていないか確認する
- ブランドカラーや写真のトーン(明るさ・彩度)を統一するルールを1枚のガイドにまとめる
- 「なぜこの店・この商品をやっているのか」を100〜200字で言語化し、プロフィール文やハイライトに反映する
- 複数店舗を運営している場合、本部アカウントと店舗アカウントで発信内容の役割分担ができているか整理する
- リールの冒頭1〜2秒で「何の投稿か」が伝わる構成になっているか、既存の動画を見直す
- 保存されやすいフォーマット(メニュー一覧、期間限定情報のまとめなど)を月1回以上投稿しているか確認する
- Googleマップの店舗情報とInstagramのプロフィール・ハイライトの内容に矛盾がないか確認する
- 季節のイベントや記念日など、ブランドの背景と結びつけられる発信ネタをカレンダー化しておく
このチェックリストは高価なツールや専任チームがなくても着手できるものばかりです。まずは直近の投稿を棚卸しし、偏りがある項目から一つずつ手を入れていくことをおすすめします。
まとめ
モスバーガーのSNS発信を分解すると、「理念に基づいた世界観の一貫性」「本部と店舗アカウントの役割分担」「視聴を止めさせる動画編集の工夫」という3つの軸が浮かび上がります。フォロワー数やエンゲージメント率といった数字を真似ることはできなくても、これらの発信構造や設計思想は、業種・規模を問わず自社のアカウントに応用可能です。まずは自社の投稿を棚卸しし、商品訴求とブランドストーリーのバランス、ビジュアルの一貫性から見直してみてください。
他の飲食・食品ブランドのSNS運用事例もあわせて確認したい方は、unyouの事例データベース(https://unyou.media/cases)で、業種別の具体的な取り組みを検索できます。自社に近い規模感・業態の事例を探し、投稿の型や世界観のつくり方を比較検討する際の参考にしてください。
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