宮内庁(Imperial Household Agency)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/3
「うちの会社もSNSを頑張っているのに、なぜかフォロワーが増えない」「投稿しても『いいね』が数件しかつかない」——SNS担当者からよく聞く悩みです。企業アカウントや店舗アカウントは、フォロワーを増やそうと必死に流行りの投稿フォーマットを真似しても、なかなか思うように伸びないことが少なくありません。
そんな中、2024年4月に開設された宮内庁公式Instagram(@kunaicho_jp)は、一般的な「バズ狙い」の手法を使わずに大きな注目を集め、開設からわずかな期間で多くのフォロワーを獲得しました。堅い組織というイメージの強い行政機関が、なぜここまで支持されたのか。本記事では公開されている報道情報をもとに、宮内庁Instagramの投稿設計・世界観づくり・運用の型を分解し、企業や店舗のSNS担当者が明日から応用できるポイントに落とし込んでいきます。
宮内庁公式Instagramとは何か 開設の経緯と目的
宮内庁は2024年4月1日、公式Instagramアカウント「宮内庁/Imperial Household Agency」を開設しました。AFP BB Newsの報道によれば、これは宮内庁がSNSを通じて情報発信を行う初めての試みでした。開設の目的として宮内庁が掲げているのは、若い世代を含む幅広い層に皇室の活動を伝えることです。従来、皇室に関する情報は宮内庁のウェブサイトや新聞・テレビなど既存メディア経由での発信が中心でしたが、スマートフォンで日常的に情報に触れる若年層にはリーチしづらいという課題がありました。Instagramという「日常的に開かれているプラットフォーム」に公式チャネルを持つことで、天皇皇后両陛下の公務の様子や皇居内の様子など、これまで一般には届きにくかった情報を直接届けられるようにした点が、この取り組みの本質的な狙いだと言えます。
これは多くの企業・店舗アカウントにも共通するテーマです。自社サイトや広報誌だけでは届かない層に、SNSという「生活動線の中にあるメディア」を使ってリーチする——宮内庁の取り組みは、まさにそのお手本のような事例になっています。
なぜ伸びたのか 開設直後の反応から見える強さの正体
日本経済新聞の報道によれば、宮内庁Instagramは開設から約1か月でフォロワーが120万人に達し、「いいね」が10万件を超える投稿も目立つようになったとされています。またYahoo!ニュース(TBS NEWS DIG配信)の報道では、開設からわずか2日間で50万フォロワーを突破し、21日目には100万人を超え、開設からおよそ1年3か月で200万人を突破したと伝えられています。
この伸び方から読み取れる重要なポイントは、宮内庁アカウントが「バズを狙うテクニック」ではなく「唯一無二の情報源であること」を武器にしている点です。一般的なアカウント運用では、トレンドの音源やフォーマットを使ったリール投稿、フォロワー参加型の企画などでエンゲージメントを稼ぐ手法がよく使われます。しかし宮内庁のアカウントにその要素はほとんどありません。それでも急速にフォロワーが増えたのは、「ここでしか見られない一次情報」という圧倒的な希少性があったからです。
企業アカウントに置き換えると、これは「自社にしか出せない情報・映像・現場」を核に据えることの重要性を示しています。競合他社でも作れるような一般的なノウハウ投稿ではなく、自社の現場・職人・裏側だからこそ見せられるコンテンツこそが、フォロー動機になるということです。
投稿の型を分解する 皇室ならではのコンテンツ設計
宮内庁Instagramの投稿は、大きく分けて次のような型で構成されています。
- 天皇皇后両陛下の公務・行事の様子を伝える報道的な投稿
- 静養中の様子や皇居内の自然など、ふだん見られない「素顔」に近い投稿
- 皇居の四季や建造物など、場所そのものの魅力を伝える投稿
日本経済新聞の報道では、こうした投稿の中でも私的な動静を伝えるコンテンツに「いいね」が多く集まる傾向があると指摘されています。また2025年8月には投稿対象が拡大され、時事通信の報道によると、秋篠宮ご一家、常陸宮家、三笠宮家、高円宮家についても、それぞれの活動をおおむね月1回程度のペースで投稿する方針が示されました。
ここから学べるのは、「公式・オフィシャルな発信」と「素顔・日常が垣間見える発信」を意図的に使い分けている点です。企業アカウントで言えば、プレスリリース的な告知投稿だけでなく、スタッフの働く様子や店舗の何気ない一コマを織り交ぜることで、フォロワーとの心理的な距離を縮められます。「かしこまった発信」と「素顔が見える発信」の比率を設計すること自体が、コンテンツカレンダーを組む上での重要な視点になります。
世界観のつくり方 「格式」と「親近感」の両立
宮内庁Instagramの世界観づくりで特筆すべきは、皇室という「格式」を損なわずに、Instagramというカジュアルなプラットフォームに馴染ませている点です。写真のクオリティやキャプションのトーンは丁寧で品格を保ちながらも、皇居の自然や四季折々の風景など、誰もが親しみを持てるビジュアルを積極的に採用しています。
この「格式と親近感の両立」は、老舗ブランドや専門性の高い業種(士業、医療、伝統工芸など)のアカウントが特に参考にすべきポイントです。カジュアルさを出そうとして安易に砕けたトーンに寄せすぎると、ブランドの信頼性を毀損しかねません。逆に格式を重視しすぎると、フォロワーとの距離が縮まらず反応が伸びません。宮内庁の事例は、「発信するトーン・言葉遣いは丁寧なまま」「見せる被写体や瞬間を親しみやすいものにする」という切り分けによって、両立を実現していると分析できます。
更新頻度・運用ルールから学ぶ 持続可能な体制づくり
時事通信の報道によれば、宮内庁は秋篠宮家をはじめとする各宮家の投稿について「原則月1回程度」というペースを明示しています。これは、無理に毎日投稿を続けるのではなく、確度の高い情報を一定のペースで発信し続けることを優先する運用方針だと読み取れます。
企業・店舗アカウントの運用でも、「毎日投稿しなければならない」という思い込みから疲弊し、質の低い投稿を量産して逆にアカウントの世界観を損なうケースは少なくありません。宮内庁の事例が示すのは、頻度よりも「一投稿あたりの情報価値・完成度」を優先する選択肢があるということです。特にリソースが限られる中小企業や店舗にとって、この考え方は運用の持続可能性を高めるヒントになります。
以下は、宮内庁Instagramの運用要素と、企業・店舗アカウントに応用する際の考え方を整理した表です。
| 宮内庁Instagramの運用要素 | 具体的な特徴 | 企業・店舗アカウントへの応用 |
|---|---|---|
| コンテンツの核 | 他では見られない一次情報(公務・素顔・皇居内の様子) | 自社・自店にしかない現場・人・裏側を核にする |
| トーン設計 | 丁寧な言葉遣いを保ちつつ被写体は親しみやすく | ブランドの品格は保ちながら見せ方を柔らかくする |
| 投稿範囲の拡大 | 天皇皇后両陛下中心から各宮家へ段階的に拡大 | 経営者・代表だけでなくスタッフや現場にも発信対象を広げる |
| 更新頻度 | 宮家の投稿は原則月1回程度 | 毎日更新にこだわらず、質を優先したペース設計にする |
| プラットフォーム選定 | 幅広い年代にリーチできるInstagramを選択 | ターゲット層の利用実態に合わせてSNSを選ぶ |
エンゲージメントを高める施策 コメント・保存・シェアを生む工夫
宮内庁Instagramのコメント欄では、投稿内容に対する感想や応援コメントが多く寄せられる傾向が報道でも触れられています。これは、投稿が単なる「お知らせ」ではなく、見た人が思わず感情を書き込みたくなる「余白」を持っていることの表れです。四季の風景や自然の写真は、見る人それぞれの解釈や感想を誘発しやすく、コメントやシェアが発生しやすいコンテンツ形式だと言えます。
総務省が公表した「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、全年代でのInstagram利用率は52.6%に達しており、LINE(91.1%)に次いで主要なコミュニケーション系SNSとして定着しています。一方でX(旧Twitter)は43.3%、Facebookは26.8%となっており、写真・動画を軸にしたビジュアルコミュニケーションの受け皿としてInstagramの存在感は大きいことが分かります。この調査結果は、幅広い年代にリーチしたい行政機関や企業にとって、Instagramが依然として有力な選択肢であることを裏付けています。
企業アカウントがエンゲージメントを高めるために応用できるポイントは以下の通りです。
- 「正解」を提示する投稿だけでなく、見る人が自分なりの感想を持てる余白のある写真・動画を混ぜる
- キャプションで一方的に説明しきらず、問いかけの形でコメントを誘発する
- 保存されやすい情報(ノウハウ・季節の一コマ・記録性の高いカット)を定期的に織り込む
明日から真似できる実践チェックリスト
宮内庁Instagramの分析から導ける、明日から取り組める実践チェックリストです。
- 自社・自店にしかない「一次情報」をリストアップする(現場、職人、開発秘話、経営者の素顔など)
- 投稿を「公式告知」と「素顔・日常」の2種類に分類し、投稿カレンダー上での比率を決める
- ブランドの言葉遣い・トーンのガイドラインを1枚にまとめ、担当者が変わっても崩れないようにする
- 毎日更新にこだわらず、1投稿あたりのクオリティを担保できる頻度を設定する
- 発信対象を経営者・代表者だけでなく、スタッフや現場にも段階的に広げる
- コメントを誘発する問いかけキャプションを月に数回試す
- ターゲット層の年代・利用実態を踏まえて、Instagram以外のSNSとの使い分けも検討する
いきなり全てを実践する必要はありません。まずは1と2から着手し、自社ならではの投稿の「核」と「型」を定めることが、宮内庁アカウントの強さに近づく第一歩になります。
まとめ
宮内庁公式Instagramが多くの支持を集めている背景には、派手なバズ施策ではなく、「他では見られない一次情報」を核に据え、格式と親近感を両立させたトーン設計、無理のない更新頻度という、地に足のついた運用の積み重ねがあります。開設からの急速なフォロワー増加や、投稿対象の段階的な拡大といった動きは、いずれも一貫した方針のもとで行われてきたものです。
企業や店舗のSNS担当者にとって重要なのは、フォロワー数やバズった投稿の表面的な真似ではなく、「自社にしかない情報は何か」「どんなトーンで、どのくらいの頻度で発信するのが持続可能か」を自分たちの言葉で言語化することです。今回紹介したチェックリストを手がかりに、自社アカウントの投稿設計を見直してみてください。
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