フジロックフェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/23
「音楽フェスの世界観」をSNSでどう伝えるか、悩んでいませんか
自社のSNS担当者として、「うちのブランドにも“世界観”があるはずなのに、投稿にするとただの告知ばかりになってしまう」と感じたことはないでしょうか。新商品情報やキャンペーン告知は出せても、フォロワーが思わず保存したくなる、あるいはストーリーズでシェアしたくなるような“熱量”をどう演出すればいいのか。特にイベントや店舗、季節性のあるビジネスでは、「開催前・開催中・開催後」で投稿のトーンや目的が変わるため、一貫した運用設計に悩む担当者は少なくありません。
そこで今回は、日本を代表する野外音楽フェスティバル「フジロックフェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL)」の公式Instagram運用を題材に、なぜこのアカウントが長年にわたり音楽ファン・フェスファンから支持され続けているのかを、公開されている投稿内容とSNS利用動向のデータをもとに分解していきます。フォロワー数やエンゲージメント率といった確証のない数値は扱いませんが、「投稿の型」「世界観のつくり方」「エンゲージメント施策」という再現可能な要素に注目すれば、音楽フェスとは全く異なる業種のアカウントでも応用できるヒントが数多く見つかります。

フジロックフェスティバルとはどんなアカウントか
フジロックフェスティバルは1997年に始まった、新潟県湯沢町・苗場スキー場を舞台に毎年夏に開催される日本最大級の野外ロックフェスティバルです。国内外の著名アーティストが出演する音楽イベントであると同時に、豊かな自然環境の中で過ごす「体験」そのものをブランドの核に据えている点が特徴です。Instagram公式アカウントも、単なるチケット販売や出演者告知の場ではなく、フェスという非日常体験の"空気感"を伝えるメディアとして機能しています。
企業・店舗アカウントの運用において重要なのは、「何を売っているか」ではなく「どんな体験・価値を提供しているか」を軸に投稿を設計することです。フジロックのアカウントは、音楽という商材を扱いながらも、自然・食・交流・非日常といった複合的な体験価値を発信しており、これが業種を問わず参考になる視点になります。
なぜフジロックのInstagramは支持されているのか
支持の背景には、大きく3つの要素があると考えられます。
1つ目は「世界観の一貫性」です。 投稿ごとにテイストがぶれず、緑豊かな苗場の風景、雨や泥にまみれながらも楽しむ観客の姿、多様なステージ演出など、フェスならではの空気感が一貫して伝わる構成になっています。
2つ目は「フェーズに応じた投稿設計」です。 出演アーティスト発表期、チケット販売期、開催直前、開催中、そして開催後のアーカイブ期という、フェスティバルのライフサイクルに合わせて投稿の目的とトーンを切り替えている点が特徴的です。
3つ目は「コミュニティとの共創」です。 フジロックには長年、非公式ファンサイト「fujirockers.org」をはじめとする熱心なファンコミュニティが存在し、公式アカウントもこうしたファンの熱量を取り込みながら発信を続けています。単独のブランド発信だけでなく、参加者自身が語り手になれる余地を残していることが、継続的な関心を生む土台になっています。
投稿の型をフェーズ別に分解する
音楽フェスに限らず、季節性・開催期間のあるビジネス(店舗の期間限定イベント、展示会、スポーツ大会など)では、以下のようなフェーズ別設計が有効です。フジロックの発信パターンを参考に整理すると、次のような役割分担が見えてきます。
| フェーズ | 主な目的 | 投稿タイプの例 |
|---|---|---|
| 準備期(オフシーズン) | 過去の記憶を呼び起こし関心を維持 | アーカイブ写真、スタッフの裏話、自然・会場の四季 |
| 発表期 | 期待値を高め拡散を促す | 出演者発表、ラインナップ画像、リール動画 |
| 直前期 | 実用情報と高揚感の両立 | 持ち物・アクセス案内、カウントダウン投稿 |
| 開催中 | 臨場感の共有とUGC誘発 | リアルタイム投稿、ストーリーズでの会場中継、参加者の投稿紹介 |
| 開催後 | 余韻の維持と来年への接続 | ダイジェスト、感謝メッセージ、写真アーカイブ |
この表からわかる重要な点は、投稿内容が「告知」だけに偏っていないことです。準備期や開催後という"売る情報がない時期"にも、世界観を思い出させる投稿を継続することで、フォロワーとの関係が途切れないよう設計されています。多くの企業アカウントが陥りがちなのは、キャンペーンや商品発売のタイミングだけ発信が集中し、それ以外の期間は更新が止まってしまうことです。フジロックのように「売らない時期の投稿」を意図的に組み込むことが、継続的なフォロー動機につながります。
「世界観」のつくり方:ビジュアルとトーンの統一
フジロックの発信から読み取れる世界観づくりのポイントは、次のように整理できます。
- 自然・環境という非商業的な要素を前面に出す:会場である苗場の緑や空といった風景写真を積極的に用い、フェスが単なる音楽イベントではなく「自然の中で過ごす体験」であることを視覚的に伝えている
- 参加者側の視点を混ぜる:出演者やステージだけでなく、観客が楽しむ様子、雨具や長靴といった「フジロックらしい」ディテールを扱い、参加者が自分ごととして共感できる余地を残している
- 過度な宣伝トーンを避ける:キャッチコピーや煽り文句に頼らず、写真とシンプルなテキストで情感を伝えるスタイルを基調としている
これは「ブランドの人格」を投稿全体で統一するという、SNS運用の基本原則そのものです。業種が異なっても、「自社が売っている商品」ではなく「その商品を通じて得られる体験・時間」を主語にして投稿を組み立てることで、同様の世界観設計が可能になります。飲食店であれば料理の写真だけでなく、店内の空気感や常連客との交流を、美容室であれば施術後の髪型だけでなく、来店から退店までの時間の心地よさを伝える、といった応用が考えられます。
エンゲージメントを生む施策:UGCとコミュニティ活用
フジロックの運用で注目したいのは、公式発信だけに閉じていない点です。長年運営されている非公式ファンサイト「fujirockers.org」の存在が象徴するように、フェス自体が「参加者が語りたくなる」設計になっており、公式アカウントもファンの熱量や投稿文化と共存する形で発信を続けています。
これは、SNS運用における「UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用」という観点で参考になります。具体的には、次のような施策が業種を問わず応用可能です。
- 公式ハッシュタグを設定し、参加者・利用者が投稿しやすい共通言語をつくる
- ユーザーの投稿を積極的にストーリーズやフィードで紹介し、「発信すると取り上げてもらえる」という期待感を育てる
- イベントやサービスの「らしさ」を象徴するディテール(フジロックにおける長靴文化のような)を意図的に打ち出し、参加者が真似したくなる型を提示する
- 公式アカウントのトーンを煽りすぎず、ユーザーの投稿と地続きに見えるよう調整する
UGCは広告費をかけずにリーチを広げられる一方、ブランド側が「投稿したくなる仕掛け」を用意しなければ自然発生しません。フジロックの場合、その仕掛けが長年の会場文化・体験デザインそのものに組み込まれている点が強みだと言えます。
データで見る「なぜ今Instagramなのか」
自社の運用方針を検討するうえで、国内のSNS利用動向を把握しておくことも重要です。以下は公的機関・プラットフォーム提供元が公表している代表的なデータです。
- 総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、日本国内のソーシャルメディア利用者数は2023年時点で1億580万人と推計されており、2028年には1億1,360万人まで増加すると予測されています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。
- 総務省情報通信政策研究所が公表した「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2025年6月公表)では、全年代におけるSNS等の利用率としてLINEが91.1%、Instagramが52.6%、X(旧Twitter)が43.3%、YouTubeが80.8%、TikTokが33.2%と報告されています(出典:総務省「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」)。
- Meta社は2019年6月、Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと公式発表しました。その後、2023年11月開催の「Meta Marketing Summit Japan 2023」において、2019年の公表数値から4年間で利用者数が倍以上に広がったと言及しています(出典:Meta公式発表、Meta Marketing Summit Japan 2023)。
これらのデータからは、Instagramが依然として国内で広範な利用者層を持つビジュアル中心のプラットフォームであり、なおかつ視覚的な体験訴求と親和性の高いメディアであることがわかります。フェスや店舗、イベントのように「その場の空気感」を伝える必要があるビジネスにとって、写真・動画中心のInstagramは有効な発信チャネルであり続けていると言えるでしょう。
明日から試せる実践チェックリスト
フジロックの運用から得られる示唆を、自社アカウントですぐに検証できるチェック項目に落とし込みました。
- 直近1か月の投稿を並べて見返し、「告知」と「世界観・体験を伝える投稿」の比率を確認する
- 繁忙期・イベント開催期以外にも投稿する「売らないコンテンツ」の企画を最低月1本は用意する
- 自社サービスの「体験の主語」を商品名ではなく利用者の時間・気持ちに置き換えて投稿文を書き直してみる
- 公式ハッシュタグが存在するか確認し、なければ短く覚えやすいものを1つ設定する
- 過去に顧客・参加者が投稿してくれた写真や感想を、許可を得たうえでストーリーズ等で紹介する仕組みを作る
- 投稿の文体・トーンが「煽り」に偏っていないか、第三者にチェックしてもらう
- アーカイブ(過去の写真・実績)を再活用する投稿枠を運用カレンダーに組み込む
- 開催前・開催中・開催後(または繁忙期前・中・後)でそれぞれ投稿目的を書き出し、フェーズ表を作成する
これらは特別な予算やツールを必要とせず、既存の投稿ストックや運用カレンダーの見直しだけで着手できる項目です。まずは1〜2項目からで構わないので、次回の投稿企画会議で試してみることをおすすめします。
注意したい落とし穴
フジロック的な世界観づくりを参考にする際、陥りやすい失敗もあります。1つは、世界観を重視するあまり実用情報(アクセス、購入方法、営業時間など)が不足し、フォロワーが行動に移せなくなることです。フジロックの投稿も、雰囲気重視の投稿と、アクセス・持ち物といった実用投稿がバランスよく組み合わされている点を見落とさないようにしましょう。
もう1つは、UGCを促す仕組みを作らないまま「ユーザーが自然に投稿してくれるはず」と期待してしまうことです。ハッシュタグの周知、投稿紹介の実績づくりなど、地道な積み重ねがあって初めてコミュニティ発信は活性化します。単発の施策で終わらせず、継続的な運用の中に組み込む視点が欠かせません。
まとめ
フジロックフェスティバルのInstagram運用から見えてくるのは、特別な裏技ではなく、「体験価値を軸にした世界観の一貫性」「開催フェーズに応じた投稿設計」「コミュニティとの共創によるUGC活用」という、地に足のついた運用の積み重ねです。音楽フェスという特殊なコンテンツに見えても、その骨格は業種を問わず応用可能なものばかりです。自社の商品・サービスが提供している「体験」は何か、繁忙期以外にどんな投稿ができるか、参加者・顧客が発信したくなる仕組みは用意できているか。今回紹介したチェックリストを手がかりに、自社アカウントの投稿を棚卸しすることから始めてみてください。
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引用した公開データは、総務省「令和6年版 情報通信白書」、総務省「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」、Meta公式発表(2019年6月・Meta Marketing Summit Japan 2023)の3点です。フォロワー数やエンゲージメント率など確証の持てない数値は記載していません。ファイルとして保存する場合はお知らせください。
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