横浜市観光情報(Find Your YOKOHAMA)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/26
「自治体アカウントなのに、なんであんなに世界観が統一されているんだろう」「うちも観光や地域の魅力を発信しているのに、投稿が単発で終わってしまう」——SNS担当者から、そんな声をよく耳にします。特に自治体や公共性の高いアカウントの場合、「行政らしさ」と「SNSらしい世界観」の両立が難しく、更新は続けているのに反応が薄いまま数字だけが積み上がっていく、という悩みは珍しくありません。
横浜市の公式Instagram「Find Your YOKOHAMA(@findyouryokohama_japan)」は、そうした課題を乗り越え、国内の自治体アカウントの中でも継続的に注目されてきたアカウントです。本記事では、公開情報とWeb上の一次情報をもとに、このアカウントがなぜ多くのフォロワーや評価を獲得できているのかを構造的に分解し、企業・店舗・自治体など他の運用担当者が明日から応用できるポイントに落とし込んでいきます。数字については、根拠のある公開データのみを出典とともに引用し、確証のない推測値は掲載しません。
Find Your YOKOHAMAとはどんなアカウントか
「Find Your YOKOHAMA」は、横浜市(政策局)が運営する公式Instagramアカウントで、2016年7月に開設されました。運用の主目的は、横浜の認知度とブランドイメージを国内外、特に海外に向けて高めることにあります(出典:横浜市「インスタグラムアカウント@findyouryokohama_japan」)。
このアカウントは開設から日々の投稿を積み重ね、2021年5月時点でフォロワー8万人・海外フォロワー比率41.1%を達成したことが横浜市のプレスリリースで公表されています(出典:横浜市プレスリリース「国内自治体Instagramでトップクラス。横浜市公式Instagramのフォロワーが8万人を突破!~海外フォロワー率も40%超え!~」PR TIMES掲載)。さらに2022年11月には、開設から7年目でフォロワー10万人を突破し、フォロワーは44の国・地域にまたがっていることが報じられています(出典:ヨコハマ経済新聞「横浜市公式インスタグラムのフォロワーが10万人超え」、横浜市プレスリリース)。
単なる観光PR用アカウントではなく、「横浜の楽しみ方は、あなた次第」という都市ブランドメッセージ「Find Your YOKOHAMA」を体現する場として設計されている点が特徴です。行政アカウントでありながら、海外の一般ユーザーを主要ターゲットに据えている点は、他の自治体アカウントと一線を画す設計思想だと言えます。

なぜ支持されているのか①:写真のクオリティと統一された世界観
Find Your YOKOHAMAの投稿を眺めると、観光地の定番カットだけでなく、光の使い方や色味が統一された「作品として成立する写真」が並んでいることに気づきます。これは偶然ではなく、日々の投稿を1枚の作品として厳選するキュレーション体制によって支えられています。
具体的には、後述するユーザー投稿(UGC)の中から、都市のブランドイメージに合う写真を選定し、加工・トリミングの一貫性を保った上で1日1枚を投稿するという運用スタイルが取られています。この「毎日1枚、質を落とさず継続する」という制約自体が、結果的にアカウント全体のトーン&マナーを均質に保つ仕組みとして機能しています。
一般的な自治体・観光アカウントの分析でも、フォロワー数の多いアカウントに共通する要素として「写真が綺麗でアカウント全体に彩りがある」「独自性がある」ことが指摘されており(出典:株式会社Tsuzucle公式note「Instagram meets 市区町村 1万フォロワー超えの市区町村の傾向を分析してみた」)、Find Your YOKOHAMAはこの条件を早い段階から満たしてきたアカウントの一つと言えます。
なぜ支持されているのか②:UGCを核にした「#myyokohama」の仕組み
Find Your YOKOHAMAの投稿の多くは、市の広報担当者が撮り下ろした写真ではなく、ハッシュタグ「#myyokohama」を付けて投稿された一般ユーザーの写真から選ばれています。市内在住者や訪問者が自分の視点で切り取った横浜の風景・グルメ・日常が集まり、その中からブランドイメージに合うものをアカウント側がセレクトして再投稿する、という循環構造です。
このUGC活用には、大きく3つのメリットがあります。
- 投稿ネタ切れを防げる:ユーザーが多様な被写体を提供し続けてくれるため、運用側が毎回ゼロから撮影・企画をする必要がない
- 投稿された本人が拡散の起点になる:自分の写真が公式アカウントに載ることは投稿者にとって大きな喜びであり、シェアやコメントといった二次拡散が生まれやすい
- 「行政の一方的な発信」から「街ぐるみの発信」への転換:フォロワーから見て、単なる広報媒体ではなく「横浜を愛する人たちのコミュニティ」に見える
同様の手法は他の自治体でも採用されており、例えば岐阜県高山市は「#飛騨高山」等のハッシュタグを軸にUGCを積極的にリポストすることで、「観光客と地域が共に発信するSNS」というブランドイメージを確立しています(出典:syncAD「観光・自治体、Instagram公式アカウントの運用モデル・マーケティング成功事例10選」)。UGC活用は横浜市固有の手法ではなく、複数の成功事例に共通する型だという点が重要です。
なぜ支持されているのか③:海外ユーザーを前提にしたグローバル設計
Find Your YOKOHAMAのもう一つの大きな特徴は、最初から「海外の個人ユーザーに届く」ことを前提に設計されている点です。キャプションはネイティブレベルの英語で書かれ、コメントへの対応も英語で行われるほか、広告出稿においても多言語対応が行われてきました(出典:TAM「横浜市観光局公式Instagramアカウント|実績紹介」)。
前述の通り、2021年時点で海外フォロワー比率は41.1%にのぼり、上位国はインドネシア・インド・ブラジルであったと報じられています(出典:横浜市プレスリリース、みんなの観光協会掲載記事)。日本語オンリーで運用しがちな自治体・地域アカウントの中で、開設当初からグローバル比率をKPIとして意識し、言語・トンマナ・投稿時間まで含めて海外ユーザー向けに最適化してきたことは、他の観光アカウントとの明確な差別化ポイントです。
これは「インバウンド需要の取り込み」を狙う地方の企業・宿泊施設・商店にとっても示唆に富みます。日本語だけで完結させず、英語キャプションの併記や多言語ハッシュタグを取り入れるだけでも、リーチできる母集団は大きく変わります。
投稿の「型」を分解する
Find Your YOKOHAMAの投稿を要素分解すると、いくつかの型に整理できます。それぞれの型と、自社・自店舗アカウントへの応用ポイントを表にまとめました。
| 投稿の型 | Find Your YOKOHAMAでの特徴 | 自社アカウントへの応用ポイント |
|---|---|---|
| UGCセレクト投稿 | #myyokohamaの投稿から厳選し、クレジット表記の上で再投稿 | 自社の指定ハッシュタグを作り、良質な投稿は許諾を得て定期的にリポスト |
| 定番スポット×季節感 | みなとみらいや山下公園などの定番風景を、季節・時間帯を変えて反復投稿 | 「同じ場所でも切り口を変える」ことでネタ切れを防ぎ、季節ごとの再訪動機を作る |
| 世界観優先のトリミング・色調補正 | 投稿全体で色味・構図のトーンを統一し、フィード全体を「作品」として見せる | 加工ルール(彩度・明るさの基準など)を簡易マニュアル化し、担当者交代時も統一感を維持 |
| 多言語キャプション | 英語ネイティブ表現+多言語広告で海外ユーザーとの接点を確保 | 主要ターゲット国の言語で一言だけでも添える、翻訳ツール任せにせず自然な表現を意識する |
| インフルエンサー協業企画 | 国内外のインフルエンサーとコラボし、新規層へのリーチを拡張 | 地域に関連するクリエイターとの協業を単発で終わらせず、企画イベントとして継続的に実施 |
このように分解すると、Find Your YOKOHAMAの強さは「奇抜な企画力」よりも、「型を決めて、質を落とさず反復し続けたこと」にあることが見えてきます。特別な予算やバズ施策に依存せず、地道な運用設計の積み重ねが土台になっている点は、多くのアカウントにとって再現性のある学びです。
コメント対応・コミュニティ設計から学ぶエンゲージメントの考え方
Find Your YOKOHAMAでは、コメントに対して「必要と判断した場合に返信する」方針が明示されており、すべてのコメントに一律で返信しているわけではありません。また、市政への意見・要望はInstagramのコメント欄ではなく、市の「市民からの提案」制度など別チャネルに誘導する運用ルールが定められています(出典:横浜市「Instagramアカウント運用ポリシー」)。
これは一見エンゲージメントを軽視しているようにも見えますが、実際には「アカウントの目的(都市ブランディング・観光魅力発信)から外れる問い合わせは適切な窓口に振り分け、本来のコミュニケーションに集中する」という運用上の線引きです。企業・店舗アカウントでも、クレーム対応や個別の問い合わせ窓口をアカウント外に用意した上で、SNS上では世界観づくりとファンとのポジティブなやり取りに集中する、という切り分けは十分に応用できる考え方です。
一方で、UGCの再投稿自体が「あなたの投稿を見ています」という無言のリアクションになっており、直接的なコメント返信をしなくても、ユーザー投稿を取り上げるという行為そのものがエンゲージメントの主軸になっている点は見逃せません。
自社アカウントに応用するための実践チェックリスト
ここまでの分析を踏まえ、明日から取り組める具体的なアクションに落とし込みます。
①アカウント設計を見直す
- 自社・自店舗ならではの「合言葉」となる独自ハッシュタグを1つ決める(例:地域名やブランド名+シンプルな単語)
- フィード全体で統一する色味・トリミング比率などの簡易な「投稿ルール」を1枚のドキュメントにまとめる
- ターゲットが国内向けか海外向けかを明確にし、キャプション言語の方針を決める
②UGCを仕組み化する
- 指定ハッシュタグを店頭POPやWebサイト、注文完了画面などで告知する
- 良質な投稿を見つけたら、必ずDMまたはコメントで再投稿の許諾を取るフローを用意する
- リポストする際は投稿者のクレジット(@メンション)を必ず明記する
③投稿を「型」として運用する
- 定番スポット・定番商品を「季節」「時間帯」「切り口」を変えて繰り返し使えるネタ帳を作る
- 週次・月次で投稿を振り返り、反応の良かった型を次月にも再利用する
- 単発のバズ狙いではなく、最低3〜6ヶ月は同じ型を継続してデータを蓄積する
④コミュニケーションの線引きをする
- クレームや個別問い合わせ用の窓口(電話・問い合わせフォームなど)をプロフィール欄に明記する
- コメント対応の社内基準(どこまで返信するか)を簡単なルールとして共有する
これらは特別な予算やツールを必要とせず、担当者の工夫と継続だけで着手できる項目です。重要なのは、Find Your YOKOHAMAのように「一つの型を決めて、長期間ぶれずに続ける」姿勢であり、これは業種を問わず応用可能な原則です。
SNS利用動向から見る、いま観光・地域アカウントに求められる理由
こうした施策の背景には、SNSが情報接点として定着しているという大きな潮流があります。総務省「令和6年通信利用動向調査」によれば、インターネット利用者のうちSNSを利用している人の割合は81.9%に達しています(出典:総務省「令和6年通信利用動向調査」)。SNSはもはや一部のユーザーの趣味的なツールではなく、生活者の大多数が接する情報インフラになっているといえます。
さらに旅行先選びに限定すると、世代による差が顕著です。Z世代を対象にした調査では、旅行先やプランを決める際の情報源として「Instagramの投稿・ストーリー」を挙げた割合が47.9%と最も高く、Google検索(45.8%)やYouTube(39.2%)を上回ったことが報告されています(出典:株式会社Stayway プレスリリース、PR TIMES掲載)。観光・地域情報を発信するアカウントにとって、Instagramでの発信は「あれば良い」施策ではなく、若年層への実質的な入口になっていることが読み取れます。
Find Your YOKOHAMAが2016年という早い段階からInstagram運用に注力し、海外フォロワー獲得を目標に据えてきた判断は、こうした生活者の情報行動の変化を先取りしたものだったと評価できます。
まとめ
Find Your YOKOHAMAの運用を分解すると、その強さは奇抜な企画やバズ狙いではなく、「独自ハッシュタグによるUGCの仕組み化」「統一された世界観の継続」「ターゲット言語に合わせたグローバル設計」「コミュニケーションの適切な線引き」という、地道だが再現性のある基本動作の積み重ねにあることが見えてきます。これらは自治体アカウントに限らず、企業・店舗・観光関連事業者のアカウントにも十分応用可能な考え方です。
まずは自社の「合言葉」となるハッシュタグを一つ決め、投稿ルールを簡易にでも言語化することから始めてみてください。同じように業種別のSNS運用を分析した事例は、unyouの事例データベースでも多数紹介しています。自社と近い業種・目的のアカウントを探し、投稿の型やUGC活用の工夫を比較しながら、自社の運用改善にぜひ役立ててください。
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