CHUMS(チャムス)のInstagram運用を分析|伸びている理由と、真似できるポイント【2026年版】
2026/9/23
「うちも頑張ってInstagramを更新しているのに、なぜかフォロワーが増えない」「投稿のクオリティは悪くないはずなのに、エンゲージメントが伸びない」——アパレルや店舗ビジネスのSNS担当者から、こうした相談を受けることは少なくありません。特に競合ブランドのアカウントを見ていると、同じような商品写真を投稿しているだけなのに、なぜか「世界観がある」「ファンがついている」と感じる瞬間があるはずです。
その差はセンスや偶然ではなく、多くの場合「設計」の差です。今回は、アウトドアカジュアルブランド「CHUMS(チャムス)」の公式Instagram運用を、公開されている情報をもとに分析します。CHUMSは1983年にアメリカ・ユタ州でリバーガイドをしていた創業者が、川下り中にサングラスを落とさないための「オリジナルリテイナー」を考案したことから始まったブランドで、現在は日本のアウトドアファッションシーンを代表する存在のひとつです。そのSNS運用から、他業種・他ブランドでも応用できる具体的なポイントを抽出していきます。
CHUMSというブランドのコア:なぜ「世界観」が成立しやすいのか
CHUMSのInstagram運用を語る前に、まずブランドそのものの構造を理解しておく必要があります。CHUMSはアイウェアの落下防止アイテムから始まり、現在はウエア・バッグ・キャンプ用品まで展開する総合アウトドアブランドですが、一貫しているのは「日々の生活にちょっとした遊び心を持ち込む」という姿勢です。公式サイトでも、気分が明るくなるカラフルなウエアや、わくわくするキャンプ用品など「楽しさ」を軸にした商品開発を掲げています。
さらに、ブランドアイコンとして「ブービーバード」というカラフルな鳥のキャラクターを持っている点も重要です。ロゴ自体にストーリー性とビジュアルの記号性があるため、SNS上でも一目で「CHUMSらしさ」が伝わりやすい土台ができています。これは単なる偶然ではなく、SNS映えする世界観を作るうえで非常に有利な資産です。
自社ブランドに置き換えて考えると、「うちにはブービーバードのようなキャラクターも、鮮やかなブランドカラーもない」という企業がほとんどでしょう。しかし重要なのは、CHUMSのようなアイコンを持つことそのものではなく、「投稿を見た瞬間に自社だとわかる視覚的な一貫性」を意図的に設計しているという発想です。この発想は、業種を問わず応用可能です。

アカウント構造を分解する:本部・店舗・企画の三層運用
CHUMSのInstagram運用でまず注目すべきは、アカウントが一つではないという点です。ブランド全体を発信する公式アカウント「CHUMS JAPAN」を中心に、表参道店やグランフロント大阪店、東京ソラマチ店、昭島アウトドアヴィレッジ店といった主要な直営店ごとに個別アカウントが存在し、さらにポップアップストアやイベント情報に特化した「CHUMS EVENT」アカウント、企業コラボレーション専用アカウントなども運用されています。
この「本部×店舗×企画」の三層構造には明確な役割分担があります。
| アカウント種別 | 主な役割 | 発信内容の傾向 |
|---|---|---|
| 本部(ブランド)アカウント | ブランド全体の世界観発信・新商品訴求 | 新作紹介、コーディネート提案、ブランドストーリー |
| 店舗アカウント | 地域顧客とのリアルな接点づくり | 店頭ディスプレイ、スタッフの私物コーデ、入荷情報、来店促進 |
| 企画・コラボ・イベントアカウント | 話題性の創出とUGC誘発 | ポップアップ情報、コラボ商品、キャンペーン告知 |
一つのアカウントに情報を詰め込みすぎず、目的別に発信チャネルを分けることで、それぞれのフォロワーが「自分に関係のある情報」だけを受け取れる設計になっています。これは、複数店舗を持つ小売業や、法人向け・個人向けなど顧客層が異なる企業にとって特に参考になる考え方です。むやみにアカウントを増やす必要はありませんが、「誰に、何を届けたいアカウントなのか」を一つひとつのアカウントで明確に分離するという発想は、規模を問わず取り入れられます。
投稿の"型"を分析する:何を、どう見せているか
CHUMSの投稿を継続的に見ていくと、いくつかの反復パターン、いわゆる「投稿の型」が存在することがわかります。
第一に、商品単体のスタジオ撮影だけでなく、スタッフやユーザーが実際に着用したスナップスタイルの投稿が多い点です。ブランドとして「スタイリング提案」を重視しており、公式ECサイト上でも「チャムスタイリング」という、商品をコーディネートとして提案する仕組みを展開しています。これは単に商品を並べるのではなく、「これを着たらどんな生活が楽しくなるか」という生活シーンごと提示する手法です。
第二に、アウトドアという文脈を活かした「その場で撮った感」のある写真が多く使われている点です。スタジオの整った写真だけでなく、キャンプ場や自然の中で撮影されたカットを織り交ぜることで、ブランドの世界観である「日常に遊び心を」というメッセージを視覚的に補強しています。
第三に、コラボレーション企画の発信です。CHUMSはホンダのN-ONEとのコラボレーションのように、自動車ブランドなど異業種とのタイアップ企画を行い、専用のアカウントやハッシュタグでドライブスポットやカフェ巡りといったライフスタイル提案型のコンテンツを発信しています。単独ブランドの発信だけでは届かない新しい顧客層に接点を作る手法として参考になります。
世界観づくりの技術:トーンとUGCの使い方
CHUMSのフィードを俯瞰すると、色使いの統一感があります。ブランドカラーとして使われる明るいトーンの色味が、商品写真・スナップ写真を問わず一貫して登場するため、フィード全体を流し見しただけでも「CHUMSらしさ」が伝わる設計になっています。これは、投稿ごとに個別最適化するのではなく、フィード全体を一つの「面」として設計する考え方です。
加えて、CHUMSはユーザー投稿(UGC)を積極的に活用する仕組みも持っています。公式ECサイト内の「チャムスタグラム(Chumstagram)」というコンテンツでは、ユーザーの着用写真やコーディネートのトレンド情報、ランキング形式の紹介などを行っており、ユーザーが「自分もこのブランドの世界観の一員だ」と感じられる導線を用意しています。企業が一方的に発信するだけでなく、ユーザーの投稿を公式チャネルで「拾い上げる」仕組みがあることで、フォロワー側にも「投稿したら見てもらえるかもしれない」というモチベーションが生まれます。
これは、しまむらの「#しまパト」がInstagram上で数十万件規模の投稿を集めたように、アパレル業界において独自ハッシュタグを軸にしたUGC施策が有効であることとも整合的です。CHUMSの場合、独自の統一ハッシュタグを大々的に前面に出すというよりも、店舗タグやコラボタグを状況に応じて使い分けながら、ブランド全体としてUGCが生まれやすい土壌を作っているのが特徴です。
なぜ「なりすまし」が出るほど注目されるのか、そして真似できる注意点
CHUMSは公式サイト上で「Instagramのなりすましアカウントにご注意ください」という注意喚起を行っています。これは裏を返せば、公式を騙るアカウントが作られるほどブランドとしての認知・信頼が確立しているということでもあります。同時に、これは中小の企業・店舗アカウントにとっても他人事ではない実務上の論点です。
フォロワーや取引先から見て「どれが本物の公式アカウントかわからない」状態は、信頼構築の妨げになります。プロフィールに公式サイトのリンクを明記する、認証バッジを申請する、複数アカウントを運用する場合は本部アカウントのプロフィールから各店舗・企画アカウントへ導線を張る、といった基本的な整備は、フォロワー数の多寡にかかわらず今すぐ着手できる施策です。
データで見る:なぜ今Instagramの世界観設計に投資すべきか
ここまでCHUMSの事例を見てきましたが、そもそも「なぜアパレル企業がInstagramにここまで力を入れる価値があるのか」を、公開されている統計データから確認しておきます。
まず、SNS自体の利用が特定の若年層だけのものではなくなっている点です。総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、日本国内のSNS利用率は20代で90%を超え、30代でも85%前後、60代でも75%を超える水準にあるとされています。つまり、Instagramの世界観設計は「若者向けの施策」ではなく、幅広い年代の顧客接点として捉える必要があります。
次に、Instagram自体の国内利用規模です。Meta(旧Facebook)は2019年6月の公式発表で、Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したことを明らかにしています。これはあくまで2019年3月時点の数値であり、その後の最新の国別数値は公式に定期発表されていませんが、国内で最も影響力の大きいビジュアル系SNSの一つであることを示す一次情報として、現在も多くのマーケティング資料で参照される基準値となっています。
さらに、購買行動とInstagramの結びつきを示すデータもあります。合同会社RASA JAPANがPR TIMESで公開した2026年の調査「日本人636名のInstagram購買行動」によると、回答者の約4割が月に1回以上Instagramきっかけで商品を購入していると回答しており、購入の際に最も参考にする情報源として「友だち・知り合いの投稿」が挙げられています。この結果は、CHUMSが実践しているような、企業からの一方的な発信だけでなくUGCやスタッフの着用投稿を活用する手法が、実際の購買行動と親和性が高いことを裏付けています。
これらのデータを踏まえると、CHUMSのような「世界観×UGC×アカウント設計」の組み合わせは、単なるブランディング施策ではなく、購買につながる導線設計として捉えるべきだとわかります。
明日から試せる実践チェックリスト
CHUMSの事例から抽出できる要素を、自社アカウントに落とし込むためのチェックリストとしてまとめます。
- フィード全体の色トーンを3色以内に絞る:投稿ごとにバラバラな色味にせず、ブランドカラーを決めて写真の背景・小物・フィルターを統一する。
- 商品単体写真とシーン写真の比率を決める:商品写真だけに偏らず、「着用シーン・使用シーン」の投稿を全体の3〜4割程度は入れる。
- アカウントの役割を紙に書き出す:複数店舗・複数事業がある場合、「このアカウントは誰に何を届けるためのものか」を一文で定義してから運用方針を決める。
- スタッフ・現場発信の投稿枠を作る:本部からの正式な発信だけでなく、現場スタッフの視点からの投稿を定期的に混ぜる。
- 独自ハッシュタグを1つ決めて固定運用する:キャンペーンのたびに変えるのではなく、ブランドを象徴する軸となるタグを継続して使う。
- ユーザー投稿を公式チャネルで紹介する導線を作る:ストーリーズでのリポストや、ECサイト上での紹介コーナーなど、UGCを拾い上げる仕組みを用意する。
- プロフィールと公式サイトの整合性を整える:なりすまし対策も兼ねて、プロフィール欄に公式サイトのリンクと認証情報を明記する。
- 異業種とのコラボレーション機会を探る:自社単独では届かない顧客層に接点を作れそうなブランド・企業をリストアップしておく。
これらは特別な予算や大規模な制作体制がなくても、既存の投稿ルールを見直すだけで着手できるものばかりです。まずは1と3、つまり「色トーンの統一」と「アカウントの役割定義」から始めることをおすすめします。ここが曖昧なままだと、他の施策を積み重ねても世界観が一貫しないためです。
まとめ
CHUMSのInstagram運用は、派手な一発企画ではなく、「ブランドの世界観を軸にしたアカウント設計」「本部・店舗・企画を役割分担する運用体制」「UGCを拾い上げる仕組み」という、地道だが再現性のある工夫の積み重ねで成り立っています。総務省の調査が示すように、SNSはすでに幅広い年代に浸透したインフラであり、PR TIMESで公開された購買行動調査が示すように、Instagram経由の購買はUGCや身近な人の投稿への信頼によって支えられています。CHUMSのような専業ブランドの手法をそのまま真似ることはできなくても、「アカウントの役割を明確にする」「色とトーンを統一する」「ユーザーの声を拾い上げる」という考え方の部分は、業種を問わず今日から取り入れられるはずです。
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