SNS担当者なら誰もが一度はぶつかる壁
「投稿ネタが尽きてきた」「フォロワーは増えているのに反応が薄い」「ブランドらしさが出せているか自信がない」——化粧品ブランドのInstagram運用を任されている方なら、こうした悩みに心当たりがあるのではないでしょうか。特にプチプラコスメのように商品点数が多く、ターゲット層も幅広いブランドでは、「誰に向けて何を発信すべきか」の軸がぶれやすく、担当者が変わるたびに世界観が揺らいでしまうケースも珍しくありません。
そこで今回は、1968年創業の老舗コスメブランド「ちふれ化粧品」の公式Instagramアカウント(@chifure_official)を題材に、長年にわたり支持を集めてきた運用の考え方を分解していきます。公開されている一次情報と外部の運用事例レポートをもとに、投稿の型・世界観の作り方・エンゲージメント施策を整理し、業種を問わず応用できるポイントに落とし込みます。なお本記事では、裏付けの取れない最新のフォロワー数やエンゲージメント率といった数値は掲載せず、出典が明確な情報のみを扱います。

ちふれ公式Instagramの基本情報とブランドの立ち位置
ちふれ化粧品は「正直な化粧品づくり」を掲げ、無駄なコストを削ぎ落とした適正価格・適正容量を特徴とするブランドです。公式Instagram(@chifure_official)はこの企業姿勢をそのままSNS上でも体現しており、過度な演出よりも「誰でも真似できる使い方」「等身大の情報発信」を重視した投稿が中心になっています。
また、ちふれホールディングス株式会社は公式サイト上に「ソーシャルメディアポリシー」を掲げ、SNSを通じた企業と顧客、顧客同士のコミュニケーションによってブランド価値を高めることを明言しています(出典:ちふれホールディングス株式会社「ソーシャルメディアポリシー」)。偽アカウントに対する注意喚起も公式サイトで継続的に行っており、公式チャネルの信頼性を守る姿勢が徹底されている点も、老舗ブランドならではの特徴です。
SNS支援会社オリナス株式会社が公開している導入事例によれば、ちふれのInstagramアカウントは企画戦略の立案から運用・分析、新施策の提案までを継続的に行った結果、2020年12月時点でフォロワー数が10.3万人に達し、公式ハッシュタグ「#ちふれ」の投稿数は6.4万件、フォロワー属性は20〜34歳の女性が約7割を占めるという結果が報告されています(出典:オリナス株式会社 導入事例「ちふれ」)。単発のバズではなく、中長期的な運用によって着実にコミュニティが育っていったことが読み取れます。
なぜちふれのInstagramは支持され続けているのか
支持の理由を分解すると、大きく3つの要素に整理できます。
**1つ目は「価格帯とギャップのない情報発信」**です。プチプラブランドが高級感を演出しすぎると、フォロワーとの間に違和感が生まれます。ちふれは「手に取りやすい価格でここまでできる」という実用的な角度を軸に、誇張のない使用感の伝え方を徹底しています。
**2つ目は「継続性のある投稿設計」**です。前述のオリナス社の事例が示す通り、単発キャンペーンではなく企画・運用・分析のサイクルを回し続けたことがフォロワー基盤の形成につながっています。SNS運用は瞬発力よりも継続力が問われる領域であり、これはあらゆる業種に共通する原則です。
**3つ目は「顧客参加型のコミュニケーション」**です。公式ハッシュタグを軸にユーザー自身の投稿を促し、ブランドと顧客、顧客同士がつながる場を意図的に設計している点は、ちふれのソーシャルメディアポリシーにも明記されている方針と一致します。
投稿の「型」を分解する
老舗ブランドのアカウントを分析する際は、感覚的に眺めるのではなく、投稿を目的別に分類することが重要です。一般的にコスメブランドのInstagram投稿は、以下のようなカテゴリに整理できます。
| 投稿カテゴリ | 主な目的 | 投稿形式の傾向 |
|---|---|---|
| 新商品紹介 | 認知拡大・購買喚起 | フィード写真+簡潔なテキスト訴求 |
| 使い方・活用法 | 実用性の提示・信頼構築 | リール動画・カルーセル |
| 季節・トレンド提案 | シーズン需要の取り込み | テーマ性のあるビジュアル特集 |
| ユーザー投稿の紹介 | エンゲージメント促進・UGC活用 | ハッシュタグ経由のリポスト |
| ブランドストーリー | 世界観・企業姿勢の発信 | ストーリーズ・ハイライト活用 |
このように役割を分けて投稿を設計すると、「今週は何を出すか」を毎回ゼロから考える必要がなくなり、運用の再現性が高まります。特にプチプラブランドでは「使い方・活用法」カテゴリが信頼構築に直結しやすく、価格の手頃さと機能性の両立を伝える投稿は汎用性の高い型として応用できます。
世界観のつくり方——「背伸びしない」設計思想
ちふれのアカウントから学べる最大のポイントは、ブランドの実態と発信内容に乖離がないことです。高価格帯ブランドの世界観をそのまま模倣するのではなく、「適正価格・適正容量」という企業理念に沿ったトーンで一貫させています。
これは中小企業や個人店舗のSNS運用にもそのまま応用できる考え方です。フォロワーが求めているのは非日常の憧れだけではなく、「自分にも実践できる」という納得感であることが多く、背伸びした世界観は必ずしも支持されるとは限りません。世界観づくりで意識すべきは以下の3点です。
- ブランドの実態(価格帯・商品特性・企業理念)と発信トーンを一致させる
- ビジュアルのテイスト(色味・構図・フォント)を投稿間で統一する
- プロフィール文・ハイライト・固定投稿を「初見のフォロワーが3秒で理解できる」設計にする
エンゲージメントを高める施策の考え方
フォロワーとの接点を増やす施策として、ちふれのようなブランドが取り入れている考え方は、公式ハッシュタグを起点にしたUGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用です。前述の通り「#ちふれ」には数万件規模の投稿が蓄積されており、これはブランド側が一方的に発信するのではなく、顧客が自発的に発信したくなる余地を作っていることの表れです。
エンゲージメント施策を設計する際は、次のような順序で考えると整理しやすくなります。
- ハッシュタグを「覚えやすく・打ちやすく」設計する(ブランド名のみ、または短い派生語)
- ユーザー投稿を定期的にストーリーズやハイライトで紹介し、参加のハードルを下げる
- コメント欄への返信を仕組み化し、初期フォロワーとの接点を増やす
- リール動画で「使い方」を短時間で伝え、保存・シェアされやすい構成にする
- 投稿ごとの反応を記録し、次の企画に反映させるサイクルを止めない
このサイクルを止めずに回し続けることこそが、単発のバズに依存しないアカウント成長につながります。
SNS全体の環境変化を踏まえた運用の重要性
こうした個別ブランドの工夫は、SNS利用者全体の増加という追い風の中で効果を発揮しています。総務省「令和6年通信利用動向調査」(総務省「令和6年版 情報通信白書」)によれば、インターネット利用者のうちSNSを利用している人は81.9%に達し、20代では利用率が90%を超え、30代でも約85%、さらに50代でも4割以上が利用するなど、幅広い年代に浸透が進んでいることが報告されています。
またInstagramに関しては、Meta社(Instagram公式)が2019年6月に、日本国内の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したと発表しています(出典:Metaについて「Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破」)。この発表以降、国内での利用者基盤はさらに拡大してきたとされており、化粧品ブランドにとってInstagramが依然として主要な顧客接点であり続けていることがうかがえます。
こうした市場環境の中では、フォロワー数の多寡だけでなく「誰に、何を、どう継続的に届けるか」という設計力の差が、アカウントごとの支持のされ方を分けていると考えられます。
明日から試せる実践チェックリスト
自社アカウントに応用する際は、以下のチェックリストから着手すると取り組みやすくなります。
- 自社の価格帯・企業理念と、投稿のトーン&マナーが一致しているか見直す
- 投稿を「新商品紹介」「使い方」「トレンド提案」「UGC紹介」「ブランドストーリー」の5カテゴリに分類し、直近1ヶ月分の投稿比率を可視化する
- 覚えやすい公式ハッシュタグを1つに絞り、プロフィール文と固定投稿に明記する
- ユーザー投稿を紹介する曜日・頻度をあらかじめ決めておく
- リール動画で「使い方」を15〜30秒で伝えるフォーマットを1つ作る
- コメント返信の担当者・タイミングを社内で決めておく
- 月次で「カテゴリ別の反応」を振り返り、翌月の企画に反映する会議を設定する
まずは1つ目と2つ目、つまり「トーンの一致」と「投稿カテゴリの可視化」から着手すると、現状の課題が見えやすくなります。
まとめ
ちふれ化粧品のInstagram運用から見えてくるのは、派手な演出やトレンド追随ではなく、「ブランドの実態に忠実な発信」「継続的な企画運用」「顧客参加を促す仕組みづくり」という地道な積み重ねです。総務省のデータが示す通りSNS利用が幅広い年代に広がり、Instagramも国内で大きな利用基盤を持つ今、重要なのはフォロワー数そのものよりも、自社の実態と一致した世界観を一貫して発信し続けられるかどうかにあります。
今回紹介したチェックリストを起点に、まずは自社アカウントの投稿を見直すところから始めてみてください。他業種・他業態のSNS運用事例をさらに知りたい方は、unyouの事例データベース(/cases)で美容・コスメ業界を含む豊富な運用事例を確認できます。自社の状況に近い事例を探し、具体的な打ち手のヒントを得るのに役立ててください。
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